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第2章:学園生活と仲間との絆
第11話:魔法実習でまたやらかす
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レオとアンナ。
この二人の、常識の枠には到底収まりきらない、かけがえのない悪友、いや、親友と呼ぶべき存在が俺の人生に現れてから、まだ数週間しか経っていない。しかし、その短い期間に、俺、ガク・フォン・アルベインの世界は、それまでの灰色で単調だった日々とは比較にすらならないほど、目まぐるしく騒がしく、そして鮮烈な色彩に満ち溢れたものへと変貌を遂げていた。
かつての俺の世界は、まるで音のないモノクロ映画のようだった。定められた時間に起床し、決められた授業を受け、誰と深く関わることもなく寮の自室へと戻る。窓の外を流れる季節の移ろいも、他の生徒たちの楽しげな喧騒も、どこか自分とは無関係な、遠い世界の出来事のようにしか感じられなかった。内に秘めた規格外の魔力は、ただただ孤独と疎外感の源でしかなく、それをひた隠しにすることで、かろうじて平穏という名の薄氷の上を歩いているに過ぎなかった。
だが、彼らと出会ってからというもの、その薄氷は音を立てて砕け散り、俺は荒れ狂う嵐のような日常の海へと放り込まれた。しかし不思議なことに、そこに恐怖はなかった。むしろ、荒波に揉まれるたびに、凍り付いていた感情が溶け出し、生きているという実感の奔流が、全身を駆け巡るのを感じていた。レオの底なしの知的好奇心は俺の世界の扉をこじ開け、アンナの天真爛漫な行動力はその世界を縦横無尽に引っ掻き回す。俺の暴走しがちな魔力は、もはや隠すべき呪いではなく、この二人といる時だけは、あり得ない状況を打開するための、どこか頼もしい切り札のようにすら思えた。
季節は、秋の最後の名残が北風に吹き飛ばされ、冬の峻厳な気配が日増しにその輪郭を濃くしていく十二月。世界が色褪せていくこの季節に、俺の世界だけが彩りを増していくのは、なんとも皮肉なことだった。
その日の朝も、冬将軍は容赦なくその権勢を振るっていた。寮の自室の重厚な木製の窓を押し開けると、夜の間に凝結した氷の結晶がパリパリと小さな音を立てて剥がれ落ちる。途端に、研ぎ澄まされた刃物のように鋭く、そしてガラス細工のように冷たい空気が、まだ眠りの微睡みの中にいた俺の意識を容赦なく叩き起こした。肺の奥まで浸透してくるその冷気は、眠気などという生半可なものを一瞬で浄化していく。
見上げた空は、まるで溶かした鉛を流し込んだかのように、重々しく低く垂れこめていた。雲の分厚い層に覆い隠された太陽は、その存在をかろうじて主張するかのように、まるで厚手の毛布に幾重にもくるまっているかのように、ぼんやりとした弱々しい光を地上に投げかけるだけだ。
学園の庭に並ぶ木々は、とうの昔に色鮮やかな葉を一枚残らず散らし、今は黒々とした裸の枝を、まるで助けを求める無数の腕のように、寒々しい灰色の空へと必死に伸ばしている。枝の表面には薄らと白い霜が降りており、それが冬の厳しさを一層際立たせていた。遠くに見える山脈の稜線も、いつの間にか白い化粧を施され、その荘厳な姿を空との境界に静かに浮かび上がらせている。全てが静まり返り、色彩を失った世界。それが、この季節の本来の姿だった。
だが、そんな凍てつくような朝の景色とは裏腹に、俺たちが集う一年生の教室だけは、ある種の異常な熱気に満ち満ちていた。その熱源は、教室の中央に鎮座する、魔石を燃料とする鋳鉄製のストーブ――では、必ずしもない。
「うう、さむさむ……。本当に、骨の髄まで凍えそうだわ。こんな日は、暖かい暖炉の前で、ふかふかのブランケットにくるまって、湯気の立つ熱いココアでも飲んでいたいわねぇ……」
教室に入るなり、アンナが大きな体をぶるぶると震わせながら、まるで詠唱のようにその願望を口にした。彼女の首には、極太の毛糸で編まれた、燃えるような真紅のマフラーが何重にも巻かれており、その下半分に顔をうずめている。吐き出す息は真っ白な塊となって、彼女のトレードマークである鮮やかな赤い髪の揺れに合わせて、ふわりと宙を舞っては消えていく。その光景は、モノクロームの世界に突如として現れた、一点の鮮烈な色彩のようだった。
「何を言っているんだ、アンナ。君のその脳天気で単純構造な思考回路こそ、常に最高の熱効率を誇る熱量に満ち溢れているじゃないか。その有り余る無駄なエネルギーで、いっそのこと自家発電でもして、教室を暖めてみたらどうだ? 君なら可能だろう」
そんな彼女に、いつものように冷ややかな皮肉を飛ばしたのは、レオだった。彼は、教室で最も暖かい場所、すなわちストーブの真ん前という特等席を、さも当然の権利であるかのように陣取っていた。その手には、もはや彼の身体の一部と化したかのような、分厚く古めかしい装丁の魔導書が開かれている。彼は決して視線を本から上げようとはしない。その態度は、アンナの言葉など、耳にする価値もない雑音だとでも言いたげだった。
アンナの額に、ぴくりと青筋が浮かぶのが見えた。
「あんたねえ! 人がせっかく冬の情緒に浸って、感傷的な気分になってるっていうのに、それを台無しにするようなこと言うんじゃないわよ! 大体、なんであんたが一番暖かい席を独り占めしてるのよ! そこは本来、私のような、寒さに弱いか弱い乙女が座るべき場所でしょ! あんたなんて、無駄な筋肉が全然ないから、本当は一番寒さに弱いんじゃないの!」
アンナは腰に手を当て、仁王立ちになってレオを睨みつけた。その剣幕に、周囲で談笑していた他の生徒たちが、面白そうにこちらを窺っている。
「ふん、これは知的労働者に対する当然の優遇措置だ。来るべき授業に備え、常に最高のコンディションで脳を稼働させるためのな。君のような、考えるという高等な行為を放棄した単細胞生物には、到底理解できんだろうがね」
レオは、なおも本から目を離さず、鼻で笑うように言い放った。その声は、ストーブの放つ熱で揺らめく空気の中を、冷たく突き抜けてきた。
「なんですってえええええ!」
ぎゃんぎゃんと、まるで犬と猿のように吠え合う二人。それは、俺たちの教室における日常と化しており、今や冬の到来を告げる風物詩の一つとして、他の生徒たちにも半ば受け入れられていた。俺は、そんな二人のいつものやり取りを、ストーブから最も遠い、窓際の凍えるような席で、腕を組みながら眺めていた。口元に浮かぶのは、自分でも気づかないほどの、穏やかな微笑みだった。この光景が、この騒がしさが、今の俺にとっては、何物にも代えがたい宝物なのだ。
もちろん、俺の足元に置かれた、少し大きめの丈夫な荷物袋の中では、俺の使い魔である黒犬のクロが、子犬サイズに縮こまり、ふかふかの毛布にくるまって気持ちよさそうに丸くなっている。すうすうと安らかな寝息を立てて眠るその姿は、この騒音の中でも平穏そのものだ。時折、ぴくりと耳を動かしたり、寝言のように「くぅん…」と小さく鳴いたりするのは、きっと夢の中で、俺たちのこの騒がしいやり取りを聞いているからに違いない。
この数週間で、俺たちの関係は、単なるクラスメイトや友人という言葉では括れないほど、奇妙で、それでいて強固な絆で結ばれていた。
そして同時に、学園内での悪名もまた、強固なものとなっていた。
ある時は、レオの知的好奇心で立ち入り禁止の古文書館に忍び込み、防犯ベルを鳴らし。
またある時は、アンナの無茶な特訓で森の生態系を破壊しかけ。
そして俺の魔法実験が暴走して、中庭の池を一瞬で温泉に変えたこともある。
俺たちの行くところ、常にトラブルあり。
いつしか、学園内では、俺たち三人は「歩く災害(ウォーキング・ディザスター)」、あるいは、より具体的に「マグナス教授の胃痛の種」として、ある種の畏敬の念(と、大部分の憐憫の情)を持って、遠巻きに眺められる、一種の有名人となっていた。すれ違う生徒たちは、俺たちを見ると、さっと道を譲り、ひそひそと何かを囁き合う。その視線には、好奇心と、恐怖と、そしてほんの少しの羨望が混じっているような気がした。
だが、俺たち自身は、そんな周囲の評価など微塵も気にも留めず、毎日が冒険であるかのような、最高に刺激的で楽しい日々を送っていた。孤独だった頃には決して味わうことのできなかった、このかけがえのない騒がしさ。俺は、その中心にいる自分を、少しだけ誇らしくさえ思っていた。
その日、俺たちの日常に、また新たな伝説、いや、惨劇の1ページを刻むことになる事件は、午後の魔法実習の授業で、静かに、しかし確実に、その幕を開けたのだった。
***
午後の日差しは、冬特有の、力強さはないものの、どこまでも透明で澄んだ光を、学園の広大な訓練場に投げかけていた。空気は、まるで薄いガラスのように冷たく、張り詰めていて、大きく息を吸い込むと、肺が清められるような感覚さえある。
訓練場の向こうには、先日来の寒波で薄っすらと雪化粧をまとった山々が、その白い頂を、重たい鉛色の空に対して、くっきりと浮かび上がらせていた。その壮麗な冬の景色が、これからこの場所で繰り広げられるであろう、あまりにもちっぽけで、そして悲劇的な出来事との、皮肉なまでの対比をなしていた。
「えー、本日の授業は、魔法の『威力調整』についてだ」
訓練場の生徒たちの前に設けられた壇上に立ったマグナス教授は、開口一番、まるでこの世の終わりのような、深々と、そして長々と、魂の底からの叫びにも似たため息をついた。その疲労しきった、死んだ魚のような目は、他の生徒たちの上を滑り、まるで自動追尾機能でも搭載されているかのように、寸分の狂いもなく、この俺、ガク・フォン・アルベインの眉間に、ピンポイントで固定された。その目は、もはや教師が生徒に向ける温情に満ちたそれではない。戦場で、いつ爆発するとも知れぬ、危険極まりない不発弾を目の前にした、工兵のそれに限りなく近かった。
「いいか、諸君。魔法というものはな、決して力任せに振るうものではない! そして、特に、そこの君!」
ビシッ!と、小刻みに震える人差し指が、寸分の狂いもなく、再び俺を指し示した。周囲の生徒たちから、小さな笑い声が漏れるのが聞こえる。
「魔法とは、ただ、やみくもに、馬鹿みたいに、思考停止して、全力でぶっ放せばいいというものでは断じてない! それは、魔法などという高尚なものではなく、ただの、野蛮な暴力だ! 真の魔術師とは、その場の状況に応じて、その威力を、針の穴に糸を通すかのように、繊細に、緻密に、そして完璧にコントロールできる者のことを言うのだ! わかっているのか、アルベイン!」
マグナス教授の言葉は、その九割九分が、俺個人に向けられた、血を吐くような説教だった。くすくす、という笑い声が、さざ波のように周囲から広がる。顔が熱くなるのを感じた。
「さて、今日の課題は、これだ!」
教授が芝居がかった仕草で指し示したその先には、広大な訓練場のちょうど真ん中に、まるで忘れ去られたかのように、ぽつんと、一本の細い蝋燭が立てられていた。風もないのに、その先端で揺らめく小さな炎が、やけに頼りなげに見える。
「各自、今いるこの位置から、威力レベル1の『ファイアボール』を放ち、あの蝋燭の火だけを、消すこと! いいか、あくまでも『火だけ』だ! 蝋燭本体を焦がしたり、熱で溶かしたり、ましてや、その背後にある訓練場の壁を吹き飛ばしたりなど、言語道断! そのような愚行に及んだ者は、即刻、不合格とする! わかったな! アルベイン!」
最後の注意は、念押しというにはあまりにも圧が強く、完全に、俺一人に向けられた最後通牒だった。教授の額には青筋が浮かび、その目には「頼むから、何も壊さないでくれ。儂の退職金に関わる」という、悲痛な祈りの色すら宿っていた。
「ひゅー、ガク! あんた、名指しで特別マークされてるじゃない! スター選手みたいね!」
隣にいたアンナが、俺の背中をバンバンと遠慮なく叩きながら、腹を抱えんばかりに面白そうに笑う。その振動で、俺の覚悟が少し揺らぎそうになる。
「ふっ、当然の結果だな。君のこれまでの破壊の数々、その輝かしい所業を考えれば、むしろ当然の措置と言える。マグナス教授の毛根の残存率に、心から同情するよ」
レオが、いつものように腕を組み、さも当然といった顔で冷静に頷いている。その分析的な視線が、逆に俺の心を抉る。
くそ、見てろよ、二人とも。そして教授も。
今日こそ、俺は、この「歩く災害」という不名誉極まりない汚名を返上する。俺だって、やればできるんだ、というところを、この学園の全てに見せつけてやる。
(クロは……よし、大丈夫だな)
俺は足元を確認する。俺の荷物袋は、訓練場の隅、安全地帯と言えるベンチの上に置かれている。中にいるクロも、空気を読んで気配を消してくれているようだ。
生徒たちが、出席番号順に、一人ずつ課題に挑戦していく。
しかし、この一見単純そうな課題、見た目以上に、かなり高度な技術が要求されるようだった。
多くの生徒が、威力を弱めようとするあまり、魔力の凝縮に失敗し、ファイアボールが蝋燭に届く前に、しゅるしゅると音を立てて消えてしまう。逆に、少しでも力を入れすぎれば、ファイアボールは勢いを失わず、蝋燭ごと薙ぎ払い、根本から黒焦げにしてしまっていた。成功者は、まだ一人も出ていない。
「よし、ガク! あんたの番よ! さあ、新たな伝説、見せてやんなさい!」
アンナが、期待に満ちた(というより、何か面白いことが起こることを期待した)目で、俺の尻を叩く。
「健闘を祈るよ、ガク君。せめて、被害は、半径十メートル以内に抑えてくれたまえ。そうすれば、僕の分析対象としても扱いやすい」
レオが、どこまでも真顔で、非情なエールを送ってくる。
期待と、諦めが複雑に混じり合った、独特のエールをその背中に受けながら、俺は、ゆっくりと課題の開始位置に立った。
訓練場の土を、ぐっと踏みしめる。
ひゅっと、一度、深く息を吸い込んだ。冷たい空気が肺を満たし、頭が冴えわたるのを感じる。
大丈夫だ。俺は、この日のために、来る日も来る日も、血の滲むようなイメージトレーニングを重ねてきたんだ。
(いいか、俺。落ち着け。思い出すんだ。前世で、キャンプの時に使った、あのガスバーナーの火加減を。最初は、コックをほんの少しだけひねって、弱火で、コトコトと煮込む。そうだ、あの、ごくごく弱い、とろ火のイメージだ。炎の先端が、鍋の底に優しく触れるか触れないかくらいの、あの繊細な感覚…!)
(そして、体内の魔力だ。いつもみたいに、ダムの放水のように、いきなり全開にするな。水道の蛇口を、ほんの少しだけ、錆び付いた蛇口を回すように、一ミリだけ、じわり、と。そう、じわり、とだ…! 魔力の奔流を、細い細い一本の糸として紡ぎ出すんだ!)
俺は、右手の指先に、自分の持つ全ての神経を、魂ごと集中させた。指先の皮膚感覚が、あり得ないほど鋭敏になっていくのがわかる。空気の流れ、温度、湿度、その全てが、指先から情報として流れ込んでくる。
「今度こそ、今度こそやるぞ…! 俺の魔力よ、今日だけは、頼むから、言うことを聞け!」
俺の魂からの悲痛な叫びに呼応するように、体内で常に荒れ狂っていた魔力の奔流が、奇跡的に、ゆっくりと、本当に、信じられないほどゆっくりと、制御された細い流れとなって、指先へと伝わっていく。
(いける! いけるぞ! これだ! この感覚だ! 今度こそ、完璧なコントロールだ!)
俺は、まだ魔法を放ってもいないのに、勝利を確信した。脳裏には、蝋燭の炎だけがふっと静かに消え、驚愕するマグナス教授と、称賛の声を上げるアンナとレオの姿が、鮮明に浮かんでいた。
そして、俺の指先から、一筋の、光が放たれた。
だが、それは、俺がイメージしていた、オレンジ色で丸い形状の、可愛らしいファイアボールではなかった。
どうやら俺の、前世の記憶に基づく「ガスバーナー」のイメージが、あまりにも具体的すぎたらしい。
シュゴオオオオオオオオオオオオッッ!!!!
その音は、もはや魔法の詠唱音ではなかった。高圧ガスが噴出するような、空間そのものが悲鳴を上げているかのような、耳障りな轟音だった。
俺の指先から迸ったのは、極限まで細く絞られ、しかし、直視すれば網膜が焼き切れそうなほどの眩い輝きを放つ、青白いレーザーのような熱線だった。
その熱線は、発射された瞬間、目の前の冷たい冬の空気を陽炎のように歪ませ、まるで空間そのものを焼き切るかのように、絶対的な軌道を描いて、一直線に、遥か先の蝋燭へと向かった。
ちりっ。
という、辺りの静寂に吸い込まれてしまうほどの、実にささやかで、控えめな音がした。
蝋燭は、火を消されるどころか、その存在そのものが、熱量によって分子レベルで分解され、一瞬にして、蒸発した。まるで、最初からそこには何も存在しなかったかのように。
だが、悲劇は、そこで終わらなかった。否、そこからが本番だった。
俺の意思とは完全に裏腹に、一度解放された体内の魔力は、なおも制御不能のまま暴走を続け、指先から奔流となって溢れ出す。青白いレーザーは、その恐るべき威力を微塵も衰えさせることなく、ただひたすらに、直進した。
蝋燭があった場所の、遥か後方。
そこに、巨大な城壁のようにそびえ立っていた、訓練場の、分厚い石造りの壁。
マグナス教授が、つい先ほど、「吹き飛ばすなど言語道断」と、涙目で釘を刺したばかりの、あの頑丈な壁。
レーザーは、その壁に、まるで何の抵抗もなかったかのように、音もなく、静かに吸い込まれるように、着弾した。
そして、次の瞬間。
一瞬の完全な静寂が、世界を支配した。
ドッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!
凄まじい、腹の底まで響き渡る轟音と共に、壁が、まるで豆腐か何かのように、内側から爆散した。衝撃波が地を走り、俺の足元を揺るがす。石の壁が、内部からの凄まじい圧力に耐えきれず、無数の破片となって四方八方へと弾け飛んだのだ。
直径にして、十メートルはあろうかという、巨大で、完璧な円形の風穴が、ぽっかりと、嘲笑うかのように口を開ける。
それだけではない。惨劇はまだ続く。
新しくできた風穴の向こう側。そこにあったはずの、様々な魔法道具を保管しておくための、頑丈な煉瓦造りの備品倉庫。
その備品倉庫もまた、壁を貫通したレーザーの衰えを知らぬ余波を受け、その頑丈な壁ごと、跡形もなく、完全に消し飛んでいた。
倉庫の中に保管されていた、訓練用の木製ゴーレムの残骸や、予備の的、様々なポーションの空き瓶、使い古された魔法の杖などが、木っ端微塵になって、爆風と共に冬の空高くへと巻き上げられる。それらの破片が、弱々しい午後の日差しを浴びてキラキラと輝きながら、美しくも無残極まりない放物線を描いて、ゆっくりと地上へと舞い落ちていった。
しーん。
世界から、全ての音が、消えた。
生徒たちの驚きの声も、教授の絶叫も、何も聞こえない。
ただ、冷たい冬の風が、ぴゅう、と、新しくできた巨大な風穴を寂しげに吹き抜けていく、その音だけが、やけに、大きく耳に響いた。
(……あ、ベンチの上のクロは……よかった、無事だ)
爆心地から遠く離れたベンチの上で、荷物袋がわずかに動いた気がしたが、被害は及んでいないようだった。心底ほっとする。
やがて、誰よりも早く我に返ったアンナが、ぷるぷると肩を震わせ始めたかと思うと、次の瞬間、腹を抱えて、その場に崩れ落ち、地面を転げまわり始めた。
「あ、あはははは! あっははははははは! だ、だめ、お腹痛い! 呼吸が! ガク! あんた、本当に、最高よ! 期待を、遥かに、遥かに超えてきたわ! 壁どころか、倉庫まで木っ端微塵に吹き飛ばすなんて! 誰が予想できたっていうのよ!」
一方、レオは、いつものように、爆発によって生まれた惨状の中心地へと、目を輝かせながら駆け寄っていた。その両の目には、もはや、狂気とも言えるほどの、純粋な探究心の光が、爛々と宿っている。
「す、素晴らしい! 見ろ、この熱による融解痕を! 壁の石が、ガラス化している! これは、ただの火属性の熱エネルギーじゃないぞ! 膨大な魔力の超高密度圧縮による、強制的な相転移反応だ! しかも、この破壊規模! ガク君、君の体内の魔力総量は、また一段と、出鱈目な領域に突入していないかい!?」
言うが早いか、彼はどこからともなくスケッチブックとペンを取り出し、一心不乱に、破壊の痕跡――風穴の断面、飛び散った破片の形状、地面に残った焦げ跡――を、驚異的な速さで記録し始めた。その姿は、学者というよりは、新種の生物を発見したマッドサイエンティストそのものだった。
爆笑し、涙を流すアンナ。
興奮し、分析に没頭するレオ。
そして、その二人が織りなすカオスの中心で、一人、指先からまだ細く立ち上る青白い煙を眺めながら、呆然と立ち尽くす、俺。
その、俺の肩を、ぽん、と、誰かが優しく、しかし有無を言わせぬ力で叩いた。
俺は、まるで油の切れたブリキの人形のように、ぎ、ぎぎ、と、軋むような音を立てながら、ゆっくりと、恐る恐る、振り返った。
そこに立っていたのは、マグナス教授だった。
その顔は、まるで精巧に作られた能面のように、一切の感情が抜け落ちていた。喜びも、怒りも、悲しみも、そこにはない。ただ、虚無が広がっているだけだった。
だが、その目は、笑っていなかった。その奥には、絶望という名の深淵が口を開けているのが、はっきりと見えた。
そして、彼の薄い唇が、わずかに開かれ、まるで墓の底から直接響いてくるかのような、静かで、枯れた声が、漏れた。
「アルベイン。……儂はな、今……三途の川の向こうで、亡き祖母が手招きしているのが見えるよ……」
***
その後の結末は、もはや語るまでもないだろう。
俺は、マグナス教授から、雷を通り越し、もはや人生の無常を説く僧侶のような、静かで長い、そして心に刺さる説教を、日がとっぷりと暮れるまでの一時間ほど、みっちりと、正座のまま受けることになった。
そして、当然の帰結として、半壊、いや、全壊した訓練場の壁と、消滅した備品倉庫の修復作業を、たった一人で完遂するよう命じられた。
だが、驚くべきことに、今回は、俺一人ではなかった。
「シュバルツ! 貴様は、不謹慎にも、学友の重大な失敗を腹を抱えて笑い飛ばし、反省を促すどころか煽り立てたな! その態度は共犯に等しい! 連帯責任だ!」
「ヘーゼンバーグ! 貴様は、惨状を前にして救助や被害の確認よりも、己の知的好奇心を優先し、現場を荒らし回ったな! その人間性、矯正が必要だ! 同罪だ!」
という、常識的に考えれば理不尽だが、教育的には一理ある(かもしれない)理由で、アンナとレオも、この絶望的な修復作業に巻き込まれることになったのだ。
「なっ、なんで私まで! ただ笑ってただけじゃない!」
「解せぬ! 僕は、純粋な学術的探求心に基づき……!」
必死に抗議する二人だったが、虚無の瞳をしたマグナス教授の前では、その言葉はあまりにも無力だった。
こうして、俺たち三人は、夕闇が迫り、空気がさらに凍てつくような冷たさを増す中、途方に暮れるほどの瓦礫の山を前に、ただただ立ち尽くすことになったのだった。
「はあぁ…。で、どうすんのよ、これ。日が暮れちゃうわよ」
アンナが、心底うんざりしたように、足元の巨大な石の塊を蹴飛ばす。ごろり、と重い音がして、乾いた土煙が舞った。
俺は、もはや言葉もなく、ただただ、「すまん」と、二人に深く頭を下げることしかできなかった。この惨状を生み出したのは、紛れもなく俺なのだから。
その時だった。沈黙と絶望が支配するその場に、凛とした声が響いた。
「まあ、任せたまえ」
レオが、くい、と人差し指で眼鏡の位置を直しながら、まるで全てを予見していたかのように、胸を張った。
彼の手に広げられたスケッチブックには、先ほどまで破壊の痕跡が記録されていたはずのページに、いつの間にか、完璧な修復プランが、まるで専門の建築家が描いたかのような、精密極まりない設計図レベルの精度で、びっしりと描き込まれていた。
「僕の計算によれば、この角度で、この強度の土魔法を基盤として行使し、同時に、あちら側から、この圧力で石材を再配置、固定すれば、理論上、元の強度を上回る壁を再構築できるはずだ! 問題は、その計算式の前提となる『規格外の魔力』を、安定して提供できる存在がいるかどうかだがね!」
レオが、ちらり、と意味ありげな視線を俺に向けた。その目には、いつもの皮肉の色はなく、純粋な信頼と期待が込められているように見えた。
「アンナ! 君は、その有り余る無駄な筋力を活かして、力仕事担当だ! そこの、一番でかい瓦礫を、設計図のA地点まで運んでくれたまえ! 急げ!」
「へいへい。人使いが荒いわね、このもやしっ子インテリ! でも、まあ、じっとしてるよりはマシか!」
アンナは、口では悪態をつきながらも、その表情はどこか楽しそうだった。彼女は「よっ、こらせ!」という威勢のいい掛け声と共に、ひょい、と、自分の背丈ほどもある巨大な瓦礫を、まるで発泡スチロールでも持ち上げるかのように、軽々と肩に担いでみせた。
緻密な理論を司る、頭脳のレオ。
圧倒的な物理的な力を司る、剛腕のアンナ。
そして、常識を破壊し、無から有を創造する、規格外の魔力を司る、俺。
(……あれ? この光景、どこかで見たような?)
作業を進めながら、俺はふと既視感を覚えた。
そうだ。三歳の時、自室の壁をファイアボールもどきでぶち抜いて、両親にバレる前に必死で証拠隠滅した、あの時と同じだ。
あの時は、必死すぎて無我夢中だった。孤独な作業だった。だが、今は違う。
「ガク! 魔力の出力を調整して! 土魔法で石材同士の隙間を埋めるんじゃない、分子レベルで融合させるんだ!」
レオの叫びが飛ぶ。
「分子融合……そうか、プラモデルの接着剤が溶けてくっつくイメージか!」
「よくわかんないけど、とにかくいけーっ!」
俺の右腕から放たれる、大地を震わせ、瓦礫を自在に組み上げていく土魔法の黄金色の輝き。
「そーれ! もういっちょ!」という、アンナの力強い掛け声と、巨大な石材が組み合わさる轟音。
「違う、あと三ミリ右だ! ガク、魔力出力を1.2%下げろ!」という、レオの的確で、ミリ単位の精密な指示。
凍てつくような冬の夕暮れの訓練場に、三人の、楽しげな声と、時折上がる笑い声が、いつまでも響き渡っていた。
この、奇妙で、最高に楽しい修復作業を通じて、俺たちの間にあった見えない距離が、また、ほんの少しだけ、確かに縮まったような気がした。
我らが師、マグナス教授の胃が、ストレスによって完全に消滅し、精神の涅槃(ニルヴァーナ)に至るまで、あと、もう少し。
俺たちの、ドタバタで、予測不能な学園生活は、まだ、始まったばかりだ。
この二人の、常識の枠には到底収まりきらない、かけがえのない悪友、いや、親友と呼ぶべき存在が俺の人生に現れてから、まだ数週間しか経っていない。しかし、その短い期間に、俺、ガク・フォン・アルベインの世界は、それまでの灰色で単調だった日々とは比較にすらならないほど、目まぐるしく騒がしく、そして鮮烈な色彩に満ち溢れたものへと変貌を遂げていた。
かつての俺の世界は、まるで音のないモノクロ映画のようだった。定められた時間に起床し、決められた授業を受け、誰と深く関わることもなく寮の自室へと戻る。窓の外を流れる季節の移ろいも、他の生徒たちの楽しげな喧騒も、どこか自分とは無関係な、遠い世界の出来事のようにしか感じられなかった。内に秘めた規格外の魔力は、ただただ孤独と疎外感の源でしかなく、それをひた隠しにすることで、かろうじて平穏という名の薄氷の上を歩いているに過ぎなかった。
だが、彼らと出会ってからというもの、その薄氷は音を立てて砕け散り、俺は荒れ狂う嵐のような日常の海へと放り込まれた。しかし不思議なことに、そこに恐怖はなかった。むしろ、荒波に揉まれるたびに、凍り付いていた感情が溶け出し、生きているという実感の奔流が、全身を駆け巡るのを感じていた。レオの底なしの知的好奇心は俺の世界の扉をこじ開け、アンナの天真爛漫な行動力はその世界を縦横無尽に引っ掻き回す。俺の暴走しがちな魔力は、もはや隠すべき呪いではなく、この二人といる時だけは、あり得ない状況を打開するための、どこか頼もしい切り札のようにすら思えた。
季節は、秋の最後の名残が北風に吹き飛ばされ、冬の峻厳な気配が日増しにその輪郭を濃くしていく十二月。世界が色褪せていくこの季節に、俺の世界だけが彩りを増していくのは、なんとも皮肉なことだった。
その日の朝も、冬将軍は容赦なくその権勢を振るっていた。寮の自室の重厚な木製の窓を押し開けると、夜の間に凝結した氷の結晶がパリパリと小さな音を立てて剥がれ落ちる。途端に、研ぎ澄まされた刃物のように鋭く、そしてガラス細工のように冷たい空気が、まだ眠りの微睡みの中にいた俺の意識を容赦なく叩き起こした。肺の奥まで浸透してくるその冷気は、眠気などという生半可なものを一瞬で浄化していく。
見上げた空は、まるで溶かした鉛を流し込んだかのように、重々しく低く垂れこめていた。雲の分厚い層に覆い隠された太陽は、その存在をかろうじて主張するかのように、まるで厚手の毛布に幾重にもくるまっているかのように、ぼんやりとした弱々しい光を地上に投げかけるだけだ。
学園の庭に並ぶ木々は、とうの昔に色鮮やかな葉を一枚残らず散らし、今は黒々とした裸の枝を、まるで助けを求める無数の腕のように、寒々しい灰色の空へと必死に伸ばしている。枝の表面には薄らと白い霜が降りており、それが冬の厳しさを一層際立たせていた。遠くに見える山脈の稜線も、いつの間にか白い化粧を施され、その荘厳な姿を空との境界に静かに浮かび上がらせている。全てが静まり返り、色彩を失った世界。それが、この季節の本来の姿だった。
だが、そんな凍てつくような朝の景色とは裏腹に、俺たちが集う一年生の教室だけは、ある種の異常な熱気に満ち満ちていた。その熱源は、教室の中央に鎮座する、魔石を燃料とする鋳鉄製のストーブ――では、必ずしもない。
「うう、さむさむ……。本当に、骨の髄まで凍えそうだわ。こんな日は、暖かい暖炉の前で、ふかふかのブランケットにくるまって、湯気の立つ熱いココアでも飲んでいたいわねぇ……」
教室に入るなり、アンナが大きな体をぶるぶると震わせながら、まるで詠唱のようにその願望を口にした。彼女の首には、極太の毛糸で編まれた、燃えるような真紅のマフラーが何重にも巻かれており、その下半分に顔をうずめている。吐き出す息は真っ白な塊となって、彼女のトレードマークである鮮やかな赤い髪の揺れに合わせて、ふわりと宙を舞っては消えていく。その光景は、モノクロームの世界に突如として現れた、一点の鮮烈な色彩のようだった。
「何を言っているんだ、アンナ。君のその脳天気で単純構造な思考回路こそ、常に最高の熱効率を誇る熱量に満ち溢れているじゃないか。その有り余る無駄なエネルギーで、いっそのこと自家発電でもして、教室を暖めてみたらどうだ? 君なら可能だろう」
そんな彼女に、いつものように冷ややかな皮肉を飛ばしたのは、レオだった。彼は、教室で最も暖かい場所、すなわちストーブの真ん前という特等席を、さも当然の権利であるかのように陣取っていた。その手には、もはや彼の身体の一部と化したかのような、分厚く古めかしい装丁の魔導書が開かれている。彼は決して視線を本から上げようとはしない。その態度は、アンナの言葉など、耳にする価値もない雑音だとでも言いたげだった。
アンナの額に、ぴくりと青筋が浮かぶのが見えた。
「あんたねえ! 人がせっかく冬の情緒に浸って、感傷的な気分になってるっていうのに、それを台無しにするようなこと言うんじゃないわよ! 大体、なんであんたが一番暖かい席を独り占めしてるのよ! そこは本来、私のような、寒さに弱いか弱い乙女が座るべき場所でしょ! あんたなんて、無駄な筋肉が全然ないから、本当は一番寒さに弱いんじゃないの!」
アンナは腰に手を当て、仁王立ちになってレオを睨みつけた。その剣幕に、周囲で談笑していた他の生徒たちが、面白そうにこちらを窺っている。
「ふん、これは知的労働者に対する当然の優遇措置だ。来るべき授業に備え、常に最高のコンディションで脳を稼働させるためのな。君のような、考えるという高等な行為を放棄した単細胞生物には、到底理解できんだろうがね」
レオは、なおも本から目を離さず、鼻で笑うように言い放った。その声は、ストーブの放つ熱で揺らめく空気の中を、冷たく突き抜けてきた。
「なんですってえええええ!」
ぎゃんぎゃんと、まるで犬と猿のように吠え合う二人。それは、俺たちの教室における日常と化しており、今や冬の到来を告げる風物詩の一つとして、他の生徒たちにも半ば受け入れられていた。俺は、そんな二人のいつものやり取りを、ストーブから最も遠い、窓際の凍えるような席で、腕を組みながら眺めていた。口元に浮かぶのは、自分でも気づかないほどの、穏やかな微笑みだった。この光景が、この騒がしさが、今の俺にとっては、何物にも代えがたい宝物なのだ。
もちろん、俺の足元に置かれた、少し大きめの丈夫な荷物袋の中では、俺の使い魔である黒犬のクロが、子犬サイズに縮こまり、ふかふかの毛布にくるまって気持ちよさそうに丸くなっている。すうすうと安らかな寝息を立てて眠るその姿は、この騒音の中でも平穏そのものだ。時折、ぴくりと耳を動かしたり、寝言のように「くぅん…」と小さく鳴いたりするのは、きっと夢の中で、俺たちのこの騒がしいやり取りを聞いているからに違いない。
この数週間で、俺たちの関係は、単なるクラスメイトや友人という言葉では括れないほど、奇妙で、それでいて強固な絆で結ばれていた。
そして同時に、学園内での悪名もまた、強固なものとなっていた。
ある時は、レオの知的好奇心で立ち入り禁止の古文書館に忍び込み、防犯ベルを鳴らし。
またある時は、アンナの無茶な特訓で森の生態系を破壊しかけ。
そして俺の魔法実験が暴走して、中庭の池を一瞬で温泉に変えたこともある。
俺たちの行くところ、常にトラブルあり。
いつしか、学園内では、俺たち三人は「歩く災害(ウォーキング・ディザスター)」、あるいは、より具体的に「マグナス教授の胃痛の種」として、ある種の畏敬の念(と、大部分の憐憫の情)を持って、遠巻きに眺められる、一種の有名人となっていた。すれ違う生徒たちは、俺たちを見ると、さっと道を譲り、ひそひそと何かを囁き合う。その視線には、好奇心と、恐怖と、そしてほんの少しの羨望が混じっているような気がした。
だが、俺たち自身は、そんな周囲の評価など微塵も気にも留めず、毎日が冒険であるかのような、最高に刺激的で楽しい日々を送っていた。孤独だった頃には決して味わうことのできなかった、このかけがえのない騒がしさ。俺は、その中心にいる自分を、少しだけ誇らしくさえ思っていた。
その日、俺たちの日常に、また新たな伝説、いや、惨劇の1ページを刻むことになる事件は、午後の魔法実習の授業で、静かに、しかし確実に、その幕を開けたのだった。
***
午後の日差しは、冬特有の、力強さはないものの、どこまでも透明で澄んだ光を、学園の広大な訓練場に投げかけていた。空気は、まるで薄いガラスのように冷たく、張り詰めていて、大きく息を吸い込むと、肺が清められるような感覚さえある。
訓練場の向こうには、先日来の寒波で薄っすらと雪化粧をまとった山々が、その白い頂を、重たい鉛色の空に対して、くっきりと浮かび上がらせていた。その壮麗な冬の景色が、これからこの場所で繰り広げられるであろう、あまりにもちっぽけで、そして悲劇的な出来事との、皮肉なまでの対比をなしていた。
「えー、本日の授業は、魔法の『威力調整』についてだ」
訓練場の生徒たちの前に設けられた壇上に立ったマグナス教授は、開口一番、まるでこの世の終わりのような、深々と、そして長々と、魂の底からの叫びにも似たため息をついた。その疲労しきった、死んだ魚のような目は、他の生徒たちの上を滑り、まるで自動追尾機能でも搭載されているかのように、寸分の狂いもなく、この俺、ガク・フォン・アルベインの眉間に、ピンポイントで固定された。その目は、もはや教師が生徒に向ける温情に満ちたそれではない。戦場で、いつ爆発するとも知れぬ、危険極まりない不発弾を目の前にした、工兵のそれに限りなく近かった。
「いいか、諸君。魔法というものはな、決して力任せに振るうものではない! そして、特に、そこの君!」
ビシッ!と、小刻みに震える人差し指が、寸分の狂いもなく、再び俺を指し示した。周囲の生徒たちから、小さな笑い声が漏れるのが聞こえる。
「魔法とは、ただ、やみくもに、馬鹿みたいに、思考停止して、全力でぶっ放せばいいというものでは断じてない! それは、魔法などという高尚なものではなく、ただの、野蛮な暴力だ! 真の魔術師とは、その場の状況に応じて、その威力を、針の穴に糸を通すかのように、繊細に、緻密に、そして完璧にコントロールできる者のことを言うのだ! わかっているのか、アルベイン!」
マグナス教授の言葉は、その九割九分が、俺個人に向けられた、血を吐くような説教だった。くすくす、という笑い声が、さざ波のように周囲から広がる。顔が熱くなるのを感じた。
「さて、今日の課題は、これだ!」
教授が芝居がかった仕草で指し示したその先には、広大な訓練場のちょうど真ん中に、まるで忘れ去られたかのように、ぽつんと、一本の細い蝋燭が立てられていた。風もないのに、その先端で揺らめく小さな炎が、やけに頼りなげに見える。
「各自、今いるこの位置から、威力レベル1の『ファイアボール』を放ち、あの蝋燭の火だけを、消すこと! いいか、あくまでも『火だけ』だ! 蝋燭本体を焦がしたり、熱で溶かしたり、ましてや、その背後にある訓練場の壁を吹き飛ばしたりなど、言語道断! そのような愚行に及んだ者は、即刻、不合格とする! わかったな! アルベイン!」
最後の注意は、念押しというにはあまりにも圧が強く、完全に、俺一人に向けられた最後通牒だった。教授の額には青筋が浮かび、その目には「頼むから、何も壊さないでくれ。儂の退職金に関わる」という、悲痛な祈りの色すら宿っていた。
「ひゅー、ガク! あんた、名指しで特別マークされてるじゃない! スター選手みたいね!」
隣にいたアンナが、俺の背中をバンバンと遠慮なく叩きながら、腹を抱えんばかりに面白そうに笑う。その振動で、俺の覚悟が少し揺らぎそうになる。
「ふっ、当然の結果だな。君のこれまでの破壊の数々、その輝かしい所業を考えれば、むしろ当然の措置と言える。マグナス教授の毛根の残存率に、心から同情するよ」
レオが、いつものように腕を組み、さも当然といった顔で冷静に頷いている。その分析的な視線が、逆に俺の心を抉る。
くそ、見てろよ、二人とも。そして教授も。
今日こそ、俺は、この「歩く災害」という不名誉極まりない汚名を返上する。俺だって、やればできるんだ、というところを、この学園の全てに見せつけてやる。
(クロは……よし、大丈夫だな)
俺は足元を確認する。俺の荷物袋は、訓練場の隅、安全地帯と言えるベンチの上に置かれている。中にいるクロも、空気を読んで気配を消してくれているようだ。
生徒たちが、出席番号順に、一人ずつ課題に挑戦していく。
しかし、この一見単純そうな課題、見た目以上に、かなり高度な技術が要求されるようだった。
多くの生徒が、威力を弱めようとするあまり、魔力の凝縮に失敗し、ファイアボールが蝋燭に届く前に、しゅるしゅると音を立てて消えてしまう。逆に、少しでも力を入れすぎれば、ファイアボールは勢いを失わず、蝋燭ごと薙ぎ払い、根本から黒焦げにしてしまっていた。成功者は、まだ一人も出ていない。
「よし、ガク! あんたの番よ! さあ、新たな伝説、見せてやんなさい!」
アンナが、期待に満ちた(というより、何か面白いことが起こることを期待した)目で、俺の尻を叩く。
「健闘を祈るよ、ガク君。せめて、被害は、半径十メートル以内に抑えてくれたまえ。そうすれば、僕の分析対象としても扱いやすい」
レオが、どこまでも真顔で、非情なエールを送ってくる。
期待と、諦めが複雑に混じり合った、独特のエールをその背中に受けながら、俺は、ゆっくりと課題の開始位置に立った。
訓練場の土を、ぐっと踏みしめる。
ひゅっと、一度、深く息を吸い込んだ。冷たい空気が肺を満たし、頭が冴えわたるのを感じる。
大丈夫だ。俺は、この日のために、来る日も来る日も、血の滲むようなイメージトレーニングを重ねてきたんだ。
(いいか、俺。落ち着け。思い出すんだ。前世で、キャンプの時に使った、あのガスバーナーの火加減を。最初は、コックをほんの少しだけひねって、弱火で、コトコトと煮込む。そうだ、あの、ごくごく弱い、とろ火のイメージだ。炎の先端が、鍋の底に優しく触れるか触れないかくらいの、あの繊細な感覚…!)
(そして、体内の魔力だ。いつもみたいに、ダムの放水のように、いきなり全開にするな。水道の蛇口を、ほんの少しだけ、錆び付いた蛇口を回すように、一ミリだけ、じわり、と。そう、じわり、とだ…! 魔力の奔流を、細い細い一本の糸として紡ぎ出すんだ!)
俺は、右手の指先に、自分の持つ全ての神経を、魂ごと集中させた。指先の皮膚感覚が、あり得ないほど鋭敏になっていくのがわかる。空気の流れ、温度、湿度、その全てが、指先から情報として流れ込んでくる。
「今度こそ、今度こそやるぞ…! 俺の魔力よ、今日だけは、頼むから、言うことを聞け!」
俺の魂からの悲痛な叫びに呼応するように、体内で常に荒れ狂っていた魔力の奔流が、奇跡的に、ゆっくりと、本当に、信じられないほどゆっくりと、制御された細い流れとなって、指先へと伝わっていく。
(いける! いけるぞ! これだ! この感覚だ! 今度こそ、完璧なコントロールだ!)
俺は、まだ魔法を放ってもいないのに、勝利を確信した。脳裏には、蝋燭の炎だけがふっと静かに消え、驚愕するマグナス教授と、称賛の声を上げるアンナとレオの姿が、鮮明に浮かんでいた。
そして、俺の指先から、一筋の、光が放たれた。
だが、それは、俺がイメージしていた、オレンジ色で丸い形状の、可愛らしいファイアボールではなかった。
どうやら俺の、前世の記憶に基づく「ガスバーナー」のイメージが、あまりにも具体的すぎたらしい。
シュゴオオオオオオオオオオオオッッ!!!!
その音は、もはや魔法の詠唱音ではなかった。高圧ガスが噴出するような、空間そのものが悲鳴を上げているかのような、耳障りな轟音だった。
俺の指先から迸ったのは、極限まで細く絞られ、しかし、直視すれば網膜が焼き切れそうなほどの眩い輝きを放つ、青白いレーザーのような熱線だった。
その熱線は、発射された瞬間、目の前の冷たい冬の空気を陽炎のように歪ませ、まるで空間そのものを焼き切るかのように、絶対的な軌道を描いて、一直線に、遥か先の蝋燭へと向かった。
ちりっ。
という、辺りの静寂に吸い込まれてしまうほどの、実にささやかで、控えめな音がした。
蝋燭は、火を消されるどころか、その存在そのものが、熱量によって分子レベルで分解され、一瞬にして、蒸発した。まるで、最初からそこには何も存在しなかったかのように。
だが、悲劇は、そこで終わらなかった。否、そこからが本番だった。
俺の意思とは完全に裏腹に、一度解放された体内の魔力は、なおも制御不能のまま暴走を続け、指先から奔流となって溢れ出す。青白いレーザーは、その恐るべき威力を微塵も衰えさせることなく、ただひたすらに、直進した。
蝋燭があった場所の、遥か後方。
そこに、巨大な城壁のようにそびえ立っていた、訓練場の、分厚い石造りの壁。
マグナス教授が、つい先ほど、「吹き飛ばすなど言語道断」と、涙目で釘を刺したばかりの、あの頑丈な壁。
レーザーは、その壁に、まるで何の抵抗もなかったかのように、音もなく、静かに吸い込まれるように、着弾した。
そして、次の瞬間。
一瞬の完全な静寂が、世界を支配した。
ドッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!
凄まじい、腹の底まで響き渡る轟音と共に、壁が、まるで豆腐か何かのように、内側から爆散した。衝撃波が地を走り、俺の足元を揺るがす。石の壁が、内部からの凄まじい圧力に耐えきれず、無数の破片となって四方八方へと弾け飛んだのだ。
直径にして、十メートルはあろうかという、巨大で、完璧な円形の風穴が、ぽっかりと、嘲笑うかのように口を開ける。
それだけではない。惨劇はまだ続く。
新しくできた風穴の向こう側。そこにあったはずの、様々な魔法道具を保管しておくための、頑丈な煉瓦造りの備品倉庫。
その備品倉庫もまた、壁を貫通したレーザーの衰えを知らぬ余波を受け、その頑丈な壁ごと、跡形もなく、完全に消し飛んでいた。
倉庫の中に保管されていた、訓練用の木製ゴーレムの残骸や、予備の的、様々なポーションの空き瓶、使い古された魔法の杖などが、木っ端微塵になって、爆風と共に冬の空高くへと巻き上げられる。それらの破片が、弱々しい午後の日差しを浴びてキラキラと輝きながら、美しくも無残極まりない放物線を描いて、ゆっくりと地上へと舞い落ちていった。
しーん。
世界から、全ての音が、消えた。
生徒たちの驚きの声も、教授の絶叫も、何も聞こえない。
ただ、冷たい冬の風が、ぴゅう、と、新しくできた巨大な風穴を寂しげに吹き抜けていく、その音だけが、やけに、大きく耳に響いた。
(……あ、ベンチの上のクロは……よかった、無事だ)
爆心地から遠く離れたベンチの上で、荷物袋がわずかに動いた気がしたが、被害は及んでいないようだった。心底ほっとする。
やがて、誰よりも早く我に返ったアンナが、ぷるぷると肩を震わせ始めたかと思うと、次の瞬間、腹を抱えて、その場に崩れ落ち、地面を転げまわり始めた。
「あ、あはははは! あっははははははは! だ、だめ、お腹痛い! 呼吸が! ガク! あんた、本当に、最高よ! 期待を、遥かに、遥かに超えてきたわ! 壁どころか、倉庫まで木っ端微塵に吹き飛ばすなんて! 誰が予想できたっていうのよ!」
一方、レオは、いつものように、爆発によって生まれた惨状の中心地へと、目を輝かせながら駆け寄っていた。その両の目には、もはや、狂気とも言えるほどの、純粋な探究心の光が、爛々と宿っている。
「す、素晴らしい! 見ろ、この熱による融解痕を! 壁の石が、ガラス化している! これは、ただの火属性の熱エネルギーじゃないぞ! 膨大な魔力の超高密度圧縮による、強制的な相転移反応だ! しかも、この破壊規模! ガク君、君の体内の魔力総量は、また一段と、出鱈目な領域に突入していないかい!?」
言うが早いか、彼はどこからともなくスケッチブックとペンを取り出し、一心不乱に、破壊の痕跡――風穴の断面、飛び散った破片の形状、地面に残った焦げ跡――を、驚異的な速さで記録し始めた。その姿は、学者というよりは、新種の生物を発見したマッドサイエンティストそのものだった。
爆笑し、涙を流すアンナ。
興奮し、分析に没頭するレオ。
そして、その二人が織りなすカオスの中心で、一人、指先からまだ細く立ち上る青白い煙を眺めながら、呆然と立ち尽くす、俺。
その、俺の肩を、ぽん、と、誰かが優しく、しかし有無を言わせぬ力で叩いた。
俺は、まるで油の切れたブリキの人形のように、ぎ、ぎぎ、と、軋むような音を立てながら、ゆっくりと、恐る恐る、振り返った。
そこに立っていたのは、マグナス教授だった。
その顔は、まるで精巧に作られた能面のように、一切の感情が抜け落ちていた。喜びも、怒りも、悲しみも、そこにはない。ただ、虚無が広がっているだけだった。
だが、その目は、笑っていなかった。その奥には、絶望という名の深淵が口を開けているのが、はっきりと見えた。
そして、彼の薄い唇が、わずかに開かれ、まるで墓の底から直接響いてくるかのような、静かで、枯れた声が、漏れた。
「アルベイン。……儂はな、今……三途の川の向こうで、亡き祖母が手招きしているのが見えるよ……」
***
その後の結末は、もはや語るまでもないだろう。
俺は、マグナス教授から、雷を通り越し、もはや人生の無常を説く僧侶のような、静かで長い、そして心に刺さる説教を、日がとっぷりと暮れるまでの一時間ほど、みっちりと、正座のまま受けることになった。
そして、当然の帰結として、半壊、いや、全壊した訓練場の壁と、消滅した備品倉庫の修復作業を、たった一人で完遂するよう命じられた。
だが、驚くべきことに、今回は、俺一人ではなかった。
「シュバルツ! 貴様は、不謹慎にも、学友の重大な失敗を腹を抱えて笑い飛ばし、反省を促すどころか煽り立てたな! その態度は共犯に等しい! 連帯責任だ!」
「ヘーゼンバーグ! 貴様は、惨状を前にして救助や被害の確認よりも、己の知的好奇心を優先し、現場を荒らし回ったな! その人間性、矯正が必要だ! 同罪だ!」
という、常識的に考えれば理不尽だが、教育的には一理ある(かもしれない)理由で、アンナとレオも、この絶望的な修復作業に巻き込まれることになったのだ。
「なっ、なんで私まで! ただ笑ってただけじゃない!」
「解せぬ! 僕は、純粋な学術的探求心に基づき……!」
必死に抗議する二人だったが、虚無の瞳をしたマグナス教授の前では、その言葉はあまりにも無力だった。
こうして、俺たち三人は、夕闇が迫り、空気がさらに凍てつくような冷たさを増す中、途方に暮れるほどの瓦礫の山を前に、ただただ立ち尽くすことになったのだった。
「はあぁ…。で、どうすんのよ、これ。日が暮れちゃうわよ」
アンナが、心底うんざりしたように、足元の巨大な石の塊を蹴飛ばす。ごろり、と重い音がして、乾いた土煙が舞った。
俺は、もはや言葉もなく、ただただ、「すまん」と、二人に深く頭を下げることしかできなかった。この惨状を生み出したのは、紛れもなく俺なのだから。
その時だった。沈黙と絶望が支配するその場に、凛とした声が響いた。
「まあ、任せたまえ」
レオが、くい、と人差し指で眼鏡の位置を直しながら、まるで全てを予見していたかのように、胸を張った。
彼の手に広げられたスケッチブックには、先ほどまで破壊の痕跡が記録されていたはずのページに、いつの間にか、完璧な修復プランが、まるで専門の建築家が描いたかのような、精密極まりない設計図レベルの精度で、びっしりと描き込まれていた。
「僕の計算によれば、この角度で、この強度の土魔法を基盤として行使し、同時に、あちら側から、この圧力で石材を再配置、固定すれば、理論上、元の強度を上回る壁を再構築できるはずだ! 問題は、その計算式の前提となる『規格外の魔力』を、安定して提供できる存在がいるかどうかだがね!」
レオが、ちらり、と意味ありげな視線を俺に向けた。その目には、いつもの皮肉の色はなく、純粋な信頼と期待が込められているように見えた。
「アンナ! 君は、その有り余る無駄な筋力を活かして、力仕事担当だ! そこの、一番でかい瓦礫を、設計図のA地点まで運んでくれたまえ! 急げ!」
「へいへい。人使いが荒いわね、このもやしっ子インテリ! でも、まあ、じっとしてるよりはマシか!」
アンナは、口では悪態をつきながらも、その表情はどこか楽しそうだった。彼女は「よっ、こらせ!」という威勢のいい掛け声と共に、ひょい、と、自分の背丈ほどもある巨大な瓦礫を、まるで発泡スチロールでも持ち上げるかのように、軽々と肩に担いでみせた。
緻密な理論を司る、頭脳のレオ。
圧倒的な物理的な力を司る、剛腕のアンナ。
そして、常識を破壊し、無から有を創造する、規格外の魔力を司る、俺。
(……あれ? この光景、どこかで見たような?)
作業を進めながら、俺はふと既視感を覚えた。
そうだ。三歳の時、自室の壁をファイアボールもどきでぶち抜いて、両親にバレる前に必死で証拠隠滅した、あの時と同じだ。
あの時は、必死すぎて無我夢中だった。孤独な作業だった。だが、今は違う。
「ガク! 魔力の出力を調整して! 土魔法で石材同士の隙間を埋めるんじゃない、分子レベルで融合させるんだ!」
レオの叫びが飛ぶ。
「分子融合……そうか、プラモデルの接着剤が溶けてくっつくイメージか!」
「よくわかんないけど、とにかくいけーっ!」
俺の右腕から放たれる、大地を震わせ、瓦礫を自在に組み上げていく土魔法の黄金色の輝き。
「そーれ! もういっちょ!」という、アンナの力強い掛け声と、巨大な石材が組み合わさる轟音。
「違う、あと三ミリ右だ! ガク、魔力出力を1.2%下げろ!」という、レオの的確で、ミリ単位の精密な指示。
凍てつくような冬の夕暮れの訓練場に、三人の、楽しげな声と、時折上がる笑い声が、いつまでも響き渡っていた。
この、奇妙で、最高に楽しい修復作業を通じて、俺たちの間にあった見えない距離が、また、ほんの少しだけ、確かに縮まったような気がした。
我らが師、マグナス教授の胃が、ストレスによって完全に消滅し、精神の涅槃(ニルヴァーナ)に至るまで、あと、もう少し。
俺たちの、ドタバタで、予測不能な学園生活は、まだ、始まったばかりだ。
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だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ!
捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……?
無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!
異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
農家の四男に転生したルイ。
そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。
農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。
十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。
家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。
ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる!
見切り発車。不定期更新。
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
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