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第10章:それぞれの道と新たなる旅立ち
第96話:平和という名の退屈
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あの、どうしようもなく騒々しくて、どうしようもなく愛おしい仲間たちと、涙と笑顔で別れてから。 季節は、まるで駆け足のように過ぎ去っていった。
春が、その生命力に満ちた短い祝祭を終え、 世界は、力強い夏の太陽が支配する季節へと、その姿を変えていた。
俺、ガク・フォン・アルベインは今、 アリシアの王国から、世界を救った英雄への感謝の印として与えられた、湖畔に佇む屋敷で暮らしていた。 それはもう、現実味がないほどに美しい屋敷だった。
屋敷は、広大な森の中に、ひっそりと隠れるようにして建っている。 乳白色の壁と、深い青色の屋根瓦が、周囲の木々の緑と、空の青に、見事に溶け込んでいた。
屋敷の目の前には、巨大な湖が、どこまでも、どこまでも、広がっている。 その湖は、「乙女の涙」と呼ばれ、 その名の通り、悲しいほどに青く、そして、澄み渡っていた。
朝、目が覚めると、まず耳に飛び込んでくるのは、森の木々の間を吹き抜ける、涼やかな風の音。 そして、名も知らぬ様々な鳥たちの、楽しげな、さえずりのコーラスだ。
窓を開ければ、ひやりとした、しかし、どこまでも清浄な空気が、肺の隅々までを満たしてくれる。
その空気には、湖の水の匂い、湿った土の匂い。 そして、庭師が完璧に手入れをした、庭園に咲き誇る色とりどりの花々―― 朝露に濡れた真紅の薔薇の、濃厚で甘い香りや、純白の百合の、清楚で気高い香りが、絶妙なバランスで、混じり合っていた。
昼になれば、夏の太陽が、その有り余るほどの黄金色の光を、湖面に惜しげもなく降り注ぐ。
その光を浴びた湖面は、まるで、何百万ものダイヤモンドをばら撒いたかのように、 きらきら、きらきらと、目も眩むほどに、輝いていた。 その光景は、あまりにも美しすぎて、直視することすら、躊躇われるほどだ。
そして、夜。
空には、天の川が、まるで巨大な光の帯のように横たわり、 その無数の星々の、凍てつくような輝きが、静まり返った湖面に、鏡のように映り込む。
地上と、天上。 二つの星空に挟まれたこの場所は、 もはや、この世のものとは思えないほど、幻想的で、そして神聖な静寂に包まれるのだ。
食事は、王城から派遣された一流のシェフが、毎日、三食、完璧なタイミングで用意してくれる。 シーツは、毎朝ぱりぱりに糊付けされた清潔なものに交換され、 俺が脱ぎ散らかした服は、いつの間にか綺麗に洗濯され、完璧にアイロンがかけられて、クローゼットに戻っている。
金も、名誉も。 そして、何不自由ない、穏やかで、平和な毎日。
それは、まさしく、誰もが夢にまで見る、理想の生活。 前世、病室の冷たいベッドの上で、俺が喉から手が出るほど渇望したはずの、完璧な日常。
だが。
その、完璧すぎる平和は、いつしか「退屈」という名の猛毒となって、 俺の心を、内側から、静かに、しかし確実に、蝕み始めていた。
◇
朝、目が覚める。
小鳥のさえずりが、耳に心地よい。 だが、そのさえずりは、いつしかただの、意味のない音の羅列にしか聞こえなくなっていた。
窓を開け、新鮮な空気を吸い込む。 花の香りが、鼻腔をくすぐる。 だが、その香りも、もはや俺の心を動かすことはない。 ただ、鼻の粘膜を刺激するだけの、化学信号に過ぎなかった。
専属のメイドが、にこやかに挨拶をしてくれる。
「おはようございます、ガク様。本日は、素晴らしいお天気でございますね」
「ああ、おはよう」
俺は、無表情でそう返す。
ダイニングテーブルには、完璧な朝食が並べられている。 焼きたての、小麦の香りがするパン。 新鮮なオレンジを今絞ったばかりの、フレッシュジュース。 地鶏の卵を使った、黄金色の、ふわふわのオムレツ。
美味い。 美味いはずなのだ。
だが、味が、しない。
まるで砂を噛んでいるかのように味気なく、 ただ、栄養を摂取するための「作業」として、それを口に運び、咀嚼し、飲み下すだけ。
食事が終わると、俺は特にやることもなく、屋敷の外へと散歩に出る。 湖畔の小道を、ゆっくりと歩く。
すれ違う村人たちは皆、俺の顔を見ると、はっとしたように足を止め、そして深々と頭を下げた。
「英雄様! いつも、ありがとうございます!」 「あなた様のおかげで、私たちは平和に暮らせます!」
尊敬と、感謝に満ちた、その眼差し。 俺はそれに、曖昧に笑みを返し、軽く手を上げて応えるだけ。
そのやり取りも、もはや完全に形骸化していた。
彼らの感謝の言葉は、俺の心には届かない。 まるで分厚いガラスの壁に隔てられているかのように、その言葉は、俺の表面を滑り落ちていくだけだ。
(何、やってんだ、俺は)
俺は湖のほとりに腰を下ろし、ぼんやりと水面を眺めながら、自問自答する。
脳裏に蘇ってくるのは、あの、騒々しくて、やかましくて、 そして、どうしようもなく楽しかった、旅の日々だった。
『腹が減ったぞおおおっ! 今日の晩飯は、猪の丸焼きがいいぞ!』 ハガンの、脳天気な声が聞こえる気がした。
『だから! 野営の時は、まず火の番と見張りを決めるのが基本でしょ! あんたみたいに、いきなり祈りの時間から始めるお姫様がいるか!』 サラとセリアの、いつもの口論が聞こえる気がした。
『ふぉっふぉっふぉ、若いのう。まあ、それもまた、一興じゃわい』 ドルセンの、暢気な笑い声が。
『全く、お気楽なお姫様たちですこと。非生産的、極まりないですわ』 ソフィアの、冷たい、しかしどこか楽しそうな声が。
笑い声。 怒鳴り声。 泣き声。
命がけの戦いの、緊張感。 強大な敵を打ち破った時の、あの、魂が震えるほどの達成感。
そして何よりも、あの、どうしようもない仲間たちと共に過ごした、かけがえのない時間。
その全てが、今となっては遠い、遠い昔の、夢物語のようだった。
まるで誰か別の人間の人生を、映画で見ているかのように、 どこか、他人事のようにしか感じられないのだ。
「生きたい」
前世の俺は、確かにそう願った。 健康な体を手に入れて、この世界を自分の足で歩き回り、自分の目で見て、自分の肌で感じて、生きていきたい、と。
仲間と出会い、世界を救うために、無我夢中で駆け抜けたあの日々。 あの時、俺は確かに、「生いていた」。
だが、今はどうだ? 俺は、ただ「生かされている」だけではないのか?
安全で、快適で、何の変化もない、この完璧な鳥かごの中で。 ただ、ひたすらに時間が過ぎ去っていくのを、待っているだけ。
それは、まるで前世のあの病室の、冷たいベッドの上で死を待っていたあの頃と、 本質的には、何も変わらないのではないか?
そんな思考の迷宮に迷い込み、俺は、ただ時間だけを浪費していく。
◇
夜になれば、暖炉の前に置かれたふかふかの安楽椅子に深く体を沈め、 読んだこともない難しい革張りの本を、意味もなく開く。
ぱち、ぱち、と、暖炉の薪がはぜる音だけが、静寂の中に響き渡る。 その単調なリズムが心地よくて、俺はいつしか、うとうとと眠りに落ちていく。
夢を見る。 仲間たちと、冒険をしていた頃の夢を。
そして目が覚めた時、俺を包んでいるのは、 いつも深い、深い、どうしようもない孤独感と、虚無感だけだった。
「きゅううん」
俺の足元で丸くなっていた、相棒のクロが心配そうに俺の顔を見上げ、 その鼻先を、俺の冷たい手に、すり、と擦り付けてきた。
その温かい毛皮の感触だけが、 今の俺が唯一感じることのできる、確かな「生命」の温かみだった。
俺は、その大きな体を黙って撫でてやる。 クロの、その賢い黄金色の瞳は、全てをお見通しのようだった。
主人が、今、ゆっくりと、しかし確実に、 心が死んでいっているということを。
俺は立ち上がり、屋敷の大きな窓のそばに立った。
窓の外には、先ほどと何も変わらない、完璧で、美しすぎる夏の夜の景色が広がっている。 星々が輝き、月が湖面を照らし、風が木々の葉を優しく揺らしている。
あまりにも、平和で、 あまりにも、静かで、 そして、あまりにも退屈な世界。
俺は、ガラスに映る自分の顔を見た。
そこにいたのは、覇気のない、どこか遠くを見つめるような虚ろな目をした、一人の少年だった。 その瞳には、かつて仲間たちと冒険をしていた頃に宿っていたはずの、 あの悪戯っ子のような、力強い輝きは、ひとかけらも残ってはいなかった。
まるで、死んだ魚の目のようだった。
俺は、その自分の抜け殻のような顔から目をそらすように、深く、深く、ため息をついた。 その白い息が、夜の冷たいガラスをほんの少しだけ曇らせて、 そして、すぐに消えていった。
まるで、今の俺の命そのもののように。
このままでは、ダメだ。 何かが、おかしい。 何かが、足りない。
俺が本当に求めていたものは、こんなものではなかったはずだ。
だが、それが何なのかが分からない。 どうすれば、この心の渇きを癒せるのかが分からない。
俺は、ただ答えの出ない問いを胸に抱きながら、 終わりのない平和という名の地獄の中で、立ち尽くすことしかできなかった。
物語は、終わった。 英雄は、世界を救った。
そしてその英雄は、今、「退屈」という名の病によって、静かに死のうとしていた。
そんな俺の、緩やかな自殺のような日々に、嵐をもたらす招かれざる客が現れるのは、 もう少しだけ、先の話である。
春が、その生命力に満ちた短い祝祭を終え、 世界は、力強い夏の太陽が支配する季節へと、その姿を変えていた。
俺、ガク・フォン・アルベインは今、 アリシアの王国から、世界を救った英雄への感謝の印として与えられた、湖畔に佇む屋敷で暮らしていた。 それはもう、現実味がないほどに美しい屋敷だった。
屋敷は、広大な森の中に、ひっそりと隠れるようにして建っている。 乳白色の壁と、深い青色の屋根瓦が、周囲の木々の緑と、空の青に、見事に溶け込んでいた。
屋敷の目の前には、巨大な湖が、どこまでも、どこまでも、広がっている。 その湖は、「乙女の涙」と呼ばれ、 その名の通り、悲しいほどに青く、そして、澄み渡っていた。
朝、目が覚めると、まず耳に飛び込んでくるのは、森の木々の間を吹き抜ける、涼やかな風の音。 そして、名も知らぬ様々な鳥たちの、楽しげな、さえずりのコーラスだ。
窓を開ければ、ひやりとした、しかし、どこまでも清浄な空気が、肺の隅々までを満たしてくれる。
その空気には、湖の水の匂い、湿った土の匂い。 そして、庭師が完璧に手入れをした、庭園に咲き誇る色とりどりの花々―― 朝露に濡れた真紅の薔薇の、濃厚で甘い香りや、純白の百合の、清楚で気高い香りが、絶妙なバランスで、混じり合っていた。
昼になれば、夏の太陽が、その有り余るほどの黄金色の光を、湖面に惜しげもなく降り注ぐ。
その光を浴びた湖面は、まるで、何百万ものダイヤモンドをばら撒いたかのように、 きらきら、きらきらと、目も眩むほどに、輝いていた。 その光景は、あまりにも美しすぎて、直視することすら、躊躇われるほどだ。
そして、夜。
空には、天の川が、まるで巨大な光の帯のように横たわり、 その無数の星々の、凍てつくような輝きが、静まり返った湖面に、鏡のように映り込む。
地上と、天上。 二つの星空に挟まれたこの場所は、 もはや、この世のものとは思えないほど、幻想的で、そして神聖な静寂に包まれるのだ。
食事は、王城から派遣された一流のシェフが、毎日、三食、完璧なタイミングで用意してくれる。 シーツは、毎朝ぱりぱりに糊付けされた清潔なものに交換され、 俺が脱ぎ散らかした服は、いつの間にか綺麗に洗濯され、完璧にアイロンがかけられて、クローゼットに戻っている。
金も、名誉も。 そして、何不自由ない、穏やかで、平和な毎日。
それは、まさしく、誰もが夢にまで見る、理想の生活。 前世、病室の冷たいベッドの上で、俺が喉から手が出るほど渇望したはずの、完璧な日常。
だが。
その、完璧すぎる平和は、いつしか「退屈」という名の猛毒となって、 俺の心を、内側から、静かに、しかし確実に、蝕み始めていた。
◇
朝、目が覚める。
小鳥のさえずりが、耳に心地よい。 だが、そのさえずりは、いつしかただの、意味のない音の羅列にしか聞こえなくなっていた。
窓を開け、新鮮な空気を吸い込む。 花の香りが、鼻腔をくすぐる。 だが、その香りも、もはや俺の心を動かすことはない。 ただ、鼻の粘膜を刺激するだけの、化学信号に過ぎなかった。
専属のメイドが、にこやかに挨拶をしてくれる。
「おはようございます、ガク様。本日は、素晴らしいお天気でございますね」
「ああ、おはよう」
俺は、無表情でそう返す。
ダイニングテーブルには、完璧な朝食が並べられている。 焼きたての、小麦の香りがするパン。 新鮮なオレンジを今絞ったばかりの、フレッシュジュース。 地鶏の卵を使った、黄金色の、ふわふわのオムレツ。
美味い。 美味いはずなのだ。
だが、味が、しない。
まるで砂を噛んでいるかのように味気なく、 ただ、栄養を摂取するための「作業」として、それを口に運び、咀嚼し、飲み下すだけ。
食事が終わると、俺は特にやることもなく、屋敷の外へと散歩に出る。 湖畔の小道を、ゆっくりと歩く。
すれ違う村人たちは皆、俺の顔を見ると、はっとしたように足を止め、そして深々と頭を下げた。
「英雄様! いつも、ありがとうございます!」 「あなた様のおかげで、私たちは平和に暮らせます!」
尊敬と、感謝に満ちた、その眼差し。 俺はそれに、曖昧に笑みを返し、軽く手を上げて応えるだけ。
そのやり取りも、もはや完全に形骸化していた。
彼らの感謝の言葉は、俺の心には届かない。 まるで分厚いガラスの壁に隔てられているかのように、その言葉は、俺の表面を滑り落ちていくだけだ。
(何、やってんだ、俺は)
俺は湖のほとりに腰を下ろし、ぼんやりと水面を眺めながら、自問自答する。
脳裏に蘇ってくるのは、あの、騒々しくて、やかましくて、 そして、どうしようもなく楽しかった、旅の日々だった。
『腹が減ったぞおおおっ! 今日の晩飯は、猪の丸焼きがいいぞ!』 ハガンの、脳天気な声が聞こえる気がした。
『だから! 野営の時は、まず火の番と見張りを決めるのが基本でしょ! あんたみたいに、いきなり祈りの時間から始めるお姫様がいるか!』 サラとセリアの、いつもの口論が聞こえる気がした。
『ふぉっふぉっふぉ、若いのう。まあ、それもまた、一興じゃわい』 ドルセンの、暢気な笑い声が。
『全く、お気楽なお姫様たちですこと。非生産的、極まりないですわ』 ソフィアの、冷たい、しかしどこか楽しそうな声が。
笑い声。 怒鳴り声。 泣き声。
命がけの戦いの、緊張感。 強大な敵を打ち破った時の、あの、魂が震えるほどの達成感。
そして何よりも、あの、どうしようもない仲間たちと共に過ごした、かけがえのない時間。
その全てが、今となっては遠い、遠い昔の、夢物語のようだった。
まるで誰か別の人間の人生を、映画で見ているかのように、 どこか、他人事のようにしか感じられないのだ。
「生きたい」
前世の俺は、確かにそう願った。 健康な体を手に入れて、この世界を自分の足で歩き回り、自分の目で見て、自分の肌で感じて、生きていきたい、と。
仲間と出会い、世界を救うために、無我夢中で駆け抜けたあの日々。 あの時、俺は確かに、「生いていた」。
だが、今はどうだ? 俺は、ただ「生かされている」だけではないのか?
安全で、快適で、何の変化もない、この完璧な鳥かごの中で。 ただ、ひたすらに時間が過ぎ去っていくのを、待っているだけ。
それは、まるで前世のあの病室の、冷たいベッドの上で死を待っていたあの頃と、 本質的には、何も変わらないのではないか?
そんな思考の迷宮に迷い込み、俺は、ただ時間だけを浪費していく。
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夜になれば、暖炉の前に置かれたふかふかの安楽椅子に深く体を沈め、 読んだこともない難しい革張りの本を、意味もなく開く。
ぱち、ぱち、と、暖炉の薪がはぜる音だけが、静寂の中に響き渡る。 その単調なリズムが心地よくて、俺はいつしか、うとうとと眠りに落ちていく。
夢を見る。 仲間たちと、冒険をしていた頃の夢を。
そして目が覚めた時、俺を包んでいるのは、 いつも深い、深い、どうしようもない孤独感と、虚無感だけだった。
「きゅううん」
俺の足元で丸くなっていた、相棒のクロが心配そうに俺の顔を見上げ、 その鼻先を、俺の冷たい手に、すり、と擦り付けてきた。
その温かい毛皮の感触だけが、 今の俺が唯一感じることのできる、確かな「生命」の温かみだった。
俺は、その大きな体を黙って撫でてやる。 クロの、その賢い黄金色の瞳は、全てをお見通しのようだった。
主人が、今、ゆっくりと、しかし確実に、 心が死んでいっているということを。
俺は立ち上がり、屋敷の大きな窓のそばに立った。
窓の外には、先ほどと何も変わらない、完璧で、美しすぎる夏の夜の景色が広がっている。 星々が輝き、月が湖面を照らし、風が木々の葉を優しく揺らしている。
あまりにも、平和で、 あまりにも、静かで、 そして、あまりにも退屈な世界。
俺は、ガラスに映る自分の顔を見た。
そこにいたのは、覇気のない、どこか遠くを見つめるような虚ろな目をした、一人の少年だった。 その瞳には、かつて仲間たちと冒険をしていた頃に宿っていたはずの、 あの悪戯っ子のような、力強い輝きは、ひとかけらも残ってはいなかった。
まるで、死んだ魚の目のようだった。
俺は、その自分の抜け殻のような顔から目をそらすように、深く、深く、ため息をついた。 その白い息が、夜の冷たいガラスをほんの少しだけ曇らせて、 そして、すぐに消えていった。
まるで、今の俺の命そのもののように。
このままでは、ダメだ。 何かが、おかしい。 何かが、足りない。
俺が本当に求めていたものは、こんなものではなかったはずだ。
だが、それが何なのかが分からない。 どうすれば、この心の渇きを癒せるのかが分からない。
俺は、ただ答えの出ない問いを胸に抱きながら、 終わりのない平和という名の地獄の中で、立ち尽くすことしかできなかった。
物語は、終わった。 英雄は、世界を救った。
そしてその英雄は、今、「退屈」という名の病によって、静かに死のうとしていた。
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https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
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