チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました

Gaku

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シーズン2 退屈な観測者と、論理を砕くバグ

第十五話:不完全な世界の幕開け

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レイの背後に浮かぶ、巨大な計算機を思わせる魔法陣。そこから放たれるのは、もはや魔法という概念すら超越した、純粋な「消去プログラム」の波動だった。

 だが、その表情には、先ほどまでの神のような余裕は微塵もなかった。単眼レンズが激しく明滅し、彼は自らの内で暴れ回る「理解不能な感情」を、物理的な破壊によって無理やり振り払おうとしているようだった。

「ええい、消えろ……消えてくれ! 僕の思考を乱すな!」

 触れるものすべてをデジタルな塵へと分解し、世界の理から抹消する。その圧倒的な力の前に、とっさに掲げた俺の剣は脆くも砕け散り、俺はその場に膝をついた。

「終わりだ、ユウキ。君というエラーが存在する限り、僕の計算は収束しない。君は、この世界の美しさを損なうノイズだ。今すぐ削除しなければならない!」

 レイが焦燥に駆られたように腕を振り上げ、とどめの一撃を放とうとした、その時だった。  背後から、震える、けれど決して折れることのない、透明な声が響いた。

「いいえ……終わらせません。レイ、貴方のその歪んだ『正解』を、私は認めない」

 ソフィアだった。  彼女は、第十話で力を奪われ、立っていることすらままならないはずのその体で、一歩、また一歩と前へ踏み出してきた。その顔は青白く、呼吸は浅い。だが、その瞳だけは、神としての威厳ではなく、一人の女性としての、烈火のごとき意思を宿していた。

「ソフィアさん! だめだ、今の体で力を使ったら……!」 「いいのです、ユウキ。私は、貴方に救われた。だから今度は、私が貴方を、この世界を救う番です」

 彼女の体から、黄金色のオーラが溢れ出し始める。  それは、かつてのような無尽蔵な神の力ではない。魂の奥底に残された『神格の核』の、本当に最後の欠片を、強制的に引き剥がし、命そのものを燃料として燃やしている、儚くも熾烈な輝きだった。

「……っ、そんな!? 存在の根源を削るつもりか、ソフィア!」

 レイの顔に、明確な動揺の色が浮かぶ。  論理的にあり得ない。神が自らの核を破壊すれば、転生すら叶わぬ完全な消滅を意味する。自己保存を最優先とするレイの計算式にとって、それは「あり得ない選択」であり、彼の思考ノイズをさらに加速させた。

「ユウキ……私の最後のエラーを、受け取ってください」

 ソフィアが俺の背中にそっと手を添える。その瞬間、俺の全身を、爆発的な熱量が駆け抜けた。  最弱のFランクという「器」に、神の命そのものが注ぎ込まれる。ステータス画面が狂ったように点滅し、エラーコードを吐き出し続け、ついには「測定不能(ERROR)」の文字が赤く染まった。

「これが……俺たちの、愛の力だあああああ!」

 俺は、折れた剣の柄を握り締めた。そこには、ソフィアの黄金の光が凝縮され、物理法則を無視した巨大な光の刃が形成されていた。

 レイが放つ、漆黒の消去波動。  俺が振るう、黄金のバグの刃。

 二つの力が衝突した瞬間、創生の塔が悲鳴を上げた。  計算された完璧な世界と、計算不可能な想いの激突。本来ならば、出力差でレイが勝るはずだった。彼は反射的に、第十四話で見せたあの「完全防御プログラム」を展開しようとした。

 だが――。

『――エラー。感情ノイズにより、論理回路応答せず』

 レイの動きが、一瞬だけ、止まった。  彼の脳裏に、先ほどの俺の言葉が――「誰かにすごいねって言ってほしかっただけなんじゃないか」という、あの共感の言葉が、ウイルスのようにへばりつき、処理速度を低下させていたのだ。

「なっ……バカな! 防壁の展開が、コンマ数秒遅れている……だと!?」

 その、神にとっては永遠にも等しい、致命的な遅延(ラグ)。  俺たちが作り出した、たった一瞬の奇跡の隙。

「計算じゃ測れないから! 俺たちは生きてるんだよおおおおっ!」

 黄金の刃が、展開の遅れた防御壁ごと漆黒の波動を真っ二つに裂き、レイの胸へと深く突き刺さった。  その瞬間、塔を満たしていた不気味なグリッド線が、ガラスが割れるような音と共に霧散していく。

「……ふっ、あはははは! 見事だよ、ユウキ。君たちは……最後の最後まで、僕の予測を裏切ってくれる」

 レイは、自らの体が崩壊していくのを、どこか満足げに見つめていた。彼の体はデジタルな光の粒子となり、崩落する塔の天窓から見える、本来の夜空へと溶けていく。

「そうか……これが、寂しさか。不合理だが……悪くないバグだ」

 彼が消えた後、静寂が訪れた。  俺は、崩れ落ちるソフィアの体を、すぐさま抱きかかえる。

「ソフィアさん! ソフィアさん!」 「ユウキ……よかった……空が、綺麗ですね……」

 彼女の体は、透き通るように白くなっていた。神格の核を使い果たした彼女は、もはや神ではない。それどころか、その命の灯火すら消えかけていた。  だが、俺は知っている。この物語の結末を書くのは、神でも運命でもない。  俺たち自身だ。

「死なせない。俺のステータスは『最弱』だけど、あんたの祝福(バグ)はまだ終わってないんだろ!?」

 俺は彼女の手を握り、願った。かつて彼女が俺に繋いでくれた『無限の祝福』のパスを、今度は俺が逆流させる。最弱の俺の器が壊れるほどの勢いで、俺の命、魔力、存在のすべてを、彼女の生命の維持へと注ぎ込む。

 遠くで、仲間たちの呼ぶ声が聞こえる。  崩れゆく塔、終わる世界、そして始まる新しい日常。  俺たちは、黄金の粒子に包まれながら、懐かしい仲間たちが待つ地上へと、ゆっくりと降りていった。
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