チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました

Gaku

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シーズン1 F級の祝福者と、恋する女神の英雄譚

第9話:『ギクシャクな女神と、連携不能な合同訓練』

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あの、焦げ付くような黒歴史と、温かい雪解けが交差した仲直りの夜が明けてから。 俺たちの旅路には、それまでとは全く質の異なる、新たな種類の沈黙が流れていた。

それは、互いを拒絶し合う凍てつくような無言ではない。 例えるならば、放課後の教室に二人きりで残された、付き合いたての中学生カップルのような。 ひどくむず痒くて、砂糖を吐きそうなほど甘ったるく、そして見ていて猛烈にじれったい沈黙であった。

俺は、自分の半歩先を行くソフィアの背中に、そっと視線を送った。 彼女の肩は、以前のように俺を拒むように固くはない。 だが、時折俺と目が合いそうになると、彼女はビクッと小動物のように肩を震わせ、耳の先まで真っ赤に染めて、パッと視線を逸らしてしまうのだ。

「あ……今日の天気は、午後から崩れそう、ですね……?」 「は、はい……! そうですね! ユウキの言う通り、雲行きが……その、怪しいかもしれませんっ!」

会話の中身はただの天気の話だ。 なのに、その声色はなぜか上ずり、互いに頬を染め合い、まるで愛の言葉でも交わしているかのような熱量を帯びている。

あの夜。 勢いで口走ってしまった「俺の居場所はソフィアさんの隣だ」という言葉と、彼女が見せた涙と極上の笑顔。 その記憶が、ふとした瞬間に鮮明にフラッシュバックして、俺たちの思考回路をショートさせてしまうのだ。 俺たちは、互いに「パートナー」であることを再確認しすぎた結果、強烈な「意識しすぎ」状態に陥っていた。

そんな俺たち二人の、見ているこちらが爆発四散したくなるような様子を、後方からついてくる仲間たちは、げんなりとした表情で見守っていた。

「……おいおい、見てられねえな。昨日は胃に穴が空くかと思ったが、今日は胸焼けで胃がもたれそうだぜ」 歴戦の傭兵であるジンが、酸っぱいものを食べたような顔で呟く。

「まったくだ。冷戦が終わったと思ったら、今度は熱帯雨林のような湿気と熱気だ。あいつら、周りが見えてないぞ」 サラもまた、呆れ果てたように肩をすくめた。 その後ろでは、大男のゴードンと弓使いのリックも、「やれやれ」といった様子で顔を見合わせている。

リナとセレスティアに至っては、もういてもたってもいられないといった様子で、俺とソフィアの間に物理的に割り込もうと必死だ。

「ねえねえユウキ! あたしと手ぇつなご! ね! ソフィア姉ちゃんばっかり見てないでさ!」 「師匠! 本日は湿気が多いゆえ、私の風魔法で爽やかな風をお送りしますわ! どうぞこちらへ!」

そして、今回の騒動のきっかけとなり、一時はひどく落ち込んでいたマリアも、今は俺たちの後ろを歩きながら、少し困ったような、でも嬉しそうな笑顔を浮かべていた。 「ふふ……。ユウキさんとソフィアさん、なんだかとても、可愛らしいですね……」



そんな、ピンク色の奇妙な雲が立ち込めるような旅が二日ほど続いた日の午後。 街道が開けた荒野へと差し掛かったところで、ついにサラが、パンッ! と乾いた大きな音を立てて手を叩いた。

「ええい、もう我慢ならん! 貴様ら、いい加減にしろ!」

彼女の雷のような怒声に、俺とソフィアはビクッとして飛び上がった。

「ユウキ! ソフィア! 貴様らは今、完全に二人だけの世界に入り込んでいる! 周囲への警戒がおろそかになっているぞ!」 「そ、そんなことは……!」 「ある! 大いにある! さっきから道の真ん中にある石につまずいたり、看板を見落としたり、酷い有様だ!」

サラは仁王立ちになり、全員を見渡して宣言した。 「このままでは、いざという時に連携など取れん! 貴様らの浮ついた根性を叩き直し、パーティとしての規律を取り戻すため、これより緊急合同訓練を行う!」

場所は、見晴らしのいい荒野の平原。 サラの提案は、俺たちの恥ずかしい現状を打破するには、これ以上ないほど的確だった。 体を動かせば、この変な熱気も発散できるだろう。

「訓練内容は、二チームに分かれての模擬戦だ! 互いに本気でぶつかり合うことで、頭を冷やせ!」

こうして、半ば強引にチーム分けが行われた。 サラの独断により、浮ついている俺とソフィアは、強制的に敵同士に分けられた。

【チーム・ユウキ】 リーダー:ユウキ メンバー:リナ、セレスティア、アンジェラ、マリア (計5名)

【チーム・ソフィア】 リーダー:ソフィア メンバー:ジン、サラ、ゴードン、リック (計5名)

「おいゴードン、リック! お前らもだぞ!」 サラが二人の部下に声を張り上げた。 「ここ数回、アンデッドの時も荷馬車の警備や留守番ばかりさせて悪かったな。今日は訓練だ、思う存分暴れろ!」

「へっ、よかったな二人とも。読者に存在を忘れられる前に出番が回ってきてよ」 ジンがニヤニヤしながら二人を茶化すと、ゴードンが「うるせえ!」と顔を赤くして吠えた。 「俺たちだって好きで影が薄かったわけじゃねえ! 荷物番も立派な任務なんだよ!」 「そうです……僕たちが必死に馬車を守っていたからこそ、皆さんが安心して戦えたんですよ……」 リックも遠い目をしながら同意した。彼らの鬱憤も、この訓練で晴らしてもらうしかなさそうだ。

一方、俺のチームでは、アンジェラが感涙にむせびながらハンマーを握りしめていた。 「おお……! 聖勇者様と同じチームで戦えるとは……! これぞ女神様のお導き! 私のハンマーは、全て貴方様のために!」

そしてマリアも、少し緊張した面持ちで俺の前に立った。 「わ、私も……今度こそ、筋肉を異常増殖させないように、魔力の出力調整を頑張りますから……!」

「頼む、本当に頼むぞマリア……! 俺、普通のヒールが欲しいんだ。ムキムキのマッチョになるのはもう勘弁だからな! 頼むから普通の回復魔法を使ってくれ!」

一方、敵チームとなったソフィアは、少し寂しそうな、しかしどこかやる気に満ちた瞳でこちらを見ていた。 「……手加減しませんよ、ユウキ。貴方が私以外の女性たちを率いて、どれほどやれるのか……しっかりと見せていただきます」

その言葉には、昨日のような嫉妬ではなく、純粋なライバル心と、ほんの少しの試すような響きが含まれていた。

俺はゴクリと唾を飲み込み、臨戦態勢に入ろうとして――ふと、致命的な事実に気づいて青ざめた。

「あっ、ちょ、ちょっと待ってください!」

「なんだ、今さら命乞いか?」 呆れるサラに、俺は必死で首を横に振った。

「違います! あの……よく考えたら、俺の『強さ』の源って、ソフィアさんの『祝福(=ご都合主義的な幸運)』ですよね!?」

俺の悲痛な叫びに、場が静まり返る。

「つまり、ソフィアさんが敵チームにいるってことは、今の俺には何の加護もない……ただのステータス・オールFの一般人以下に戻るってことじゃ!?」

そうだ。 つまずいた石が敵に当たるのも、適当に振った剣が急所に吸い込まれるのも、全ては女神の加護あってこそ。 その女神が敵に回った今、俺は、レベル1の村人Aよりも弱い存在なのではないか?

「ふふ、よく気づきましたね」

俺の恐れを肯定するかのように、ソフィアが優雅に、しかしどこか悪戯っぽく微笑んだ。

「その通りです。今の貴方には、私の加護は与えません。今回は訓練のため、私が意識的に『祝福』の供給を遮断しましたから。……ふふ、むしろ敵対する以上、貴方に降り注ぐ『不運』の確率を、少し上げておくのも一興かもしれませんね?」

「ひ、ひえぇぇぇ!?」

「ご安心ください、聖勇者様!」 絶望する俺の前に、アンジェラがドンと胸を叩いて立ちはだかった。

「女神様の加護がなくとも、このアンジェラ・アークライトが貴方様の盾となり剣となります! 物理で守れば問題ありませんわ!」

「頼む、本当に頼むぞアンジェラ……! 今日の俺は、ただのスペランカーより死にやすいからな!」

俺は涙目でアンジェラの背中にしがみついた。

「よし、では始めるか……と言いたいところだが」

サラが俺の全身をジロリと見て、一つ頷いた。

「ユウキ。貴様、その鎧と剣、そして盾を外せ」

「えっ……こ、これ脱ぐんですか?」

「当然だ。さっさと脱げ」

サラは真剣な眼差しで、俺の背負う聖剣と、左腕の盾を指差した。

「先日の鉱山での戦い……あれはひどかった。ただ剣を振り回しているだけで、かつて私が目にした、あの見事な体捌きは見る影もなかった。見ていてわかったぞ。その『神々の武具』とやらの過剰な重さと装飾が、貴様の本来の『神速の動き』を阻害しているのだ! アクアリアで石を投げた時のあのキレを取り戻すため、枷(装備)を外せ!」

「(えええええ!? 違うんです! あれは過剰なスペックで俺を守ってくれる命綱なんです! 枷じゃなくて生命維持装置なんです!)」

俺は心の中で絶叫したが、サラの目は「達人のためにハンデを取り除いてやる」という善意に輝いている。 アクアリアで丸腰の俺が英雄的活躍(まぐれ)をしてしまったせいで、彼女の中では「装備なし=リミッター解除した本気モード」という図式が出来上がってしまっているのだ。

「ジン! お前もそう思うだろう?」 「おうよ! あの兄ちゃん、素っ裸(装備なし)の時の方がヤバい動きしてたからな。俺は、本気の兄ちゃんとやりてえんだよ!」

ジンの暑苦しい笑顔による後押しで、俺の退路は断たれた。 しかし、この重厚な鎧を一人で脱ぐのは骨が折れる。どうしたものかと俺がバックルに手をかけようとした、その時だった。

「では、お預かりしますね」

涼やかな声と共に、敵チームにいるはずのソフィアが、優雅にパチン、と指を鳴らした。

シュンッ。

俺が何か言う間もなく、背負っていた聖剣も、身につけていた白銀の鎧も、左腕の盾も、全てが一瞬にして無数の光の粒子となって弾け飛んだ。 キラキラと輝くその光は、そのまま宙を舞ってソフィアの元へと集束し、何もない空間へと吸い込まれるように消えていった。

「お見事。やっぱり便利なもんだな、その収納魔法」 「ええ。重たい荷物を持たずに済むのは、旅においては何よりの利点ですから」

感心するサラに、ソフィアは涼しい顔で答える。 俺は一瞬にして、身軽すぎるただの服一丁の姿となった。 防御力、ほぼゼロ。 これで女神の加護もゼロ。 つまり、俺は今、完全に裸で猛獣の檻に放り込まれたウサギも同然だ。

「よし、いい面構えだ。さあ、思う存分やり合おうぞ!」 そう言って、サラは俺たち全員に、ずっしりとした重みのある訓練用の武器を放り投げた。 刃の潰された模擬戦用の剣や、布を巻いた木刀だ。

「安心しろ、いくら俺たちが鬼でも、拘束具(装備)を外して本気になった達人相手に、手加減する余裕はねえよ」 ジンが木刀を構え、獰猛な肉食獣のような笑みを浮かべる。

「いや、手加減してください!? むしろ全力で介護してください!?」

俺の抗議は、闘志に火がついた戦闘狂たちの耳には届かなかった。 彼らは俺を「リミッターを解除した最強の敵」として認識し、殺る気満々で構えている。

「いくぞ、お前たち! 我が作戦名は『電光石火』! 私とジンが突っ込み、ゴードンたちが援護する! ソフィアは後方で全体を見つつ、必殺の祝福(という名の不運操作)を放て!」 サラが勇ましく号令をかけた。

「右翼より展開し、敵を包囲する! 全員、私に続け!」

そう叫んで走り出したサラだったが、悲しいかな、彼女は生粋の方向音痴であった。「右翼」と言いながら、彼女は自信満々に左斜め後方へと全力疾走していった。

「どこ行ってんだ、あのバカリーダーはぁぁぁ!」 ジンが絶叫しながら、それでも先陣を切って俺たちに突っ込んでくる。

「嘘だろリーダー!? そっちは崖です! 戻ってきてください!」 弓使いのリックが、もはや射撃どころではないといった様子で、あらぬ方向へ走っていくサラを追いかけようと右往左往している。久しぶりの出番だというのに、敵を撃つ前に味方のリーダーを捕獲しなければならない哀れな弓兵の姿がそこにあった。

「師匠、お下がりください! 敵の足止めは私が!」 セレスティアが杖を構える。 「絶対零度の氷の檻よ! 『アイス・プリズン』!」

彼女が狙ったのは猛進してくるジンだった。 だが、放たれた魔法は、見事に狙いを外し、あらぬ方向へ走っていったサラの背中に直撃した。

カチコチーン!

「な……ぜ……」 荒野の真ん中で、勇ましいポーズのまま氷像と化したサラが出来上がった。

「へっ、どこ狙ってやがる! もらったぁ!」 その隙に、ジンが俺の目の前まで迫っていた。 木刀とはいえ、達人の一撃だ。当たればただでは済まない。今の俺には、その太刀筋がスローモーションではなく、回避不能な暴力の塊に見える。

「死ぬぅぅぅぅ!(骨が!)」

彼が木刀を振り上げた瞬間、俺の目の前で、アンジェラが天高く飛び上がった。

「聖勇者様には指一本触れさせませんわ! 我が最大奥義! 『聖槌・ミーティアストライク』!」

ドゴォォォォォン!!

アンジェラのハンマーが地面を叩き、凄まじい衝撃波が走った。 その衝撃で地面が大きく隆起し、突っ込んできたジンは「うおっ!?」と体勢を崩して吹き飛ばされた。 さらにその後方で、援護しようとしていたゴードンも、隆起した地面に足をすくわれて「ぐはぁっ!」と豪快に転がっていく。

よし、ナイスだアンジェラ! と思ったのも束の間。

「きゃあああああ!」

アンジェラが叩き割った地面の亀裂は、味方であるはずの後衛、マリアの足元まで伸びていた。 マリアは足場を失い、悲鳴と共に亀裂の中へ落ちていく。

「マリア!?」 「あわわ、ごめんなさぁいマリアさん! 力加減を間違えましたわ!」

俺は慌ててマリアを助けに走り、リナは吹き飛んできたジンを迎撃し、セレスティアはまたしても狙いを外して味方のアンジェラを凍らせかけ、戦場はもはや敵味方入り乱れての大混戦となった。

ソフィアは、そんなカオスな状況を後方から眺めながら、「あらあら」と困ったように、しかし楽しそうに微笑んでいるだけだった。 どうやら、彼女がわざわざ不運を操作するまでもなく、俺たちのパーティは十分に自滅的なほど混沌としているようだった。

結局、勝負はつかなかった。 全員が泥と埃まみれになり、肩で息をする中で、サラ(解凍済み)が叫んだ。 「……ぜぇ、はぁ……。け、結論! 我々の連携は、壊滅的だ!」

その通りすぎて、誰も反論できなかった。 だが、泥だらけの顔を見合わせているうちに、誰からともなく吹き出し、最後には全員で大笑いした。 変な気まずさも、浮ついた空気も、全部汗と一緒に流れ落ちていた。



その夜。 俺たちのキャンプ地には、心地よい疲労感と、穏やかな空気が流れていた。 俺が毛布にくるまってウトウトしていると、ソフィアが静かに隣に座った。

「……今日は、ひどい戦いでしたね」 「はは、全くだ。俺たち、もっと練習しないとな……。それにしても、ソフィアさんがいないと、俺って本当に無力なんだなって痛感しましたよ」

ソフィアは、星空を見上げながら、柔らかく微笑んだ。 「いいえ。貴方は、加護などなくとも、仲間を守ろうと必死に走っていましたよ。……あの子たちと必死に連携しようとしている姿、少しだけ、頼もしく見えました」

「そうですか? ……まあ、そう言ってもらえると救われます」

俺たちは顔を見合わせて、小さく笑った。 そこにはもう、昨日のような重い嫉妬も、今朝のような過剰な意識もなかった。 ただ、互いを認め合うパートナーとしての、自然な空気だけがあった。

「さあ、明日は早起きしましょうユウキ」 ソフィアが、地平線の彼方を指差した。

「地図によれば、もうすぐ海が見えてくるはずです。私たちの次の目的地、活気あふれる『港湾都市ブルーマリン』は、もう目の前ですよ」

「海、か……! アクアリアは湖の都だったけど、今度こそ本物の海なんだな! 楽しみだな!」

新たな目的地への期待を胸に、俺たちは眠りについた。 港町。そこにはきっと、新鮮な魚介類と、潮風と、そして新たなトラブルが待っているに違いない。 だが、今の俺たちなら、どんな荒波もきっと乗り越えていける。

俺はそんな確信と共に、深い眠りへと落ちていった。
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