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シーズン1 F級の祝福者と、恋する女神の英雄譚
第10話:『港町の巨大ガニと、船上の出会いの序曲』
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あの夜、静寂に包まれた野営地で交わされた不器用な仲直りを経て、俺たちのパーティには、まるで長く続いた嵐が過ぎ去った後の、どこまでも穏やかな晴天のような空気が戻っていた。それは、ただ単に以前の状態に戻ったというわけではない。一度深く傷つき、それでもなお互いを求め合ったからこそ生まれた、より強く、そして温かい絆が、そこには確かに存在していた。
ユウキとソフィアの間に漂っていた、まるで薄氷の上を歩くような、触れればすぐに砕けてしまいそうな危ういぎこちなさは、すっかりと消え去っていた。いや、この表現は正確ではないのかもしれない。消え去ったのではなく、その質が劇的に変化したのだ。以前のそれは、お互いの心に深く触れることを恐れる臆病さから生まれた、悲しいほどに冷たい距離感だった。しかし、今は違う。相手を心から大切に想い、その存在を尊重するがゆえに保たれる、心地よく、そして信頼に満ちた温かい距離感へと昇華されていた。
俺はもう、彼女の表情の一つ一つに怯え、その言葉の裏を探るような真似をすることはなかった。彼女の微笑みが本物なのか、その沈黙にどんな意味が隠されているのか、そんな不安に心を苛まれることはなくなったのだ。そして、ソフィアもまた、俺と視線を交わすことを意図的に避けたり、感情の読めない硬い表情で心を閉ざしたりすることはなくなった。彼女の瞳には、常に穏やかな光が宿り、その眼差しは真っ直ぐに俺を捉えていた。
「ソフィアさん、見てください! あそこの空に、なんだかとても変な形の雲がありますよ!」
荒野をゆく馬車の荷台で、俺が空を指さして声を上げると、隣に座る彼女は柔らかな笑みを浮かべて空を見上げた。
「ふふ、本当ですね。まるで追いかけっこをしている二匹の羊のようですわ。楽しそうに跳ね回っているように見えます」
「そうですかね? 俺には、巨大なブロッコリーが空に浮かんでいるようにしか見えませんけど」
俺のあまりにも色気のない感想に、彼女はくすりと喉を鳴らして笑った。その笑い声は、以前のどこか遠慮がちな響きではなく、鈴が転がるような軽やかさで、俺の心をくすぐった。
「……貴方の感性は、時々、とても独創的でいらっしゃいますね。ですが、そういう見方も面白いです」
そんな、他愛のない、取るに足らない会話。交わされる言葉の内容だけを見れば、以前と何ら変わらないやり取りのはずだった。しかし、その一つ一つが、まるで雨上がりの乾いた大地が暖かな陽光を吸い込むように、俺の心の奥深くまでじんわりと染み渡っていくのを感じた。彼女の声の響きも、以前の、どこか一歩引いた場所から聞こえてくるような隔たりを感じさせるものではなく、すぐ隣で、同じ景色を見て、同じ空気を吸い、同じ時を共有しているという確かな温もりと実感を伴っていた。
ソフィアは、自身の内に渦巻いていた激情の正体を、ついに自覚したのだろう。そして、それから目を逸らすのではなく、真正面から向き合うことを決めたようだった。その証拠に、ユウキに好意を寄せる他の女性たちに対して、以前のように陰からこっそりと行う小さな妨害工作は止み、代わりに、パートナーとしての権利を堂々と主張する、気高い牽制へと変わっていた。もちろん、嫉妬という名の黒い感情が、彼女の心から完全に消え去ったわけではないはずだ。今もなお、その炎は心の奥底で静かに燻っているのかもしれない。だが、彼女は、自身が司る女神としての気高いプライドと、そして、一人の女性としてのささやかな誇りをかけて、その扱いづらい感情を、暴れ馬を乗りこなす名騎手のように、気高く、そして健気に見事に乗りこなそうとしているように見えた。その必死な姿が、俺の目には、たまらなく愛おしく、そして尊いものに映った。
俺とソフィアという、パーティの太陽とも言うべき二つの存在の関係が修復されたことで、パーティ全体の雰囲気もまた、劇的に改善されていた。空に太陽が二つ揃って輝きを取り戻せば、その周りを賑やかに公転する惑星たちも、また自ずと元の明るい軌道に戻るのだ。
「よーし、てめえら! 今日の昼飯は、この最強の剣士ジン様が、とびっきりの獲物を狩ってきてやるから、腹を空かせて待ってやがれ!」
「師匠、本日の魔導講座のお時間ですわ! 今日のテーマは、日常生活に革命をもたらす『自動食器洗い魔法』について! これをマスターすれば、面倒な後片付けから解放されますのよ!」
「聖勇者様! そしてソフィア様! 食後にミントティーを嗜むことは、口内を清浄に保ち、精神を安定させる古来からの高貴な習慣なのです! さあ、このアンジェラが最高の茶葉で淹れて差し上げましょう!」
ジンが、サラが、セレスティアが、アンジェラが、相も変わらずのけたたましい騒々しさで、それぞれの有り余る個性を遠慮なく爆発させている。以前は彼らのこのやかましさが、どこか空回りしているように感じられることもあったが、今は違う。その一つ一つが、パーティという名の生命体を構成する、不可欠で愛すべき鼓動のように感じられた。かつては、この喧騒の中心で、おどおどと肩をすぼめていたマリアも、もう、怯えた小動物のように縮こまってはいない。今は、リナに楽しげに髪を結ってもらいながら、はにかんだ、しかし確かな幸福感を湛えた笑顔を見せるようになっていた。
カオスなのは相変わらずだ。収拾がつかないほどに賑やかで、一歩間違えれば空中分解しかねない危うさを孕んでいるのも、以前のままだ。しかし、今の俺たちの間には、確かな一体感と、互いを思いやる温かい絆が生まれていた。それは、幾多の困難と、一度は砕け散りかけた関係性を乗り越えたからこそ手に入れた、何物にも代えがたい宝物だった。
俺は、この、めちゃくちゃで、どうしようもなく愛おしい仲間たちと共に、この旅をどこまでも続けていきたい。世界の果てまで、いや、その先まで。心の底から、そう強く思っていた。
◇
幾日にもわたる長く厳しい荒野の旅を終えた俺たちは、ついに、大陸でも有数の規模を誇る貿易都市「ポルト・フィオーレ」に到着した。その街は、俺たちがこれまで訪れたどの都市とも、全く異なる鮮烈な個性と、むせ返るような生命力に満ち溢れていた。
巨大な白い城門をくぐり抜けた瞬間、俺たちの鼻腔を真っ先にくすぐったのは、紛れもなく海の匂いだった。塩分をたっぷりと含んだ湿った風の香りと、活気に満ちた魚市場から漂ってくる力強い磯の匂いが混じり合い、この街が海と共に生きていることを雄弁に物語っていた。空を見上げれば、常にどこかからキィー、キィー、というカモメの高い鳴き声が降り注ぎ、それが街の喧騒と相まって、独特のBGMを奏でている。
丁寧に敷き詰められた石畳の道は、海から絶えず吹き付ける湿った風によって、常にしっとりと濡れ、陽光を浴びて鈍く輝いていた。道沿いに並ぶ建物の壁には、フジツボの白い殻や、乾燥した海藻の跡がそこかしこに残り、この街が悠久の時を海と共に過ごしてきた歴史の証人となっていた。
そして、何よりも俺たちの心を奪ったのは、その圧巻の光景だった。街の向こう側、視界の及ぶ限りどこまでも広がる、吸い込まれそうなほどに青い、広大な海。そして、その穏やかな水面に、まるでおもちゃ箱をひっくり返したかのように浮かぶ、無数の船、船、船。地元の漁師が使うであろう小さな漁船から、流麗な曲線を描く竜骨が美しい高速帆船、そして、遥か沖合には、何本もの巨大なマストを天に突き立てた、まるで海に浮かぶ城のような威容を誇るガレオン船まで。世界中のありとあらゆる国々からやって来たであろう、色とりどりの旗が、心地よい潮風にはためき、港はさながら万国旗の見本市のようだった。
「うわあああああ! 海だああああああ! すごーい! 広ーい!」
生まれてこの方、山深い里でしか暮らしたことのないリナが、生まれて初めて目にする雄大な海に、理性のタガが外れた子供のようにはしゃぎ、一目散に波打ち際まで駆けていく。その背中を、マリアが心配そうに、しかし微笑ましげに見守っていた。
「壮観だな……。なるほど、世界中の富と、情報と、そして夢が、この港に集まってくるってわけか」
ジンが、腕を組んで心から感心したように呟く。彼の瞳は、いつものように自信に満ち溢れているが、その奥には未知の世界に対する純粋な好奇心がきらめいていた。
俺たちの当面の目的は、大陸の西に位置する王国へと向かうための、定期船を見つけることだった。俺たちは早速、港にいくつもある船乗りギルドの扉を叩き、情報を集め始めた。いくつかのギルドを回り、船乗りたちの荒々しいが気前のいい話に耳を傾けるうちに、俺たちはとある一つの船の存在を知ることになる。それは、もはや伝説として語られるべき、とんでもない船だった。
その船の名は、超巨大豪華客船『グラン・オーシャン号』。
聞くところによれば、それは、もはや船という概念を遥かに超越した、一つの街がそのまま海に浮かんでいるかのような、まさに規格外の代物だという。全長は実に500メートルを超え、数千人もの乗客と乗組員を収容可能。そして船内には、王侯貴族御用達の高級レストラン、一攫千金を夢見る者たちが集う華やかなカジノ、一流の劇団による公演が毎夜行われる大劇場、さらには旅の疲れを癒すための広大な大浴場まで完備されているというのだ。王国までの、数週間に及ぶ長い船旅を、この上なく快適に、そして何よりも安全に過ごすには、これ以上の選択肢は考えられなかった。
だが、そこには一つ、あまりにも巨大な問題が横たわっていた。
「……乗船料、お一人様あたり、金貨10枚……でございますか?」
船会社のチケットカウンターで、にこやかな笑顔の受付嬢から提示された金額に、俺は思わず目玉が飛び出しそうになった。金貨10枚。その価値を正確に理解するのは難しいかもしれないが、平民の家族が、一年間は贅沢三昧で暮らせるほどの、とてつもない大金だ。俺たちのような、しがないFランク(とその個性的な仲間たち)の冒険者が、ぽんと気軽に支払える額では到底なかった。
人数分――俺とソフィア、それに個性豊かな仲間たち総勢8名分を合わせれば、実に金貨80枚が必要になる。それは、ちょっとした家が一軒建つほどの金額だ。
「どうする、ユウキ……。このままじゃ、王国どころか、この港町で野宿生活だぞ……」
「最悪、餓死する未来しか見えない……」
「師匠、いざとなれば、私のこの愛用の装備を売り払えば、なんとか……でも、そうしたら、私はただの方向音痴の一般人に……」
「聖勇者様、ご安心を! このアンジェラの聖なる鎧を売れば、金貨の一枚や二枚にはなるはず! ソフィア様と皆様のためならば、この身、裸になることも厭いません!」
仲間たちが、みるみるうちに青ざめた顔で、救いを求めるように俺を見る。パーティの懐事情は、完全に火の車だった。俺は、この絶望的な状況を打破するため、パンッ! と景気づけに自分の両頬を力強く叩き、無理矢理に気合を入れた。
「諦めるのはまだ早い! こんなことで俺たちの旅を終わらせてたまるか! 俺たちには、冒険者という誇り高き職業があるじゃないか! そうだ、金がないなら、稼げばいいんだ! シンプルな話だろ!」
こうして、俺たちは一縷の望みを胸に、乗船料という名の巨大な壁を乗り越えるため、ポルト・フィオーレの冒険者ギルドへと、嵐のように駆け込むことになったのだった。
◇
ポルト・フィオーレの冒険者ギルドは、港の活気をそのまま凝縮したような、熱気と喧騒に満ちた場所だった。潮の香りと酒の匂いが混じり合い、屈強な船乗り兼冒険者たちの野太い笑い声が飛び交っている。俺たちは依頼掲示板に群がり、膨大な数の依頼書の中から、今の俺たちに達成可能で、なおかつ報酬の良いものを必死に探し出した。
そして、俺たちが受けることに決めた依頼は、「港の第7倉庫に住み着いた、巨大ガニの討伐」というものだった。依頼ランクはC。Fランク冒険者である俺たちの実力からすれば、少しばかり、いや、かなり背伸びをした依頼であることは否めない。しかし、その報酬が金貨5枚と、他とは比較にならないほど破格だったのだ。
「待ってください、ユウキ。報酬が金貨5枚では、全員分のチケット代には到底届きませんわ」
鋭い指摘をしたのはソフィアだった。確かにその通りだ。しかし、他にめぼしい高額依頼は見当たらない。
「大丈夫です、ソフィアさん! 実は俺、聞いたことがあるんです。港に現れる巨大ガニの中には、甲羅がとんでもなく高価な素材として取引される種類がいるって! 一攫千金のチャンスに賭けましょう!」
背に腹は代えられない。俺たちは、このわずかな可能性に賭けることにした。
目的の第7倉庫は、港の中でも最も奥まった、人通りの少ない薄暗い一角にひっそりと佇んでいた。長年、潮風に晒され続けた結果、赤黒く錆びついた巨大な鉄の扉が、見るからに不気味な雰囲気を醸し出しており、まるで巨大な怪物の口のように見えた。
「いいか、お前ら! 事前情報によれば、敵は鋼鉄のように硬い甲羅を持つ巨大ガニだ! 一般的な甲殻類の弱点は、比較的柔らかい腹の部分と、剥き出しの目玉のはず! 連携を密にし、一気に畳み掛けて仕留めるぞ!」
サラが、リーダーシップを発揮しようと、勇ましく作戦を説明する。しかし、その顔は既に、自分が今どちらを向いているのか、入り口と出口の方向が分からなくなっているのか、若干の不安に揺れていた。
俺たちは、ギシギシと軋む重い鉄の扉を、全員で力を合わせて押し開け、ひんやりと湿った空気が漂う薄暗い倉庫の中へと、慎重に足を踏み入れた。
倉庫の中は、想像以上に広く、そして異様な空気に満ちていた。ひんやりと肌を刺す湿った空気と、魚が腐ったような、鼻を突く強烈な臭気が充満している。高い天井にいくつも設けられた天窓から、太陽から放たれる光が差し込み、埃っぽく舞う空気の中に、幾筋もの美しい光の帯を描き出していた。幻想的な光景だが、今はそれを楽しむ余裕はなかった。
その、神々しくさえある光の帯の向こう。広大な倉庫の中央に、それは、いた。
カサカサカサ……カサカサ……。
無数の足が床を擦る、不気味で乾いた音が響く。その音と共に、巨大な影がゆっくりと動いた。
それは、軽自動車ほどの大きさを優に超える、信じがたいほどの巨大なカニだった。その甲羅は、まるで血で染め上げたかのように禍々しい赤色で、鋼鉄のような鈍い光沢を放っている。両腕に掲げられた巨大なハサミは、倉庫を支える鉄骨すらも、赤子の手をひねるようにたやすく切断してしまいそうなほどの凶悪な威圧感を放っていた。無数に生えた足が、それぞれが独立した生き物のように不気味に蠢き、二つのビー玉のように黒くつぶらな目が、招かれざる侵入者である俺たちを、明確な敵意を持ってじっと捉えていた。
「うおおおおお! 俺が先陣を切る! あの自慢の甲羅、この名刀で叩き割ってやるぜ!」
パーティ一の猪武者、ジンが雄叫びを上げて、誰よりも早く巨大なカニに斬りかかった。彼の渾身の一撃が、カニの赤い甲羅に真正面から叩きつけられる。
キィィィィン! と、鍛冶場のような甲高い金属音が倉庫内に響き渡った。しかし、巨大ガニの甲羅には、傷一つついていない。それどころか、攻撃を仕掛けたジンの刀の方が、あまりの硬さに弾かれ、ジンの手が激しく痺れた。
「なっ、硬えええええええ!? チタンか何かでできてんのか、この甲羅は!」
渾身の一撃が全く通じず、刀が甲羅の上を勢いよく滑った。その反動と予想外の硬さに体勢を崩したジンは、自分自身がコマのように、その場でクルクルと高速で回転し始めた。
「目が、目が回るぅぅぅぅ……お、俺はどこだ……ここは誰だ……」
「どいてなさい、この役立たず! 弱点は腹だって言ったでしょ! 食らいなさい! 『ソニック・スラスト』!」
サラが、愛用の長槍を構え、音速の突き技を繰り出す。だが、彼女は、まっすぐカニに向かって突進しているつもりが、その驚異的な方向音痴のせいで、なぜか目標から大きく逸れた斜め45度の方向に猛ダッシュし、そのままの勢いで倉庫の分厚い壁に、頭から綺麗に激突した。
ゴッ! という鈍い音と共に、彼女は壁に大の字の跡を残してずるずると崩れ落ちた。
「……星が、見える……キラキラしてて、きれい……」
「二人とも、一旦下がって! こういう硬い敵には、物理攻撃より魔法よ! 雷魔法なら、分厚い甲羅ごと貫けるはず! いけっ、『サンダー・ランス』!」
セレスティアが、自信満々に雷の槍を生成して放つ。しかし、彼女の魔法は、狙っていた巨大ガニではなく、その手前にあった海水が溜まった大きなたまりに、見事と言うほかない精度で着弾した。
バチバチバチバチッ!
次の瞬間、倉庫全体に強烈な電流が走り抜け、海水の中にいた哀れな小魚たちが、一斉に感電して白目を剥き、大量に水面にぷかぷかと浮き上がってきた。もちろん、ターゲットの巨大なカニには、全くのノーダメージだ。
「女神の名において、その不敬なハサミを、この私が聖なる力でへし折ります! 『ゴッド・スマッシュ』!」
敬虔なる女神の信徒、アンジェラが、巨大なウォーハンマーを天に振りかざす。その神の威光を宿した一撃は、しかし、素早く横に動いたカニのハサミではなく、こともあろうに倉庫の構造を支える巨大な木の柱にクリーンヒットしてしまった。
メリメリメリッ! バキィッ!
柱が、聞きたくない嫌な音を立てて、無惨に折れ曲がる。その結果、バランスを失った天井に山と積まれていた、大量の木箱が、まるで雪崩のように、俺たちの頭上めがけて一斉に崩れ落ちてきた。
「「「「うわあああああああ!」」」」
阿鼻叫喚の地獄絵図が広がる中、ただ一人、マリアだけが違う行動を取っていた。
「か、カニさん、かわいそうです……。皆さんにいじめられて、きっと痛いですよね……。私が、その傷を、優しく癒してあげますね……」
彼女は、おろおろしながらも、その心優しい性格ゆえに、敵である巨大ガニに対して回復魔法をかけようとした。その結果、巨大ガニの赤い甲羅はさらに神々しい輝きを増し、力がみなぎったのか、両手のハサミを天に高々と掲げ、まるで勝利を確信したかのようなポーズを決めた。
「……ユウキ、チャンス!」
その、もはや収集のつかない大混乱の最中、リナだけが、商魂たくましい瞳を爛々と輝かせていた。彼女は、セレスティアの感電魔法によって気絶した、市場に出せば金貨一枚は下らないであろう高級魚「ゴールデンサーモン」を、誰にも気づかれないように、素早く懐にしまおうとしていた。
もう、めちゃくちゃだった。戦闘と呼ぶにはあまりにもお粗末で、コントと呼ぶにはあまりにも危険な状況。俺の誇るべき仲間たちは、次々と、戦闘不能(ほぼ自滅)に陥っていく。
結局、この絶望的な戦場で、最後まで五体満足で立っていたのは、必死に盾を構える俺と、そして、この惨状を冷静に、しかしどこか呆れたように戦況を見守っていた、ソフィアだけだった。
◇
「ソフィアさん! もうダメです! どうすればいいですか!?」
俺は、巨大ガニが繰り出す猛攻を、女神様から授かった特製の盾でなんとか防ぎながら、半ば叫ぶように助けを求めた。仲間たちが全員リタイアしたいま、この状況を打開できる知恵を持つ者は、彼女しかいなかった。
その時、ソフィアの雰囲気が、がらりと変わった。
これまでの彼女は、俺の戦いを、常に一歩引いた安全な場所から、ただ静かに見守り、幸運の祝福を与えるという、あくまでサポーターに徹していた。決して、戦いの中心に自ら立とうとはしなかった。
だが、今の彼女は、違った。
彼女は、俺の隣にすっと音もなく立つと、その美しい青い瞳に、まるで百戦錬磨の軍師のような、鋭く、そして深い知性の光を宿した。
「ユウキ。慌てないでください。あのカニの動きを、よく見てください」
彼女の声は、どこまでも冷静で、しかし、聞く者の心を奮い立たせるような力強さに満ちていた。
「あの巨大なハサミを威嚇のために振り上げた時、ほんの一瞬だけ、六本ある足の、一番胴体に近い付け根の部分が、無防備に晒されます。甲羅に覆われていない、唯一の急所。そこが、この怪物を打ち破る唯一の弱点です」
彼女は、ただ曖昧に見守るのではなく、明確で具体的な指示を与えてきた。それは、俺の「パートナー」として、この苦境を共に戦い抜こうという、彼女からの強い意志表示に他ならなかった。あの夜の仲直りを経て、彼女が自らの意思で踏み出した、新たな、そして力強い一歩だった。
「ここに、この石を」
ソフィアは、足元に転がっていた、何の変哲もないただの小石を一つ拾い上げると、その石に、ふっと、優しく息を吹きかけた。すると、ただの石ころだったはずのそれが、まるで内側から命を吹き込まれたかのように、淡く、そして神々しい聖なる光を放ち始めた。
「私の力を、少しだけ込めました。聖なる祝福の力を凝縮した、破魔の弾丸です。これを、あの弱点に」
彼女は、その光り輝く石を、俺の手にそっと握らせた。ひんやりとした石の感触と、彼女の指先の温もりが、同時に俺の掌に伝わった。そして、彼女は俺の目を、真っ直ぐに見つめて、絶対の信頼を込めた微笑みを浮かべた。
「幸運を、祈ります。あなたなら、できます」
その微笑みは、どんな回復魔法よりも、どんな応援の言葉よりも、俺の心に力を与えてくれた。俺は、百人力の、いや、千人力の勇気をもらった気がした。
俺は、力強く大きく頷くと、再び巨大なカニと対峙した。盾を構え、呼吸を整え、全神経を集中させる。
カニが、俺を完全に排除しようと、威嚇のためにその巨大なハサミを、天高く振り上げる。甲羅に覆われた巨体が、わずかにのけぞる。
――今だ!
俺は、ソフィアの言葉を信じ、彼女から託された光り輝く石を、ありったけの力を込めて、全力で投げつけた。
俺の手から放たれた小石は、俺の渾身の力と、ソフィアの聖なる祝福パワーを乗せて、もはやただの石ではなく、光を纏った弾丸と化していた。それは、空気抵抗など存在しないかのように、一直線の、美しい軌道を描き、寸分の狂いもなく、巨大ガニの足の付け根に存在する、わずかな甲羅の隙間に、吸い込まれるように命中した。
パキィィィィィィィィン!!
鋼鉄のはずの甲羅が、まるで薄いガラス細工のように、あまりにもあっけなく砕け散った。聖なる光が、カニの体内を駆け巡り、その生命力を浄化していく。
「ギ……ギギ……」
巨大ガニは、信じられない、というように、砕け散った自分の体の一部分を一度見下ろすと、そのまま、巨体をゆっくりと横に傾け、ズシン、という地響きを立てて倒れ、完全に、その動きを止めた。
◇
「こ、これは……!!」
討伐の証を持ってギルドに戻った俺たちを見て、ギルドの受付嬢は椅子から転げ落ちんばかりに驚愕した。
「ま、間違いありません! この赤黒い光沢……ただの巨大なカニではありませんわ! 近海には滅多に姿を現さない幻の『紅蓮鉄ガニ』です! その甲羅は、最高の防具素材として高値で取引されているんです!」
査定の結果、カニの素材だけで、なんと金貨80枚の価値がついた。
「へっへっへ……それに旦那、これも忘れちゃ困るぜ」
リナが、懐から、セレスティアの魔法で偶然ゲットした「ゴールデンサーモン」を、どや顔で取り出した。その魚体は、黄金色に輝いている。
「ゴ、ゴールデンサーモンまで!? こちらも希少な珍味です! 金貨20枚で買い取らせていただきます!」
「「「「やったあああああああ!」」」」
ギルド内に、俺たちの歓喜の絶叫が響き渡る。依頼報酬と合わせて、手に入れた金額は金貨105枚。これなら、8人全員分の乗船料である金貨80枚を払っても、金貨25枚分ものお釣りがくる!
この劇的な勝利の一部始終を、古びた倉庫の二階の窓から、二つの人影が、非常に興味深そうに見つめていたことには、まだ、俺たちの誰も気づいていなかった。
一人は、上質な生地で作られているが、決して華美ではなく、動きやすさを重視した平民の服をまとった、快活な印象の少女。そして、もう一人は、その少女を影のように寄り添い守る、厳つい顔つきをした歴戦の護衛騎士だった。
「……ふふ、面白い人たちね。めちゃくちゃで、まとまりがなくて、見ていてハラハラするわ。でも、不思議と目が離せない。特に、あの、リーダーらしき男の子……。あれだけ個性、というか問題児だらけの仲間たちを、なんだかんだで、ちゃんとまとめてるじゃない。不思議な魅力があるわね」
少女――この国の王女、エリザベートは、まるで新しいおもちゃを見つけた子供のように、楽しそうに笑っていた。
その日の午後。
俺たちは、血と汗と涙(主に仲間たちの)と、そして奇跡的な幸運で稼いだ金で、ついに、夢にまで見た超巨大豪華客船『グラン・オーシャン号』のチケットを手に入れた。乗船場は、これから始まる優雅な船旅に胸を膨らませる王侯貴族や、大きな商談を控えた大商人たちで、ごった返していた。その、きらびやかな人々の波の中を、俺たちが少し気後れしながら進んでいた、その時だった。
向かいから歩いてきた、一人の少女と、ふと、肩が触れ合うほど近くですれ違った。
お互いに、何気なく、顔を上げる。
その少女の、あらゆるものに興味があると言わんばかりの、好奇心に満ちた輝くような瞳と、俺の目が、ほんの一瞬だけ、確かに、交錯した。彼女は小さく微笑むと、何事もなかったかのように人混みの中へと消えていった。
俺たちは、そのまま、船へと続く巨大なタラップを上り、ついに『グラン・オーシャン号』へと、その第一歩を踏み入れた。
その、あまりの壮大さと、目が眩むほどに豪華絢爛な内装に、俺たちは、またしても、言葉を失って立ち尽くす。
これから始まる、数週間の船旅。一体、どんな冒険が、そして、どんなドタバタが、俺たちを待ち受けているのだろうか。期待と不安が入り混じった、不思議な高揚感が胸を満たす。
俺の隣で、ソフィアは、心から満足そうな、そして、これまでに見たことがないほどの、晴れやかな表情をしていた。ユウキと、二人で、初めて力を合わせて何かを成し遂げた。その確かな喜びと、胸を焦がすような高揚感が、彼女の心を満たしていた。それは、彼女の中で、今まさに芽吹き、すくすくと育っている「恋心」という名の若木に注がれた、最高の養分となったに、違いなかった。
彼女は、まだ、気づいていない。
ほんの目と鼻の先にある豪華な船室に、ユウキという、新たな「面白そうなおもちゃ」を見つけて、その瞳を爛々と輝かせている、一人の、好奇心旺盛なおてんばな王女様がいることに。
船という、逃げ場のない巨大な密室で、新たな波乱の嵐が、今まさに、その産声を上げようとしていた。出航を告げる、長く、そして高らかな汽笛が、ポルト・フィオーレの港に響き渡った。
ユウキとソフィアの間に漂っていた、まるで薄氷の上を歩くような、触れればすぐに砕けてしまいそうな危ういぎこちなさは、すっかりと消え去っていた。いや、この表現は正確ではないのかもしれない。消え去ったのではなく、その質が劇的に変化したのだ。以前のそれは、お互いの心に深く触れることを恐れる臆病さから生まれた、悲しいほどに冷たい距離感だった。しかし、今は違う。相手を心から大切に想い、その存在を尊重するがゆえに保たれる、心地よく、そして信頼に満ちた温かい距離感へと昇華されていた。
俺はもう、彼女の表情の一つ一つに怯え、その言葉の裏を探るような真似をすることはなかった。彼女の微笑みが本物なのか、その沈黙にどんな意味が隠されているのか、そんな不安に心を苛まれることはなくなったのだ。そして、ソフィアもまた、俺と視線を交わすことを意図的に避けたり、感情の読めない硬い表情で心を閉ざしたりすることはなくなった。彼女の瞳には、常に穏やかな光が宿り、その眼差しは真っ直ぐに俺を捉えていた。
「ソフィアさん、見てください! あそこの空に、なんだかとても変な形の雲がありますよ!」
荒野をゆく馬車の荷台で、俺が空を指さして声を上げると、隣に座る彼女は柔らかな笑みを浮かべて空を見上げた。
「ふふ、本当ですね。まるで追いかけっこをしている二匹の羊のようですわ。楽しそうに跳ね回っているように見えます」
「そうですかね? 俺には、巨大なブロッコリーが空に浮かんでいるようにしか見えませんけど」
俺のあまりにも色気のない感想に、彼女はくすりと喉を鳴らして笑った。その笑い声は、以前のどこか遠慮がちな響きではなく、鈴が転がるような軽やかさで、俺の心をくすぐった。
「……貴方の感性は、時々、とても独創的でいらっしゃいますね。ですが、そういう見方も面白いです」
そんな、他愛のない、取るに足らない会話。交わされる言葉の内容だけを見れば、以前と何ら変わらないやり取りのはずだった。しかし、その一つ一つが、まるで雨上がりの乾いた大地が暖かな陽光を吸い込むように、俺の心の奥深くまでじんわりと染み渡っていくのを感じた。彼女の声の響きも、以前の、どこか一歩引いた場所から聞こえてくるような隔たりを感じさせるものではなく、すぐ隣で、同じ景色を見て、同じ空気を吸い、同じ時を共有しているという確かな温もりと実感を伴っていた。
ソフィアは、自身の内に渦巻いていた激情の正体を、ついに自覚したのだろう。そして、それから目を逸らすのではなく、真正面から向き合うことを決めたようだった。その証拠に、ユウキに好意を寄せる他の女性たちに対して、以前のように陰からこっそりと行う小さな妨害工作は止み、代わりに、パートナーとしての権利を堂々と主張する、気高い牽制へと変わっていた。もちろん、嫉妬という名の黒い感情が、彼女の心から完全に消え去ったわけではないはずだ。今もなお、その炎は心の奥底で静かに燻っているのかもしれない。だが、彼女は、自身が司る女神としての気高いプライドと、そして、一人の女性としてのささやかな誇りをかけて、その扱いづらい感情を、暴れ馬を乗りこなす名騎手のように、気高く、そして健気に見事に乗りこなそうとしているように見えた。その必死な姿が、俺の目には、たまらなく愛おしく、そして尊いものに映った。
俺とソフィアという、パーティの太陽とも言うべき二つの存在の関係が修復されたことで、パーティ全体の雰囲気もまた、劇的に改善されていた。空に太陽が二つ揃って輝きを取り戻せば、その周りを賑やかに公転する惑星たちも、また自ずと元の明るい軌道に戻るのだ。
「よーし、てめえら! 今日の昼飯は、この最強の剣士ジン様が、とびっきりの獲物を狩ってきてやるから、腹を空かせて待ってやがれ!」
「師匠、本日の魔導講座のお時間ですわ! 今日のテーマは、日常生活に革命をもたらす『自動食器洗い魔法』について! これをマスターすれば、面倒な後片付けから解放されますのよ!」
「聖勇者様! そしてソフィア様! 食後にミントティーを嗜むことは、口内を清浄に保ち、精神を安定させる古来からの高貴な習慣なのです! さあ、このアンジェラが最高の茶葉で淹れて差し上げましょう!」
ジンが、サラが、セレスティアが、アンジェラが、相も変わらずのけたたましい騒々しさで、それぞれの有り余る個性を遠慮なく爆発させている。以前は彼らのこのやかましさが、どこか空回りしているように感じられることもあったが、今は違う。その一つ一つが、パーティという名の生命体を構成する、不可欠で愛すべき鼓動のように感じられた。かつては、この喧騒の中心で、おどおどと肩をすぼめていたマリアも、もう、怯えた小動物のように縮こまってはいない。今は、リナに楽しげに髪を結ってもらいながら、はにかんだ、しかし確かな幸福感を湛えた笑顔を見せるようになっていた。
カオスなのは相変わらずだ。収拾がつかないほどに賑やかで、一歩間違えれば空中分解しかねない危うさを孕んでいるのも、以前のままだ。しかし、今の俺たちの間には、確かな一体感と、互いを思いやる温かい絆が生まれていた。それは、幾多の困難と、一度は砕け散りかけた関係性を乗り越えたからこそ手に入れた、何物にも代えがたい宝物だった。
俺は、この、めちゃくちゃで、どうしようもなく愛おしい仲間たちと共に、この旅をどこまでも続けていきたい。世界の果てまで、いや、その先まで。心の底から、そう強く思っていた。
◇
幾日にもわたる長く厳しい荒野の旅を終えた俺たちは、ついに、大陸でも有数の規模を誇る貿易都市「ポルト・フィオーレ」に到着した。その街は、俺たちがこれまで訪れたどの都市とも、全く異なる鮮烈な個性と、むせ返るような生命力に満ち溢れていた。
巨大な白い城門をくぐり抜けた瞬間、俺たちの鼻腔を真っ先にくすぐったのは、紛れもなく海の匂いだった。塩分をたっぷりと含んだ湿った風の香りと、活気に満ちた魚市場から漂ってくる力強い磯の匂いが混じり合い、この街が海と共に生きていることを雄弁に物語っていた。空を見上げれば、常にどこかからキィー、キィー、というカモメの高い鳴き声が降り注ぎ、それが街の喧騒と相まって、独特のBGMを奏でている。
丁寧に敷き詰められた石畳の道は、海から絶えず吹き付ける湿った風によって、常にしっとりと濡れ、陽光を浴びて鈍く輝いていた。道沿いに並ぶ建物の壁には、フジツボの白い殻や、乾燥した海藻の跡がそこかしこに残り、この街が悠久の時を海と共に過ごしてきた歴史の証人となっていた。
そして、何よりも俺たちの心を奪ったのは、その圧巻の光景だった。街の向こう側、視界の及ぶ限りどこまでも広がる、吸い込まれそうなほどに青い、広大な海。そして、その穏やかな水面に、まるでおもちゃ箱をひっくり返したかのように浮かぶ、無数の船、船、船。地元の漁師が使うであろう小さな漁船から、流麗な曲線を描く竜骨が美しい高速帆船、そして、遥か沖合には、何本もの巨大なマストを天に突き立てた、まるで海に浮かぶ城のような威容を誇るガレオン船まで。世界中のありとあらゆる国々からやって来たであろう、色とりどりの旗が、心地よい潮風にはためき、港はさながら万国旗の見本市のようだった。
「うわあああああ! 海だああああああ! すごーい! 広ーい!」
生まれてこの方、山深い里でしか暮らしたことのないリナが、生まれて初めて目にする雄大な海に、理性のタガが外れた子供のようにはしゃぎ、一目散に波打ち際まで駆けていく。その背中を、マリアが心配そうに、しかし微笑ましげに見守っていた。
「壮観だな……。なるほど、世界中の富と、情報と、そして夢が、この港に集まってくるってわけか」
ジンが、腕を組んで心から感心したように呟く。彼の瞳は、いつものように自信に満ち溢れているが、その奥には未知の世界に対する純粋な好奇心がきらめいていた。
俺たちの当面の目的は、大陸の西に位置する王国へと向かうための、定期船を見つけることだった。俺たちは早速、港にいくつもある船乗りギルドの扉を叩き、情報を集め始めた。いくつかのギルドを回り、船乗りたちの荒々しいが気前のいい話に耳を傾けるうちに、俺たちはとある一つの船の存在を知ることになる。それは、もはや伝説として語られるべき、とんでもない船だった。
その船の名は、超巨大豪華客船『グラン・オーシャン号』。
聞くところによれば、それは、もはや船という概念を遥かに超越した、一つの街がそのまま海に浮かんでいるかのような、まさに規格外の代物だという。全長は実に500メートルを超え、数千人もの乗客と乗組員を収容可能。そして船内には、王侯貴族御用達の高級レストラン、一攫千金を夢見る者たちが集う華やかなカジノ、一流の劇団による公演が毎夜行われる大劇場、さらには旅の疲れを癒すための広大な大浴場まで完備されているというのだ。王国までの、数週間に及ぶ長い船旅を、この上なく快適に、そして何よりも安全に過ごすには、これ以上の選択肢は考えられなかった。
だが、そこには一つ、あまりにも巨大な問題が横たわっていた。
「……乗船料、お一人様あたり、金貨10枚……でございますか?」
船会社のチケットカウンターで、にこやかな笑顔の受付嬢から提示された金額に、俺は思わず目玉が飛び出しそうになった。金貨10枚。その価値を正確に理解するのは難しいかもしれないが、平民の家族が、一年間は贅沢三昧で暮らせるほどの、とてつもない大金だ。俺たちのような、しがないFランク(とその個性的な仲間たち)の冒険者が、ぽんと気軽に支払える額では到底なかった。
人数分――俺とソフィア、それに個性豊かな仲間たち総勢8名分を合わせれば、実に金貨80枚が必要になる。それは、ちょっとした家が一軒建つほどの金額だ。
「どうする、ユウキ……。このままじゃ、王国どころか、この港町で野宿生活だぞ……」
「最悪、餓死する未来しか見えない……」
「師匠、いざとなれば、私のこの愛用の装備を売り払えば、なんとか……でも、そうしたら、私はただの方向音痴の一般人に……」
「聖勇者様、ご安心を! このアンジェラの聖なる鎧を売れば、金貨の一枚や二枚にはなるはず! ソフィア様と皆様のためならば、この身、裸になることも厭いません!」
仲間たちが、みるみるうちに青ざめた顔で、救いを求めるように俺を見る。パーティの懐事情は、完全に火の車だった。俺は、この絶望的な状況を打破するため、パンッ! と景気づけに自分の両頬を力強く叩き、無理矢理に気合を入れた。
「諦めるのはまだ早い! こんなことで俺たちの旅を終わらせてたまるか! 俺たちには、冒険者という誇り高き職業があるじゃないか! そうだ、金がないなら、稼げばいいんだ! シンプルな話だろ!」
こうして、俺たちは一縷の望みを胸に、乗船料という名の巨大な壁を乗り越えるため、ポルト・フィオーレの冒険者ギルドへと、嵐のように駆け込むことになったのだった。
◇
ポルト・フィオーレの冒険者ギルドは、港の活気をそのまま凝縮したような、熱気と喧騒に満ちた場所だった。潮の香りと酒の匂いが混じり合い、屈強な船乗り兼冒険者たちの野太い笑い声が飛び交っている。俺たちは依頼掲示板に群がり、膨大な数の依頼書の中から、今の俺たちに達成可能で、なおかつ報酬の良いものを必死に探し出した。
そして、俺たちが受けることに決めた依頼は、「港の第7倉庫に住み着いた、巨大ガニの討伐」というものだった。依頼ランクはC。Fランク冒険者である俺たちの実力からすれば、少しばかり、いや、かなり背伸びをした依頼であることは否めない。しかし、その報酬が金貨5枚と、他とは比較にならないほど破格だったのだ。
「待ってください、ユウキ。報酬が金貨5枚では、全員分のチケット代には到底届きませんわ」
鋭い指摘をしたのはソフィアだった。確かにその通りだ。しかし、他にめぼしい高額依頼は見当たらない。
「大丈夫です、ソフィアさん! 実は俺、聞いたことがあるんです。港に現れる巨大ガニの中には、甲羅がとんでもなく高価な素材として取引される種類がいるって! 一攫千金のチャンスに賭けましょう!」
背に腹は代えられない。俺たちは、このわずかな可能性に賭けることにした。
目的の第7倉庫は、港の中でも最も奥まった、人通りの少ない薄暗い一角にひっそりと佇んでいた。長年、潮風に晒され続けた結果、赤黒く錆びついた巨大な鉄の扉が、見るからに不気味な雰囲気を醸し出しており、まるで巨大な怪物の口のように見えた。
「いいか、お前ら! 事前情報によれば、敵は鋼鉄のように硬い甲羅を持つ巨大ガニだ! 一般的な甲殻類の弱点は、比較的柔らかい腹の部分と、剥き出しの目玉のはず! 連携を密にし、一気に畳み掛けて仕留めるぞ!」
サラが、リーダーシップを発揮しようと、勇ましく作戦を説明する。しかし、その顔は既に、自分が今どちらを向いているのか、入り口と出口の方向が分からなくなっているのか、若干の不安に揺れていた。
俺たちは、ギシギシと軋む重い鉄の扉を、全員で力を合わせて押し開け、ひんやりと湿った空気が漂う薄暗い倉庫の中へと、慎重に足を踏み入れた。
倉庫の中は、想像以上に広く、そして異様な空気に満ちていた。ひんやりと肌を刺す湿った空気と、魚が腐ったような、鼻を突く強烈な臭気が充満している。高い天井にいくつも設けられた天窓から、太陽から放たれる光が差し込み、埃っぽく舞う空気の中に、幾筋もの美しい光の帯を描き出していた。幻想的な光景だが、今はそれを楽しむ余裕はなかった。
その、神々しくさえある光の帯の向こう。広大な倉庫の中央に、それは、いた。
カサカサカサ……カサカサ……。
無数の足が床を擦る、不気味で乾いた音が響く。その音と共に、巨大な影がゆっくりと動いた。
それは、軽自動車ほどの大きさを優に超える、信じがたいほどの巨大なカニだった。その甲羅は、まるで血で染め上げたかのように禍々しい赤色で、鋼鉄のような鈍い光沢を放っている。両腕に掲げられた巨大なハサミは、倉庫を支える鉄骨すらも、赤子の手をひねるようにたやすく切断してしまいそうなほどの凶悪な威圧感を放っていた。無数に生えた足が、それぞれが独立した生き物のように不気味に蠢き、二つのビー玉のように黒くつぶらな目が、招かれざる侵入者である俺たちを、明確な敵意を持ってじっと捉えていた。
「うおおおおお! 俺が先陣を切る! あの自慢の甲羅、この名刀で叩き割ってやるぜ!」
パーティ一の猪武者、ジンが雄叫びを上げて、誰よりも早く巨大なカニに斬りかかった。彼の渾身の一撃が、カニの赤い甲羅に真正面から叩きつけられる。
キィィィィン! と、鍛冶場のような甲高い金属音が倉庫内に響き渡った。しかし、巨大ガニの甲羅には、傷一つついていない。それどころか、攻撃を仕掛けたジンの刀の方が、あまりの硬さに弾かれ、ジンの手が激しく痺れた。
「なっ、硬えええええええ!? チタンか何かでできてんのか、この甲羅は!」
渾身の一撃が全く通じず、刀が甲羅の上を勢いよく滑った。その反動と予想外の硬さに体勢を崩したジンは、自分自身がコマのように、その場でクルクルと高速で回転し始めた。
「目が、目が回るぅぅぅぅ……お、俺はどこだ……ここは誰だ……」
「どいてなさい、この役立たず! 弱点は腹だって言ったでしょ! 食らいなさい! 『ソニック・スラスト』!」
サラが、愛用の長槍を構え、音速の突き技を繰り出す。だが、彼女は、まっすぐカニに向かって突進しているつもりが、その驚異的な方向音痴のせいで、なぜか目標から大きく逸れた斜め45度の方向に猛ダッシュし、そのままの勢いで倉庫の分厚い壁に、頭から綺麗に激突した。
ゴッ! という鈍い音と共に、彼女は壁に大の字の跡を残してずるずると崩れ落ちた。
「……星が、見える……キラキラしてて、きれい……」
「二人とも、一旦下がって! こういう硬い敵には、物理攻撃より魔法よ! 雷魔法なら、分厚い甲羅ごと貫けるはず! いけっ、『サンダー・ランス』!」
セレスティアが、自信満々に雷の槍を生成して放つ。しかし、彼女の魔法は、狙っていた巨大ガニではなく、その手前にあった海水が溜まった大きなたまりに、見事と言うほかない精度で着弾した。
バチバチバチバチッ!
次の瞬間、倉庫全体に強烈な電流が走り抜け、海水の中にいた哀れな小魚たちが、一斉に感電して白目を剥き、大量に水面にぷかぷかと浮き上がってきた。もちろん、ターゲットの巨大なカニには、全くのノーダメージだ。
「女神の名において、その不敬なハサミを、この私が聖なる力でへし折ります! 『ゴッド・スマッシュ』!」
敬虔なる女神の信徒、アンジェラが、巨大なウォーハンマーを天に振りかざす。その神の威光を宿した一撃は、しかし、素早く横に動いたカニのハサミではなく、こともあろうに倉庫の構造を支える巨大な木の柱にクリーンヒットしてしまった。
メリメリメリッ! バキィッ!
柱が、聞きたくない嫌な音を立てて、無惨に折れ曲がる。その結果、バランスを失った天井に山と積まれていた、大量の木箱が、まるで雪崩のように、俺たちの頭上めがけて一斉に崩れ落ちてきた。
「「「「うわあああああああ!」」」」
阿鼻叫喚の地獄絵図が広がる中、ただ一人、マリアだけが違う行動を取っていた。
「か、カニさん、かわいそうです……。皆さんにいじめられて、きっと痛いですよね……。私が、その傷を、優しく癒してあげますね……」
彼女は、おろおろしながらも、その心優しい性格ゆえに、敵である巨大ガニに対して回復魔法をかけようとした。その結果、巨大ガニの赤い甲羅はさらに神々しい輝きを増し、力がみなぎったのか、両手のハサミを天に高々と掲げ、まるで勝利を確信したかのようなポーズを決めた。
「……ユウキ、チャンス!」
その、もはや収集のつかない大混乱の最中、リナだけが、商魂たくましい瞳を爛々と輝かせていた。彼女は、セレスティアの感電魔法によって気絶した、市場に出せば金貨一枚は下らないであろう高級魚「ゴールデンサーモン」を、誰にも気づかれないように、素早く懐にしまおうとしていた。
もう、めちゃくちゃだった。戦闘と呼ぶにはあまりにもお粗末で、コントと呼ぶにはあまりにも危険な状況。俺の誇るべき仲間たちは、次々と、戦闘不能(ほぼ自滅)に陥っていく。
結局、この絶望的な戦場で、最後まで五体満足で立っていたのは、必死に盾を構える俺と、そして、この惨状を冷静に、しかしどこか呆れたように戦況を見守っていた、ソフィアだけだった。
◇
「ソフィアさん! もうダメです! どうすればいいですか!?」
俺は、巨大ガニが繰り出す猛攻を、女神様から授かった特製の盾でなんとか防ぎながら、半ば叫ぶように助けを求めた。仲間たちが全員リタイアしたいま、この状況を打開できる知恵を持つ者は、彼女しかいなかった。
その時、ソフィアの雰囲気が、がらりと変わった。
これまでの彼女は、俺の戦いを、常に一歩引いた安全な場所から、ただ静かに見守り、幸運の祝福を与えるという、あくまでサポーターに徹していた。決して、戦いの中心に自ら立とうとはしなかった。
だが、今の彼女は、違った。
彼女は、俺の隣にすっと音もなく立つと、その美しい青い瞳に、まるで百戦錬磨の軍師のような、鋭く、そして深い知性の光を宿した。
「ユウキ。慌てないでください。あのカニの動きを、よく見てください」
彼女の声は、どこまでも冷静で、しかし、聞く者の心を奮い立たせるような力強さに満ちていた。
「あの巨大なハサミを威嚇のために振り上げた時、ほんの一瞬だけ、六本ある足の、一番胴体に近い付け根の部分が、無防備に晒されます。甲羅に覆われていない、唯一の急所。そこが、この怪物を打ち破る唯一の弱点です」
彼女は、ただ曖昧に見守るのではなく、明確で具体的な指示を与えてきた。それは、俺の「パートナー」として、この苦境を共に戦い抜こうという、彼女からの強い意志表示に他ならなかった。あの夜の仲直りを経て、彼女が自らの意思で踏み出した、新たな、そして力強い一歩だった。
「ここに、この石を」
ソフィアは、足元に転がっていた、何の変哲もないただの小石を一つ拾い上げると、その石に、ふっと、優しく息を吹きかけた。すると、ただの石ころだったはずのそれが、まるで内側から命を吹き込まれたかのように、淡く、そして神々しい聖なる光を放ち始めた。
「私の力を、少しだけ込めました。聖なる祝福の力を凝縮した、破魔の弾丸です。これを、あの弱点に」
彼女は、その光り輝く石を、俺の手にそっと握らせた。ひんやりとした石の感触と、彼女の指先の温もりが、同時に俺の掌に伝わった。そして、彼女は俺の目を、真っ直ぐに見つめて、絶対の信頼を込めた微笑みを浮かべた。
「幸運を、祈ります。あなたなら、できます」
その微笑みは、どんな回復魔法よりも、どんな応援の言葉よりも、俺の心に力を与えてくれた。俺は、百人力の、いや、千人力の勇気をもらった気がした。
俺は、力強く大きく頷くと、再び巨大なカニと対峙した。盾を構え、呼吸を整え、全神経を集中させる。
カニが、俺を完全に排除しようと、威嚇のためにその巨大なハサミを、天高く振り上げる。甲羅に覆われた巨体が、わずかにのけぞる。
――今だ!
俺は、ソフィアの言葉を信じ、彼女から託された光り輝く石を、ありったけの力を込めて、全力で投げつけた。
俺の手から放たれた小石は、俺の渾身の力と、ソフィアの聖なる祝福パワーを乗せて、もはやただの石ではなく、光を纏った弾丸と化していた。それは、空気抵抗など存在しないかのように、一直線の、美しい軌道を描き、寸分の狂いもなく、巨大ガニの足の付け根に存在する、わずかな甲羅の隙間に、吸い込まれるように命中した。
パキィィィィィィィィン!!
鋼鉄のはずの甲羅が、まるで薄いガラス細工のように、あまりにもあっけなく砕け散った。聖なる光が、カニの体内を駆け巡り、その生命力を浄化していく。
「ギ……ギギ……」
巨大ガニは、信じられない、というように、砕け散った自分の体の一部分を一度見下ろすと、そのまま、巨体をゆっくりと横に傾け、ズシン、という地響きを立てて倒れ、完全に、その動きを止めた。
◇
「こ、これは……!!」
討伐の証を持ってギルドに戻った俺たちを見て、ギルドの受付嬢は椅子から転げ落ちんばかりに驚愕した。
「ま、間違いありません! この赤黒い光沢……ただの巨大なカニではありませんわ! 近海には滅多に姿を現さない幻の『紅蓮鉄ガニ』です! その甲羅は、最高の防具素材として高値で取引されているんです!」
査定の結果、カニの素材だけで、なんと金貨80枚の価値がついた。
「へっへっへ……それに旦那、これも忘れちゃ困るぜ」
リナが、懐から、セレスティアの魔法で偶然ゲットした「ゴールデンサーモン」を、どや顔で取り出した。その魚体は、黄金色に輝いている。
「ゴ、ゴールデンサーモンまで!? こちらも希少な珍味です! 金貨20枚で買い取らせていただきます!」
「「「「やったあああああああ!」」」」
ギルド内に、俺たちの歓喜の絶叫が響き渡る。依頼報酬と合わせて、手に入れた金額は金貨105枚。これなら、8人全員分の乗船料である金貨80枚を払っても、金貨25枚分ものお釣りがくる!
この劇的な勝利の一部始終を、古びた倉庫の二階の窓から、二つの人影が、非常に興味深そうに見つめていたことには、まだ、俺たちの誰も気づいていなかった。
一人は、上質な生地で作られているが、決して華美ではなく、動きやすさを重視した平民の服をまとった、快活な印象の少女。そして、もう一人は、その少女を影のように寄り添い守る、厳つい顔つきをした歴戦の護衛騎士だった。
「……ふふ、面白い人たちね。めちゃくちゃで、まとまりがなくて、見ていてハラハラするわ。でも、不思議と目が離せない。特に、あの、リーダーらしき男の子……。あれだけ個性、というか問題児だらけの仲間たちを、なんだかんだで、ちゃんとまとめてるじゃない。不思議な魅力があるわね」
少女――この国の王女、エリザベートは、まるで新しいおもちゃを見つけた子供のように、楽しそうに笑っていた。
その日の午後。
俺たちは、血と汗と涙(主に仲間たちの)と、そして奇跡的な幸運で稼いだ金で、ついに、夢にまで見た超巨大豪華客船『グラン・オーシャン号』のチケットを手に入れた。乗船場は、これから始まる優雅な船旅に胸を膨らませる王侯貴族や、大きな商談を控えた大商人たちで、ごった返していた。その、きらびやかな人々の波の中を、俺たちが少し気後れしながら進んでいた、その時だった。
向かいから歩いてきた、一人の少女と、ふと、肩が触れ合うほど近くですれ違った。
お互いに、何気なく、顔を上げる。
その少女の、あらゆるものに興味があると言わんばかりの、好奇心に満ちた輝くような瞳と、俺の目が、ほんの一瞬だけ、確かに、交錯した。彼女は小さく微笑むと、何事もなかったかのように人混みの中へと消えていった。
俺たちは、そのまま、船へと続く巨大なタラップを上り、ついに『グラン・オーシャン号』へと、その第一歩を踏み入れた。
その、あまりの壮大さと、目が眩むほどに豪華絢爛な内装に、俺たちは、またしても、言葉を失って立ち尽くす。
これから始まる、数週間の船旅。一体、どんな冒険が、そして、どんなドタバタが、俺たちを待ち受けているのだろうか。期待と不安が入り混じった、不思議な高揚感が胸を満たす。
俺の隣で、ソフィアは、心から満足そうな、そして、これまでに見たことがないほどの、晴れやかな表情をしていた。ユウキと、二人で、初めて力を合わせて何かを成し遂げた。その確かな喜びと、胸を焦がすような高揚感が、彼女の心を満たしていた。それは、彼女の中で、今まさに芽吹き、すくすくと育っている「恋心」という名の若木に注がれた、最高の養分となったに、違いなかった。
彼女は、まだ、気づいていない。
ほんの目と鼻の先にある豪華な船室に、ユウキという、新たな「面白そうなおもちゃ」を見つけて、その瞳を爛々と輝かせている、一人の、好奇心旺盛なおてんばな王女様がいることに。
船という、逃げ場のない巨大な密室で、新たな波乱の嵐が、今まさに、その産声を上げようとしていた。出航を告げる、長く、そして高らかな汽笛が、ポルト・フィオーレの港に響き渡った。
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