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シーズン1 F級の祝福者と、恋する女神の英雄譚
第11話:『船上の英雄と、女神が恋を知る日』
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もはや、それは船という概念を遥かに超越した存在だった。海上に浮かぶ一つの独立国家、あるいは移動する巨大な都市。その名を『グラン・オーシャン号』。全長五百メートルを超える純白の船体は、さながら陽光を浴びて輝く白亜の城の如く、見る者すべてを圧倒する威容を誇っていた。天を衝くかのようにそびえ立つ七本の巨大なマストには、一点の曇りもない純白の帆が張られている。洋上を渡る風を一身に受け、誇らしげに膨らんだその帆は、この巨龍の如き船体を、まるで氷上を滑るかのように、どこまでも広がる紺碧の海原の上へと推し進めていた。
我々――聖勇者ユウキ一行は、生まれて初めて目の当たりにするその圧倒的なスケールと、ため息が出るほど豪華絢爛な光景に、ただただ開いた口が塞がらなかった。足を踏み入れた広大な木の甲板は、我々が旅の拠点としてきた王国の城、その謁見の間はおろか、王城前の広場よりも遥かに広く感じられた。磨き上げられたチーク材の甲板の上では、煌びやかな衣装に身を包んだ貴族や、見るからに裕福そうな商人たちが、グラスを片手に優雅な談笑に興じたり、あるいは手すりに寄りかかって悠久の海の景色を眺めたりしている。その光景は、我々がこれまで経験してきた冒険の日々とは、あまりにもかけ離れた別世界のものであった。
船内へと一歩足を踏み入れれば、そこはまさに贅の限りを尽くした夢の空間が広がっていた。床から高い天井まで、世界中の書物がぎっしりと詰まった壮大な図書館。夜毎に美しいオペラや演劇が上演される、巨大なシャンデリアがきらめく大劇場。そして、金貨のざわめきと人々の欲望、歓声が渦巻く豪奢なカジノ。その他にも、高級ブティック、美術品を展示したギャラリー、複数のレストランにバー、さらには温水プールや療養施設まで、およそ考えうる限りの娯楽施設がこの一隻の船の中にすべて詰め込まれていた。
「す、すげえ……。床が、なんだか、ふかふかだぞ……」
我々のパーティの一員である獣人の少女、リナは、生まれて初めて踏むであろう深紅の絨毯の感触がよほど珍しいのか、あるいはその柔らかさが故郷の草原を思い出させたのか、甲板の隅で無意味にゴロゴロと転がり回り、その全身で異文化の感触を堪能していた。その無邪気な姿に、周囲の貴婦人たちが微笑ましげな視線を送っている。
「これほどの巨大な構造物を寸分の狂いもなく建造し、安定して航行させるか。人間の技術力というものも、あながち侮れないな」
一方、エルフの守護騎士(ガーディアン)であるサラは、船そのものの構造に強い興味を惹かれているようだった。彼女はまるで移動要塞の防衛線を頭の中で組み立てるかのように、リベットの一本一本、マストを支えるロープの結び目に至るまで、鋭い観察眼で船の隅々までを見つめている。時折、船員を捕まえては、「この隔壁の強度は?」「竜骨の素材はミスリル合金か?」といった専門的でマニアックな質問を投げかけ、相手を困惑させていた。
そんな、誰もが夢見心地になるような船上生活。しかし、もちろんのこと、個性と問題行動の塊である我々のパーティが、このまま平穏無事に過ごせるはずもなかった。
「うっぷ……。き、気持ち悪い……。師匠、世界が、世界がぐるぐると回っております……」
パーティの魔法の要であるセレスティアは、その卓越した魔力とは裏腹に、三半規管が致命的に弱かった。彼女は壮絶な船酔いに襲われ、乗船からわずか数時間で完全にグロッキー状態となり、青白い顔で手すりにへばりついていた。
「大丈夫だ、セレスティア! 心配するな、我が愛弟子よ! この私が、今すぐその忌々しい揺れを根源から断ち切る魔法をかけてやろう! 見ていろ! 『グラウンド・スタビライズ(大地安定化)』!」
「やめろ馬鹿! ここは海上だと言っているだろうが!」「その魔法は文字通り、足元の地面を大地そのものに固定する魔法だろうが! 船底に大穴を開ける気か!」
師匠としての威厳を見せようとしたのか、あるいは単に善意が暴走したのか、セレスティアがとんでもない魔法を詠唱し始める。その危機を察知した剣士のジンと守護騎士のサラが、二人掛かりで必死に彼女を取り押さえるという一幕が、既にこの船の日常風景となりつつあった。
そのジンはと言えば、夜会用の華やかなドレスで着飾った貴婦人たちを見つけるや否や、彼の狩人としての本能がONになるらしかった。彼はどこから取り出したのか一輪の薔薇を手に、狙いを定めた獲物へと滑るように近づいていく。
「おお、麗しのご婦人。その輝くばかりの美しさは、海の底で輝くどんな宝石もかくやというほど。もしよろしければ、この船旅が我々にとって忘れ得ぬ思い出となるよう、この私と、熱く燃えるような恋の物語を共に紡ぎませんか?」
彼の流れるような口説き文句は、時としてご婦人たちの心をときめかせたが、大抵の場合はその過剰な情熱が仇となった。
「まあ、なんていやらしい方!」「誰か! 誰か、この変態を捕まえてちょうだい!」
結果、彼の背後には常に、屈強な護衛の騎士たちが殺気立った表情で控え、彼が度を越した瞬間に船中を追いかけ回すというのが、彼にとっての新たな日課となっていた。
そして、我らが聖騎士アンジェラ。敬虔な女神の信徒である彼女は、船内にカジノが存在することを知るや否や、その清らかな瞳を怒りに燃え上がらせた。
「賭博! なんということでしょう! それは人の心を惑わし、魂を堕落させる悪魔の所業! 女神様へのあまりに冒涜的な行為です! この私が、今すぐあの悪魔の巣窟を聖なる力で浄化してまいります!」
彼女が愛用の巨大なウォーハンマーを振りかざし、まさにカジノへと殴り込みをかけようとする。その背後から、ナンパに失敗して戻ってきたジンと、食べ歩きをしていたリナが、文字通り涙ながらに彼女の腰に抱きついて引き留めていた。
「待て待て待て、アンジェラさん! あれもこの船の数ある娯楽施設の一つなんだって!」「ここで騒ぎを起こしたら、我々を招待してくださった聖勇者様のお顔に泥を塗ることになりますぞ!」
一方、パーティの癒し手である聖女マリアは、船の上層階に設けられた、静かで美しい礼拝室がいたく気に入ったようだった。ステンドグラスから差し込む光が神々しいその場所で、彼女は毎日熱心に祈りを捧げていた。
「おお、なんと清浄な空気に満ちた場所なのでしょう。この船を守っておられる、気高き水の精霊様のお力を、私の祈りで、ほんの少しだけ、強めて差し上げますね」
彼女の純粋すぎる善意から捧げられた祈りは、しかし、そのあまりの聖性の高さ故に、このグラン・オーシャン号を守護する精霊の力を異常なまでにパワーアップさせてしまった。その影響で、船はなぜか常に絶好の追い風を受け、荒天さえも巧みに避けるようになった。結果として、予定よりも常に三割増しの驚異的なスピードで、紺碧の海の上を文字通り爆走することになったのである。船長は、連日続く原因不明の奇跡に「海の神のご加護だ!」と歓喜の涙を流しながらも、そのあまりの速度に内心では首を傾げるばかりであった。
そんな、あまりにもカオスな仲間たちの姿を眺めながら、俺、ユウキは、もはやため息をつく気力すら湧いてこなかった。リーダーとは名ばかりで、実質的にはこの個性的な面々の手綱を握るどころか、引きずり回されているのが現状だった。
「……ソフィアさん。俺たち、本当に、目的地の王国まで無事にたどり着けるんでしょうかね」
俺が呆れ半分、諦め半分で隣に立つ美しい女性に問いかけると、彼女はくすりと優雅に微笑んだ。
「ふふ、どうでしょうね。ですが、少なくとも退屈しない旅であることは、間違いなさそうですね、私の勇者様」
俺の隣で、女神ソフィアは、心から楽しそうに笑っていた。かつて、俺たちが初めて出会った頃のような、どこかぎこちない、神と人間という壁を感じさせる空気は、もうどこにもない。彼女はごく自然に、当たり前のように俺の隣に立ち、俺と同じ景色を見て、そして同じように笑ってくれる。その何気ない事実が、俺にとっては、この船のどんな豪華な設備よりも、何よりも嬉しく、そして誇らしかった。
船旅が始まって、三日目の午後。賑やかな仲間たちの喧騒から少しだけ離れたくて、俺は一人で船首の甲板に立っていた。絶え間なく吹き付ける潮風が、心地よく頬を撫でていく。どこまでも続く水平線をぼんやりと眺めていると、空の青と海の青が溶け合うその境界線に、自分の心がどこまでも吸い込まれていくような、不思議な感覚に陥った。これまでの目まぐるしい冒険の日々を振り返り、そしてこれから待ち受けるであろう王都での謁見に思いを馳せる。そんな静かな思索の時間だった。
「――あなた、面白い人ね!」
不意に、背後から鈴を転がすような、快活で澄んだ声がした。その声には、人を惹きつける不思議な魅力があった。振り返ると、そこに一人の少女が立っていた。歳は、おそらくリナと同じくらいだろうか。燃えるような、鮮やかで美しい赤毛を、活発な印象を与える高い位置でポニーテールにしている。彼女の瞳は、真夏の太陽に向かって咲くヒマワリのように、明るい光と、隠しきれない好奇心に満ちてキラキラと輝いていた。
服装は、庶民の娘が着るような、装飾の少ない質素なワンピース。しかし、その生地は一目で上質とわかるものであり、何よりも彼女の立ち居振る舞い、その背筋の伸びた凛とした佇まいには、育ちの良さが隠しようもなく滲み出ていた。俺は、どこかで彼女に会ったことがあるような、既視感を覚えた。そうだ、乗船手続きをするための長い列に並んでいた時、護衛らしき人々に囲まれて、俺たちのすぐ横を通り過ぎていった少女だ。
「えっと、俺のことですか?」
俺が少し戸惑いながら聞き返すと、彼女はにこりと笑って頷いた。
「そうよ、あなた! それに、乗船する前、港ですれ違った時のこと、覚えてる? あの瞬間から、なんだかあなたのことが気になっていたの。」
彼女はそう言うと、興味深そうに俺の顔を覗き込んだ。
「それに、船に乗り込んでからすぐのことよ。カジノの前で、ハンマーを持った変な騎士の女の人を、見事に説得して大惨事を未然に防いでいたでしょ! 私、こっそり見てたの。あんなに個性的で、というか、はっきり言ってヤバそうな人たちを、ちゃんとまとめてるなんて、あなた、一体何者なの?」
彼女は悪戯っぽく笑いながら、ぐいっと俺の目の前に顔を近づけてきた。不意に縮まったその距離に、俺は思わずどきまぎしてしまう。彼女の瞳からは、純粋な興味と探究心が溢れ出ていた。
「い、いや、俺は別に、まとめてるっていうか……むしろ、いつも振り回されてるだけで……」
俺がしどろもどろになって言葉を濁していると、その時だった。
「おい、エリナ! こんな船首の、人の少ない所にいたのか! 貴族の令嬢が、供も連れずに一人でうろつくんじゃないと、いつも言っているだろう!」
甲高い、人を不快にさせる声が響いた。見ると、艶のある金髪をこれみよがしにオールバックにした、いかにもキザな貴族のボンボンといった風情の男が、数人の同じような雰囲気の取り巻きを引き連れて、こちらにやってきた。どうやら、彼女の知り合いらしい。
「うるさいわね、アラン。私は今、この人と、とても楽しいお話をしているの。邪魔しないでちょうだい」
エリナと呼ばれた少女は、心底迷惑そうに眉をひそめて言い返した。
「こいつ? なんだ、こんな薄汚い、見るからに素性の知れない冒険者風情が、エリナ様に気安く話しかけるな!」
アランと呼ばれた男は、あからさまに俺を侮蔑する視線で上から下まで睨みつけてきた。その目には、選民意識と傲慢さが宿っていた。
「まあまあ、そう言わずに。せっかくの素晴らしい船旅なんですから、皆さんで仲良くしましょうよ」
俺はいつもの調子で、面倒事を避けるために穏やかに仲裁に入ろうとした。その、瞬間だった。
「黙れ、平民が。身の程を弁えろ」
アランは、俺の胸を、ドン、と強く突き飛ばした。不意を突かれた俺は、数歩よろめいて、危うく体勢を崩しかけた。
その光景を目の当たりにした少女――エリナの目が、すっと氷のように冷たく細められるのが見えた。彼女の口が、何かを言おうと開かれる。
「アラン、あなた、今……」
だが、それよりも早く。
ほんの少し離れたマストの物陰から、その一部始終を、完璧な微笑みを浮かべたまま静かに見ていた人物がいた。女神ソフィア。彼女の、完璧なアーチを描く唇が、ほんのわずかに動き、アラン本人にも、そして俺にさえも聞き取れないほどの小さな声で、呪いにも似た言葉を呟いた。
「――転べ」
次の瞬間、信じられないことが起こった。得意満面の表情で俺を見下していたアランの足が、何もないはずの平らな甲板の上で、見事に、そして芸術的にもつれたのである。
「おわっ!?」
情けない声を上げ、アランは無様に前のめりに倒れ込む。そしてその顔面は、あたかも磁石に引き寄せられるかのように、船員が掃除のために置いていた、汚い雑巾が浮かぶバケツの中へと、綺麗に突っ込まれた。水しぶきが派手に上がる。
「アラン様!?」
取り巻きたちが、悲鳴に近い驚きの声を上げた。
「ぷはっ! げほっ、ごほっ……!」
びしょ濡れになったアランが、苦しそうに顔を上げる。彼の自慢のオールバックの髪は、無残にも崩れ落ち、額には、使い古された汚い雑巾が、まるで斬新なデザインの髪飾りのように、ぴったりと張り付いていた。
その、あまりにも間抜けで滑稽な光景に、それまで冷たい怒りを浮かべていたエリナは、こらえきれずに腹を抱えて大爆笑し始めた。
「あははははは! なにその格好! 最高じゃない、アラン! いつもよりずっと素敵よ!」
「き、貴様ぁぁぁぁ! よくも俺にこんな恥をかかせたな!」
怒りで我を忘れたアランが、逆上して俺に殴りかかってくる。だが、その振り上げられた拳は、またしても、物理法則を無視したかのようなありえない軌道を描いて虚しく空を切り、勢い余って彼のすぐ後ろにいた自分の取り巻きの一人の顔面に、クリーンヒットした。ゴッと鈍い音が響く。
「ぐふっ!」
殴られた取り巻きは白目を剥いてその場に崩れ落ち、アランたちは仲間割れで自滅していく。俺はただ立っていただけで、突き飛ばされた以外は何もしていないのに、なぜか結果的に、エリナを悪漢から救ったヒーローのような構図になってしまっていた。
「ぷっ……くくっ……あはは! あなた、やっぱり最高に面白いわ! 私、エリザベート! 正式な名前だけど、エリナって呼んで。あなたは?」
涙を流しながら笑い終えた彼女は、改めて俺に向き直り、親しみを込めた笑顔で言った。
「え、あ、ユウキですけど……」
こうして、俺は王女エリザベートと、何とも奇妙な出会いを果たした。もちろん、この快活で少しお転婆な少女が、この国の次期女王とも噂される、本物の王女様であることなど、この時の俺は知る由もなかったのである。
物陰から、ソフィアはその光景を静かに見つめていた。またしても、ユウキの周りに現れた、新たな女。しかも今度は、やけに馴れ馴れしく、その言動の端々から高貴な身分であることが窺える。
以前の彼女であったなら、今頃、あの王女様の美しいドレスに、空から鳥のフンでも正確に落下させていたかもしれない。あるいは、彼女の靴紐が不可解な力で結び合わさり、派手に転倒させていたかもしれない。
だが、今の彼女は違った。ただ、静かに、ユウキがどうするのかを、その先の展開を、じっと見つめている。嫉妬の炎が消えたわけではない。しかし、その炎を、ユウキへの信頼という、より大きく、より温かい感情で包み込もうとしていた。
(……信じましょう。ユウキを。彼は、他の誰でもない、私が選んだ、私のパートナーなのですから)
その心境の変化は、彼女が、神としてではなく、一人の女性として、嫉妬という原始的な感情をただ抑え込むのではなく、乗り越えようとしている、確かな成長の証だったのである。
平穏と喧騒が入り混じった船旅が始まって、一週間が過ぎた夜。その平穏は、何の前触れもなく、唐突に終わりを告げた。
先ほどまで満天の星空を映していた穏やかな海は、まるで獣が牙を剥くように、荒々しく表情を変えた。空は、インクをぶちまけたような不気味な暗雲に急速に覆われ、船は木の葉のように激しく揺さぶられ始めた。経験豊富な船員たちの顔から血の気が引いていく。
「総員、戦闘配置につけ! 嵐だ! だが、これはただの嵐じゃないぞ!」
船長の切迫した声が、風雨の轟音に混じって響き渡る。そして、荒れ狂う漆黒の波間から、それが、ぬるり、と姿を現した。
闇よりも、なお暗い、巨大な影。それは、古の時代の航海日誌にのみ記された、伝説の海の魔物。何十本もの、大蛇の如き巨大な触手を持つ、悪夢の具現。その名は、『クラーケン』。そのおぞましい触手の一本一本が、このグラン・オーシャン号の最も太いマストよりも、なお太いという、絶望的なまでの巨大さだった。
クラーケンは、その無数にある触手の一本を、まるで鞭のようにしならせ、船体に向かって叩きつけてきた。
轟音。そして、船が真っ二つに折れてしまうのではないかと思うほどの、凄まじい衝撃。船内のあらゆるものが床に叩きつけられ、乗客たちの絶叫が、嵐の音にかき消されていく。
「うろたえるな! 聖勇者様御一行をお守りしろ! 攻撃開始!」
船の護衛騎士団が、恐怖を押し殺して果敢に魔物に立ち向かう。彼らは鍛え抜かれた精鋭だったが、その鋭い剣も、魔術師たちが放つ炎や氷の魔法も、あまりに巨大すぎるクラーケンの分厚い表皮の前には、まるで小石を投げつけるかのように無力だった。
「くっ……やるしか、ねえようだな!」
「聖勇者様! 今こそ、我らが信義を示す聖戦の時です!」
絶望的な状況を前に、俺の仲間たちも、それぞれの武器を手に取り、揺れる甲板に仁王立ちになってクラーケンの前に立ちはだかった。守護騎士であるサラが自らの背丈ほどもある大盾を構えて前線を固め、アンジェラが聖なるハンマーを握りしめ、セレスティアが後方から大魔法の詠唱を始める。だが、相手は、我々がこれまで戦ってきたどんな魔物とも、あまりにも、規格外すぎた。
その時、クラーケンの触手の中でも、一際巨大な一本が、まるで知性を持っているかのように動き、船楼の上で恐怖に立ち尽くしていたエリザベートを、的確に狙った。
「危ない!」
俺は、考えるよりも先に、体が動いていた。エリザベートの前に飛び出し、その華奢な体を、力いっぱい突き飛ばしていた。
直後、俺の背中を、山がぶつかってきたかのような、凄まじい衝撃が襲う。女神ソフィアが俺のために特別に誂えてくれた女神謹製の鎧と、彼女が常にかけてくれている幾重もの祝福がなければ、即死は免れなかっただろう。俺は、まるで砲弾のように大きく吹き飛ばされ、甲板に激しく叩きつけられた。全身の骨がきしみ、肺から空気がすべて絞り出される。
「ユウキ!」
「ユウキの旦那!」
仲間たちの悲鳴が遠くに聞こえる。朦朧とする意識の中、俺を庇うように、一人の男が俺の前に立ちはだかるのが見えた。
「へっ……俺の、大事な仲間(ダチ)に、手ぇ出してんじゃねえぞ、このクソッタレなタコ野郎……!」
ジンが、その自慢の愛剣を握りしめ、クラーケンの巨大な触手に向かって、渾身の一撃を放つ。しかし、彼の必殺の剣閃は、ぬめりのある分厚い表皮に阻まれ、甲高い音を立てて弾かれた。そして逆に、その隙を待っていたかのように振るわれた触手の一撃が、彼の体を、無慈悲に、そしてあまりにも軽く弾き飛ばした。
「ぐはっ……!」
ジンは大量の血反吐を吐きながら、紙切れのようにマストに体を叩きつけられ、ぐったりと力なく、その場に崩れ落ちた。彼の屈強な胸からは、おびただしい量の、鮮血が流れ出していた。
その、光景を、俺は見た。
ブツン。
俺の中で、何かが、ぷっつりと切れる音がした。
頭の中が、真っ白になる。
違う。違う。
真っ白になった思考が、次の瞬間には、灼熱のマグマのような、真っ赤な怒りに染まっていく。
仲間が。俺の、かけがえのない、大事な仲間が。俺のせいで。俺を庇って。血を流している。
「…………よくも」
俺の口から、自分でも聞いたことのないような、低く、冷たく、地の底から響くような声が漏れた。
「よくも…………俺の仲間をッ!!!!」
怒り。ただ純粋な、一点の曇りもない、灼熱の怒りが、俺の全身の細胞を駆け巡り、魂そのものを燃え上がらせた。
その、魂の叫びに、呼応するように。
俺の隣にいつの間にか寄り添っていた、女神ソフィアの、その神々しい全身から、これまでとは比較にならないほどの、眩いばかりの黄金の神気が、迸った。
「ユウキ……!」
ソフィアは、見た。初めて見る、ユウキの本気の怒り。それは、自分の身を守るためではない。名誉のためでもない。ただ、ひたすらに、仲間を想うがゆえの、激しく、そしてあまりにも純粋な感情の爆発。
その、あまりにも強く、あまりにも純粋な魂の輝きに、女神ソフィアの心は、激しく、そして甘く揺さぶられた。これは、ただ一方的に力を与えるのとは違う。ユウキの魂の叫びに、女神である自分の魂が、根源から共鳴しているのだ。
黄金のオーラが、嵐さえも圧倒する光の奔流となって、俺の全身を包み込む。
俺は、ゆっくりと、しかし確かな足取りで立ち上がり、眼前の巨大な悪夢、クラーケンを、静かに睨みつけた。
「……お前は、俺が、倒す」
その声は、もはや怒りを超えた、絶対的な宣告だった。
戦いの後、あれほど荒れ狂っていた嵐は嘘のように静まり、グラン・オーシャン号の甲板には、静けさが戻っていた。
俺の、仲間を想う純粋な怒りを乗せた一撃は、黄金の光となってクラーケンの巨大な頭部を貫き、その巨体に致命的な一撃を与えた。そして、仲間たちはその一瞬の隙を決して逃さなかった。俺が作り出した好機に、彼らは見事な連携で追撃を加え、伝説の魔物を、断末魔の叫びと共に、二度と浮かび上がることのない暗い海の底へと沈めたのである。
深手を負ったジンは、マリアが、涙ながらに、そして今度こそ間違えることなく、完璧な上位治癒魔法を施したことで、奇跡的に一命を取り留めた。彼の胸の傷は光と共に塞がり、仲間たちは安堵の息を漏らした。
そして、エリザベート。彼女は、自分を命がけで守ってくれた俺の雄々しい姿に、完全に、そして決定的に心を奪われていた。先ほどまで恐怖に怯えていたその瞳は、もはや、ただの興味や好奇心の色ではなかった。それは、一人の男性に向けられる、熱烈で、焦がれるような、恋の色を、はっきりと宿していた。
一方、ソフィアは。
彼女は、傷ついた仲間たち一人ひとりに声をかけ、介抱して回るユウキのその背中を、ただ、じっと、愛おしげに見つめていた。
仲間を想う、彼の、強く、優しい心。 初めて見せた、彼の、魂を燃やすような激しい輝き。 その全てが、彼女の胸を、甘く、そして同時に、切なく締め付けていた。
(ああ……そうか……)
彼女は、ようやく、自分の中でずっと渦巻いていた、この感情の、本当の名を知った。 胸が、張り裂けてしまいそうになるほどの、この、どうしようもない愛おしさ。
彼が、笑えば、自分も心から嬉しい。 彼が、傷つけば、まるで自分の心が引き裂かれるように、痛む。 彼のためならば、この身に宿す女神としての、その神性も、悠久の時も、すべてを投げ出したとしても、構わない。
(これが……これが、『恋』……なのですね)
悠久の時を、神として孤独に生きてきた女神ソフィアが、人間の勇者ユウキに対して抱く自らの恋心を、はっきりと、そして紛れもなく自覚した、歴史的な瞬間だった。
かくして、船上の英雄となった俺、ユウキ。
その、全くあずかり知らぬところで、一人の女神と、一人の王女の、二つの巨大で純粋な恋心が、今、同時に、そして力強く動き出していた。
物語は、大きな、そして間違いなく波乱に満ちた、新たな転換点を迎える。 その先に、どんな甘く、そして激しい運命の荒波が待ち受けているのか、まだ、誰も知らなかった。
我々――聖勇者ユウキ一行は、生まれて初めて目の当たりにするその圧倒的なスケールと、ため息が出るほど豪華絢爛な光景に、ただただ開いた口が塞がらなかった。足を踏み入れた広大な木の甲板は、我々が旅の拠点としてきた王国の城、その謁見の間はおろか、王城前の広場よりも遥かに広く感じられた。磨き上げられたチーク材の甲板の上では、煌びやかな衣装に身を包んだ貴族や、見るからに裕福そうな商人たちが、グラスを片手に優雅な談笑に興じたり、あるいは手すりに寄りかかって悠久の海の景色を眺めたりしている。その光景は、我々がこれまで経験してきた冒険の日々とは、あまりにもかけ離れた別世界のものであった。
船内へと一歩足を踏み入れれば、そこはまさに贅の限りを尽くした夢の空間が広がっていた。床から高い天井まで、世界中の書物がぎっしりと詰まった壮大な図書館。夜毎に美しいオペラや演劇が上演される、巨大なシャンデリアがきらめく大劇場。そして、金貨のざわめきと人々の欲望、歓声が渦巻く豪奢なカジノ。その他にも、高級ブティック、美術品を展示したギャラリー、複数のレストランにバー、さらには温水プールや療養施設まで、およそ考えうる限りの娯楽施設がこの一隻の船の中にすべて詰め込まれていた。
「す、すげえ……。床が、なんだか、ふかふかだぞ……」
我々のパーティの一員である獣人の少女、リナは、生まれて初めて踏むであろう深紅の絨毯の感触がよほど珍しいのか、あるいはその柔らかさが故郷の草原を思い出させたのか、甲板の隅で無意味にゴロゴロと転がり回り、その全身で異文化の感触を堪能していた。その無邪気な姿に、周囲の貴婦人たちが微笑ましげな視線を送っている。
「これほどの巨大な構造物を寸分の狂いもなく建造し、安定して航行させるか。人間の技術力というものも、あながち侮れないな」
一方、エルフの守護騎士(ガーディアン)であるサラは、船そのものの構造に強い興味を惹かれているようだった。彼女はまるで移動要塞の防衛線を頭の中で組み立てるかのように、リベットの一本一本、マストを支えるロープの結び目に至るまで、鋭い観察眼で船の隅々までを見つめている。時折、船員を捕まえては、「この隔壁の強度は?」「竜骨の素材はミスリル合金か?」といった専門的でマニアックな質問を投げかけ、相手を困惑させていた。
そんな、誰もが夢見心地になるような船上生活。しかし、もちろんのこと、個性と問題行動の塊である我々のパーティが、このまま平穏無事に過ごせるはずもなかった。
「うっぷ……。き、気持ち悪い……。師匠、世界が、世界がぐるぐると回っております……」
パーティの魔法の要であるセレスティアは、その卓越した魔力とは裏腹に、三半規管が致命的に弱かった。彼女は壮絶な船酔いに襲われ、乗船からわずか数時間で完全にグロッキー状態となり、青白い顔で手すりにへばりついていた。
「大丈夫だ、セレスティア! 心配するな、我が愛弟子よ! この私が、今すぐその忌々しい揺れを根源から断ち切る魔法をかけてやろう! 見ていろ! 『グラウンド・スタビライズ(大地安定化)』!」
「やめろ馬鹿! ここは海上だと言っているだろうが!」「その魔法は文字通り、足元の地面を大地そのものに固定する魔法だろうが! 船底に大穴を開ける気か!」
師匠としての威厳を見せようとしたのか、あるいは単に善意が暴走したのか、セレスティアがとんでもない魔法を詠唱し始める。その危機を察知した剣士のジンと守護騎士のサラが、二人掛かりで必死に彼女を取り押さえるという一幕が、既にこの船の日常風景となりつつあった。
そのジンはと言えば、夜会用の華やかなドレスで着飾った貴婦人たちを見つけるや否や、彼の狩人としての本能がONになるらしかった。彼はどこから取り出したのか一輪の薔薇を手に、狙いを定めた獲物へと滑るように近づいていく。
「おお、麗しのご婦人。その輝くばかりの美しさは、海の底で輝くどんな宝石もかくやというほど。もしよろしければ、この船旅が我々にとって忘れ得ぬ思い出となるよう、この私と、熱く燃えるような恋の物語を共に紡ぎませんか?」
彼の流れるような口説き文句は、時としてご婦人たちの心をときめかせたが、大抵の場合はその過剰な情熱が仇となった。
「まあ、なんていやらしい方!」「誰か! 誰か、この変態を捕まえてちょうだい!」
結果、彼の背後には常に、屈強な護衛の騎士たちが殺気立った表情で控え、彼が度を越した瞬間に船中を追いかけ回すというのが、彼にとっての新たな日課となっていた。
そして、我らが聖騎士アンジェラ。敬虔な女神の信徒である彼女は、船内にカジノが存在することを知るや否や、その清らかな瞳を怒りに燃え上がらせた。
「賭博! なんということでしょう! それは人の心を惑わし、魂を堕落させる悪魔の所業! 女神様へのあまりに冒涜的な行為です! この私が、今すぐあの悪魔の巣窟を聖なる力で浄化してまいります!」
彼女が愛用の巨大なウォーハンマーを振りかざし、まさにカジノへと殴り込みをかけようとする。その背後から、ナンパに失敗して戻ってきたジンと、食べ歩きをしていたリナが、文字通り涙ながらに彼女の腰に抱きついて引き留めていた。
「待て待て待て、アンジェラさん! あれもこの船の数ある娯楽施設の一つなんだって!」「ここで騒ぎを起こしたら、我々を招待してくださった聖勇者様のお顔に泥を塗ることになりますぞ!」
一方、パーティの癒し手である聖女マリアは、船の上層階に設けられた、静かで美しい礼拝室がいたく気に入ったようだった。ステンドグラスから差し込む光が神々しいその場所で、彼女は毎日熱心に祈りを捧げていた。
「おお、なんと清浄な空気に満ちた場所なのでしょう。この船を守っておられる、気高き水の精霊様のお力を、私の祈りで、ほんの少しだけ、強めて差し上げますね」
彼女の純粋すぎる善意から捧げられた祈りは、しかし、そのあまりの聖性の高さ故に、このグラン・オーシャン号を守護する精霊の力を異常なまでにパワーアップさせてしまった。その影響で、船はなぜか常に絶好の追い風を受け、荒天さえも巧みに避けるようになった。結果として、予定よりも常に三割増しの驚異的なスピードで、紺碧の海の上を文字通り爆走することになったのである。船長は、連日続く原因不明の奇跡に「海の神のご加護だ!」と歓喜の涙を流しながらも、そのあまりの速度に内心では首を傾げるばかりであった。
そんな、あまりにもカオスな仲間たちの姿を眺めながら、俺、ユウキは、もはやため息をつく気力すら湧いてこなかった。リーダーとは名ばかりで、実質的にはこの個性的な面々の手綱を握るどころか、引きずり回されているのが現状だった。
「……ソフィアさん。俺たち、本当に、目的地の王国まで無事にたどり着けるんでしょうかね」
俺が呆れ半分、諦め半分で隣に立つ美しい女性に問いかけると、彼女はくすりと優雅に微笑んだ。
「ふふ、どうでしょうね。ですが、少なくとも退屈しない旅であることは、間違いなさそうですね、私の勇者様」
俺の隣で、女神ソフィアは、心から楽しそうに笑っていた。かつて、俺たちが初めて出会った頃のような、どこかぎこちない、神と人間という壁を感じさせる空気は、もうどこにもない。彼女はごく自然に、当たり前のように俺の隣に立ち、俺と同じ景色を見て、そして同じように笑ってくれる。その何気ない事実が、俺にとっては、この船のどんな豪華な設備よりも、何よりも嬉しく、そして誇らしかった。
船旅が始まって、三日目の午後。賑やかな仲間たちの喧騒から少しだけ離れたくて、俺は一人で船首の甲板に立っていた。絶え間なく吹き付ける潮風が、心地よく頬を撫でていく。どこまでも続く水平線をぼんやりと眺めていると、空の青と海の青が溶け合うその境界線に、自分の心がどこまでも吸い込まれていくような、不思議な感覚に陥った。これまでの目まぐるしい冒険の日々を振り返り、そしてこれから待ち受けるであろう王都での謁見に思いを馳せる。そんな静かな思索の時間だった。
「――あなた、面白い人ね!」
不意に、背後から鈴を転がすような、快活で澄んだ声がした。その声には、人を惹きつける不思議な魅力があった。振り返ると、そこに一人の少女が立っていた。歳は、おそらくリナと同じくらいだろうか。燃えるような、鮮やかで美しい赤毛を、活発な印象を与える高い位置でポニーテールにしている。彼女の瞳は、真夏の太陽に向かって咲くヒマワリのように、明るい光と、隠しきれない好奇心に満ちてキラキラと輝いていた。
服装は、庶民の娘が着るような、装飾の少ない質素なワンピース。しかし、その生地は一目で上質とわかるものであり、何よりも彼女の立ち居振る舞い、その背筋の伸びた凛とした佇まいには、育ちの良さが隠しようもなく滲み出ていた。俺は、どこかで彼女に会ったことがあるような、既視感を覚えた。そうだ、乗船手続きをするための長い列に並んでいた時、護衛らしき人々に囲まれて、俺たちのすぐ横を通り過ぎていった少女だ。
「えっと、俺のことですか?」
俺が少し戸惑いながら聞き返すと、彼女はにこりと笑って頷いた。
「そうよ、あなた! それに、乗船する前、港ですれ違った時のこと、覚えてる? あの瞬間から、なんだかあなたのことが気になっていたの。」
彼女はそう言うと、興味深そうに俺の顔を覗き込んだ。
「それに、船に乗り込んでからすぐのことよ。カジノの前で、ハンマーを持った変な騎士の女の人を、見事に説得して大惨事を未然に防いでいたでしょ! 私、こっそり見てたの。あんなに個性的で、というか、はっきり言ってヤバそうな人たちを、ちゃんとまとめてるなんて、あなた、一体何者なの?」
彼女は悪戯っぽく笑いながら、ぐいっと俺の目の前に顔を近づけてきた。不意に縮まったその距離に、俺は思わずどきまぎしてしまう。彼女の瞳からは、純粋な興味と探究心が溢れ出ていた。
「い、いや、俺は別に、まとめてるっていうか……むしろ、いつも振り回されてるだけで……」
俺がしどろもどろになって言葉を濁していると、その時だった。
「おい、エリナ! こんな船首の、人の少ない所にいたのか! 貴族の令嬢が、供も連れずに一人でうろつくんじゃないと、いつも言っているだろう!」
甲高い、人を不快にさせる声が響いた。見ると、艶のある金髪をこれみよがしにオールバックにした、いかにもキザな貴族のボンボンといった風情の男が、数人の同じような雰囲気の取り巻きを引き連れて、こちらにやってきた。どうやら、彼女の知り合いらしい。
「うるさいわね、アラン。私は今、この人と、とても楽しいお話をしているの。邪魔しないでちょうだい」
エリナと呼ばれた少女は、心底迷惑そうに眉をひそめて言い返した。
「こいつ? なんだ、こんな薄汚い、見るからに素性の知れない冒険者風情が、エリナ様に気安く話しかけるな!」
アランと呼ばれた男は、あからさまに俺を侮蔑する視線で上から下まで睨みつけてきた。その目には、選民意識と傲慢さが宿っていた。
「まあまあ、そう言わずに。せっかくの素晴らしい船旅なんですから、皆さんで仲良くしましょうよ」
俺はいつもの調子で、面倒事を避けるために穏やかに仲裁に入ろうとした。その、瞬間だった。
「黙れ、平民が。身の程を弁えろ」
アランは、俺の胸を、ドン、と強く突き飛ばした。不意を突かれた俺は、数歩よろめいて、危うく体勢を崩しかけた。
その光景を目の当たりにした少女――エリナの目が、すっと氷のように冷たく細められるのが見えた。彼女の口が、何かを言おうと開かれる。
「アラン、あなた、今……」
だが、それよりも早く。
ほんの少し離れたマストの物陰から、その一部始終を、完璧な微笑みを浮かべたまま静かに見ていた人物がいた。女神ソフィア。彼女の、完璧なアーチを描く唇が、ほんのわずかに動き、アラン本人にも、そして俺にさえも聞き取れないほどの小さな声で、呪いにも似た言葉を呟いた。
「――転べ」
次の瞬間、信じられないことが起こった。得意満面の表情で俺を見下していたアランの足が、何もないはずの平らな甲板の上で、見事に、そして芸術的にもつれたのである。
「おわっ!?」
情けない声を上げ、アランは無様に前のめりに倒れ込む。そしてその顔面は、あたかも磁石に引き寄せられるかのように、船員が掃除のために置いていた、汚い雑巾が浮かぶバケツの中へと、綺麗に突っ込まれた。水しぶきが派手に上がる。
「アラン様!?」
取り巻きたちが、悲鳴に近い驚きの声を上げた。
「ぷはっ! げほっ、ごほっ……!」
びしょ濡れになったアランが、苦しそうに顔を上げる。彼の自慢のオールバックの髪は、無残にも崩れ落ち、額には、使い古された汚い雑巾が、まるで斬新なデザインの髪飾りのように、ぴったりと張り付いていた。
その、あまりにも間抜けで滑稽な光景に、それまで冷たい怒りを浮かべていたエリナは、こらえきれずに腹を抱えて大爆笑し始めた。
「あははははは! なにその格好! 最高じゃない、アラン! いつもよりずっと素敵よ!」
「き、貴様ぁぁぁぁ! よくも俺にこんな恥をかかせたな!」
怒りで我を忘れたアランが、逆上して俺に殴りかかってくる。だが、その振り上げられた拳は、またしても、物理法則を無視したかのようなありえない軌道を描いて虚しく空を切り、勢い余って彼のすぐ後ろにいた自分の取り巻きの一人の顔面に、クリーンヒットした。ゴッと鈍い音が響く。
「ぐふっ!」
殴られた取り巻きは白目を剥いてその場に崩れ落ち、アランたちは仲間割れで自滅していく。俺はただ立っていただけで、突き飛ばされた以外は何もしていないのに、なぜか結果的に、エリナを悪漢から救ったヒーローのような構図になってしまっていた。
「ぷっ……くくっ……あはは! あなた、やっぱり最高に面白いわ! 私、エリザベート! 正式な名前だけど、エリナって呼んで。あなたは?」
涙を流しながら笑い終えた彼女は、改めて俺に向き直り、親しみを込めた笑顔で言った。
「え、あ、ユウキですけど……」
こうして、俺は王女エリザベートと、何とも奇妙な出会いを果たした。もちろん、この快活で少しお転婆な少女が、この国の次期女王とも噂される、本物の王女様であることなど、この時の俺は知る由もなかったのである。
物陰から、ソフィアはその光景を静かに見つめていた。またしても、ユウキの周りに現れた、新たな女。しかも今度は、やけに馴れ馴れしく、その言動の端々から高貴な身分であることが窺える。
以前の彼女であったなら、今頃、あの王女様の美しいドレスに、空から鳥のフンでも正確に落下させていたかもしれない。あるいは、彼女の靴紐が不可解な力で結び合わさり、派手に転倒させていたかもしれない。
だが、今の彼女は違った。ただ、静かに、ユウキがどうするのかを、その先の展開を、じっと見つめている。嫉妬の炎が消えたわけではない。しかし、その炎を、ユウキへの信頼という、より大きく、より温かい感情で包み込もうとしていた。
(……信じましょう。ユウキを。彼は、他の誰でもない、私が選んだ、私のパートナーなのですから)
その心境の変化は、彼女が、神としてではなく、一人の女性として、嫉妬という原始的な感情をただ抑え込むのではなく、乗り越えようとしている、確かな成長の証だったのである。
平穏と喧騒が入り混じった船旅が始まって、一週間が過ぎた夜。その平穏は、何の前触れもなく、唐突に終わりを告げた。
先ほどまで満天の星空を映していた穏やかな海は、まるで獣が牙を剥くように、荒々しく表情を変えた。空は、インクをぶちまけたような不気味な暗雲に急速に覆われ、船は木の葉のように激しく揺さぶられ始めた。経験豊富な船員たちの顔から血の気が引いていく。
「総員、戦闘配置につけ! 嵐だ! だが、これはただの嵐じゃないぞ!」
船長の切迫した声が、風雨の轟音に混じって響き渡る。そして、荒れ狂う漆黒の波間から、それが、ぬるり、と姿を現した。
闇よりも、なお暗い、巨大な影。それは、古の時代の航海日誌にのみ記された、伝説の海の魔物。何十本もの、大蛇の如き巨大な触手を持つ、悪夢の具現。その名は、『クラーケン』。そのおぞましい触手の一本一本が、このグラン・オーシャン号の最も太いマストよりも、なお太いという、絶望的なまでの巨大さだった。
クラーケンは、その無数にある触手の一本を、まるで鞭のようにしならせ、船体に向かって叩きつけてきた。
轟音。そして、船が真っ二つに折れてしまうのではないかと思うほどの、凄まじい衝撃。船内のあらゆるものが床に叩きつけられ、乗客たちの絶叫が、嵐の音にかき消されていく。
「うろたえるな! 聖勇者様御一行をお守りしろ! 攻撃開始!」
船の護衛騎士団が、恐怖を押し殺して果敢に魔物に立ち向かう。彼らは鍛え抜かれた精鋭だったが、その鋭い剣も、魔術師たちが放つ炎や氷の魔法も、あまりに巨大すぎるクラーケンの分厚い表皮の前には、まるで小石を投げつけるかのように無力だった。
「くっ……やるしか、ねえようだな!」
「聖勇者様! 今こそ、我らが信義を示す聖戦の時です!」
絶望的な状況を前に、俺の仲間たちも、それぞれの武器を手に取り、揺れる甲板に仁王立ちになってクラーケンの前に立ちはだかった。守護騎士であるサラが自らの背丈ほどもある大盾を構えて前線を固め、アンジェラが聖なるハンマーを握りしめ、セレスティアが後方から大魔法の詠唱を始める。だが、相手は、我々がこれまで戦ってきたどんな魔物とも、あまりにも、規格外すぎた。
その時、クラーケンの触手の中でも、一際巨大な一本が、まるで知性を持っているかのように動き、船楼の上で恐怖に立ち尽くしていたエリザベートを、的確に狙った。
「危ない!」
俺は、考えるよりも先に、体が動いていた。エリザベートの前に飛び出し、その華奢な体を、力いっぱい突き飛ばしていた。
直後、俺の背中を、山がぶつかってきたかのような、凄まじい衝撃が襲う。女神ソフィアが俺のために特別に誂えてくれた女神謹製の鎧と、彼女が常にかけてくれている幾重もの祝福がなければ、即死は免れなかっただろう。俺は、まるで砲弾のように大きく吹き飛ばされ、甲板に激しく叩きつけられた。全身の骨がきしみ、肺から空気がすべて絞り出される。
「ユウキ!」
「ユウキの旦那!」
仲間たちの悲鳴が遠くに聞こえる。朦朧とする意識の中、俺を庇うように、一人の男が俺の前に立ちはだかるのが見えた。
「へっ……俺の、大事な仲間(ダチ)に、手ぇ出してんじゃねえぞ、このクソッタレなタコ野郎……!」
ジンが、その自慢の愛剣を握りしめ、クラーケンの巨大な触手に向かって、渾身の一撃を放つ。しかし、彼の必殺の剣閃は、ぬめりのある分厚い表皮に阻まれ、甲高い音を立てて弾かれた。そして逆に、その隙を待っていたかのように振るわれた触手の一撃が、彼の体を、無慈悲に、そしてあまりにも軽く弾き飛ばした。
「ぐはっ……!」
ジンは大量の血反吐を吐きながら、紙切れのようにマストに体を叩きつけられ、ぐったりと力なく、その場に崩れ落ちた。彼の屈強な胸からは、おびただしい量の、鮮血が流れ出していた。
その、光景を、俺は見た。
ブツン。
俺の中で、何かが、ぷっつりと切れる音がした。
頭の中が、真っ白になる。
違う。違う。
真っ白になった思考が、次の瞬間には、灼熱のマグマのような、真っ赤な怒りに染まっていく。
仲間が。俺の、かけがえのない、大事な仲間が。俺のせいで。俺を庇って。血を流している。
「…………よくも」
俺の口から、自分でも聞いたことのないような、低く、冷たく、地の底から響くような声が漏れた。
「よくも…………俺の仲間をッ!!!!」
怒り。ただ純粋な、一点の曇りもない、灼熱の怒りが、俺の全身の細胞を駆け巡り、魂そのものを燃え上がらせた。
その、魂の叫びに、呼応するように。
俺の隣にいつの間にか寄り添っていた、女神ソフィアの、その神々しい全身から、これまでとは比較にならないほどの、眩いばかりの黄金の神気が、迸った。
「ユウキ……!」
ソフィアは、見た。初めて見る、ユウキの本気の怒り。それは、自分の身を守るためではない。名誉のためでもない。ただ、ひたすらに、仲間を想うがゆえの、激しく、そしてあまりにも純粋な感情の爆発。
その、あまりにも強く、あまりにも純粋な魂の輝きに、女神ソフィアの心は、激しく、そして甘く揺さぶられた。これは、ただ一方的に力を与えるのとは違う。ユウキの魂の叫びに、女神である自分の魂が、根源から共鳴しているのだ。
黄金のオーラが、嵐さえも圧倒する光の奔流となって、俺の全身を包み込む。
俺は、ゆっくりと、しかし確かな足取りで立ち上がり、眼前の巨大な悪夢、クラーケンを、静かに睨みつけた。
「……お前は、俺が、倒す」
その声は、もはや怒りを超えた、絶対的な宣告だった。
戦いの後、あれほど荒れ狂っていた嵐は嘘のように静まり、グラン・オーシャン号の甲板には、静けさが戻っていた。
俺の、仲間を想う純粋な怒りを乗せた一撃は、黄金の光となってクラーケンの巨大な頭部を貫き、その巨体に致命的な一撃を与えた。そして、仲間たちはその一瞬の隙を決して逃さなかった。俺が作り出した好機に、彼らは見事な連携で追撃を加え、伝説の魔物を、断末魔の叫びと共に、二度と浮かび上がることのない暗い海の底へと沈めたのである。
深手を負ったジンは、マリアが、涙ながらに、そして今度こそ間違えることなく、完璧な上位治癒魔法を施したことで、奇跡的に一命を取り留めた。彼の胸の傷は光と共に塞がり、仲間たちは安堵の息を漏らした。
そして、エリザベート。彼女は、自分を命がけで守ってくれた俺の雄々しい姿に、完全に、そして決定的に心を奪われていた。先ほどまで恐怖に怯えていたその瞳は、もはや、ただの興味や好奇心の色ではなかった。それは、一人の男性に向けられる、熱烈で、焦がれるような、恋の色を、はっきりと宿していた。
一方、ソフィアは。
彼女は、傷ついた仲間たち一人ひとりに声をかけ、介抱して回るユウキのその背中を、ただ、じっと、愛おしげに見つめていた。
仲間を想う、彼の、強く、優しい心。 初めて見せた、彼の、魂を燃やすような激しい輝き。 その全てが、彼女の胸を、甘く、そして同時に、切なく締め付けていた。
(ああ……そうか……)
彼女は、ようやく、自分の中でずっと渦巻いていた、この感情の、本当の名を知った。 胸が、張り裂けてしまいそうになるほどの、この、どうしようもない愛おしさ。
彼が、笑えば、自分も心から嬉しい。 彼が、傷つけば、まるで自分の心が引き裂かれるように、痛む。 彼のためならば、この身に宿す女神としての、その神性も、悠久の時も、すべてを投げ出したとしても、構わない。
(これが……これが、『恋』……なのですね)
悠久の時を、神として孤独に生きてきた女神ソフィアが、人間の勇者ユウキに対して抱く自らの恋心を、はっきりと、そして紛れもなく自覚した、歴史的な瞬間だった。
かくして、船上の英雄となった俺、ユウキ。
その、全くあずかり知らぬところで、一人の女神と、一人の王女の、二つの巨大で純粋な恋心が、今、同時に、そして力強く動き出していた。
物語は、大きな、そして間違いなく波乱に満ちた、新たな転換点を迎える。 その先に、どんな甘く、そして激しい運命の荒波が待ち受けているのか、まだ、誰も知らなかった。
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