14 / 62
シーズン1 F級の祝福者と、恋する女神の英雄譚
第14話:『封印の洞窟と、欠点だらけの英雄たち』
しおりを挟む
肌を撫でる夜風に、微かに秋の気配が混じり始めた頃。あの日、王都を揺るがした法国の使節団が、帰国の途につくふりをして王都近郊で忽然と姿を消してから、数日の時が流れていた。王都は表面上の平穏を取り戻し、人々は日常の喧騒の中にその記憶を薄れさせていたが、水面下では新たな脅威が静かに、しかし確実にその根を広げつつあった。
その日、俺たち一行は国王陛下その人から、謁見の間に直々に呼び出された。玉座に腰かけた陛下の表情は、いつになく険しく、その威厳に満ちた声には深い憂慮の色が滲んでいた。与えられたのは、国家の命運を左右しかねない、極秘中の極秘任務。その内容は、我々の想像を遥かに超えるものだった。
「法国の背後でうごめく、邪悪な勢力の調査、そして、その目的の阻止を命ずる」
重々しく告げられた言葉は、謁見の間の荘厳な静寂に吸い込まれていく。事の発端は、先日催された夜会での出来事にあった。ソフィアが、法国の使節団を率いていた枢機卿から感じ取った、あの纏わりつくような邪悪な気配。それは、彼女の記憶の奥底に刻まれた、決して忘れることのできない感覚と酷似していたという。
この世界の理そのものを歪め、遥か古の時代に神々と英雄たちによってかろうじて封印された「魔神」。その禁忌の存在を現世に再び呼び覚まさんとする狂信者の一団、人々がその名を口にすることすら畏れる「魔神教団」。枢機卿が纏っていたオーラは、まさしくその教団に属する者が放つ、魂を腐らせるような瘴気そのものだったのだ。
ソフィアの静かな、しかし確信に満ちた証言は、国王陛下を動かすに十分だった。魔神の復活。それは、この大陸全土の破滅を意味する。そして、姿を消した枢機卿たちが復活の儀式を執り行うために、真っ先に狙うであろう場所。その候補は、ただ一つに絞られた。王都から遥か北、険しい山々が連なる広大な山脈地帯の奥深く、人々の記憶からも地図からも忘れ去られた場所に隠された、「封印の洞窟」。そここそが、古の魔神が眠る聖域であり、同時に、この世界で最も危険な場所だった。
「このままじゃ、ダメだ……!」
出発を翌日に控えた、その夜。俺は王城の一角、月の光が白く降り注ぐバルコニーで、ひとり夜風に吹かれていた。大理石の手すりはひんやりと冷たく、それがかえって俺の内で燃え盛る焦燥感を際立たせる。眼下に広がる王都の灯りは、まるで遠い星空のように瞬いていたが、その穏やかな光景とは裏腹に、俺の心は鉛のように重かった。
これまでの戦いを振り返る。巨大な海の怪物クラーケンとの死闘も、かつて行われた模擬戦も、俺が勝利を掴めたのは、決して俺自身の力によるものではなかった。その全てが、ソフィアが与えてくれた女神の祝福、そして女神様が直々に鍛えたという規格外の武具の性能のおかげだ。俺はただ、その強大な力に「守られていた」に過ぎない。俺自身の剣の腕は、技量は、そして覚悟は、本当にこの過酷な運命に立ち向かうに足るものなのだろうか。
この先、魔神教団という、これまでとは比較にならない本物の脅威と対峙した時、俺は本当に仲間たちを守り抜けるのだろうか。女神の祝福が、もしも通じないほどの邪悪な敵が現れた時、俺のこの手には何が残るのだろう。無力感という名の冷たい靄が、じわじわと心を侵食していく。守りたい。このかけがえのない仲間たちを、俺のこの手で、今度こそ。その想いが強ければ強いほど、己の非力さが浮き彫りになるようで、奥歯を強く噛み締めた。
「俺、強くなりたいです。ソフィアさん」
いつの間にか隣に立っていた彼女の気配に気づき、俺は絞り出すように、初めて自分の弱い心を正直に打ち明けた。月光を浴びて銀色に輝く彼女の髪が、夜風にそっと揺れる。俺の不意の告白に、ソフィアは少しだけ紫色の瞳を見開いて驚いたようだったが、すぐにふっと、まるで全てを包み込むような慈愛に満ちた笑みを浮かべた。
「ええ。貴方なら、きっとなれますよ。私が、ついていますから」
その静かで、けれど何よりも力強い言葉が、俺の心の靄を晴らしていくようだった。そうだ、一人で悩む必要はない。俺には、彼女が、そして頼もしい仲間たちがいる。俺がすべきは、無力さに打ちひしがれることではなく、たとえ僅かでも前に進むための努力をすることだ。
こうして、北への過酷な旅路を目前にした最後の半日を使い、俺は生まれて初めてとなる本気の「特訓」に挑むことになったのだ。
場所は、王城が誇る広大な訓練場。夏の終わりを告げる少しだけ涼しくなった風が、俺の新たな決意を後押しするように、汗ばんだ頬を優しく撫でていった。しかし、もちろんのこと。この俺の切実な願いから始まったはずの特訓が、まともなものになるはずもなかったのである。
夜が明け、朝靄が訓練場を包む中、俺たちの「特訓」は幕を開けた。俺の真摯な想いとは裏腹に、そこに集った仲間たちの瞳は、どこか見当違いの熱意に燃えていた。
「いくぜ、ユウキ! 問答無用、真剣勝負だ!」
最初の相手として名乗りを上げたのは、自称・最強の剣士にしてパーティの切り込み隊長、ジン。
俺は、先日陛下から賜った『退魔の白銀剣』をぐっと握りしめ、構えた。伝説の業物だ。こいつを使いこなせれば、俺だって……。だが、いざ構えてみると、Fランクの俺の腕力ではずしりと重く、切っ先がふらついてしまう。その聖なる重みは、今の俺には明らかに手に余る代物だった。
「くっ……やっぱり、今の俺じゃ剣に振り回されるだけか……!」
焦る俺をよそに、模擬戦とはいえ、ジンの眼光は狩人のように鋭く、抜き放たれた愛剣は朝日にきらりと輝いている。彼の猛攻は、まさに嵐そのものだった。常人ならば一太刀で切り伏せられるであろう神速の連撃が、間断なく俺に襲いかかる。
しかし、俺はそれらをことごとく、紙一重で避けていく。いや、正確には「避けている」のではない。「避けている」のだ。
「うおおらあっ!」
ジンの気合と共に放たれた渾身の斬撃が、俺の眉間を正確に捉えようとした、その刹那。どこからともなく飛来した一匹の大きな蜂が、ブウンという羽音を立ててジンの鼻先をかすめた。
「うおっ!?」
一瞬、そちらに気を取られたジンの剣先は、ほんの数ミリ、俺の額の上で軌道をずらし、虚しく空を切る。冷や汗が背中を伝った。
「まだまだ! 足元ががら空きだぜ!」
体勢を立て直したジンが、今度は俺の足元を狙って鋭い薙ぎ払いを繰り出す。それは回避困難な、完璧な一撃だった。だが、その瞬間、俺はふと、自分のブーツの靴紐がほどけていることに気づいた。
「おっと」
無意識に、危険を察知したわけでもなく、ただ純粋に靴紐を結び直そうと身をかがめた俺の頭上を、ジンの剣が轟音と共に通り過ぎていく。もし立ち続けていれば、俺の両足は胴体とさよならしていただろう。
結局、俺にできたのは、ソフィアさんの加護を頼りに逃げ回ることだけだった。手に持った白銀の剣は、一度も交わることなく虚しく重いままだった。
そんな、奇跡的な偶然――もとい、ソフィアの祝福による絶妙な幸運の連続に、ジンは一人で勝手にスタミナを消耗していった。彼の剣は一度も俺を捉えることなく、訓練場の土を削り、風を切るばかり。やがて、ぜえぜえと激しく肩で息をしながら、彼は膝から崩れ落ちるように地面に倒れ込んだ。
「な……んで……当たらねえんだ……。お前、いつの間にそんな動きを……」
ぜいぜいと喘ぐジンを横目に、次に意気揚々と進み出たのは、自称「鉄壁の守護騎士(ガーディアン)」のサラだった。
「ユウキ! 今度は私と連携の訓練だ! 私が派手に突撃して敵の注意を引きつける! その隙にお前が背後から斬りかかれ!」
作戦自体は理に適っている。彼女はそう言うと、仮想の敵がいるであろう訓練場の中央に向かって、愛用の槍を構え勇ましく突撃した。しかし、彼女には致命的な欠点があった。そう、絶望的なまでの方向音痴である。彼女は自分が、どの方向から、どの敵の注意を引きつけるべきか、全く分かっていなかったのだ。
「こっちだ、化け物! 私の槍の錆にしてくれる!」
サラが高らかに叫んで突進した方向は、あろうことか、彼女の真後ろ――つまり、連携して背後から奇襲をかけるはずの俺がいる方向だった。俺に向かって「化け物」とは、あんまりではないだろうか。
「師匠! 次は魔法の回避訓練です! 私のこの、無数の氷の矢を、どうか避けてみてください! いきますよ、『アイシクル・レイン』!」
純粋な瞳でそう申し出たのは、俺の弟子であるセレスティアだ。彼女の魔法の才能は本物だが、いかんせんコントロールに致命的な問題を抱えている。彼女が掲げた杖の先端に、凄まじい冷気を纏った数十本の氷の矢が生成される。その光景は美しくも恐ろしい。しかし、放たれた矢は、なぜか俺とは全く関係のない方向へと飛んでいき、訓練場の隅で手塩にかけて育てられていた、色とりどりの美しい薔薇園に向かって降り注いだ。
ザクザクザクッ! という無慈悲な音と共に、咲き誇っていた薔薇の花々が無残にも切り刻まれていく。
「あーーーーっ! 私の薔薇がーーーーっ!」
遠くから、この城に仕える庭師の、魂からの悲痛な叫び声が聞こえてきた。俺はそっと空を仰いだ。
「聖勇者様! 貴方様のその聖なる鎧の強度、この私が試してしんぜます! これも女神の試練! いざ!」
最後に登場したのは、女神信仰に全てを捧げる狂信的なシスター、アンジェラ。彼女はもはや「訓練」という概念をどこかに置き忘れ、本気で俺を殺しにかかってきた。巨大なウォーハンマーを振りかぶり、神に祈りを捧げながら、何の躊躇もなく俺の胸元に叩きつけてくる。
ガギィィィン! という、鼓膜が破れそうなほどの衝撃音。だが、彼女の渾身の一撃が俺の胸当てに直撃するたびに、女神謹製の聖なる防具は、その衝撃を完璧に吸収し、びくともしない。それどころか、反作用の法則に従い、凄まじい衝撃がアンジェラ自身の手に跳ね返っていた。
「ぬうう……! なんという、神々しいまでの硬さ……! これぞ、女神の祝福の顕現! 感涙にむせびそうです!」
アンジェラは、自分の両手がビリビリと痺れ、感覚がなくなりかけていることにも構わず、恍惚の表情でハンマーを何度も何度も打ち付け続けた。
「ユウキの旦那! シーフたるもの、気配を消して背後を取るのが極意! いきますよ!」
そう叫んで姿を消したはずのリナだったが、数秒後には「あ痛っ!」という情けない声と共に、何もない平らな地面で派手に転び、懐に隠し持っていた大量のおやつを盛大にばら撒いて自滅した。気配を消すどころか、甘い匂いを漂わせてどうする。
訓練は、めちゃくちゃだった。誰一人として、まともな訓練になっていない。俺の強化には一ミリも繋がらなかったと言っていいだろう。
だが、それでも。強くなりたい、という俺の真摯な想いだけは、この、どうしようもなく頼りになる、そしてどうしようもなくポンコツな仲間たちに、確かに、伝わっていたはずだ。彼らの、明後日の方向を向いた熱意の中に、俺への信頼と友情が確かに感じられたから。俺は、苦笑いを浮かべながらも、この仲間たちとなら、どんな困難も乗り越えられるかもしれない、と柄にもなくそう思ったのだった。
王都の喧騒を背に、俺たちは北を目指して馬を進めていた。出発前の混沌とした特訓が嘘のように、旅の始まりは穏やかだった。しかし、王都の城壁が見えなくなり、広大な平原を抜けて北へ、さらに北へと進むにつれて、周囲の風景はその彩度を急速に失っていった。
生命力に満ち溢れていた緑豊かな草原は、次第に背の低い草とゴツゴツとした岩が目立つ荒涼とした大地へと姿を変えた。そして、何日か馬を走らせた頃、俺たちの行く手に、不気味な森がその巨大な口を開けて待ち構えていた。道は、まるで奈落に誘うかのように、その霧深い、鬱蒼とした森の中へと吸い込まれていった。
森の中に一歩足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。常に薄暗く、昼間だというのにまるで夕暮れ時のようだ。天を覆い尽くさんばかりに枝葉を伸ばした巨大な木々が、太陽の光をほとんど通さないのだ。地面は分厚い苔に覆われ、一歩足を踏み出すたびに、じゅ、と湿った音を立てて腐葉土のむせるような匂いが立ち上る。
そして、何よりも不気味だったのは、その完全なる静寂だ。
鳥の声も、虫の音も、風に葉が擦れる音すら、一切聞こえない。聞こえるのは、俺たちの乗る馬が湿った土を踏む蹄の音と、時折、肌を刺すような冷たい霧を運んでくる、不自然な風の音だけ。まるで、この森に棲む全ての生き物たちが、目に見えない何かを恐れ、息を殺して身を潜めているかのようだった。それは、生命の気配が全く感じられない、死んだ森だった。
「……ソフィアさん。なんだか、気味が悪いですね」
俺は、隣で静かに馬を歩ませるソフィアに、思わず声をかけた。ただの森ではない。この異常な静けさは、尋常ならざる何かがこの地を支配している証拠だ。
「ええ」
ソフィアは、その美しい眉をわずかに寄せ、鋭い視線で周囲を警戒していた。
「この濃い霧は、ただの自然現象ではありません。この土地一帯に満ちている邪悪な魔力が、世界の理そのものを歪め、生命の活動を阻害しているのです。封印の洞窟は、もう、近いでしょう」
彼女の言葉は、これまでの旅にはなかった、確かな緊張感を俺たち一行にもたらした。遊びや訓練ではない。これから始まるのは、世界の命運を賭けた本物の戦いだ。俺はごくりと唾を飲み込み、愛剣の柄を強く握りしめた。仲間たちの顔にも、等しく覚悟の色が浮かんでいた。
俺たちの、本当の戦いは、ここから、始まるのだ。
何時間歩き続いただろうか。方向感覚を狂わせる濃霧の中、俺たちはソフィアの導きだけを頼りに進んだ。そして、不意に霧が薄れ、視界が開けた先に、それはあった。
天を突くような切り立った崖の中腹に、ぽっかりと空いた巨大な穴。まるで、太古の巨獣が怒りのままに山肌を喰い破ったかのような、禍々しい威圧感を放つ洞窟の入り口。その漆黒の闇の奥からは、骨身に染みるような冷気と共に、これまでの森の比ではないほど濃密な邪悪のオーラが、絶えず漏れ出してきている。その影響か、洞窟の入り口の周囲だけは、草木一本生えておらず、黒く変色した大地が剥き出しになっていた。
「……ここが、封印の洞窟……」
ゴクリ、と誰かが固唾を飲む音が、静寂の中でやけに大きく響いた。これほどの邪気を前にして、恐怖を感じない者などいない。だが、俺たちには引き返すという選択肢はなかった。俺たちは互いの顔を見合わせ、無言で頷き合うと、覚悟を決めてその闇の中へと足を踏み入れた。
洞窟の内部は、意外にも人工的に掘られた滑らかな通路が、どこまでも続いていた。壁には、古代の文字と思しき奇妙な文様や、神々と魔神の壮絶な戦いの様子を描いたのであろう、色褪せた壁画が延々と刻まれている。歴史の重みを感じさせる荘厳な空間。しかし、その通路には、侵入者を拒む数々の悪意に満ちたトラップが、巧妙に仕掛けられていた。
「よし! この先は、シーフのあたしに任せな!」
パーティの斥候役であるリナが、得意げに胸を張って前に出た。彼女は、軽やかな、それでいて慎重な足取りで先行していく。そして、少し先の何もないように見える通路で、ピタリと足を止めた。
「ふんふん、なるほどね……。ここの床、よく見ると周りと巧妙に色が変えられてる。これは間違いなく、定番の落とし穴だ。でも、大丈夫! あたしのシーフとしての目と、長年の経験はごまかせないよ! こっちの、壁際が安全ルートだ!」
彼女が、自信満々にそう宣言した、まさにその直後だった。
彼女が立っていた、その安全なはずの壁際の床が、何の音もなく、パカッ、と綺麗に開いた。
「あれえええええええええ!?」
間抜けな悲鳴と共に、リナは見事にその穴の中へと吸い込まれていった。下に何があるのかは分からないが、しばらくして「ぷはーっ! なんとか水場で助かったー!」という元気な声が聞こえてきたので、命に別状はないらしい。……ドジここに極まれり、である。
気を取り直して先に進むと、今度は通路に甘い香りが立ち込めてきた。同時に、きらきらと光る美しい胞子が、ふわりふわりと宙を舞い始める。
「幻覚作用のある、胞子だ! みんな、息を止めるんだ!」
サラが警告を発するが、時すでに遅し。俺たちは皆、その美しい胞子を吸い込んでしまっていた。
「へっへっへ……。こりゃあ、たまんねえや……。見てみろよ、ユウキの旦那……。絶世の美女たちが、俺様のために、水着で情熱的なサンバを踊ってくれてるぜ……」
ジンは、だらしなくよだれを垂らしながら、何もない空間に向かってデレデレと手招きをしている。彼の目には、一体どんな楽園が映っているのだろうか。
「……見つけた……! これだ! これこそが、この洞窟の構造を完璧に記した、伝説の見取り図……! これさえあれば、もう、私は迷わない……!」
一方サラは、壁の単なる染みを、古代の地図だと完全に勘違いしていた。彼女はその壁にへばりつき、恍惚の表情で染みを指でなぞり始めている。もう誰も彼女を止められない。
「皆さん! 私の魔法で、この忌まわしい幻覚を打ち破ります! 『ディスペル・イリュージョン』!」
唯一まとも(?)なセレスティアが、正義感に燃えて杖を構える。しかし、彼女の放った浄化の魔法は、またしても盛大に暴発した。
幻覚は、消えなかった。むしろ、三倍の濃度になって俺たちの精神を侵食し、目の前にそれぞれのトラウマや、最も苦手とするものの幻を、より鮮明に映し出したのだ。
(うわああああ! 大量の、苦くて青臭いピーマンだあああああ!)
俺の目の前には、山のように積まれたピーマンの幻が出現し、強烈な青臭さ(の幻)が鼻をついた。子供の頃からのトラウマが、今、ここに。
「な、なんてことでしょう! 骨です! 大量の骨が、邪悪な魔力に反応してアンデッドとして動き出しました!」
マリアの悲鳴が洞窟に響き渡る。はっと我に返ると、通路の脇に打ち捨てられていたおびただしい数の獣の骨が、カタカタと不気味な音を立てて組み上がり、巨大なスケルトンの軍団と化して俺たちを取り囲んでいた。これは幻覚ではない、本物だ。
「皆さん、お下がりください! 私が、聖なる光で、この者たちを浄化してみせます!」
純粋な善意から、マリアが両手を天に掲げようとする。だが、彼女の「うっかり」がこれまでどれほどの惨事を引き起こしてきたか、俺たちは嫌というほど知っている。
「「「「やめてええええええええええ!」」」」
俺たちは、全員で、マリアを必死で羽交い締めにして止めた。彼女の浄化魔法は、なぜかアンデッドを十倍強化してしまうというとんでもないバグを抱えているのだ。
「ふはははは! この扉を開きたくば、我らが女神に関する、三つの問いに正しく答えるがよい!」
スケルトンから逃れ、たどり着いた次の部屋では、巨大な石の扉が道を塞いでいた。扉には顔が浮かび上がり、尊大な声でクイズをふっかけてくる。
「お任せください、聖勇者様! 女神様クイズなど、このアンジェラにとっては、赤子の手をひねるより簡単なことですわ!」
女神のこととなると目の色が変わるアンジェラが、自信満々に前に進み出た。
第一問『女神様が、最も、お好きな食べ物は?』
「答えは、もちろん、カリカリに焼いた香ばしいパンです!」
ブブーッ! という無慈悲なブザー音と共に、天井から大量の金属製のタライが、アンジェラめがけて降ってきた。ガンガンガン!
第二問『女神様が、最も、お嫌いなものは?』
「答えは、信仰心なき、愚かなる者!」
ブブーッ! 今度は、壁に仕込まれた無数の穴から、びゅんびゅんと矢が飛んできた。幸い、俺の祝福のおかげで誰にも当たらなかったが、心臓に悪い。
第三問『女神様の、スリーサイズは?』
「なっ……! そ、そのような、俗な問いで女神様を測ろうなど、不敬千万! 神罰! 『ゴッド・スマッシュ』!」
アンジェラは完全に逆上し、クイズに答えることを放棄。その巨大なウォーハンマーで、石の扉を粉々に破壊した。……結果的に、道は開けたが。
第五章:奇跡のめちゃくちゃ連携 もはや、パーティは崩壊寸前だった。
仲間たちの、それぞれが持つ素晴らしいほどの欠点が、見事なまでに負の連鎖を引き起こし、俺たちは洞窟の奥深くで、完全に身動きが取れなくなっていた。
四方からは、先ほどのスケルトン軍団に加え、新たに現れたゾンビやゴーストがじりじりと包囲網を狭めてくる。天井からは、アンジェラの破壊の衝撃で緩んだ岩が、時折パラパラと降り注ぎ、足元には、リナが見つけられなかった無数の落とし穴が口を開けている。幻覚の胞子もまだ完全には消えておらず、視界の端でピーマンが踊っている。
「ああ……もう、めちゃくちゃだ……!」
俺が、思わず天を仰いだ、その時だった。
脳裏に、これまでの仲間たちのポンコツな行動が、走馬灯のように駆け巡った。ジンの当たらぬ剣、サラの明後日の突撃、セレスティアの暴発魔法、リナの神がかり的なドジ、アンジェラのズレた知識、マリアのうっかり蘇生……。どれもこれも、普通に考えれば絶望的な欠点だ。
だが。
その瞬間、俺の中で何かがカチリと音を立てて噛み合った。そうだ、欠点? それは、見方を変えれば、誰にも予測できない最大の武器になるんじゃないか?
「でも!」
俺は、腹の底から叫んだ。
「でも、だからこそ、俺たちがいるんじゃねえか!」
俺は、混乱する仲間たち一人一人の顔を見渡した。そうだ。こいつらは、どうしようもない、欠点だらけのポンコツ集団だ。だけど、だからこそ面白い。だからこそ、誰にも真似できない、俺たちだけの強さがあるんだ。
俺は、司令塔と化したソフィアの隣で、叫んだ。
「サラさん! その天性の方向音痴で、敵をめちゃくちゃに掻き乱してくれ!」
「えっ!? あ、ああ、任せろ!」
戸惑いながらも、サラは俺の言葉を信じて戦場を駆け巡る。彼女の、敵味方の区別なく、全く予測不能な動きに、統率の取れていたはずのアンデッドたちは大混乱に陥り、同士討ちを始めた。
「ジンさん! あっちに、ものすごく色っぽい女の幽霊がいるぞ! 今すぐ口説いてこい!」
「なぬっ!? 美女の幽霊だと!? ようし、任せとけ!」
俺が指さした先には、ひときわ強力なオーラを放つリーダー格のゴーストがいた。ジンの、スケベ心に火がついた猛烈な突撃が、見事にその強敵の注意を引きつけてくれた。
「セレスティア! あそこの、敵が一番固まってるところに、思いっきり魔法をぶっ放せ! 暴発なんて気にするな!」
「え、ええ!? でも、また皆さんに迷惑が……」「いいから、やれ! 俺を信じろ!」
俺の強い言葉に、セレスティアは覚悟を決めて杖を構える。案の定、放たれた巨大な火球はとんでもない方向へ飛んでいったが、俺はその軌道を祝福パワーで無理やり捻じ曲げ、敵陣のど真ん中に誘導した。凄まじい轟音と共に、アンデッドの一団が大爆発で吹き飛んだ。
「リナ! その神業的なドジを利用して、罠にわざと派手にかかってこい!」
「ひどい!? でも、やるしかないんだね!」
リナは叫びながら、わざと落とし穴に飛び込んだり、仕掛けられたロープに足を引っかけたりする。そのたびに、後から追ってくる敵が、見事に道連れになって罠の餌食になっていく。
「アンジェラ! その、ズレまくった女神知識で、あの壁画の謎を解いてみろ! きっと何かある!」
「お任せを! 私の記憶が正しければ、女神様は左利きのハズ!」
彼女が、壁画に描かれた女神像の左手を、何の脈絡もなく押した。すると、ゴゴゴゴという地響きと共に、行き止まりだと思われていた壁が回転し、隠し通路が出現した。なぜだ!
「マリア! そこの、壊れて動かなくなったゴーレムに、リザレクションを!」
「は、はい! やってみます!」
マリアの、いつものうっかり蘇生魔法が、敵の残骸だったはずの石のゴーレムに注がれる。すると、ゴーレムは赤い殺意の光ではなく、青い忠誠の光を目に宿して復活し、俺たちの頼もしい味方としてアンデッドに殴りかかり始めた。
そして、そのめちゃくちゃな連携の中心にいるのが、俺とソフィアだった。
「ユウキ! 次は右! 敵の詠唱が終わる前に、あの壁の燭台を剣で倒しなさい!」
「はい、ソフィアさん!」
彼女は、女神として培った膨大な知識と経験で、まるで未来予知のように的確な指示を次々と飛ばす。そして俺は、仲間たちを、そして何より彼女を、心の底から信じて戦場を駆け抜けた。
数々の死線と、悪意に満ちたトラップを、奇跡的、というか、完全にむちゃくちゃなチームワークで乗り越えて。
俺たちは、ついに、洞窟の最深部へとたどり着いた。
それは、ただの寄せ集めだった俺たちが、初めてお互いの、どうしようもなく欠点すらも受け入れ、それを武器として補い合う、「本当の仲間」になれた瞬間だったのかもしれない。
洞窟の最深部は、巨大なドーム状の空間になっていた。その中央には、これまでの扉とは比較にならないほど巨大で、無数の鎖と紋様で厳重に封印された、大いなる扉が鎮座している。扉の隙間からは、これまでとは比較にならないほど強大で、純粋な悪意の塊のような気が、黒い靄となって漏れ出していた。あれが、魔神の封印。
そして、その扉の前には、黒いローブをまとった数人の人影が、まるで俺たちが来るのを分かっていたかのように、静かに待ち構えていた。
「――よくぞ、ここまで来た、女神の使徒よ」
ローブの一人が、ゆっくりとフードを取り、その顔を現した。闇の中でも爛々と光る、蛇のように冷たい瞳。間違いない。あの夜会にいた、法国の枢機卿だった。
「そして、まさか、女神本人もご一緒とはな。これは、我らにとっても、実に好都合というものだ」
枢機卿の言葉に、仲間たちが息を呑む。彼の言葉の意味するところを、誰もが瞬時に理解した。
そして、全員の視線が、一斉にソフィアに注がれた。
敵は、知っていた。ソフィアが、人間の姿をとった女神本人であるという、最大の秘密を。ソフィアは、表情こそ変えなかったが、その紫色の瞳が、ほんのわずかに揺らぐのを俺は見逃さなかった。
静寂が、空間を支配する。これまでとは質の違う、張り詰めた緊張の糸が、俺たちと魔神教団との間に張り渡された。
物語は、もはや後戻りのできない、最終局面へと向けて一気に加速していく。
本当の、俺たちの戦いは、ここから、始まるのだ。
その日、俺たち一行は国王陛下その人から、謁見の間に直々に呼び出された。玉座に腰かけた陛下の表情は、いつになく険しく、その威厳に満ちた声には深い憂慮の色が滲んでいた。与えられたのは、国家の命運を左右しかねない、極秘中の極秘任務。その内容は、我々の想像を遥かに超えるものだった。
「法国の背後でうごめく、邪悪な勢力の調査、そして、その目的の阻止を命ずる」
重々しく告げられた言葉は、謁見の間の荘厳な静寂に吸い込まれていく。事の発端は、先日催された夜会での出来事にあった。ソフィアが、法国の使節団を率いていた枢機卿から感じ取った、あの纏わりつくような邪悪な気配。それは、彼女の記憶の奥底に刻まれた、決して忘れることのできない感覚と酷似していたという。
この世界の理そのものを歪め、遥か古の時代に神々と英雄たちによってかろうじて封印された「魔神」。その禁忌の存在を現世に再び呼び覚まさんとする狂信者の一団、人々がその名を口にすることすら畏れる「魔神教団」。枢機卿が纏っていたオーラは、まさしくその教団に属する者が放つ、魂を腐らせるような瘴気そのものだったのだ。
ソフィアの静かな、しかし確信に満ちた証言は、国王陛下を動かすに十分だった。魔神の復活。それは、この大陸全土の破滅を意味する。そして、姿を消した枢機卿たちが復活の儀式を執り行うために、真っ先に狙うであろう場所。その候補は、ただ一つに絞られた。王都から遥か北、険しい山々が連なる広大な山脈地帯の奥深く、人々の記憶からも地図からも忘れ去られた場所に隠された、「封印の洞窟」。そここそが、古の魔神が眠る聖域であり、同時に、この世界で最も危険な場所だった。
「このままじゃ、ダメだ……!」
出発を翌日に控えた、その夜。俺は王城の一角、月の光が白く降り注ぐバルコニーで、ひとり夜風に吹かれていた。大理石の手すりはひんやりと冷たく、それがかえって俺の内で燃え盛る焦燥感を際立たせる。眼下に広がる王都の灯りは、まるで遠い星空のように瞬いていたが、その穏やかな光景とは裏腹に、俺の心は鉛のように重かった。
これまでの戦いを振り返る。巨大な海の怪物クラーケンとの死闘も、かつて行われた模擬戦も、俺が勝利を掴めたのは、決して俺自身の力によるものではなかった。その全てが、ソフィアが与えてくれた女神の祝福、そして女神様が直々に鍛えたという規格外の武具の性能のおかげだ。俺はただ、その強大な力に「守られていた」に過ぎない。俺自身の剣の腕は、技量は、そして覚悟は、本当にこの過酷な運命に立ち向かうに足るものなのだろうか。
この先、魔神教団という、これまでとは比較にならない本物の脅威と対峙した時、俺は本当に仲間たちを守り抜けるのだろうか。女神の祝福が、もしも通じないほどの邪悪な敵が現れた時、俺のこの手には何が残るのだろう。無力感という名の冷たい靄が、じわじわと心を侵食していく。守りたい。このかけがえのない仲間たちを、俺のこの手で、今度こそ。その想いが強ければ強いほど、己の非力さが浮き彫りになるようで、奥歯を強く噛み締めた。
「俺、強くなりたいです。ソフィアさん」
いつの間にか隣に立っていた彼女の気配に気づき、俺は絞り出すように、初めて自分の弱い心を正直に打ち明けた。月光を浴びて銀色に輝く彼女の髪が、夜風にそっと揺れる。俺の不意の告白に、ソフィアは少しだけ紫色の瞳を見開いて驚いたようだったが、すぐにふっと、まるで全てを包み込むような慈愛に満ちた笑みを浮かべた。
「ええ。貴方なら、きっとなれますよ。私が、ついていますから」
その静かで、けれど何よりも力強い言葉が、俺の心の靄を晴らしていくようだった。そうだ、一人で悩む必要はない。俺には、彼女が、そして頼もしい仲間たちがいる。俺がすべきは、無力さに打ちひしがれることではなく、たとえ僅かでも前に進むための努力をすることだ。
こうして、北への過酷な旅路を目前にした最後の半日を使い、俺は生まれて初めてとなる本気の「特訓」に挑むことになったのだ。
場所は、王城が誇る広大な訓練場。夏の終わりを告げる少しだけ涼しくなった風が、俺の新たな決意を後押しするように、汗ばんだ頬を優しく撫でていった。しかし、もちろんのこと。この俺の切実な願いから始まったはずの特訓が、まともなものになるはずもなかったのである。
夜が明け、朝靄が訓練場を包む中、俺たちの「特訓」は幕を開けた。俺の真摯な想いとは裏腹に、そこに集った仲間たちの瞳は、どこか見当違いの熱意に燃えていた。
「いくぜ、ユウキ! 問答無用、真剣勝負だ!」
最初の相手として名乗りを上げたのは、自称・最強の剣士にしてパーティの切り込み隊長、ジン。
俺は、先日陛下から賜った『退魔の白銀剣』をぐっと握りしめ、構えた。伝説の業物だ。こいつを使いこなせれば、俺だって……。だが、いざ構えてみると、Fランクの俺の腕力ではずしりと重く、切っ先がふらついてしまう。その聖なる重みは、今の俺には明らかに手に余る代物だった。
「くっ……やっぱり、今の俺じゃ剣に振り回されるだけか……!」
焦る俺をよそに、模擬戦とはいえ、ジンの眼光は狩人のように鋭く、抜き放たれた愛剣は朝日にきらりと輝いている。彼の猛攻は、まさに嵐そのものだった。常人ならば一太刀で切り伏せられるであろう神速の連撃が、間断なく俺に襲いかかる。
しかし、俺はそれらをことごとく、紙一重で避けていく。いや、正確には「避けている」のではない。「避けている」のだ。
「うおおらあっ!」
ジンの気合と共に放たれた渾身の斬撃が、俺の眉間を正確に捉えようとした、その刹那。どこからともなく飛来した一匹の大きな蜂が、ブウンという羽音を立ててジンの鼻先をかすめた。
「うおっ!?」
一瞬、そちらに気を取られたジンの剣先は、ほんの数ミリ、俺の額の上で軌道をずらし、虚しく空を切る。冷や汗が背中を伝った。
「まだまだ! 足元ががら空きだぜ!」
体勢を立て直したジンが、今度は俺の足元を狙って鋭い薙ぎ払いを繰り出す。それは回避困難な、完璧な一撃だった。だが、その瞬間、俺はふと、自分のブーツの靴紐がほどけていることに気づいた。
「おっと」
無意識に、危険を察知したわけでもなく、ただ純粋に靴紐を結び直そうと身をかがめた俺の頭上を、ジンの剣が轟音と共に通り過ぎていく。もし立ち続けていれば、俺の両足は胴体とさよならしていただろう。
結局、俺にできたのは、ソフィアさんの加護を頼りに逃げ回ることだけだった。手に持った白銀の剣は、一度も交わることなく虚しく重いままだった。
そんな、奇跡的な偶然――もとい、ソフィアの祝福による絶妙な幸運の連続に、ジンは一人で勝手にスタミナを消耗していった。彼の剣は一度も俺を捉えることなく、訓練場の土を削り、風を切るばかり。やがて、ぜえぜえと激しく肩で息をしながら、彼は膝から崩れ落ちるように地面に倒れ込んだ。
「な……んで……当たらねえんだ……。お前、いつの間にそんな動きを……」
ぜいぜいと喘ぐジンを横目に、次に意気揚々と進み出たのは、自称「鉄壁の守護騎士(ガーディアン)」のサラだった。
「ユウキ! 今度は私と連携の訓練だ! 私が派手に突撃して敵の注意を引きつける! その隙にお前が背後から斬りかかれ!」
作戦自体は理に適っている。彼女はそう言うと、仮想の敵がいるであろう訓練場の中央に向かって、愛用の槍を構え勇ましく突撃した。しかし、彼女には致命的な欠点があった。そう、絶望的なまでの方向音痴である。彼女は自分が、どの方向から、どの敵の注意を引きつけるべきか、全く分かっていなかったのだ。
「こっちだ、化け物! 私の槍の錆にしてくれる!」
サラが高らかに叫んで突進した方向は、あろうことか、彼女の真後ろ――つまり、連携して背後から奇襲をかけるはずの俺がいる方向だった。俺に向かって「化け物」とは、あんまりではないだろうか。
「師匠! 次は魔法の回避訓練です! 私のこの、無数の氷の矢を、どうか避けてみてください! いきますよ、『アイシクル・レイン』!」
純粋な瞳でそう申し出たのは、俺の弟子であるセレスティアだ。彼女の魔法の才能は本物だが、いかんせんコントロールに致命的な問題を抱えている。彼女が掲げた杖の先端に、凄まじい冷気を纏った数十本の氷の矢が生成される。その光景は美しくも恐ろしい。しかし、放たれた矢は、なぜか俺とは全く関係のない方向へと飛んでいき、訓練場の隅で手塩にかけて育てられていた、色とりどりの美しい薔薇園に向かって降り注いだ。
ザクザクザクッ! という無慈悲な音と共に、咲き誇っていた薔薇の花々が無残にも切り刻まれていく。
「あーーーーっ! 私の薔薇がーーーーっ!」
遠くから、この城に仕える庭師の、魂からの悲痛な叫び声が聞こえてきた。俺はそっと空を仰いだ。
「聖勇者様! 貴方様のその聖なる鎧の強度、この私が試してしんぜます! これも女神の試練! いざ!」
最後に登場したのは、女神信仰に全てを捧げる狂信的なシスター、アンジェラ。彼女はもはや「訓練」という概念をどこかに置き忘れ、本気で俺を殺しにかかってきた。巨大なウォーハンマーを振りかぶり、神に祈りを捧げながら、何の躊躇もなく俺の胸元に叩きつけてくる。
ガギィィィン! という、鼓膜が破れそうなほどの衝撃音。だが、彼女の渾身の一撃が俺の胸当てに直撃するたびに、女神謹製の聖なる防具は、その衝撃を完璧に吸収し、びくともしない。それどころか、反作用の法則に従い、凄まじい衝撃がアンジェラ自身の手に跳ね返っていた。
「ぬうう……! なんという、神々しいまでの硬さ……! これぞ、女神の祝福の顕現! 感涙にむせびそうです!」
アンジェラは、自分の両手がビリビリと痺れ、感覚がなくなりかけていることにも構わず、恍惚の表情でハンマーを何度も何度も打ち付け続けた。
「ユウキの旦那! シーフたるもの、気配を消して背後を取るのが極意! いきますよ!」
そう叫んで姿を消したはずのリナだったが、数秒後には「あ痛っ!」という情けない声と共に、何もない平らな地面で派手に転び、懐に隠し持っていた大量のおやつを盛大にばら撒いて自滅した。気配を消すどころか、甘い匂いを漂わせてどうする。
訓練は、めちゃくちゃだった。誰一人として、まともな訓練になっていない。俺の強化には一ミリも繋がらなかったと言っていいだろう。
だが、それでも。強くなりたい、という俺の真摯な想いだけは、この、どうしようもなく頼りになる、そしてどうしようもなくポンコツな仲間たちに、確かに、伝わっていたはずだ。彼らの、明後日の方向を向いた熱意の中に、俺への信頼と友情が確かに感じられたから。俺は、苦笑いを浮かべながらも、この仲間たちとなら、どんな困難も乗り越えられるかもしれない、と柄にもなくそう思ったのだった。
王都の喧騒を背に、俺たちは北を目指して馬を進めていた。出発前の混沌とした特訓が嘘のように、旅の始まりは穏やかだった。しかし、王都の城壁が見えなくなり、広大な平原を抜けて北へ、さらに北へと進むにつれて、周囲の風景はその彩度を急速に失っていった。
生命力に満ち溢れていた緑豊かな草原は、次第に背の低い草とゴツゴツとした岩が目立つ荒涼とした大地へと姿を変えた。そして、何日か馬を走らせた頃、俺たちの行く手に、不気味な森がその巨大な口を開けて待ち構えていた。道は、まるで奈落に誘うかのように、その霧深い、鬱蒼とした森の中へと吸い込まれていった。
森の中に一歩足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。常に薄暗く、昼間だというのにまるで夕暮れ時のようだ。天を覆い尽くさんばかりに枝葉を伸ばした巨大な木々が、太陽の光をほとんど通さないのだ。地面は分厚い苔に覆われ、一歩足を踏み出すたびに、じゅ、と湿った音を立てて腐葉土のむせるような匂いが立ち上る。
そして、何よりも不気味だったのは、その完全なる静寂だ。
鳥の声も、虫の音も、風に葉が擦れる音すら、一切聞こえない。聞こえるのは、俺たちの乗る馬が湿った土を踏む蹄の音と、時折、肌を刺すような冷たい霧を運んでくる、不自然な風の音だけ。まるで、この森に棲む全ての生き物たちが、目に見えない何かを恐れ、息を殺して身を潜めているかのようだった。それは、生命の気配が全く感じられない、死んだ森だった。
「……ソフィアさん。なんだか、気味が悪いですね」
俺は、隣で静かに馬を歩ませるソフィアに、思わず声をかけた。ただの森ではない。この異常な静けさは、尋常ならざる何かがこの地を支配している証拠だ。
「ええ」
ソフィアは、その美しい眉をわずかに寄せ、鋭い視線で周囲を警戒していた。
「この濃い霧は、ただの自然現象ではありません。この土地一帯に満ちている邪悪な魔力が、世界の理そのものを歪め、生命の活動を阻害しているのです。封印の洞窟は、もう、近いでしょう」
彼女の言葉は、これまでの旅にはなかった、確かな緊張感を俺たち一行にもたらした。遊びや訓練ではない。これから始まるのは、世界の命運を賭けた本物の戦いだ。俺はごくりと唾を飲み込み、愛剣の柄を強く握りしめた。仲間たちの顔にも、等しく覚悟の色が浮かんでいた。
俺たちの、本当の戦いは、ここから、始まるのだ。
何時間歩き続いただろうか。方向感覚を狂わせる濃霧の中、俺たちはソフィアの導きだけを頼りに進んだ。そして、不意に霧が薄れ、視界が開けた先に、それはあった。
天を突くような切り立った崖の中腹に、ぽっかりと空いた巨大な穴。まるで、太古の巨獣が怒りのままに山肌を喰い破ったかのような、禍々しい威圧感を放つ洞窟の入り口。その漆黒の闇の奥からは、骨身に染みるような冷気と共に、これまでの森の比ではないほど濃密な邪悪のオーラが、絶えず漏れ出してきている。その影響か、洞窟の入り口の周囲だけは、草木一本生えておらず、黒く変色した大地が剥き出しになっていた。
「……ここが、封印の洞窟……」
ゴクリ、と誰かが固唾を飲む音が、静寂の中でやけに大きく響いた。これほどの邪気を前にして、恐怖を感じない者などいない。だが、俺たちには引き返すという選択肢はなかった。俺たちは互いの顔を見合わせ、無言で頷き合うと、覚悟を決めてその闇の中へと足を踏み入れた。
洞窟の内部は、意外にも人工的に掘られた滑らかな通路が、どこまでも続いていた。壁には、古代の文字と思しき奇妙な文様や、神々と魔神の壮絶な戦いの様子を描いたのであろう、色褪せた壁画が延々と刻まれている。歴史の重みを感じさせる荘厳な空間。しかし、その通路には、侵入者を拒む数々の悪意に満ちたトラップが、巧妙に仕掛けられていた。
「よし! この先は、シーフのあたしに任せな!」
パーティの斥候役であるリナが、得意げに胸を張って前に出た。彼女は、軽やかな、それでいて慎重な足取りで先行していく。そして、少し先の何もないように見える通路で、ピタリと足を止めた。
「ふんふん、なるほどね……。ここの床、よく見ると周りと巧妙に色が変えられてる。これは間違いなく、定番の落とし穴だ。でも、大丈夫! あたしのシーフとしての目と、長年の経験はごまかせないよ! こっちの、壁際が安全ルートだ!」
彼女が、自信満々にそう宣言した、まさにその直後だった。
彼女が立っていた、その安全なはずの壁際の床が、何の音もなく、パカッ、と綺麗に開いた。
「あれえええええええええ!?」
間抜けな悲鳴と共に、リナは見事にその穴の中へと吸い込まれていった。下に何があるのかは分からないが、しばらくして「ぷはーっ! なんとか水場で助かったー!」という元気な声が聞こえてきたので、命に別状はないらしい。……ドジここに極まれり、である。
気を取り直して先に進むと、今度は通路に甘い香りが立ち込めてきた。同時に、きらきらと光る美しい胞子が、ふわりふわりと宙を舞い始める。
「幻覚作用のある、胞子だ! みんな、息を止めるんだ!」
サラが警告を発するが、時すでに遅し。俺たちは皆、その美しい胞子を吸い込んでしまっていた。
「へっへっへ……。こりゃあ、たまんねえや……。見てみろよ、ユウキの旦那……。絶世の美女たちが、俺様のために、水着で情熱的なサンバを踊ってくれてるぜ……」
ジンは、だらしなくよだれを垂らしながら、何もない空間に向かってデレデレと手招きをしている。彼の目には、一体どんな楽園が映っているのだろうか。
「……見つけた……! これだ! これこそが、この洞窟の構造を完璧に記した、伝説の見取り図……! これさえあれば、もう、私は迷わない……!」
一方サラは、壁の単なる染みを、古代の地図だと完全に勘違いしていた。彼女はその壁にへばりつき、恍惚の表情で染みを指でなぞり始めている。もう誰も彼女を止められない。
「皆さん! 私の魔法で、この忌まわしい幻覚を打ち破ります! 『ディスペル・イリュージョン』!」
唯一まとも(?)なセレスティアが、正義感に燃えて杖を構える。しかし、彼女の放った浄化の魔法は、またしても盛大に暴発した。
幻覚は、消えなかった。むしろ、三倍の濃度になって俺たちの精神を侵食し、目の前にそれぞれのトラウマや、最も苦手とするものの幻を、より鮮明に映し出したのだ。
(うわああああ! 大量の、苦くて青臭いピーマンだあああああ!)
俺の目の前には、山のように積まれたピーマンの幻が出現し、強烈な青臭さ(の幻)が鼻をついた。子供の頃からのトラウマが、今、ここに。
「な、なんてことでしょう! 骨です! 大量の骨が、邪悪な魔力に反応してアンデッドとして動き出しました!」
マリアの悲鳴が洞窟に響き渡る。はっと我に返ると、通路の脇に打ち捨てられていたおびただしい数の獣の骨が、カタカタと不気味な音を立てて組み上がり、巨大なスケルトンの軍団と化して俺たちを取り囲んでいた。これは幻覚ではない、本物だ。
「皆さん、お下がりください! 私が、聖なる光で、この者たちを浄化してみせます!」
純粋な善意から、マリアが両手を天に掲げようとする。だが、彼女の「うっかり」がこれまでどれほどの惨事を引き起こしてきたか、俺たちは嫌というほど知っている。
「「「「やめてええええええええええ!」」」」
俺たちは、全員で、マリアを必死で羽交い締めにして止めた。彼女の浄化魔法は、なぜかアンデッドを十倍強化してしまうというとんでもないバグを抱えているのだ。
「ふはははは! この扉を開きたくば、我らが女神に関する、三つの問いに正しく答えるがよい!」
スケルトンから逃れ、たどり着いた次の部屋では、巨大な石の扉が道を塞いでいた。扉には顔が浮かび上がり、尊大な声でクイズをふっかけてくる。
「お任せください、聖勇者様! 女神様クイズなど、このアンジェラにとっては、赤子の手をひねるより簡単なことですわ!」
女神のこととなると目の色が変わるアンジェラが、自信満々に前に進み出た。
第一問『女神様が、最も、お好きな食べ物は?』
「答えは、もちろん、カリカリに焼いた香ばしいパンです!」
ブブーッ! という無慈悲なブザー音と共に、天井から大量の金属製のタライが、アンジェラめがけて降ってきた。ガンガンガン!
第二問『女神様が、最も、お嫌いなものは?』
「答えは、信仰心なき、愚かなる者!」
ブブーッ! 今度は、壁に仕込まれた無数の穴から、びゅんびゅんと矢が飛んできた。幸い、俺の祝福のおかげで誰にも当たらなかったが、心臓に悪い。
第三問『女神様の、スリーサイズは?』
「なっ……! そ、そのような、俗な問いで女神様を測ろうなど、不敬千万! 神罰! 『ゴッド・スマッシュ』!」
アンジェラは完全に逆上し、クイズに答えることを放棄。その巨大なウォーハンマーで、石の扉を粉々に破壊した。……結果的に、道は開けたが。
第五章:奇跡のめちゃくちゃ連携 もはや、パーティは崩壊寸前だった。
仲間たちの、それぞれが持つ素晴らしいほどの欠点が、見事なまでに負の連鎖を引き起こし、俺たちは洞窟の奥深くで、完全に身動きが取れなくなっていた。
四方からは、先ほどのスケルトン軍団に加え、新たに現れたゾンビやゴーストがじりじりと包囲網を狭めてくる。天井からは、アンジェラの破壊の衝撃で緩んだ岩が、時折パラパラと降り注ぎ、足元には、リナが見つけられなかった無数の落とし穴が口を開けている。幻覚の胞子もまだ完全には消えておらず、視界の端でピーマンが踊っている。
「ああ……もう、めちゃくちゃだ……!」
俺が、思わず天を仰いだ、その時だった。
脳裏に、これまでの仲間たちのポンコツな行動が、走馬灯のように駆け巡った。ジンの当たらぬ剣、サラの明後日の突撃、セレスティアの暴発魔法、リナの神がかり的なドジ、アンジェラのズレた知識、マリアのうっかり蘇生……。どれもこれも、普通に考えれば絶望的な欠点だ。
だが。
その瞬間、俺の中で何かがカチリと音を立てて噛み合った。そうだ、欠点? それは、見方を変えれば、誰にも予測できない最大の武器になるんじゃないか?
「でも!」
俺は、腹の底から叫んだ。
「でも、だからこそ、俺たちがいるんじゃねえか!」
俺は、混乱する仲間たち一人一人の顔を見渡した。そうだ。こいつらは、どうしようもない、欠点だらけのポンコツ集団だ。だけど、だからこそ面白い。だからこそ、誰にも真似できない、俺たちだけの強さがあるんだ。
俺は、司令塔と化したソフィアの隣で、叫んだ。
「サラさん! その天性の方向音痴で、敵をめちゃくちゃに掻き乱してくれ!」
「えっ!? あ、ああ、任せろ!」
戸惑いながらも、サラは俺の言葉を信じて戦場を駆け巡る。彼女の、敵味方の区別なく、全く予測不能な動きに、統率の取れていたはずのアンデッドたちは大混乱に陥り、同士討ちを始めた。
「ジンさん! あっちに、ものすごく色っぽい女の幽霊がいるぞ! 今すぐ口説いてこい!」
「なぬっ!? 美女の幽霊だと!? ようし、任せとけ!」
俺が指さした先には、ひときわ強力なオーラを放つリーダー格のゴーストがいた。ジンの、スケベ心に火がついた猛烈な突撃が、見事にその強敵の注意を引きつけてくれた。
「セレスティア! あそこの、敵が一番固まってるところに、思いっきり魔法をぶっ放せ! 暴発なんて気にするな!」
「え、ええ!? でも、また皆さんに迷惑が……」「いいから、やれ! 俺を信じろ!」
俺の強い言葉に、セレスティアは覚悟を決めて杖を構える。案の定、放たれた巨大な火球はとんでもない方向へ飛んでいったが、俺はその軌道を祝福パワーで無理やり捻じ曲げ、敵陣のど真ん中に誘導した。凄まじい轟音と共に、アンデッドの一団が大爆発で吹き飛んだ。
「リナ! その神業的なドジを利用して、罠にわざと派手にかかってこい!」
「ひどい!? でも、やるしかないんだね!」
リナは叫びながら、わざと落とし穴に飛び込んだり、仕掛けられたロープに足を引っかけたりする。そのたびに、後から追ってくる敵が、見事に道連れになって罠の餌食になっていく。
「アンジェラ! その、ズレまくった女神知識で、あの壁画の謎を解いてみろ! きっと何かある!」
「お任せを! 私の記憶が正しければ、女神様は左利きのハズ!」
彼女が、壁画に描かれた女神像の左手を、何の脈絡もなく押した。すると、ゴゴゴゴという地響きと共に、行き止まりだと思われていた壁が回転し、隠し通路が出現した。なぜだ!
「マリア! そこの、壊れて動かなくなったゴーレムに、リザレクションを!」
「は、はい! やってみます!」
マリアの、いつものうっかり蘇生魔法が、敵の残骸だったはずの石のゴーレムに注がれる。すると、ゴーレムは赤い殺意の光ではなく、青い忠誠の光を目に宿して復活し、俺たちの頼もしい味方としてアンデッドに殴りかかり始めた。
そして、そのめちゃくちゃな連携の中心にいるのが、俺とソフィアだった。
「ユウキ! 次は右! 敵の詠唱が終わる前に、あの壁の燭台を剣で倒しなさい!」
「はい、ソフィアさん!」
彼女は、女神として培った膨大な知識と経験で、まるで未来予知のように的確な指示を次々と飛ばす。そして俺は、仲間たちを、そして何より彼女を、心の底から信じて戦場を駆け抜けた。
数々の死線と、悪意に満ちたトラップを、奇跡的、というか、完全にむちゃくちゃなチームワークで乗り越えて。
俺たちは、ついに、洞窟の最深部へとたどり着いた。
それは、ただの寄せ集めだった俺たちが、初めてお互いの、どうしようもなく欠点すらも受け入れ、それを武器として補い合う、「本当の仲間」になれた瞬間だったのかもしれない。
洞窟の最深部は、巨大なドーム状の空間になっていた。その中央には、これまでの扉とは比較にならないほど巨大で、無数の鎖と紋様で厳重に封印された、大いなる扉が鎮座している。扉の隙間からは、これまでとは比較にならないほど強大で、純粋な悪意の塊のような気が、黒い靄となって漏れ出していた。あれが、魔神の封印。
そして、その扉の前には、黒いローブをまとった数人の人影が、まるで俺たちが来るのを分かっていたかのように、静かに待ち構えていた。
「――よくぞ、ここまで来た、女神の使徒よ」
ローブの一人が、ゆっくりとフードを取り、その顔を現した。闇の中でも爛々と光る、蛇のように冷たい瞳。間違いない。あの夜会にいた、法国の枢機卿だった。
「そして、まさか、女神本人もご一緒とはな。これは、我らにとっても、実に好都合というものだ」
枢機卿の言葉に、仲間たちが息を呑む。彼の言葉の意味するところを、誰もが瞬時に理解した。
そして、全員の視線が、一斉にソフィアに注がれた。
敵は、知っていた。ソフィアが、人間の姿をとった女神本人であるという、最大の秘密を。ソフィアは、表情こそ変えなかったが、その紫色の瞳が、ほんのわずかに揺らぐのを俺は見逃さなかった。
静寂が、空間を支配する。これまでとは質の違う、張り詰めた緊張の糸が、俺たちと魔神教団との間に張り渡された。
物語は、もはや後戻りのできない、最終局面へと向けて一気に加速していく。
本当の、俺たちの戦いは、ここから、始まるのだ。
68
あなたにおすすめの小説
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
疎遠だった叔父の遺産が500億円分のビットコインだった件。使い道がないので、隣の部屋の塩対応な美少女に赤スパ投げまくってる件
月下花音
恋愛
貧乏大学生の成瀬翔は、疎遠だった叔父から500億円相当のビットコインが入ったUSBメモリを相続する。使い道に困った彼が目をつけたのは、ボロアパートの薄い壁の向こうから聞こえる「声」だった。隣人は、大学で「氷の令嬢」と呼ばれる塩対応な美少女・如月玲奈。しかしその正体は、同接15人の極貧底辺VTuber「ルナ・ナイトメア」だったのだ!
『今月ももやし生活だよぉ……ひもじい……』
壁越しに聞こえる悲痛な叫び。翔は決意する。この500億で、彼女を最強の配信者に育て上げようと。謎の大富豪アカウント『Apollo(アポロ)』として、5万円の赤スパを投げ、高級機材を即配し、彼女の生活を神の視点で「最適化」していく。しかし彼はまだ知らなかった。「金で買えるのは生活水準だけで、孤独は埋められない」ということに。500億を持った「見えない神様」が、神の座を捨てて、地上の女の子の手を握るまでの救済ラブコメディ。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
「働きたくない…」と本気で祈ったら怠惰の神が降臨。【フルオート】で身の回りを快適にしていたら、インフラを整備した救国の英雄になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
過労死した俺が転生して誓ったのは、ただ一つ。「今世こそは絶対に働かない!」
その強すぎる祈りは怠惰の神に通じ、万能スキル【全自動化(フルオート)】を授かった。これで完璧な引きこもり生活ができる!…はずだった。
水汲みが面倒で井戸を掘れば水不足が解決し、買い物が面倒で街道を整備すれば国の物流が激変。俺はただ楽をしたいだけなのに、なぜか周囲は俺を「深謀遠慮の聖人」と勘違いしていく。真面目な王女騎士や天才エルフ魔術師にまで崇められて、もう逃げ場がない!
本人の意思とは裏腹に、怠惰を極めるほど国が豊かになり、ついには救国の英雄に祭り上げられていく男の、勘違いスローライフ(?)ファンタジー、ここに開幕!
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる