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シーズン1 F級の祝福者と、恋する女神の英雄譚
第17話:『女神様と歩む異世界は、これからも祝福と騒動まみれ!』
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最初に感じたのは、どこまでも柔らかな光だった。 無理やり瞼をこじ開けられるような、暴力的で無遠慮な光ではない。かといって、意識の淵から引きずり出すような、冷たい光でもない。それはまるで、春の陽だまりに包まれるような、穏やかで温かい光だった。閉じた瞼の裏側から、じんわりと、慈しむように熱が染み渡り、長い間、暗闇に沈んでいた世界が、ゆっくりと、しかし確かな色彩を取り戻していく。そんな心地よい感覚が、俺の意識を優しく揺り起こした。
次に聞こえてきたのは、遠い喧騒の音だった。それは決して不快な騒音ではなく、生命力に満ち溢れたざわめき。石畳の道を闊歩する人々の賑やかな話し声、軽快に響く馬車の蹄の音、そして、どこからか風に乗って運ばれてくる、教会の穏やかで荘厳な鐘の音。それら全ての音が渾然一体となり、まるで世界全体が平和の訪れを祝福しているかのような、壮大な交響曲となって俺の耳に届いた。
俺、佐藤ユウキは、その温かな光と音に導かれるように、ゆっくりと、本当にゆっくりと、重い瞼を開いた。
視界に飛び込んできたのは、息を呑むほどに豪華絢爛な天蓋だった。深い深紅のビロードには、目も眩むような黄金の刺繍が、緻密かつ大胆な紋様を描き出している。それはおそらく、この国の王家の紋章なのだろう。ふわりと体を包み込むシーツは、まるで天上の雲を紡いで作られたかのように滑らかで柔らかく、部屋には、これまで一度も嗅いだことのない、甘く清らかな花の香りが満ちていた。それは薔薇でもなく、百合でもない。気品と安らぎを同時に感じさせる、不思議な香りだった。
(……ああ、そうか。俺は、あの忌まわしき魔神との最後の戦いで……それで……)
途切れ途切れの記憶が、脳裏に明滅する。世界の全てを絶望の闇に染め上げようとした魔神の、おぞましい姿。仲間たちの悲痛な叫び。絶体絶命の窮地で、俺が最後の希望を託して握りしめた聖剣。仲間たちから託された全ての想いを乗せた聖剣が放った、七色の虹の如き眩い光。そして、全ての力が尽き果て、薄れゆく意識の中で腕に感じた確かな温もりと、最後に耳元で聞こえた、愛しい人の、震える声。
そうだ、全ては夢ではなかった。俺たちは戦い、そして、おそらくは勝利したのだ。
薄れゆく意識の淵で、確か、駆けつけてきた騎士団の、大地を揺らすような足音を聞いた気がする。どうやら俺たちは、あの後すぐに保護され、こうして王都まで運ばれてきたらしい。
その事実をようやく認識した俺は、ゆっくりと、軋むような体を起こそうとした。その時、自分の右手に、柔らかな、そして確かな温もりがあることに気がついた。それは、ただシーツに触れているのとは明らかに違う、生命の温かさだった。
不思議に思って視線を落とすと、俺の右手は、誰かの、まるで白魚のように細く美しい、透き通るような白い手によって、固く、固く、それでいて壊れ物を扱うかのように優しく握りしめられていた。その手は、俺が眠っている間、片時も離すまいと誓ったかのように、俺の指に絡みついていた。
その手の主は、俺のベッドの脇に誂えられた豪奢な椅子の上で、小さな体を丸くして、すうすうと静かな寝息を立てていた。きっと、何日も眠らずに俺に付き添ってくれていたのだろう。その寝顔には、隠しようもない疲労の色が滲んでいた。
陽光を受けてきらきらと輝く、流れるようなプラチナブロンドの髪。長い睫毛に縁取られた、安らかながらもどこか憂いを帯びた閉じた瞳。少しだけあどけなさの残る、陶器のように滑らかな頬と、形の良い小さな唇。 俺が、この理不尽で、けれど美しい世界に来て、初めて出会い、一目で恋に落ちた、俺の、たった一人の、かけがえのない女神様。
ソフィアだった。
彼女は、俺が意識を失っている間、ずっと、こうして、ただひたすらに俺の手を握りしめ、そばにいてくれたのだろう。その健気で、あまりにも愛おしい姿に、俺の胸は、熱い感情の奔流で満たされ、張り裂けそうになった。言葉にならない感謝と愛情が、込み上げてくる。
俺は、空いている左手をそっと伸ばし、彼女の、その絹のように柔らかな髪を、壊さないように、起こさないように、細心の注意を払いながら撫でた。指先に触れるプラチナブロンドの感触は、想像していた以上に心地よく、俺の心を穏やかにしてくれた。
「……ん……」
その、ほんのわずかな感触に、彼女の長い睫毛が、ふるりと蝶の羽のように震えた。 そして、ゆっくりと、その夏の終わりの静かな湖面を思わせる、深く、澄み渡った美しい青い瞳が、現実の光を受け止めた。
最初は、まだ夢の続きを映しているかのようにぼんやりとしていたその瞳が、やがて焦点を結び、ベッドの上で半身を起こしている俺の姿を、はっきりと捉えた、瞬間。 その美しい青い瞳が、これまでに見たことがないほど、信じられないという驚愕に、大きく、大きく、見開かれた。
「…………ユウキ……?」
彼女の声は、長い間声を発していなかったかのように、ひどく掠れていた。それは、問いかけというよりも、信じられない光景を前にした、無意識の呟きに近かった。 そして、次の瞬間。
彼女の、その美しい瞳から、大粒の涙が、まるで長い間塞き止められていたダムが決壊したかのように、ぽろぽろと、後から後から、とめどなくこぼれ落ち始めた。
「……! ユウキ! 目が、覚めたのですね……! よかった……本当に、よかった……!」
嗚咽混じりのその声は、もはや公爵令嬢としての気品も、聖女としての威厳もかなぐり捨てた、素の彼女のものだった。彼女はもう、人々が崇める女神の仮面など、どこかへ捨て去ってしまっていた。ただ、愛する人の目覚めを、心の底から、魂の底から喜ぶ、一人の、恋する乙女の顔で、俺の胸に、その華奢な体を預けるように飛び込んできた。
俺は、その、震える華奢で温かい体を、全ての愛情を込めて、力強く、しかし優しく抱きしめ返した。彼女の背中に回した腕に力がこもる。失いたくない、二度と離したくないという本能的な想いが、俺をそうさせた。彼女のプラチナブロンドの髪が俺の頬をくすぐり、甘い花の香りと、彼女自身の香りが混じり合って、俺の理性を蕩かしていく。
ああ、帰ってきたんだ。俺は、この腕の中にある温もりのために、この世界の未来のために、戦ったんだ。このかけがえのない瞬間を取り戻すために、全てを懸けたんだ。その実感と安堵感が、津波のように俺の全身を駆け巡った。
その時だった。俺とソフィアが、二人だけの世界で再会を噛み締めていた、その静寂を打ち破って、部屋の扉が、まるで攻城兵器の突撃を受けたかのように、凄まじい勢いで、バンッ! と開かれた。
「ユウキが、目を覚ましたって、本当か!?」 野太く、それでいて喜びを隠せない声と共に飛び込んできたのは、俺の剣の師匠であり、頼れる兄貴分でもある騎士のジンだった。
「師匠! ご無事でしたか! 心配で、心配で、夜も眠れませんでしたよ!」 ジンの後ろから、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、俺の一番弟子であるサラが続く。その手には、いつも通り巨大な槍が握られていた。
「聖勇者様! お目覚め、心からお祝い申し上げます! 神々の御加護に感謝を!」 祈るように手を組み、法衣をまとった生真面目な神官、アンジェラもまた、厳格な表情を喜びで崩していた。
「ユウキ! あんた、どれだけ心配させれば気が済むのよ! このバカ!」 軽やかな足取りで駆け込んできたのは、天才的な魔法使いのセレスティア。その悪態は、彼女なりの最大の愛情表現だ。
「ユウキさん……! よかったです……! 本当に、本当によかったです……!」 最後に、おずおずと部屋に入ってきたのは、心優しいヒーラーのマリア。彼女の瞳からも、安堵の涙が静かに流れ落ちていた。
仲間たちが、全員、なだれ込むように部屋に入ってきたのだ。 その顔は、皆、安堵の涙と、心配で流した涙の名残である鼻水と、そして、心の底からの喜びを隠しきれない満面の笑みで、ぐちゃぐちゃだった。それはお世辞にも美しい光景ではなかったかもしれないが、俺にとっては、世界中のどんな宝石よりも、どんな絶景よりも、輝いて見える、愛おしい光景だった。
俺は、腕の中でまだしゃくり上げているソフィアを優しく抱きしめたまま、そんな、どうしようもなく騒々しくて、どうしようもなく愛おしい仲間たちの顔を一人ひとり見渡し、最高の笑顔で、言った。
「おう。ただいま、みんな」
その一言に、俺の全ての想いを込めて。
◇
俺が意識を取り戻してから、数日が経過した。マリアの献身的な治癒魔法と、王城の侍医たちによる最高の治療のおかげで、魔神との死闘で負った深手は見る見るうちに癒え、体力も完全に回復していた。仲間たちとの久々の語らいや、ソフィアとの穏やかな時間は、何よりの良薬だった。
そして今日、俺たちは再び、あの壮麗な謁見の間に立っていた。磨き上げられた大理石の床は俺たちの姿を鏡のように映し、高く掲げられたシャンデリアは無数のクリスタルをきらめかせている。玉座に座す国王陛下の顔には、以前にも増して深い威厳と、そして俺たちに対する温かい慈愛の色が浮かんでいた。
国王陛下は、荘厳な声で、改めて俺たちに、世界を滅亡の淵から救ったことへの、最大限の感謝の言葉を述べた。
「枢機卿の消滅と共に、ロザリア法国を覆っていた不気味な洗脳も解けたようだ。正気を取り戻した教皇からは、これまでの非礼を詫びる親書が届いている。これで、戦争の危機は完全に去った。すべては、そなたたちの働きのおかげだ」
その言葉の一つ一つには、一国の王としてだけでなく、この世界に生きる一人の人間としての、偽らざる想いが込められているように感じられた。そして、前回提示されたものを遥かに凌駕する、まさに破格としか言いようのない褒賞を、俺たちに提示してきた。
「聖勇者ユウキ殿。貴公の功績は、いかなる言葉をもってしても称え尽くせるものではない。よって、貴公には公爵の位と、この国で最も豊穣にして風光明媚であると謳われる、南方の領地を与えよう。温暖な気候に恵まれ、交易も盛んな、まさに楽園と呼ぶにふさわしい土地だ。そして、貴公と共に世界を救った他の仲間たちにも、それぞれ、伯爵の位と、各自の望む限りの褒美を与えるつもりだ。金銀財宝、名誉ある地位、望むものは何でも与えよう」
公爵。そして、広大な領地。 それは、平民出身の、いや、異世界からやってきた俺のような若者にとっては、想像を絶する栄誉だ。普通ならば、狂喜乱舞し、五体投地してでも受け取るべき、究極の成功の証だろう。南方の領主となれば、一生かかっても使い切れぬほどの富と、絶大な権力を手にすることができる。
隣に立つ仲間たちも、固唾を飲んで俺の決断を見守っている。彼らの表情からは、緊張と期待が入り混じった複雑な感情が読み取れた。彼らは俺の選択に全てを委ねてくれている。俺が「受ける」と言えば喜び、たとえ「断る」と言っても、きっと文句一つ言わずに従ってくれるだろう。その信頼が、ずしりと重い。
だが、俺の答えは、この謁見の間に来るずっと前から、目覚めたあの瞬間から、決まっていた。
(……ソフィアさんが女神様本人だなんて言ったら、国中が大パニックになって、旅どころじゃなくなる。だから俺たちは、魔神を倒したのは陛下から頂いた『退魔の白銀剣』に秘められた聖なる力が覚醒したおかげだ、ということに報告書ではでっち上げておいた。手柄を剣に押し付けることで、彼女の正体を伏せておくことに成功したのだ。)
もし国王陛下が、ソフィアの正体を知れば、公爵位どころか、国を挙げての崇拝が始まり、彼女は神殿の奥深くに祭り上げられてしまうだろう。そうなれば、二度と二人で自由に旅をすることなど叶わなくなる。だから、俺たちはただの「英雄とそのパートナー」として、ここに立っている必要があった。
俺は、一歩前に進み出て、国王陛下に向かって、深々と、腰を九十度に折って頭を下げた。感謝と、そして、これから告げる言葉への謝罪の意を込めて。
「陛下。その、あまりにも身に余る、もったいないお申し出、心から、魂から感謝いたします。陛下の御心、そして王国の方々の温かいお気持ちは、生涯忘れることはございません。ですが、どうか、この無礼をお許しください。俺は、公爵などという大役をこなせる器ではございません。俺は、ただの、しがない冒険者なのです」
ゆっくりと顔を上げた俺は、国王陛下の驚きを含んだ瞳を、まっすぐに見つめ返した。そして、静かに隣に立つ、俺の愛する人の姿に、そっと視線を移した。彼女は、俺の言葉に驚くでもなく、ただ静かに、信頼に満ちた瞳で俺を見守ってくれていた。
「俺は、これからも、このどうしようもなく騒がしくて、かけがえのない仲間たちと、そして、俺の隣にいるソフィアと一緒に、この、俺たちが命を懸けて守った広い世界を、旅して回りたいんです。まだ見ぬ景色を見て、まだ出会わぬ人々と語らい、困っている人がいれば手を差し伸べる。それが、俺がこの世界でやりたいこと。俺の、たった一つの、そして最大の望みですから」
俺は一度言葉を切り、少しだけ声を潜めて、しかしはっきりと言葉を継いだ。
「公爵位も領地も、自由な旅には重すぎます。それに、資金に関しても――以前いただいた褒賞と、今回の件で少しばかり上乗せしていただいた路銀があれば、俺たちの旅には十分すぎるほどですので」
国王陛下は、最初は驚いた顔を隠せずにいたが、やがて、その威厳に満ちた表情がふっと和らぎ、深く、深く、全てを理解したように頷いた。
「……そうか。いかにも、君らしい答えだな。富や名誉よりも、仲間との絆と自由な旅を選ぶか。それこそが真の勇者の姿なのかもしれんな。分かった。君の、その気高く、そして高潔な意志を、尊重しよう」
その言葉は、俺たちの新たな門出を祝福する、何よりの贈り物となった。
◇
謁見の後、俺はエリザベート王女に、個人的に呼び出された。 場所は、王城の中庭にある、彼女が特に気に入っているという薔薇園だった。赤、白、黄色、ピンクと、色とりどりの薔薇が甘い香りを漂わせながら咲き誇り、まるで絵画のような美しさだった。
「……振られちゃった、わね」
手入れの行き届いた噴水の縁に腰掛けた彼女は、少しだけ寂しそうに、しかし自嘲するでもなく、からりとした笑顔でそう言った。
「でも、謁見の間で見てて、はっきりと分かったわ。あなたと、あの、ソフィアとかいう人の、あの絆の深さには、今の私じゃ、到底、敵わないって。二人が見つめ合っている時の空気、あれはもう、他の誰も入り込めないものだもの」
「エリザベートさん……」 彼女の潔さと優しさに、俺はかける言葉も見つからなかった。
「でも!」 その時、彼女はくるりと、勢いよくこちらに向き直った。その美しい瞳には、もう先ほどまでの寂しげな色はなく、いつもの、快活で、燃えるような、真夏のヒマワリを思わせる強い光が宿っていた。
「これで、諦めたわけじゃないんだから! 私は、もっともっと自分を磨いて、政治も、武芸も、女性としての魅力も、全てにおいて最高の女になってみせるわ! そしていつか、絶対に、あなたをソフィアさんから奪い取ってみせる! だから、覚悟しておきなさいよ!」
彼女はそう高らかに宣言すると、いたずらっぽく笑いながら俺に歩み寄り、その柔らかい唇で、俺の頬に、ちゅっ、と、鳥が羽ばたくように軽いキスをした。そして、驚きで固まっている俺を尻目に、「じゃあね!」と手を振り、軽やかな足取りで庭園の向こうへと走り去っていった。
その去り際まで、実に彼女らしかった。清々しく、力強く、そして魅力的だ。 これは、厄介で、そして最高に素敵な、良きライバルの誕生だった。
◇
その数日後。 世界を救った英雄たちを称え、そして魔神の脅威が去った平和の訪れを祝う、盛大な、それはもう歴史に残るであろう規模の祝勝の宴が、王城の大広間で開かれた。
大広間は、この日のために最高の装飾が施され、天井からは巨大なシャンデリアが星々のように輝き、壁には英雄譚を描いたタペストリーが掲げられている。そこには、王国の重鎮たちや各国の使者だけでなく、俺たちがこれまでの長い旅の道中で出会い、世話になった、懐かしい顔ぶれも特別に招待されていた。
商業都市アルカディアのギルドで、いつも俺たちに無茶な依頼を回してくれた受付嬢のミリアさん。水の都アクアリアで、商売のいざこざを解決した時に世話になった商人たち。魔獣に苦しめられていた鉱山の村ダストピットの、頑固だけど心優しい村長さん。皆、俺たちの活躍を伝え聞き、はるばる王都まで駆けつけてくれたのだという。再会を喜び、酒を酌み交わし、思い出話に花を咲かせる時間は、何物にも代えがたい喜びだった。
そして、その宴は、もちろん、ただ静かに終わるはずがなかった。 これまでの、俺たちの波乱万丈な旅の集大成とでも言うべき、最後にして、最大の大ドタバタ劇が、予測不能な形で繰り広げられたのだ。
「おお! こちらの、隣国からお越しの麗しきマダム! なんと、燃えるように情熱的な瞳をお持ちか! この私と、愛のタンゴを、一曲踊っていただけませんか!」 「あら、いやだわ、このスケベな騎士様ったら! お上手ですこと!」 洒落者で女好きのジンは、どこかの国の妖艶な貴婦人を口説き落とし、フロアの真ん中で、もはや社交ダンスというよりは格闘技にしか見えない、激しくもコミカルなダンスバトルを繰り広げている。リフトやスピンの度に、周囲から歓声と悲鳴が上がっていた。
「うおおおおお! 王国の騎士団長さーん! もしよろしければ、この私と、腕相撲で勝負していただけませんかあ!」 「望むところだ、女傑! だが、我が王国騎士団長の誇りにかけて、手加減はせんぞ! 負けても、泣くんじゃないぞ!」 すっかり酔いが回ったサラと、なぜかそれに触発されたアンジェラは、本来なら最も厳格であるべき近衛騎士団の団長を巻き込み、なんと晩餐のテーブルの上で、ガチンコの腕相撲大会を始めてしまった。屈強な騎士団長と互角に渡り合う二人の姿に、周りの兵士たちから「いけー!」「団長、負けるなー!」と野太い声援が飛んでいる。
「皆さーん! このおめでたい席に、私からもお祝いの魔法を、ご覧くださーい!」 場の盛り上がりに気を良くしたセレスティアが、余興で魔法を披露しようと立ち上がった。彼女に悪気がないことは、俺たちが一番よく知っている。
「テーブルの上の、美味しいお料理を、もっともっと、華やかに彩りますね! 『フラワー・カーニバル』!」 彼女の手のひらから放たれた、きらびやかなピンク色の光が、会場中の全てのテーブルに、まるで祝福のシャワーのように降り注いだ。すると、こんがりと焼かれたローストチキンも、サクサクのミートパイも、濃厚なコンソメスープも、全てが一瞬にして、色とりどりの、それはそれは美しい花々に変わってしまったのだ。
「あーーーーっ! 俺が楽しみにしていた肉があああああ!」 「わたくしの、フォアグラのソテーが、一輪の真紅の薔薇に……! 美しいけれど、これじゃない……!」 会場は、一瞬の静寂の後、美食を奪われた貴族たちの阿鼻叫喚に包まれた。
「あ、あわわわわ! す、すみません! 私が、すぐに元に戻しますから!」 予想外の事態にパニックになったマリアが、慌ててお祈りのポーズをとる。 「おお、聖なる光よ、その姿を、本来あるべき、栄養満点の食料の姿に……!」 彼女の、優しく清らかな光が、テーブルの上の花々を包み込む。すると、花は元の料理には戻らず、なぜか、ローストチキンだったものが、コケコッコー! と、生命力に満ち溢れた元気な鳴き声を上げる、完全に生きているニワトリとして、蘇生してしまった。他の料理も、豚や牛の鳴き声を上げ始め、大混乱に拍車をかける。
バタバタバタッ! 蘇生したニワトリたちが、自由を得たとばかりに会場中を勢いよく飛び回り、逃げ惑う貴婦人たちの、豪華絢爛な髪飾りの上に、次々と着地していく。もはや、祝勝の宴は、混沌と狂乱の渦に飲み込まれていた。
俺は、その、あまりにもカオスで、めちゃくちゃで、そして、どうしようもなく楽しくて愛おしい光景を、壁際で呆れながら眺めていた。 その、俺の隣には、いつの間にかソフィアが、寄り添うように立っていた。 彼女もまた、目の前で繰り広げられる大騒ぎを、少し呆れたような、しかし、どこかとても楽しそうな目で、優しく見つめている。
「……ふふっ」 「あはははは!」
どちらからともなく、俺たちは顔を見合わせて、吹き出した。 そして、そのまま、二人で腹を抱えて、涙が出るほど、心の底から笑い合った。そうだ、これこそが俺たちの日常だ。こんなめちゃくちゃな仲間たちだからこそ、どんな困難も乗り越えられたのだ。
◇
喧騒の宴の、翌日。 突き抜けるように晴れ渡った空の下、俺たちは、王都の巨大な正門の前に立っていた。 見送りには、エリザベート王女を始め、国王陛下や王妃陛下、昨日の宴で散々な目にあった近衛騎士団長や大臣たち、そして、仲間になったばかりのたくさんの人々が、別れを惜しむように集まってくれていた。
俺たちは、結局、冒険者として、自由な旅を続けることを選んだ。 公爵の爵位も、豊穣な領地も、この国に縛り付けられる権力も、俺たちには必要なかった。手に入れようと思えば手に入ったそれらのものを、俺たちは自ら手放した。(もっとも、以前の褒賞に加え、当面の旅費として、路銀だけはありがたく頂戴しておいたが。) 俺たちが、本当に欲しいものは、そんな形のあるものじゃないからだ。それは、これまでの旅で、とっくに手に入れているのだから。
「じゃあ、行ってきます!」
俺は、見送りに来てくれた全ての人々に向かって、感謝を込めて大きく手を振った。 その、俺の右手を、ソフィアの、柔らかくて、温かい手が、そっと、包み込むように握り返してきた。 見上げると、彼女は、これまでで最高の、幸せに満ち足りた笑顔で、俺に、優しく微笑み返してくれた。 その顔にはもう、人々が崇拝した『聖女』や、気高く振る舞っていた『公爵令嬢』といった、女神の仮面などどこにもなかった。 ただ、愛する人の隣で、未来への希望に胸を膨らませて幸せそうに微笑む、一人の、この世で最も美しい女性が、そこにいた。
「待てよ、ユウキ! 俺を置いていく気か!」 「師匠、お供します! どこまでも!」 「聖勇者様、私もおそばに!」 「ユウキさん、待ってください! 荷物が重いですー!」
後ろから、いつもの、少しも変わらない、騒々しくて賑やかな声が追いかけてくる。 俺たちは、振り返り、顔を見合わせて、また、幸せに笑った。
どこまでも続く、青い空。 どこまでも広がる、緑の大地。 俺たちの、新しい冒険が、また、ここから始まる。
女神様と歩むこの異世界は、これからも、神々の祝福と、揺るぎない愛と、そして、どうしようもない、ドタバタと、混沌(カオス)に、満ち溢れているのだろう。
――でも、まあ。
そんな、めちゃくちゃで、波乱万丈な毎日が、きっと、最高に、幸せなんだ。
俺は、隣に立つ、世界一の恋人の手を、この幸せを確かめるように、強く、強く、握りしめた。彼女もまた、同じ力で、俺の手を握り返してくれた。その温もりさえあれば、俺たちはどこまでだって行ける。
次に聞こえてきたのは、遠い喧騒の音だった。それは決して不快な騒音ではなく、生命力に満ち溢れたざわめき。石畳の道を闊歩する人々の賑やかな話し声、軽快に響く馬車の蹄の音、そして、どこからか風に乗って運ばれてくる、教会の穏やかで荘厳な鐘の音。それら全ての音が渾然一体となり、まるで世界全体が平和の訪れを祝福しているかのような、壮大な交響曲となって俺の耳に届いた。
俺、佐藤ユウキは、その温かな光と音に導かれるように、ゆっくりと、本当にゆっくりと、重い瞼を開いた。
視界に飛び込んできたのは、息を呑むほどに豪華絢爛な天蓋だった。深い深紅のビロードには、目も眩むような黄金の刺繍が、緻密かつ大胆な紋様を描き出している。それはおそらく、この国の王家の紋章なのだろう。ふわりと体を包み込むシーツは、まるで天上の雲を紡いで作られたかのように滑らかで柔らかく、部屋には、これまで一度も嗅いだことのない、甘く清らかな花の香りが満ちていた。それは薔薇でもなく、百合でもない。気品と安らぎを同時に感じさせる、不思議な香りだった。
(……ああ、そうか。俺は、あの忌まわしき魔神との最後の戦いで……それで……)
途切れ途切れの記憶が、脳裏に明滅する。世界の全てを絶望の闇に染め上げようとした魔神の、おぞましい姿。仲間たちの悲痛な叫び。絶体絶命の窮地で、俺が最後の希望を託して握りしめた聖剣。仲間たちから託された全ての想いを乗せた聖剣が放った、七色の虹の如き眩い光。そして、全ての力が尽き果て、薄れゆく意識の中で腕に感じた確かな温もりと、最後に耳元で聞こえた、愛しい人の、震える声。
そうだ、全ては夢ではなかった。俺たちは戦い、そして、おそらくは勝利したのだ。
薄れゆく意識の淵で、確か、駆けつけてきた騎士団の、大地を揺らすような足音を聞いた気がする。どうやら俺たちは、あの後すぐに保護され、こうして王都まで運ばれてきたらしい。
その事実をようやく認識した俺は、ゆっくりと、軋むような体を起こそうとした。その時、自分の右手に、柔らかな、そして確かな温もりがあることに気がついた。それは、ただシーツに触れているのとは明らかに違う、生命の温かさだった。
不思議に思って視線を落とすと、俺の右手は、誰かの、まるで白魚のように細く美しい、透き通るような白い手によって、固く、固く、それでいて壊れ物を扱うかのように優しく握りしめられていた。その手は、俺が眠っている間、片時も離すまいと誓ったかのように、俺の指に絡みついていた。
その手の主は、俺のベッドの脇に誂えられた豪奢な椅子の上で、小さな体を丸くして、すうすうと静かな寝息を立てていた。きっと、何日も眠らずに俺に付き添ってくれていたのだろう。その寝顔には、隠しようもない疲労の色が滲んでいた。
陽光を受けてきらきらと輝く、流れるようなプラチナブロンドの髪。長い睫毛に縁取られた、安らかながらもどこか憂いを帯びた閉じた瞳。少しだけあどけなさの残る、陶器のように滑らかな頬と、形の良い小さな唇。 俺が、この理不尽で、けれど美しい世界に来て、初めて出会い、一目で恋に落ちた、俺の、たった一人の、かけがえのない女神様。
ソフィアだった。
彼女は、俺が意識を失っている間、ずっと、こうして、ただひたすらに俺の手を握りしめ、そばにいてくれたのだろう。その健気で、あまりにも愛おしい姿に、俺の胸は、熱い感情の奔流で満たされ、張り裂けそうになった。言葉にならない感謝と愛情が、込み上げてくる。
俺は、空いている左手をそっと伸ばし、彼女の、その絹のように柔らかな髪を、壊さないように、起こさないように、細心の注意を払いながら撫でた。指先に触れるプラチナブロンドの感触は、想像していた以上に心地よく、俺の心を穏やかにしてくれた。
「……ん……」
その、ほんのわずかな感触に、彼女の長い睫毛が、ふるりと蝶の羽のように震えた。 そして、ゆっくりと、その夏の終わりの静かな湖面を思わせる、深く、澄み渡った美しい青い瞳が、現実の光を受け止めた。
最初は、まだ夢の続きを映しているかのようにぼんやりとしていたその瞳が、やがて焦点を結び、ベッドの上で半身を起こしている俺の姿を、はっきりと捉えた、瞬間。 その美しい青い瞳が、これまでに見たことがないほど、信じられないという驚愕に、大きく、大きく、見開かれた。
「…………ユウキ……?」
彼女の声は、長い間声を発していなかったかのように、ひどく掠れていた。それは、問いかけというよりも、信じられない光景を前にした、無意識の呟きに近かった。 そして、次の瞬間。
彼女の、その美しい瞳から、大粒の涙が、まるで長い間塞き止められていたダムが決壊したかのように、ぽろぽろと、後から後から、とめどなくこぼれ落ち始めた。
「……! ユウキ! 目が、覚めたのですね……! よかった……本当に、よかった……!」
嗚咽混じりのその声は、もはや公爵令嬢としての気品も、聖女としての威厳もかなぐり捨てた、素の彼女のものだった。彼女はもう、人々が崇める女神の仮面など、どこかへ捨て去ってしまっていた。ただ、愛する人の目覚めを、心の底から、魂の底から喜ぶ、一人の、恋する乙女の顔で、俺の胸に、その華奢な体を預けるように飛び込んできた。
俺は、その、震える華奢で温かい体を、全ての愛情を込めて、力強く、しかし優しく抱きしめ返した。彼女の背中に回した腕に力がこもる。失いたくない、二度と離したくないという本能的な想いが、俺をそうさせた。彼女のプラチナブロンドの髪が俺の頬をくすぐり、甘い花の香りと、彼女自身の香りが混じり合って、俺の理性を蕩かしていく。
ああ、帰ってきたんだ。俺は、この腕の中にある温もりのために、この世界の未来のために、戦ったんだ。このかけがえのない瞬間を取り戻すために、全てを懸けたんだ。その実感と安堵感が、津波のように俺の全身を駆け巡った。
その時だった。俺とソフィアが、二人だけの世界で再会を噛み締めていた、その静寂を打ち破って、部屋の扉が、まるで攻城兵器の突撃を受けたかのように、凄まじい勢いで、バンッ! と開かれた。
「ユウキが、目を覚ましたって、本当か!?」 野太く、それでいて喜びを隠せない声と共に飛び込んできたのは、俺の剣の師匠であり、頼れる兄貴分でもある騎士のジンだった。
「師匠! ご無事でしたか! 心配で、心配で、夜も眠れませんでしたよ!」 ジンの後ろから、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、俺の一番弟子であるサラが続く。その手には、いつも通り巨大な槍が握られていた。
「聖勇者様! お目覚め、心からお祝い申し上げます! 神々の御加護に感謝を!」 祈るように手を組み、法衣をまとった生真面目な神官、アンジェラもまた、厳格な表情を喜びで崩していた。
「ユウキ! あんた、どれだけ心配させれば気が済むのよ! このバカ!」 軽やかな足取りで駆け込んできたのは、天才的な魔法使いのセレスティア。その悪態は、彼女なりの最大の愛情表現だ。
「ユウキさん……! よかったです……! 本当に、本当によかったです……!」 最後に、おずおずと部屋に入ってきたのは、心優しいヒーラーのマリア。彼女の瞳からも、安堵の涙が静かに流れ落ちていた。
仲間たちが、全員、なだれ込むように部屋に入ってきたのだ。 その顔は、皆、安堵の涙と、心配で流した涙の名残である鼻水と、そして、心の底からの喜びを隠しきれない満面の笑みで、ぐちゃぐちゃだった。それはお世辞にも美しい光景ではなかったかもしれないが、俺にとっては、世界中のどんな宝石よりも、どんな絶景よりも、輝いて見える、愛おしい光景だった。
俺は、腕の中でまだしゃくり上げているソフィアを優しく抱きしめたまま、そんな、どうしようもなく騒々しくて、どうしようもなく愛おしい仲間たちの顔を一人ひとり見渡し、最高の笑顔で、言った。
「おう。ただいま、みんな」
その一言に、俺の全ての想いを込めて。
◇
俺が意識を取り戻してから、数日が経過した。マリアの献身的な治癒魔法と、王城の侍医たちによる最高の治療のおかげで、魔神との死闘で負った深手は見る見るうちに癒え、体力も完全に回復していた。仲間たちとの久々の語らいや、ソフィアとの穏やかな時間は、何よりの良薬だった。
そして今日、俺たちは再び、あの壮麗な謁見の間に立っていた。磨き上げられた大理石の床は俺たちの姿を鏡のように映し、高く掲げられたシャンデリアは無数のクリスタルをきらめかせている。玉座に座す国王陛下の顔には、以前にも増して深い威厳と、そして俺たちに対する温かい慈愛の色が浮かんでいた。
国王陛下は、荘厳な声で、改めて俺たちに、世界を滅亡の淵から救ったことへの、最大限の感謝の言葉を述べた。
「枢機卿の消滅と共に、ロザリア法国を覆っていた不気味な洗脳も解けたようだ。正気を取り戻した教皇からは、これまでの非礼を詫びる親書が届いている。これで、戦争の危機は完全に去った。すべては、そなたたちの働きのおかげだ」
その言葉の一つ一つには、一国の王としてだけでなく、この世界に生きる一人の人間としての、偽らざる想いが込められているように感じられた。そして、前回提示されたものを遥かに凌駕する、まさに破格としか言いようのない褒賞を、俺たちに提示してきた。
「聖勇者ユウキ殿。貴公の功績は、いかなる言葉をもってしても称え尽くせるものではない。よって、貴公には公爵の位と、この国で最も豊穣にして風光明媚であると謳われる、南方の領地を与えよう。温暖な気候に恵まれ、交易も盛んな、まさに楽園と呼ぶにふさわしい土地だ。そして、貴公と共に世界を救った他の仲間たちにも、それぞれ、伯爵の位と、各自の望む限りの褒美を与えるつもりだ。金銀財宝、名誉ある地位、望むものは何でも与えよう」
公爵。そして、広大な領地。 それは、平民出身の、いや、異世界からやってきた俺のような若者にとっては、想像を絶する栄誉だ。普通ならば、狂喜乱舞し、五体投地してでも受け取るべき、究極の成功の証だろう。南方の領主となれば、一生かかっても使い切れぬほどの富と、絶大な権力を手にすることができる。
隣に立つ仲間たちも、固唾を飲んで俺の決断を見守っている。彼らの表情からは、緊張と期待が入り混じった複雑な感情が読み取れた。彼らは俺の選択に全てを委ねてくれている。俺が「受ける」と言えば喜び、たとえ「断る」と言っても、きっと文句一つ言わずに従ってくれるだろう。その信頼が、ずしりと重い。
だが、俺の答えは、この謁見の間に来るずっと前から、目覚めたあの瞬間から、決まっていた。
(……ソフィアさんが女神様本人だなんて言ったら、国中が大パニックになって、旅どころじゃなくなる。だから俺たちは、魔神を倒したのは陛下から頂いた『退魔の白銀剣』に秘められた聖なる力が覚醒したおかげだ、ということに報告書ではでっち上げておいた。手柄を剣に押し付けることで、彼女の正体を伏せておくことに成功したのだ。)
もし国王陛下が、ソフィアの正体を知れば、公爵位どころか、国を挙げての崇拝が始まり、彼女は神殿の奥深くに祭り上げられてしまうだろう。そうなれば、二度と二人で自由に旅をすることなど叶わなくなる。だから、俺たちはただの「英雄とそのパートナー」として、ここに立っている必要があった。
俺は、一歩前に進み出て、国王陛下に向かって、深々と、腰を九十度に折って頭を下げた。感謝と、そして、これから告げる言葉への謝罪の意を込めて。
「陛下。その、あまりにも身に余る、もったいないお申し出、心から、魂から感謝いたします。陛下の御心、そして王国の方々の温かいお気持ちは、生涯忘れることはございません。ですが、どうか、この無礼をお許しください。俺は、公爵などという大役をこなせる器ではございません。俺は、ただの、しがない冒険者なのです」
ゆっくりと顔を上げた俺は、国王陛下の驚きを含んだ瞳を、まっすぐに見つめ返した。そして、静かに隣に立つ、俺の愛する人の姿に、そっと視線を移した。彼女は、俺の言葉に驚くでもなく、ただ静かに、信頼に満ちた瞳で俺を見守ってくれていた。
「俺は、これからも、このどうしようもなく騒がしくて、かけがえのない仲間たちと、そして、俺の隣にいるソフィアと一緒に、この、俺たちが命を懸けて守った広い世界を、旅して回りたいんです。まだ見ぬ景色を見て、まだ出会わぬ人々と語らい、困っている人がいれば手を差し伸べる。それが、俺がこの世界でやりたいこと。俺の、たった一つの、そして最大の望みですから」
俺は一度言葉を切り、少しだけ声を潜めて、しかしはっきりと言葉を継いだ。
「公爵位も領地も、自由な旅には重すぎます。それに、資金に関しても――以前いただいた褒賞と、今回の件で少しばかり上乗せしていただいた路銀があれば、俺たちの旅には十分すぎるほどですので」
国王陛下は、最初は驚いた顔を隠せずにいたが、やがて、その威厳に満ちた表情がふっと和らぎ、深く、深く、全てを理解したように頷いた。
「……そうか。いかにも、君らしい答えだな。富や名誉よりも、仲間との絆と自由な旅を選ぶか。それこそが真の勇者の姿なのかもしれんな。分かった。君の、その気高く、そして高潔な意志を、尊重しよう」
その言葉は、俺たちの新たな門出を祝福する、何よりの贈り物となった。
◇
謁見の後、俺はエリザベート王女に、個人的に呼び出された。 場所は、王城の中庭にある、彼女が特に気に入っているという薔薇園だった。赤、白、黄色、ピンクと、色とりどりの薔薇が甘い香りを漂わせながら咲き誇り、まるで絵画のような美しさだった。
「……振られちゃった、わね」
手入れの行き届いた噴水の縁に腰掛けた彼女は、少しだけ寂しそうに、しかし自嘲するでもなく、からりとした笑顔でそう言った。
「でも、謁見の間で見てて、はっきりと分かったわ。あなたと、あの、ソフィアとかいう人の、あの絆の深さには、今の私じゃ、到底、敵わないって。二人が見つめ合っている時の空気、あれはもう、他の誰も入り込めないものだもの」
「エリザベートさん……」 彼女の潔さと優しさに、俺はかける言葉も見つからなかった。
「でも!」 その時、彼女はくるりと、勢いよくこちらに向き直った。その美しい瞳には、もう先ほどまでの寂しげな色はなく、いつもの、快活で、燃えるような、真夏のヒマワリを思わせる強い光が宿っていた。
「これで、諦めたわけじゃないんだから! 私は、もっともっと自分を磨いて、政治も、武芸も、女性としての魅力も、全てにおいて最高の女になってみせるわ! そしていつか、絶対に、あなたをソフィアさんから奪い取ってみせる! だから、覚悟しておきなさいよ!」
彼女はそう高らかに宣言すると、いたずらっぽく笑いながら俺に歩み寄り、その柔らかい唇で、俺の頬に、ちゅっ、と、鳥が羽ばたくように軽いキスをした。そして、驚きで固まっている俺を尻目に、「じゃあね!」と手を振り、軽やかな足取りで庭園の向こうへと走り去っていった。
その去り際まで、実に彼女らしかった。清々しく、力強く、そして魅力的だ。 これは、厄介で、そして最高に素敵な、良きライバルの誕生だった。
◇
その数日後。 世界を救った英雄たちを称え、そして魔神の脅威が去った平和の訪れを祝う、盛大な、それはもう歴史に残るであろう規模の祝勝の宴が、王城の大広間で開かれた。
大広間は、この日のために最高の装飾が施され、天井からは巨大なシャンデリアが星々のように輝き、壁には英雄譚を描いたタペストリーが掲げられている。そこには、王国の重鎮たちや各国の使者だけでなく、俺たちがこれまでの長い旅の道中で出会い、世話になった、懐かしい顔ぶれも特別に招待されていた。
商業都市アルカディアのギルドで、いつも俺たちに無茶な依頼を回してくれた受付嬢のミリアさん。水の都アクアリアで、商売のいざこざを解決した時に世話になった商人たち。魔獣に苦しめられていた鉱山の村ダストピットの、頑固だけど心優しい村長さん。皆、俺たちの活躍を伝え聞き、はるばる王都まで駆けつけてくれたのだという。再会を喜び、酒を酌み交わし、思い出話に花を咲かせる時間は、何物にも代えがたい喜びだった。
そして、その宴は、もちろん、ただ静かに終わるはずがなかった。 これまでの、俺たちの波乱万丈な旅の集大成とでも言うべき、最後にして、最大の大ドタバタ劇が、予測不能な形で繰り広げられたのだ。
「おお! こちらの、隣国からお越しの麗しきマダム! なんと、燃えるように情熱的な瞳をお持ちか! この私と、愛のタンゴを、一曲踊っていただけませんか!」 「あら、いやだわ、このスケベな騎士様ったら! お上手ですこと!」 洒落者で女好きのジンは、どこかの国の妖艶な貴婦人を口説き落とし、フロアの真ん中で、もはや社交ダンスというよりは格闘技にしか見えない、激しくもコミカルなダンスバトルを繰り広げている。リフトやスピンの度に、周囲から歓声と悲鳴が上がっていた。
「うおおおおお! 王国の騎士団長さーん! もしよろしければ、この私と、腕相撲で勝負していただけませんかあ!」 「望むところだ、女傑! だが、我が王国騎士団長の誇りにかけて、手加減はせんぞ! 負けても、泣くんじゃないぞ!」 すっかり酔いが回ったサラと、なぜかそれに触発されたアンジェラは、本来なら最も厳格であるべき近衛騎士団の団長を巻き込み、なんと晩餐のテーブルの上で、ガチンコの腕相撲大会を始めてしまった。屈強な騎士団長と互角に渡り合う二人の姿に、周りの兵士たちから「いけー!」「団長、負けるなー!」と野太い声援が飛んでいる。
「皆さーん! このおめでたい席に、私からもお祝いの魔法を、ご覧くださーい!」 場の盛り上がりに気を良くしたセレスティアが、余興で魔法を披露しようと立ち上がった。彼女に悪気がないことは、俺たちが一番よく知っている。
「テーブルの上の、美味しいお料理を、もっともっと、華やかに彩りますね! 『フラワー・カーニバル』!」 彼女の手のひらから放たれた、きらびやかなピンク色の光が、会場中の全てのテーブルに、まるで祝福のシャワーのように降り注いだ。すると、こんがりと焼かれたローストチキンも、サクサクのミートパイも、濃厚なコンソメスープも、全てが一瞬にして、色とりどりの、それはそれは美しい花々に変わってしまったのだ。
「あーーーーっ! 俺が楽しみにしていた肉があああああ!」 「わたくしの、フォアグラのソテーが、一輪の真紅の薔薇に……! 美しいけれど、これじゃない……!」 会場は、一瞬の静寂の後、美食を奪われた貴族たちの阿鼻叫喚に包まれた。
「あ、あわわわわ! す、すみません! 私が、すぐに元に戻しますから!」 予想外の事態にパニックになったマリアが、慌ててお祈りのポーズをとる。 「おお、聖なる光よ、その姿を、本来あるべき、栄養満点の食料の姿に……!」 彼女の、優しく清らかな光が、テーブルの上の花々を包み込む。すると、花は元の料理には戻らず、なぜか、ローストチキンだったものが、コケコッコー! と、生命力に満ち溢れた元気な鳴き声を上げる、完全に生きているニワトリとして、蘇生してしまった。他の料理も、豚や牛の鳴き声を上げ始め、大混乱に拍車をかける。
バタバタバタッ! 蘇生したニワトリたちが、自由を得たとばかりに会場中を勢いよく飛び回り、逃げ惑う貴婦人たちの、豪華絢爛な髪飾りの上に、次々と着地していく。もはや、祝勝の宴は、混沌と狂乱の渦に飲み込まれていた。
俺は、その、あまりにもカオスで、めちゃくちゃで、そして、どうしようもなく楽しくて愛おしい光景を、壁際で呆れながら眺めていた。 その、俺の隣には、いつの間にかソフィアが、寄り添うように立っていた。 彼女もまた、目の前で繰り広げられる大騒ぎを、少し呆れたような、しかし、どこかとても楽しそうな目で、優しく見つめている。
「……ふふっ」 「あはははは!」
どちらからともなく、俺たちは顔を見合わせて、吹き出した。 そして、そのまま、二人で腹を抱えて、涙が出るほど、心の底から笑い合った。そうだ、これこそが俺たちの日常だ。こんなめちゃくちゃな仲間たちだからこそ、どんな困難も乗り越えられたのだ。
◇
喧騒の宴の、翌日。 突き抜けるように晴れ渡った空の下、俺たちは、王都の巨大な正門の前に立っていた。 見送りには、エリザベート王女を始め、国王陛下や王妃陛下、昨日の宴で散々な目にあった近衛騎士団長や大臣たち、そして、仲間になったばかりのたくさんの人々が、別れを惜しむように集まってくれていた。
俺たちは、結局、冒険者として、自由な旅を続けることを選んだ。 公爵の爵位も、豊穣な領地も、この国に縛り付けられる権力も、俺たちには必要なかった。手に入れようと思えば手に入ったそれらのものを、俺たちは自ら手放した。(もっとも、以前の褒賞に加え、当面の旅費として、路銀だけはありがたく頂戴しておいたが。) 俺たちが、本当に欲しいものは、そんな形のあるものじゃないからだ。それは、これまでの旅で、とっくに手に入れているのだから。
「じゃあ、行ってきます!」
俺は、見送りに来てくれた全ての人々に向かって、感謝を込めて大きく手を振った。 その、俺の右手を、ソフィアの、柔らかくて、温かい手が、そっと、包み込むように握り返してきた。 見上げると、彼女は、これまでで最高の、幸せに満ち足りた笑顔で、俺に、優しく微笑み返してくれた。 その顔にはもう、人々が崇拝した『聖女』や、気高く振る舞っていた『公爵令嬢』といった、女神の仮面などどこにもなかった。 ただ、愛する人の隣で、未来への希望に胸を膨らませて幸せそうに微笑む、一人の、この世で最も美しい女性が、そこにいた。
「待てよ、ユウキ! 俺を置いていく気か!」 「師匠、お供します! どこまでも!」 「聖勇者様、私もおそばに!」 「ユウキさん、待ってください! 荷物が重いですー!」
後ろから、いつもの、少しも変わらない、騒々しくて賑やかな声が追いかけてくる。 俺たちは、振り返り、顔を見合わせて、また、幸せに笑った。
どこまでも続く、青い空。 どこまでも広がる、緑の大地。 俺たちの、新しい冒険が、また、ここから始まる。
女神様と歩むこの異世界は、これからも、神々の祝福と、揺るぎない愛と、そして、どうしようもない、ドタバタと、混沌(カオス)に、満ち溢れているのだろう。
――でも、まあ。
そんな、めちゃくちゃで、波乱万丈な毎日が、きっと、最高に、幸せなんだ。
俺は、隣に立つ、世界一の恋人の手を、この幸せを確かめるように、強く、強く、握りしめた。彼女もまた、同じ力で、俺の手を握り返してくれた。その温もりさえあれば、俺たちはどこまでだって行ける。
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