18 / 31
18話 社長と歓迎
しおりを挟む
朝ご飯を食べたあと、準備をしているうちに会社に行く時間になる。
会社は聖さんの家から車で二十分くらい掛かるところにあった。
軽トラックには二人しか乗れないから、聖さんが二回送迎することになった。
私は玲司さんの次に送ってもらって会社に行く。
事務所に入ると、玲司さんが机に座って眉を寄せていた。
数枚の紙を眺めてペンをくるくると回している。
「うちの会社って、入社テストがありましたっけ?」
「テストではなくてアルバイト雇用契約書だ」
「誰にも許可を取らないで採用してるけど、あとで怒られたりしないよね?」
「反対する人はいないと思う。俺が社長だからな。
書類を書いたら、事務員の蒔菜に渡してくれ」
「聖って社長だったんだ……」
玲司さんは驚いた顔をしながら大きく瞬きをしていた。
就業時間になってから、聖さんは作業場に従業員を集めた。
うちの会社では、新人が入るたびに集会を開いて紹介する。
十人の高齢の女性と男性の前に聖さんと玲司さんが立つ。
「こちらの方は、今日からアルバイトとして働くことになった風間玲司さん。
やる気があって、体力もある人です。
これから共に働く仲間として温かく迎えていただけたらと思っています」
確かに、イノシシから走って逃げることができたのだから体力があるんだろう。
聖さんが紹介したあと、玲司さんが一礼して挨拶をする。
「道の駅を放浪して、ご迷惑をかけてすみませんでした。
皆さんの力になれるように努めますのでよろしくお願います」
従業員たちは笑顔で大きな拍手を送った。私も同じように手を叩く。
「若い人が入ってきて嬉しいわ」
「頼りになりそうだね」
「分からなかったら、おじちゃんたちになんでも聞きな」
早速、玲司さんに向けて温かい声が飛び交う。
私が入社した時もこんな風に迎えてもらったから懐かしくなる。
玲司さんは目を丸くして信じられないような顔をしていたけど、うちの会社が明るいのはいつものことだ。
挨拶が終わったあと、私が玲司さんに仕事を教えることになった。
「ここにある野菜をダンボールに詰めるんです。
傷をつけないように丁寧に扱ってくださいね」
簡単に説明してから手本を見せる。
ダンボールを組み立ててから、ビニールで梱包された数種類の野菜を詰めた。
「楽な仕事だね。任せてよ」
玲司さんは自信満々に言ってから、野菜を次々と入れていく。
「あれ……。蒔菜ちゃんがやったみたいにダンボールが閉まらない」
「順番があるんですよ。
あと、小松菜の上にじゃがいもを置くと潰れてしまいます。
重たい野菜を下に、軽い野菜を上に置いてください」
「分かった。やってみるよ。
それにしても、立派な野菜ばかりだね。山菜まである」
「すごいですよね。この限界集落には、美味しい野菜を作る達人が沢山いるんですよ」
「知らなかった……。
聖の作った料理が美味しかったのは、野菜を大事に育てた農家さんのおかげでもあるのか。
ん……? この小松菜のラベルに聖の名前が書いてあるけど」
「それは聖さんと私が育てた小松菜です。
甘くて青臭さが少ないって聞きますね」
「他人事みたいに言うね。
蒔菜ちゃんも食べたことがあるんじゃない?」
「小松菜は苦手なので食べたことがなくて……」
「せっかく夫とふたりで育てたんだから、一口だけでも食べてみなよ」
「夫じゃなくて彼氏です」
「ふたりとも楽しそうに話をしているな」
会社は聖さんの家から車で二十分くらい掛かるところにあった。
軽トラックには二人しか乗れないから、聖さんが二回送迎することになった。
私は玲司さんの次に送ってもらって会社に行く。
事務所に入ると、玲司さんが机に座って眉を寄せていた。
数枚の紙を眺めてペンをくるくると回している。
「うちの会社って、入社テストがありましたっけ?」
「テストではなくてアルバイト雇用契約書だ」
「誰にも許可を取らないで採用してるけど、あとで怒られたりしないよね?」
「反対する人はいないと思う。俺が社長だからな。
書類を書いたら、事務員の蒔菜に渡してくれ」
「聖って社長だったんだ……」
玲司さんは驚いた顔をしながら大きく瞬きをしていた。
就業時間になってから、聖さんは作業場に従業員を集めた。
うちの会社では、新人が入るたびに集会を開いて紹介する。
十人の高齢の女性と男性の前に聖さんと玲司さんが立つ。
「こちらの方は、今日からアルバイトとして働くことになった風間玲司さん。
やる気があって、体力もある人です。
これから共に働く仲間として温かく迎えていただけたらと思っています」
確かに、イノシシから走って逃げることができたのだから体力があるんだろう。
聖さんが紹介したあと、玲司さんが一礼して挨拶をする。
「道の駅を放浪して、ご迷惑をかけてすみませんでした。
皆さんの力になれるように努めますのでよろしくお願います」
従業員たちは笑顔で大きな拍手を送った。私も同じように手を叩く。
「若い人が入ってきて嬉しいわ」
「頼りになりそうだね」
「分からなかったら、おじちゃんたちになんでも聞きな」
早速、玲司さんに向けて温かい声が飛び交う。
私が入社した時もこんな風に迎えてもらったから懐かしくなる。
玲司さんは目を丸くして信じられないような顔をしていたけど、うちの会社が明るいのはいつものことだ。
挨拶が終わったあと、私が玲司さんに仕事を教えることになった。
「ここにある野菜をダンボールに詰めるんです。
傷をつけないように丁寧に扱ってくださいね」
簡単に説明してから手本を見せる。
ダンボールを組み立ててから、ビニールで梱包された数種類の野菜を詰めた。
「楽な仕事だね。任せてよ」
玲司さんは自信満々に言ってから、野菜を次々と入れていく。
「あれ……。蒔菜ちゃんがやったみたいにダンボールが閉まらない」
「順番があるんですよ。
あと、小松菜の上にじゃがいもを置くと潰れてしまいます。
重たい野菜を下に、軽い野菜を上に置いてください」
「分かった。やってみるよ。
それにしても、立派な野菜ばかりだね。山菜まである」
「すごいですよね。この限界集落には、美味しい野菜を作る達人が沢山いるんですよ」
「知らなかった……。
聖の作った料理が美味しかったのは、野菜を大事に育てた農家さんのおかげでもあるのか。
ん……? この小松菜のラベルに聖の名前が書いてあるけど」
「それは聖さんと私が育てた小松菜です。
甘くて青臭さが少ないって聞きますね」
「他人事みたいに言うね。
蒔菜ちゃんも食べたことがあるんじゃない?」
「小松菜は苦手なので食べたことがなくて……」
「せっかく夫とふたりで育てたんだから、一口だけでも食べてみなよ」
「夫じゃなくて彼氏です」
「ふたりとも楽しそうに話をしているな」
0
あなたにおすすめの小説
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
*全28話完結
*辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
*他誌にも掲載中です。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜
二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。
そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。
その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。
どうも美華には不思議な力があるようで…?
耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
汐埼ゆたか
キャラ文芸
准教授の藤波怜(ふじなみ れい)が一人静かに暮らす一軒家。
そこに迷い猫のように住み着いた女の子。
名前はミネ。
どこから来たのか分からない彼女は、“女性”と呼ぶにはあどけなく、“少女”と呼ぶには美しい
ゆるりと始まった二人暮らし。
クールなのに優しい怜と天然で素直なミネ。
そんな二人の間に、目には見えない特別な何かが、静かに、穏やかに降り積もっていくのだった。
*****
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※他サイト掲載
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
運命の番より真実の愛が欲しい
サトウミ
恋愛
田舎娘のゾーイは龍族の王子・シャウロンの『運命の番』だった。
ロマンチックな恋を夢見るゾーイは『運命の番』であるシャウロンと会えるのを楽しみにしていた。
しかし、シャウロンはゾーイに対して素っ気ない。
運命の番だからといって、必ずしも愛し合う関係だとは限らないらしい。
それを悟ったゾーイは、シャウロンのもとから去ることを決意した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる