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19話 期待の新人
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「聖さん……!?」
私と玲司さんの間に入ってきて笑顔を向けてくる。
その笑みが作ったものだとすぐに分かった。
「蒔菜ちゃんと聖は結婚してるのかと思ってた、って話をしていたんだ」
「結婚か……」
聖さんは腕を組んでからぼそっと呟いた。
私たちは出会ってから一年しか経っていない。
しかも、昨日、私は聖さんの正式な恋人だと知ったばかりだ。
いつか結婚の話をする時がきたらいいなと思っているけど……。
「嫉妬するほど好きだと思える人がいていいね。
蒔菜ちゃんがどう思っているか分からないけど」
「私は嫉妬する聖さんも素敵だなと思っています」
勢いに任せてそう言うと、聖さんが視線を斜め下に向ける。
照れているのか耳が赤なっていた。
玲司さんはにやりと笑って、聖さんの肩をぽんぽんと優しく叩いた。
恥ずかしいし、なんとも言えない空気だ。
その空気を変えてくれるかのように、近くで作業をしている二人のおばちゃんがやってくる。
「玲司くん。他人の恋愛は、そっと見守っておいた方がいいわよ。
社長と蒔菜ちゃんのことは、おばちゃんたちも応援しているんだから。
そういえば、先週から携帯電話が使えなくて困っているのよ。
若い人なら分かるかしらねぇ?」
「ぶるうとぅーすってところを押したからじゃない?
この前、孫から教えてもらったの」
「何それ? 玲司くん、見てもらえる?」
おばちゃんたちは助け舟を出してくれたみたいだ。
聖さんはほっとした顔をして事務所の方に向かって歩いていった。
「どれどれ……。機内モードがオンになってる。
ここを押せば繋がりますよ」
「あらま! 電波が立った。物知りですごい」
「このくらい大したことないですよ」
「玲司くんは期待の新人さんねぇ」
私が離れてからも、玲司さんは職場の人たちと楽しそうに話しながら作業をしていた。
この様子なら心配いらないだろう。
職場に馴染むのが早くて尊敬する。
“期待の新人”か……。
玲司さんが新人なら私は先輩ということになるんだろうか。
たまにミスをしてしまうから自信がないけど、比べられないように頑張ろう。
前の会社で働いていた時みたいになって欲しくないから……――
昼休みが終わってから、誰もいない事務所で作業をする。
パソコンのキーボードを叩いて書類を作っていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。
契約している農家の人だろうか。
そう思いながら音がした方に顔を向けると、牡丹さんが立っていた。
ドアを開けて玄関に入り、室内を見渡す。
「あれ、聖くんがいないわね。どこに行ったの?」
「聖さんは和男さんのところに行きました。畑を見てくるそうです」
牡丹さんは「ふーん」っとつまらなそうに返事をして、来客用のソファに座ってから足を組んだ。
そこで聖さんのことを待つのだろうか。
お茶出しも私の仕事の一つ。事務所に常備されている急須で緑茶を作る。
「そういえば、引っ越し先は決まったかしら。
都会に戻るのよね?」
「前にも言いましたけど、引っ越す予定はありません」
「あなたの両親が心配しているんじゃない?
こんなど田舎にいたら、なかなか会えないでしょうし」
正論で何も言い返せなくなる。
限界集落に引っ越してから両親に一度も連絡をしていない。
反対を押し切って来たから、電話を掛けることさえ怖くてできなかった。
「この前、あなたと話したことをパパに言ったの。
そしたら、なんて返ってきたと思う?」
私と玲司さんの間に入ってきて笑顔を向けてくる。
その笑みが作ったものだとすぐに分かった。
「蒔菜ちゃんと聖は結婚してるのかと思ってた、って話をしていたんだ」
「結婚か……」
聖さんは腕を組んでからぼそっと呟いた。
私たちは出会ってから一年しか経っていない。
しかも、昨日、私は聖さんの正式な恋人だと知ったばかりだ。
いつか結婚の話をする時がきたらいいなと思っているけど……。
「嫉妬するほど好きだと思える人がいていいね。
蒔菜ちゃんがどう思っているか分からないけど」
「私は嫉妬する聖さんも素敵だなと思っています」
勢いに任せてそう言うと、聖さんが視線を斜め下に向ける。
照れているのか耳が赤なっていた。
玲司さんはにやりと笑って、聖さんの肩をぽんぽんと優しく叩いた。
恥ずかしいし、なんとも言えない空気だ。
その空気を変えてくれるかのように、近くで作業をしている二人のおばちゃんがやってくる。
「玲司くん。他人の恋愛は、そっと見守っておいた方がいいわよ。
社長と蒔菜ちゃんのことは、おばちゃんたちも応援しているんだから。
そういえば、先週から携帯電話が使えなくて困っているのよ。
若い人なら分かるかしらねぇ?」
「ぶるうとぅーすってところを押したからじゃない?
この前、孫から教えてもらったの」
「何それ? 玲司くん、見てもらえる?」
おばちゃんたちは助け舟を出してくれたみたいだ。
聖さんはほっとした顔をして事務所の方に向かって歩いていった。
「どれどれ……。機内モードがオンになってる。
ここを押せば繋がりますよ」
「あらま! 電波が立った。物知りですごい」
「このくらい大したことないですよ」
「玲司くんは期待の新人さんねぇ」
私が離れてからも、玲司さんは職場の人たちと楽しそうに話しながら作業をしていた。
この様子なら心配いらないだろう。
職場に馴染むのが早くて尊敬する。
“期待の新人”か……。
玲司さんが新人なら私は先輩ということになるんだろうか。
たまにミスをしてしまうから自信がないけど、比べられないように頑張ろう。
前の会社で働いていた時みたいになって欲しくないから……――
昼休みが終わってから、誰もいない事務所で作業をする。
パソコンのキーボードを叩いて書類を作っていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。
契約している農家の人だろうか。
そう思いながら音がした方に顔を向けると、牡丹さんが立っていた。
ドアを開けて玄関に入り、室内を見渡す。
「あれ、聖くんがいないわね。どこに行ったの?」
「聖さんは和男さんのところに行きました。畑を見てくるそうです」
牡丹さんは「ふーん」っとつまらなそうに返事をして、来客用のソファに座ってから足を組んだ。
そこで聖さんのことを待つのだろうか。
お茶出しも私の仕事の一つ。事務所に常備されている急須で緑茶を作る。
「そういえば、引っ越し先は決まったかしら。
都会に戻るのよね?」
「前にも言いましたけど、引っ越す予定はありません」
「あなたの両親が心配しているんじゃない?
こんなど田舎にいたら、なかなか会えないでしょうし」
正論で何も言い返せなくなる。
限界集落に引っ越してから両親に一度も連絡をしていない。
反対を押し切って来たから、電話を掛けることさえ怖くてできなかった。
「この前、あなたと話したことをパパに言ったの。
そしたら、なんて返ってきたと思う?」
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