十人十色の強制ダンジョン攻略生活

ほんのり雪達磨

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無理

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 ふと、1人のプレイヤーが目につく。
 クソゲではない。
 それはナイトメアにいた。
 削れている記憶の中にまだいたそれは、記憶が確かなら始めはノーマルにいたはずだった。

「なんでナイトメアにいるんだ? ダンジョン移動したのか? ノーマルにいたのに?」

 記憶が確かなら、それは大き目のコミュニティのサブ的な位置取りをしていて、敵意を買うような立ち回りはしていなかったはずだ。

 しかも、そのノーマルダンジョンにはPKの数も少なく、PKにはなっていないがなっていないだけのアレなものもさえ少ないというモラルの高さっぷりだったはずだった。

 それを『いい子ちゃん固まってるよ気持ち悪いな』などと思ったから、確かに彼はそれを覚えていた。

「万端だったはずだが……? クリアしないにしても、いい感じだったのでは?」

 興味のような、油虫を見て気持ち悪いから殺虫剤を探しているような、そんな気持ちで記録ログを手繰ってみる。
 そうすると、更なる疑問が湧き出る結果がそこにはあった。

「は……? なんで何度も移動してんだこいつ……」

 初めはノーマル。そして、次にナイトメアにいった、というわけではどうやら無い。
 ノーマル、ノーマル、ハード、ハード、ハード、ナイトメア。
 その移動数、五回。

 その間の更なる記録を掘ってみると、綺麗だと思っていた絵が実は虫でできていたことを知った虫嫌いがしそうな顔に知らずなる。

 PKや何度も追い詰められるようなことをしている人物なら複数回移動するのもなくはない。しかし、何も問題なさそうな人間が移動するのは理解できなかった。

「つーか、始めの方にモンスターにキルられた以外、テロ召喚以外で死んでねぇぞこいつ……対人無敵か何かかよ。才能ありありですか?」

 異様。
 その一言に尽きた。

 ノーマルでさえ、一種の才能がなければ簡単に死ぬ。上層になればなるほどにそうだ。罠だってある。
 ノーマルにも即死の罠があるし、嫌らしいモンスターがいることも珍しくはない。

 イージーとチュートリアルをのぞき、死ぬことはなんら珍しくはないのだ。引きこもりでもしない限り、強化されていようがちょっとしたことで死ぬ環境なのだ。生き返るから、命の値段が格安なのだ。

 PKだっている。
 狙われてもおかしくない容姿をしている。立場にいる。環境がある。

 しかし――死んでいない。
 それだけなら、別にここまで異様には思わない。
 彼は、そうなのに移動しているという事に気持ち悪さを覚えるのだ。

「どこでもソロではなく、誰かと組んでいる。ソロではない。仲間がいないから移動したとは考えられない。そもそも、仲間が必要だという事なら最初で十分のはずだ。人間関係のトラブルでも起きたか? いや……それにしても……なんでこの強さで目立った位置にいねぇんだってこともある」

 初めのノーマルダンジョンは、人をまとめる才能があるような人物がおり、そのカリスマか、異様なほどに平和だったのだ。

 そんな中でサブ的なポジションにいたもののトラブルを放置するほど間抜けには見えない。今もそのコミュニティはある。大部分がクリアできる状態だが、全員がそうなるまでしないという、彼にとっては怖気が走るような方針であるようだった。

 記録を追うは文字情報ばかり。
 映像記録がないことはないが――掘り出すのには時間がかかる。ターゲットとなるような何かがわからないからだ。

 文字だけでは、ただ、コミュニケーションをちゃんととっていて、ソロでもなく、死にもしなていなく、トラブルが起きたようには――

「いや、待て。PKには襲われているし――これは? どういう行動だ?」

 PKや誰かしらにアイテムを使っている記録が残っていた。
 そのアイテムは、イベントで手に入るもの。

 ダンジョン移動券だ。
 ただ、他人に使うそれである。

「……あれか? 人が苦しむ姿を見たいとかいうサディズムにまみれているとかなのか? だったらわかりやすいが……でも移動させちまったら見えないだろ? しかも、のわりに、PKではない。殺しはしていない……攻撃はしているな。というか、なんでPKを殺さずに回避できているんだ? 交戦の記録を見るに、何度も襲われたというパターンが少なすぎるぞ」

 自分が移動してわざわざ仲良くしていただろう物から離れたり、PKに襲われても殺さずにいたり、かと思えばそのPKやパーティーを組んだことがあるような人間に、恐らく見つからないようにダンジョン移動を使用して飛ばしている。ある種、殺すより残酷だ。高難易度に全て切り捨てさせて放り込んでいるわけなのだから。

 そう、PKはまだわかるが、何故かそうでない人間にも使用しているというのが訳が分からない。
 考えてもダメかなと、記録を追うのをいったんやめて、今の映像を出す。

「――このパーティー」

 特殊条件を踏みそうだ、とたまに追っていたパーティーに、それはいつの間にか接近していた。
 女3人のパーティー。

 一番最後に入った3人目で、歪が入りだしたと見えるパーティー。
 表面上仲がよさそうで、どこかぎこちないそれに――満面笑顔で、そいつは混ざっていた。
 演技でもなく、仮面でもなく、それは本当に楽しそうに。

「あぁ、なんだそうか。多くのものを見たいってだけなのか、こいつ」

 彼は腑に落ちた。
 どういう人間か、理解はできなくとも納得がいったのだ。
 これは、恐らく他人の反応を楽しむものであると。

「厄介だろうな、そこにいるやつにとっては……」

 気持ち悪さの原因がわかり、少しすっきりする。
 そして、気分でてきとうにかき回して、ある程度見たら次にいくんだろうな、と思うと関わるものを哀れにも思う。いい影響も、悪い影響も、そこに残してただ消えていくのだろうから。

「面倒くさい奴が、面倒くさい感じのテンション高い状態でキープされてやがるのか。見るだけでなくて関われば想像でも楽しめるから転移か? いい趣味してんな。マゾっ気もあるか? 無敵かよ」

 他のパーティーにも接触しながら、ぎこちなさや不信のタネをばらまいていながら好感を稼いでいるそれを見て、『こいつも特殊枠かな?』と他人事のように思った。
 もしプレイヤーなら関わりたくはない生き物だが、見ているだけなら特に害は受けようもないのだから。
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