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判決
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「な、なんなんだお前! ……あっ」
急に割って入ってきた紳士に対し、父は怒りをぶつけようとしたが、胸元の紋章を見て言葉を飲み込んだ。
紳士は父の言葉を聞き流し、クラウスに対してお辞儀をした。
「クラウス様、この場で発言することをお許しいただけますか?」
「構わない」
「ありがとうございます。皆様、私は国王の代理で参ったものです」
彼は参列者の皆にも丁寧な礼をして話し始めた。
「本日はリドリー子爵家に対する処罰を言い渡すために、この場に参列いたしました。ここから先の言葉は国王の言葉としてお聞きください」
彼の言葉は重々しく、会場の空気がピリッとしたのを感じた。
「処罰?! ど、どうして国王陛下が……? 」
父は驚きのあまり腰を抜かしてその場に座り込んだ。母や姉も状況が飲み込めず、青い顔をしながら父の後ろで怯えている。
「お前たちの所業について、クラウス様より以前から報告を受けていた。今日はお前たちがこの披露宴を妨害しにやってくるとの情報を得て、この場でお前たちを捕らえるよう命を受けた。大人しく聞きなさい」
「は、はい……」
父は反論する気力がなくなったようで、おとなしく口を閉じた。
「リドリー子爵。お前は子爵という立場でありながら、大臣たちを誑かし、金品を横領した。本来民のために使われるべき財を無下にした罪は大変重い」
「それは、大臣たちが勝手にしたことで……」
父の弱々しい言い訳はもはや何の意味もなさないし、皆の視線が厳しくなるだけだった。
「また、カレン様に対する虐待。我が子を学校にも行かせず、過剰な労働を強いる行いは罰を受けるべき残忍な行為だ。これは子爵だけでなく、夫人や姉も同罪である」
「そんなっ」
「私もですか……?」
自分達も罪に問われると気づいた母と姉は、顔を一層青くさせてか細い声を上げた。
「その他にも数多くの贈賄が確認されている。一度だけでも罰せられるべき行為だが、これだけ常習的に行っていたとなれば、罪の意識があったとは思えない」
三人とも何かモゴモゴと言っていたが、意味のある言葉には聞こえない。
「リドリー子爵家の三名、民の手本となるべき貴族の立場を利用し、私利私欲に走った罪は大変重い。よって爵位をはく奪し、無期限でキース鉱山での労働を命じる!」
キース鉱山は国の北端にある鉱山で、寒さが厳しく過酷な環境だと聞いたことがある。
「くっ……」
「鉱山ですって?!」
「私達、貴族ではなくなるの? そんな……」
三人は今まで見たことがないような悲痛な表情を浮かべた。
その途端、黒い靄が今まで以上に濃くなり、ドロドロとした液体のような物に変化した。それらはクラウスとティルの心臓あたりに流れ込んでいく。
「これ、大丈夫なんですか? お腹壊したりしませんか?」
靄よりも気色悪い光景に、クラウス達の体調が心配になった。
「怒りが絶望へと変化したな。この時を待っていた」
「これが最高なんだよねっ!」
二人は私の心配をよそに、瞳をギラギラと輝かせながらドロドロを吸収していた。
異様な光景だが、他の人には見えていない。ただクラウスとティルが不敵な笑みを浮かべているように見えているのだろう。
父と母はこちらの様子を見て、憎悪に満ちた顔つきとなった。二人はよろよろと立ち上がって、皆に向かって叫んだ。
「き、聞いてください。これはクラウス・モルザンの罠です! 俺、いや、私達は嵌められたのです。横領も賄賂も、虐待だって捏造なのです!」
「その通りです。私達は子爵家の名に恥じないような生活をしていただけです! 悪魔の侯爵が全てを狂わせたのです!」
彼らの目には何が見えているのだろう。本気で自分たちが正しくて、ただクラウスに嵌められただけだと思っているようだ。
(これが負の感情を吸われ過ぎた結果なのかも……)
「お父様、お母様……もう、無理よ……」
姉は涙を流しながら、両親の暴走を見つめていた。
「見苦しい。これ以上罰を重くさせられたいのか?」
「ですがっ……!」
「聞いてください!」
「……連れて行きなさい」
いつの間にか待機していた警備隊が三人を取り囲む。
これでおしまいだろう。
彼らが扉に向かって歩き出したのを見て、参列者の皆も安堵の表情を浮かべていた。
一段落ついたことにホッとしていると、クラウスに腕を引かれた。
「カレン、ちょっとこちらに」
「はい?」
急に壁の方へと押しやられ、クラウスが皆の死角になるような位置に立ちふさがった。
一体何なのか考える前に、クラウスの顔が急に迫ってくる。
「どうしっ……んんっ……ん?!」
突然の口づけに、驚きで身体も頭も固まってしまった。
(な、何?! 口づけ? ……あれ? でも、なんか……)
最初は驚きでよく分からなかったが、しばらくすると不思議な感覚がやってきた。
口の中というより、脳に直接爽やかな風味が広がるような感覚があった。
(これがエネルギーの味? 確かにこれは……癖になりそうな、止められないような……)
目を丸くしてクラウスを見つめると、ようやく口を離してくれた。
「どうだ、味わった感想は?」
「え、えっと……」
「なんだ、分からなかったのか?」
もう一回するか? と聞くので慌てて首を振った。
「あ、味わいました……お二人が夢中になるのも分かる気がします。舌で味わうわけではないのですね。爽やかだけれどまろやかで癖になるというか、脳に響くような味わいというか。甘いものを食べた時のような気分ですね」
「そうだろう?」
「でしょ?」
もう一度されたら堪らないと早口で食レポをすると、クラウスとティルは同時に同意の言葉を口にした。
「今回のは見た目がドロドロしてたでしょ? なかなかあの状態にならないんだよねー。すごくレアなんだよ、あれ」
ティルが「あれ」と指さした先には、あの三人が扉の所で抵抗している姿があった。
「俺はっ、お前たちを絶対に許さないからな! 覚えておけ!!」
父の怒号とともに扉が閉まり、ようやく静寂が戻ってきた。
急に割って入ってきた紳士に対し、父は怒りをぶつけようとしたが、胸元の紋章を見て言葉を飲み込んだ。
紳士は父の言葉を聞き流し、クラウスに対してお辞儀をした。
「クラウス様、この場で発言することをお許しいただけますか?」
「構わない」
「ありがとうございます。皆様、私は国王の代理で参ったものです」
彼は参列者の皆にも丁寧な礼をして話し始めた。
「本日はリドリー子爵家に対する処罰を言い渡すために、この場に参列いたしました。ここから先の言葉は国王の言葉としてお聞きください」
彼の言葉は重々しく、会場の空気がピリッとしたのを感じた。
「処罰?! ど、どうして国王陛下が……? 」
父は驚きのあまり腰を抜かしてその場に座り込んだ。母や姉も状況が飲み込めず、青い顔をしながら父の後ろで怯えている。
「お前たちの所業について、クラウス様より以前から報告を受けていた。今日はお前たちがこの披露宴を妨害しにやってくるとの情報を得て、この場でお前たちを捕らえるよう命を受けた。大人しく聞きなさい」
「は、はい……」
父は反論する気力がなくなったようで、おとなしく口を閉じた。
「リドリー子爵。お前は子爵という立場でありながら、大臣たちを誑かし、金品を横領した。本来民のために使われるべき財を無下にした罪は大変重い」
「それは、大臣たちが勝手にしたことで……」
父の弱々しい言い訳はもはや何の意味もなさないし、皆の視線が厳しくなるだけだった。
「また、カレン様に対する虐待。我が子を学校にも行かせず、過剰な労働を強いる行いは罰を受けるべき残忍な行為だ。これは子爵だけでなく、夫人や姉も同罪である」
「そんなっ」
「私もですか……?」
自分達も罪に問われると気づいた母と姉は、顔を一層青くさせてか細い声を上げた。
「その他にも数多くの贈賄が確認されている。一度だけでも罰せられるべき行為だが、これだけ常習的に行っていたとなれば、罪の意識があったとは思えない」
三人とも何かモゴモゴと言っていたが、意味のある言葉には聞こえない。
「リドリー子爵家の三名、民の手本となるべき貴族の立場を利用し、私利私欲に走った罪は大変重い。よって爵位をはく奪し、無期限でキース鉱山での労働を命じる!」
キース鉱山は国の北端にある鉱山で、寒さが厳しく過酷な環境だと聞いたことがある。
「くっ……」
「鉱山ですって?!」
「私達、貴族ではなくなるの? そんな……」
三人は今まで見たことがないような悲痛な表情を浮かべた。
その途端、黒い靄が今まで以上に濃くなり、ドロドロとした液体のような物に変化した。それらはクラウスとティルの心臓あたりに流れ込んでいく。
「これ、大丈夫なんですか? お腹壊したりしませんか?」
靄よりも気色悪い光景に、クラウス達の体調が心配になった。
「怒りが絶望へと変化したな。この時を待っていた」
「これが最高なんだよねっ!」
二人は私の心配をよそに、瞳をギラギラと輝かせながらドロドロを吸収していた。
異様な光景だが、他の人には見えていない。ただクラウスとティルが不敵な笑みを浮かべているように見えているのだろう。
父と母はこちらの様子を見て、憎悪に満ちた顔つきとなった。二人はよろよろと立ち上がって、皆に向かって叫んだ。
「き、聞いてください。これはクラウス・モルザンの罠です! 俺、いや、私達は嵌められたのです。横領も賄賂も、虐待だって捏造なのです!」
「その通りです。私達は子爵家の名に恥じないような生活をしていただけです! 悪魔の侯爵が全てを狂わせたのです!」
彼らの目には何が見えているのだろう。本気で自分たちが正しくて、ただクラウスに嵌められただけだと思っているようだ。
(これが負の感情を吸われ過ぎた結果なのかも……)
「お父様、お母様……もう、無理よ……」
姉は涙を流しながら、両親の暴走を見つめていた。
「見苦しい。これ以上罰を重くさせられたいのか?」
「ですがっ……!」
「聞いてください!」
「……連れて行きなさい」
いつの間にか待機していた警備隊が三人を取り囲む。
これでおしまいだろう。
彼らが扉に向かって歩き出したのを見て、参列者の皆も安堵の表情を浮かべていた。
一段落ついたことにホッとしていると、クラウスに腕を引かれた。
「カレン、ちょっとこちらに」
「はい?」
急に壁の方へと押しやられ、クラウスが皆の死角になるような位置に立ちふさがった。
一体何なのか考える前に、クラウスの顔が急に迫ってくる。
「どうしっ……んんっ……ん?!」
突然の口づけに、驚きで身体も頭も固まってしまった。
(な、何?! 口づけ? ……あれ? でも、なんか……)
最初は驚きでよく分からなかったが、しばらくすると不思議な感覚がやってきた。
口の中というより、脳に直接爽やかな風味が広がるような感覚があった。
(これがエネルギーの味? 確かにこれは……癖になりそうな、止められないような……)
目を丸くしてクラウスを見つめると、ようやく口を離してくれた。
「どうだ、味わった感想は?」
「え、えっと……」
「なんだ、分からなかったのか?」
もう一回するか? と聞くので慌てて首を振った。
「あ、味わいました……お二人が夢中になるのも分かる気がします。舌で味わうわけではないのですね。爽やかだけれどまろやかで癖になるというか、脳に響くような味わいというか。甘いものを食べた時のような気分ですね」
「そうだろう?」
「でしょ?」
もう一度されたら堪らないと早口で食レポをすると、クラウスとティルは同時に同意の言葉を口にした。
「今回のは見た目がドロドロしてたでしょ? なかなかあの状態にならないんだよねー。すごくレアなんだよ、あれ」
ティルが「あれ」と指さした先には、あの三人が扉の所で抵抗している姿があった。
「俺はっ、お前たちを絶対に許さないからな! 覚えておけ!!」
父の怒号とともに扉が閉まり、ようやく静寂が戻ってきた。
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