あなたに婚約破棄されてから、幸運なことばかりです。本当に不思議ですね。

香木陽灯

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「今まではお前が一番美人だと思っていたけれど、もっと美人な女がいたんだ。だからお前はもういらない。婚約は破棄しておくから」

ヘンリー様にそう言われたのが、つい昨日のことのように思い出されます。別に思い出したくもないのですが、彼が我が家に押しかけてきたせいで思い出してしまいました。

婚約破棄されたのは半年も前ですのに、我が家に一体何の用があるのでしょうか。



「ローラ、お前は一体何をしたんだ?!フィンレー家の領地は何の特産品もない不毛な土地だったはずなのに……!」

第三王子のくせにマナーがなっていませんね。挨拶もないし、支離滅裂だし、言葉遣いもなっていません。それに我がフィンレー家の領地を馬鹿にするなんて……。

「何って……おっしゃっている意味が分かりませんわ。我が領地の繁栄が、そんなに気に食わないのですか?それに私が何をしようと、ヘンリー様と私はもう無関係ですよね?話がそれだけなら、私からお答えすることは何もありません」

こんな失礼な方に礼を尽くす必要はないでしょう。さっさとお引き取り願いたいです。

「それだけじゃない!俺との婚約がなくなった後、何があったんだ?あの悪魔の大公がお前に結婚を申し込むなんて……!」

「悪魔の大公?あぁ、チャールズ様のことですか?お耳が早いですこと」

悪魔の大公だなんて……チャールズ様はこの国の四割近い領地を治める大公で、最近親しくさせていただいている方です。第一王子よりも次期国王に近い人物なんだとか。実は、最近婚約したのです。なんだか思い出すだけで口元が緩んでしまいますね。

「なんでお前なんかが……この数ヶ月の出来事は全て偶然なのか?どうしてお前ばかり良い目にあうんだ!」

「本当に不思議ですねー。あなたに婚約を破棄されてから、良いことばかり起きるんですの。ご存じの通り、我が領地は急激な発展を遂げ、私にも素敵な婚約話が来たのです。とてもありがたいですわ」

ヘンリー様は下を向いて震えています。今日は暖かい日ですのにお寒いのかしら?

「ご用件はそれだけですか?ではお帰りくださいませ。この後、チャールズ様との約束がありますので。私、こう見えて結構忙しいのです」

深々とお辞儀をすると、ヘンリー様はきまりが悪そうに帰っていかれました。

本当に何しに来たのでしょう。なんだかげっそりしていましたが。そう言えば、最近ヘンリー様が教会に送られるという噂がありましたね。彼の兄達のように、王位に就く予定がある訳でもなく、騎士団で活躍する訳でもない。学者の道に進む気もないようですから、仕方がないでしょうに。今更何を焦っているのでしょうか。

私との婚約を破棄した時には、あんなに輝いていらっしゃったのに……人生とは分からないものですね。


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