11 / 11
11
しおりを挟む
「そんな……」
ヘンリー様はがっくりと膝をついてしまいました。なんとも情けない姿です。
「帰りましょう、チャールズ様。話は終わったようですわ」
「そうですね」
「待て!お前たち、俺に協力しないなら力づくで従わせるぞ!」
何を言っているのでしょう。剣術もまともに学んでいないヘンリー様に何が出来るというのかしら。チャールズ様はもちろん、私でも勝てそうだわ。
ちらりとチャールズ様を見ると、かなりお怒りのようでした。いい加減、早く帰りたいのでしょうね。私が話を聞くと言ってしまったせいですね。本当に申し訳ないわ……。
「ヘンリー様、あまり馬鹿なことをおっしゃるのでしたら僕にも考えがあります。ヘンリー様が開拓地に飛ばされるという噂があるのはご存じですか?その噂を真実にして差し上げましょう」
「はっ!お前にそんなことが……」
「出来ますよ。あなたより私の方が国王からの信頼が厚いですからね。国王は僕の助言を受け入れるでしょう。国にとって害にしかならない人を飛ばす理由なんていくらでも考えられますよ。どうしますか?大人しく教会に入りますか?それとも開拓地で汗水たらして働きますか?今なら選ばせてあげます」
チャールズ様がヘンリー様に優しく問いかけると、ヘンリー様は獣のような声で絶叫していらっしゃいました。耳が痛くなってしまいます。
顔をしかめていると、チャールズ様は私の手をとって、さっと部屋から連れ出してくれました。
「私のせいで帰るのが遅くなってしまいましたね。すみません、チャールズ様……」
「ローラのせいではありませんよ、気にしないで。……それより僕のこと、いつまでチャールズ様と呼ぶのですか?先ほどの王子と同等のようで嫌です。呼び捨てにしてください」
そんなことを気にしていたのですね……。てっきり早く帰れなくて怒っているのかと思っていました。
「分かりました……チャールズ」
呼び捨てにすると、チャールズは満足そうに笑いました。
「では帰りましょう、ローラ」
「はい!」
数か月後、この国には本当に干ばつが起きました。けれど予想より酷いものではなかった上に、チャールズの主導で食料の確保が十分になされていたため、大きな問題にはなりませんでした。
国王はチャールズを高く評価したようです。確保した食料の大半はチャールズの領地で作られた作物でしたから、人々からも大変感謝されていました。
「チャールズ、少しお休みになってください。作物確保の目途も立ちましたし。あまり無理をすると身体を壊してしまいますよ」
「ローラが休むなら僕も休みますよ。あなたこそ休息が必要だ。フィンレー領の土壌も改善の兆しが見られますし、少し長めの休みをとっても良いのではないのですか?」
「そうですね……では一緒に休みましょうか」
結婚してから旅行にも行けていませんでしたから、二人で少し遠出をすることにしました。
「そうだわ、西の開拓地の方へ行ってみませんか?行く途中に温泉もありますし、開拓地の土壌に興味がありますの」
「ローラ……本当に休む気がありますか?それに、西の開拓地は……。東にしませんか?あちらの方が景色が綺麗ですよ」
あら?チャールズが珍しく焦っていますね。西に何かあるのかしら?まさか……
「チャールズ、まさか本当に第三王子を飛ばしたのですか?」
「いや……僕の提案ではないのですが、彼が勝手に国王の逆鱗に触れたようですよ」
なるほどー。彼は無自覚に人の怒りを買うのが得意ですからね。そうなる運命だったのかもしれませんね。
「では東の開拓地に行きましょうか」
彼がどんな目に遭っているかなんて興味ないですもの。
ローラとチャールズは、その後も様々な知恵で領地を発展していった。そして国一番のおしどり夫婦として羨望の眼差しを受けるようになった。
-完-
ヘンリー様はがっくりと膝をついてしまいました。なんとも情けない姿です。
「帰りましょう、チャールズ様。話は終わったようですわ」
「そうですね」
「待て!お前たち、俺に協力しないなら力づくで従わせるぞ!」
何を言っているのでしょう。剣術もまともに学んでいないヘンリー様に何が出来るというのかしら。チャールズ様はもちろん、私でも勝てそうだわ。
ちらりとチャールズ様を見ると、かなりお怒りのようでした。いい加減、早く帰りたいのでしょうね。私が話を聞くと言ってしまったせいですね。本当に申し訳ないわ……。
「ヘンリー様、あまり馬鹿なことをおっしゃるのでしたら僕にも考えがあります。ヘンリー様が開拓地に飛ばされるという噂があるのはご存じですか?その噂を真実にして差し上げましょう」
「はっ!お前にそんなことが……」
「出来ますよ。あなたより私の方が国王からの信頼が厚いですからね。国王は僕の助言を受け入れるでしょう。国にとって害にしかならない人を飛ばす理由なんていくらでも考えられますよ。どうしますか?大人しく教会に入りますか?それとも開拓地で汗水たらして働きますか?今なら選ばせてあげます」
チャールズ様がヘンリー様に優しく問いかけると、ヘンリー様は獣のような声で絶叫していらっしゃいました。耳が痛くなってしまいます。
顔をしかめていると、チャールズ様は私の手をとって、さっと部屋から連れ出してくれました。
「私のせいで帰るのが遅くなってしまいましたね。すみません、チャールズ様……」
「ローラのせいではありませんよ、気にしないで。……それより僕のこと、いつまでチャールズ様と呼ぶのですか?先ほどの王子と同等のようで嫌です。呼び捨てにしてください」
そんなことを気にしていたのですね……。てっきり早く帰れなくて怒っているのかと思っていました。
「分かりました……チャールズ」
呼び捨てにすると、チャールズは満足そうに笑いました。
「では帰りましょう、ローラ」
「はい!」
数か月後、この国には本当に干ばつが起きました。けれど予想より酷いものではなかった上に、チャールズの主導で食料の確保が十分になされていたため、大きな問題にはなりませんでした。
国王はチャールズを高く評価したようです。確保した食料の大半はチャールズの領地で作られた作物でしたから、人々からも大変感謝されていました。
「チャールズ、少しお休みになってください。作物確保の目途も立ちましたし。あまり無理をすると身体を壊してしまいますよ」
「ローラが休むなら僕も休みますよ。あなたこそ休息が必要だ。フィンレー領の土壌も改善の兆しが見られますし、少し長めの休みをとっても良いのではないのですか?」
「そうですね……では一緒に休みましょうか」
結婚してから旅行にも行けていませんでしたから、二人で少し遠出をすることにしました。
「そうだわ、西の開拓地の方へ行ってみませんか?行く途中に温泉もありますし、開拓地の土壌に興味がありますの」
「ローラ……本当に休む気がありますか?それに、西の開拓地は……。東にしませんか?あちらの方が景色が綺麗ですよ」
あら?チャールズが珍しく焦っていますね。西に何かあるのかしら?まさか……
「チャールズ、まさか本当に第三王子を飛ばしたのですか?」
「いや……僕の提案ではないのですが、彼が勝手に国王の逆鱗に触れたようですよ」
なるほどー。彼は無自覚に人の怒りを買うのが得意ですからね。そうなる運命だったのかもしれませんね。
「では東の開拓地に行きましょうか」
彼がどんな目に遭っているかなんて興味ないですもの。
ローラとチャールズは、その後も様々な知恵で領地を発展していった。そして国一番のおしどり夫婦として羨望の眼差しを受けるようになった。
-完-
119
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
貧乏令嬢の私は婚約破棄されたので、優雅な生活を送りたいと思います。
coco
恋愛
「お前みたいな貧乏人は、もういらない!」
私との婚約を破棄し、金持ちの女に走った婚約者。
貧乏だなんて、いつ私が言いました?
あなたに婚約破棄されたので、私は優雅な生活を送りたいと思います─。
【完結】醜い豚公爵様と結婚することになりましたが愛してくれるので幸せです
なか
恋愛
自分の事だけが大好きで
極度のナルシストの婚約者のレオナード様に告げた
「婚約破棄してください」と
その結果お父様には伯爵家を勘当され
更には他貴族達にも私のあらぬ噂をレオナード様に広めまれた
だけど、唯一
私に手を差し伸べてくれたのは
醜い豚公爵と陰で馬鹿にされていたウィリアム様だけだ
彼の元へと嫁ぐ事になり馬鹿にされたが
みんなは知らないだけ
彼の魅力にね
双子の妹は私に面倒事だけを押し付けて婚約者と会っていた
今川幸乃
恋愛
レーナとシェリーは瓜二つの双子。
二人は入れ替わっても周囲に気づかれないぐらいにそっくりだった。
それを利用してシェリーは学問の手習いなど面倒事があると「外せない用事がある」とレーナに入れ替わっては面倒事を押し付けていた。
しぶしぶそれを受け入れていたレーナだが、ある時婚約者のテッドと話していると会話がかみ合わないことに気づく。
調べてみるとどうもシェリーがレーナに成りすましてテッドと会っているようで、テッドもそれに気づいていないようだった。
「華がない」と婚約破棄されたけど、冷徹宰相の恋人として帰ってきたら……
有賀冬馬
恋愛
「貴族の妻にはもっと華やかさが必要なんだ」
そんな言葉で、あっさり私を捨てたラウル。
涙でくしゃくしゃの毎日……だけど、そんな私に声をかけてくれたのは、誰もが恐れる冷徹宰相ゼノ様だった。
気がつけば、彼の側近として活躍し、やがては恋人に――!
数年後、舞踏会で土下座してきたラウルに、私は静かに言う。
「あなたが捨てたのは、私じゃなくて未来だったのね」
地味令嬢の私ですが、王太子に見初められたので、元婚約者様からの復縁はお断りします
有賀冬馬
恋愛
子爵令嬢の私は、いつだって日陰者。
唯一の光だった公爵子息ヴィルヘルム様の婚約者という立場も、あっけなく捨てられた。「君のようなつまらない娘は、公爵家の妻にふさわしくない」と。
もう二度と恋なんてしない。
そう思っていた私の前に現れたのは、傷を負った一人の青年。
彼を献身的に看病したことから、私の運命は大きく動き出す。
彼は、この国の王太子だったのだ。
「君の優しさに心を奪われた。君を私だけのものにしたい」と、彼は私を強く守ると誓ってくれた。
一方、私を捨てた元婚約者は、新しい婚約者に振り回され、全てを失う。
私に助けを求めてきた彼に、私は……
地味で役に立たないと言われて捨てられましたが、王弟殿下のお相手としては最適だったようです
有賀冬馬
恋愛
「君は地味で、将来の役に立たない」
そう言われ、幼なじみの婚約者にあっさり捨てられた侯爵令嬢の私。
社交界でも忘れ去られ、同情だけを向けられる日々の中、私は王宮の文官補佐として働き始める。
そこで出会ったのは、権力争いを嫌う変わり者の王弟殿下。
過去も噂も問わず、ただ仕事だけを見て評価してくれる彼の隣で、私は静かに居場所を見つけていく。
そして暴かれる不正。転落していく元婚約者。
「君が隣にいない宮廷は退屈だ」
これは、選ばれなかった私が、必要とされる私になる物語。
婚約破棄、ありがとうございます。どうぞお幸せに。
有賀冬馬
恋愛
「君のような地味な女は、僕の隣にいるにはふさわしくない」――そう言って、婚約者のエリックは私を捨て、美貌の令嬢を選んだ。
社交界で“風景”と呼ばれた私は、絶望の淵に突き落とされる。
だが、森で怪我をした旅の男を助けたことで、私の人生は一変した。
その男の正体は、なんと変装した若き国王陛下ヴィクトル!
「君は私の王妃にふさわしい。誰よりもね」国王陛下に見初められた私は、王妃候補として注目の的に。
一方、舞踏会で再会したエリックは、選んだ令嬢の放蕩に苦しみ、見る影もなく落ちぶれていた。
今更、私に縋りついてくるなんて、遅すぎます。
婚約破棄、本当にありがとうございました!
虐げられたアンネマリーは逆転勝利する ~ 罪には罰を
柚屋志宇
恋愛
侯爵令嬢だったアンネマリーは、母の死後、後妻の命令で屋根裏部屋に押し込められ使用人より酷い生活をすることになった。
みすぼらしくなったアンネマリーは頼りにしていた婚約者クリストフに婚約破棄を宣言され、義妹イルザに婚約者までも奪われて絶望する。
虐げられ何もかも奪われたアンネマリーだが屋敷を脱出して立場を逆転させる。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる