愛されSubは尽くしたい

リミル

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愛されSubは尽くしたい

二度目のプレイ1

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こちらに注目する顔に、汐がずっと探していた男がいた。

「こんばんは。誠吾さん」
「……こんばんは」

汐の心が前向きなら、運も前向きだ。まさか初日で会えるとは。汐は思わず顔を綻ばせる。

いつものようにスーツに身を包んだ深見が、スコッチを煽る。汐は隣のソファへ座った。

「……悪いけれど。いくら好きと言われても……」

歯切れ悪く、深見は切り出した。

「この前はごめんなさい。誠吾さんの気持ちを考えないで、いっぱい好きって言って。迷惑をかけました」
「え……いや。迷惑とは思ってないが。……君、汐君だよな?」

何故か深見が目を丸くしていて、汐は首を傾げる。困惑を映した声で、恐る恐る汐の名前を呼ぶ。

「うん。え、なんで疑ってるの?」
「僕の知っている汐君と、顔は同じだけど違ったから」
「何それ。誠吾さん、言ってる意味分かんないよ」

ぷっと汐は吹き出す。もっとどんよりした空気になるかと思いきや、前よりも上手く話せている。恋愛モードにしたくなくて、深見はわざと呆けて喋っているのだろうか。でも、そんな気の抜けた会話も楽しくて。

「僕は誠吾さんよりも子供だし、年の差とか趣味とか仕事がって言われるの……理屈は分かる。でも、そんなの言い訳に出来ないくらい、好きにさせるから」

じっと深見の目を覗き込む。真剣な告白に、瞳が揺れているのが分かり、彼の中の何かが動いたような気がした。

「……汐君は。僕のことを恨んでないのかな」
「好きじゃないって言ったこと? まあ……うん。恨むっていうよりは悔しいって感じ……」
「そのことではなくて。……昔のこと。あの事故が原因で、役者を辞めたんだろう」

深見が声を潜めて言う。確かにきっかけではあったが、芸能界を勧めてくれた父が亡くなったと理解してから、決めていたことだ。どうしても自分のためや、ファンのために……とは、幼い頭では切り替えることが出来なかった。もし今の歳で、もっと売れていたとしても、きっと引退の道を選んでいたはずだ。

「えっ! うーん……関係なくはないけど。どうして?」
「引退の報道は、事故のすぐ後だったと記憶してる。汐君のご両親にもお会いしたが、逆にお礼を言われてしまった」
「それって普通じゃない……? だって、そのとき、僕がSubdropになっていたって聞いた。誠吾さんが助けに来てくれなかったら、あのまま死んでいたかもしれない」

そもそも大道具の裏に隠れていたのは汐だったし、深見には何の責任もない。深見がこれほどまでに話しにくそうにしているのが、不思議だった。

「……Subdropになっているのは、弱ったSubのフェロモンで分かっていた。助けようだなんて、あのときは思っていなくて。……多分、自分の本能に衝き動かされるまま、僕はSubに近づいた」

汐は静かに頷く。

「あそこは小さな子供が一人入れるくらいの、せまい通路だった。大人の身体では通ることが出来なくて……何本か、挟まっていた資材を抜いたんだ。あのときの落下事故は、それが原因だったのだと思う」
「で、でも……本当にそれが原因なのかは、確かじゃないんでしょ? だったら、誠吾さんのせいじゃない。僕があんな場所にいなければ……」
「子供だった汐君に過失はない。引退したのは、ずっと事故の後遺症のためだと思っていたから……不謹慎かもしれないが、あの夜、汐君だと分かったとき、ほっとした。元気そうで、本当に」

深見はグラスを回しながら、小さく微笑を浮かべた。彼の中の、自分を許すような、小さな前進だった。

「じゃあ……僕も誠吾さんも悪くないから、この話はもう終わり。ねえ、僕と付き合ってくれる?」

穏やかに凪いだ表情が、途端に険しくなる。こんなにもたくさんの言葉で、あなたを好きだと伝えているのに。深見はなかなかイエスと首を縦に振らない。

「汐君から見たら、僕なんておじさんだろう。……この年だし、本気で好きになれる相手を見つけたい。もし付き合ってみて、汐君に嫌われて。若い子のほうに行ってしまったら、それこそ立ち直れない」
「そんなこと……。誠吾さんは、僕の気持ちを勝手に決めつけてずるい。ふらふらどっかに行っちゃうとか」
「……ごめん。拗らせすぎだな」

自嘲気味にふっと笑みを溢し、深見は琥珀色の液体を喉の奥に流し込む。こんなにも好きだと言っているのに、深見には恋する熱情が分からない。分かろうとしないのだ。

「誠吾さんと最初に会ったとき。僕に声をかけようとしてた、って言ってたよね。年が近そうだから誘ってくれたの? ……違うよね。本気で恋になれば、って思ってたんだよね?」

──『僕も君のことをもっと知りたい』

汐が「恋人でパートナーにもなって欲しい」とRewardを口にしたとき、深見から放たれるGlareがいっそう濃密なものになった。きっと心の奥底では、寂しさを埋めてくれる人を探しているのだ。

答えないままでいる深見の手を、汐は上から握った。

「この前はあんまり出来なかったけど……誠吾さんと今すぐプレイがしたい」

深見はやんわりと汐の手を剥がした。ノーというサインだ。

「正直、あんまり経験ないから、誠吾さんは物足りないって感じるかもしれないけど……。でも、少しずつ出来るようにするから」
「何を……?」

Commandを出されていないのに、汐は深見の足元へしゃがんだ。自らKneelの体勢を取り、服従の意を示す。
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