愛されSubは尽くしたい

リミル

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愛されSubは尽くしたい(最終章)

愛されSubは尽くしたい

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若社長の心労が祟らないうちに、会場はお開きとなった。二人は祝福に訪れた人達を最後まで見送った後、そのまま同じホテルの最上階へ上った。

個室で二人きりになると、深見は頬を色付かせて汐を抱き竦めた。待ち焦がれた抱擁に、汐も顔を綻ばせる。ベッドに辿り着くまでに何度か口付けを交わしながら、ゆっくりと歩いた。

チェックインは昨日済ませている。昨夜二人で乱したシーツが、ピンと皺なく張られていて、汐は顔を赤らめた。唇同士を繋いだままで、汐と深見は一緒に新しくなったシーツへ雪崩れる。

「今日は疲れたな」
「うん」

頭と足が重い。けれど、心地よい疲労だった。
深見は汐の上着を剥ぎ取ったり、シャツのボタンを外す。世話焼き気質なDomは、汐の手足のように動いた。

「あっ、そうだ。早くあれ……書かないと」

汐はテーブルの片隅に放置されていた、一片の書類を持ってきた。Domが左側、Subが右側を記入する一枚の誓約書だ。名前と押印をしたきりで、プレイ時の約束事や好きなこと、嫌いなことについて、汐のほうはまだ空欄だ。

対して深見のほうはびっしりと文字が埋められている。スパンキングに使う道具や、はたまた甘やかす際の方法まで、汐に逐一確認を取りながら上機嫌でしたためていたのだ。

……昨夜、プレイ内容を確認するうちに、盛り上がってムラムラしてしまい、汐が満足するまでGlareを注いでくれた。

正式な書類を、第三者に確認されるのだと思うと、恥ずかしくて悶絶する。

──どうしよっかな……何て書いたらいいだろう。んー……誠吾さんにしたいこと……あっ。

これしかないな。汐は思いついた一文を、中央に大きく書いた。

「これでいいかなぁ」

確認のために深見に見せると、ふっと笑われた。

「いいんじゃないか。汐君らしくて」
「じゃあ、これにしよ」

書類に顔を近づけた深見に、汐は不意打ちで唇を奪った。意趣返しとばかりに、深見は息を奪うくらいの長いキスをする。

覚えている。Subdropに陥ったときに、こうやって息を繋いでくれたことを。五歳の幼かった汐がそんなところまで覚えているなんて、深見はまさか思わないだろう。

──あの日、命を救ってくれた誠吾さん。そして、Subとしての生き方を迷っていた僕に、優しく手ほどきしてくれた誠吾さん。僕はこれからも誠吾さんに、たくさん尽くしたい。

首元のColorに誓って。

誓約書に書いた一文と全く同じことを、汐は心の中で呟く。今の気持ちを読み取ったように、理性を蕩けさせる、甘ったるいGlareが汐の頭上に降り注いだ。



『愛されSubは尽くしたい』fin.
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