最弱種族に異世界転生!?小さなモッモの大冒険♪ 〜可愛さしか取り柄が無いけれど、故郷の村を救う為、世界を巡る旅に出ます!〜

玉美-tamami-

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★ピタラス諸島第四、ロリアン島編★

529:最終決定

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   太陽が空高く登った正午頃。
   俺は、王宮の廊下を駆け足で移動していた。

   冷や汗が、止まらない。
   早く、早くチャイロの元へ戻らなくては。

『モッモ様、大丈夫ですか?』

   時折足元から、チルチルが心配して声を掛けてくれるものの、俺は返答すらまともに出来ずにいる。
   何故かって?
   とんでもなくとんでもない事実を、俺は知ってしまったから……






   時を遡る事、小一時間前。
   隠れ身のローブを身につけ、ズボンのポケットにチルチルから貰ったピンクダイヤモンドの原石を忍ばせて、足元の床の中にいるチルチルと共に、俺は王宮内の探索へと出発した。   

   黒い扉をそっと開け、辺りに誰もいない事を確かめて、ススッと静かに部屋の外に出る俺。
   残念ながら、外には踏み台になる物などないので、扉の鍵は開けっぱなしだ。
   けれどもまぁ、きっと誰も中に入ったりしないだろうし、きっと大丈夫だろう。

   王宮内は、昨日に比べて少しばかり騒がしかった。
   鎧を身につけた何人もの兵士が、その鋭い瞳をギラつかせながら、王宮内を絶えず巡回しているのだ。
   ガシャンガシャンと、嫌な足音を立てながら。
   それだけじゃない、侍女達も忙しなく働いている。
   あっちの部屋からこっちの部屋へ、こっちの部屋からあっちの部屋へと、何をしているのかはよく分からなかったが、なかなかにドタバタした様子だった。
   
   そんな中を、周りの風景に完全に同化した透明人間……、もとい、透明ピグモルとなった俺は、抜き足差し足忍び足で、忍者のごとく素早く進んでいった。
   視覚が頼りないらしい紅竜人だが、嗅覚も聴覚も、さほど優れてはいないらしい。
   俺が足元を通過したというのに、巡回している兵士達は誰一人として気付かなかった。
   ま、それだけ俺には忍びの才能がある、って事なのかも知れない……、うしししし♪

   廊下を小走りに進み、階段を下って下階に向かう。
   すると、下階に辿り着いてすぐ、一番近くの扉が急に開いたではないか。

「ひゃっ!?」

   ビビった俺は小さな悲鳴を上げて、姿を消している事など瞬時に忘れてしまい、柱の陰に慌てて隠れた。

『モッモ様? どうされました??』

   足元からチルチルが声を掛ける。

「どうって……、ドアが開いたから! 誰か出てくるかも知れないでしょうっ!?」

   小声で答える俺。

『そう、ですが……、誰もモッモ様のお姿を見る事は出来ませんよ?』

「はっ!? そうだった!!」

   チルチルに指摘されて、俺は自分のアホさに気付く。
   しかし、すぐさま隠れて良かったと思い直した。
   何故ならば、開かれた扉からは、あの怪しすぎる宰相イカーブが姿を現したからだ。

   いたっ! あいつだ!! イカーブだっ!!!

   スタスタと廊下を歩いて行くイカーブ。
   しかしながら不思議な事に、前回遭遇した際にイカーブの全身から放たれていたあの禍々しい黒い煙は、今は一切ない。
   ……何故だ? 俺の見間違いだったのか??

「お待ちくださいっ!」

   別の誰かの声に反応して、イカーブは足を止め、振り返った。
   声の主は、俺をチャイロの元へと送り込んだ兵士のティカだ。
   開かれた扉から走り出てきたティカは、イカーブの前に跪いた。

「イカーブ様! どうか、どうか……、今一度お考え直しをっ!!」

   姿勢が低いままのティカは、イカーブを見上げながら、語気を強めて進言した。

「いいえ、これは最終決定です。会議での決議は全員一致。……私とて辛いのですよ。御生れになった時からお見守り申し上げていた王子を、この手で亡き者にせねばならないなどという事は。けれど、仕方の無い事なのです」

   イカーブはそう言うと、くるりと背を向けて、廊下を歩いて行った。
   力無く立ち上がったティカは、その場に立ち尽くし、俯いて、握りしめた両の拳を悔しそうにブルブルと震わせていた。

   王子を亡き者にって……、もしかして、チャイロの事っ!?
   トエトが心配していたように、チャイロが生贄にされちゃうのっ!!?
   まさか、そんな……、嘘だろ?
   あのイカーブって奴、何考えてんだ!??
   昨日ここへ来たばかりの俺の言葉を、まんま鵜呑みにしたっていうのか??
   おかしいだろそんなのっ!?!!?

   憤慨し、急いで後を追おうとした俺の前に、新手が立ち塞がる。
   開かれた扉の先からゾロゾロと、怪しい集団が出てきたのだ。
   俺は一歩踏み出した足をスッと引っ込めて、またもや柱の陰に隠れた。

『……モッモ様?』

   足元から、怪訝そうなチルチルの声が響く。

「はっ!? また俺はっ!!?」

   自分の余りの情け無さ、ビビり具合、アホさ加減に嫌気がさしながらも、俺は、紅竜人の怪しい集団を前に今更走り出る事も出来ず……
   仕方がないので、彼等が通り過ぎるのを待つ事にした。

   俺の前をゾロゾロと歩く、怪しい集団。
   半分以上が侍女達なのだが、何やら見慣れない服装の者が一人、二人、三人……、全部で九人いる。
   九人が九人共、煌びやかな女性物の衣装を身に纏い、宝石などのアクセサリーを全身にこれでもかと身につけている。
   九人は、全員が似たような顔立ちで(まぁ、俺にとっちゃ紅竜人なんて、みんな似たような顔に見えるのだけどね。その中でも特に、この九人はよく似ているかな~? ってぐらいの感覚です)、とても痩せていて……、その目は、死んだ魚のように生気がない。
   そして、つるんとした赤い鱗が生え並ぶ頭には、同様の小さなティアラを身につけていた。

   九人いるという事は、たぶん彼らが……、いや、彼女達が、この国の王女達だな?
   周りにいるのは、彼女達に仕えている侍女達だろう。
   それにしても……、なんだってあんなにガリガリなんだ??
   頬はこけ、目が窪んで、首元の鎖骨がくっきり見えていて、まるで骨と皮だけみたいだ。
   身につけているものは見るからに高価なものばかりなのに、肉体は痩せ細っていて、飢餓状態寸前って感じだ。
   仮にも王族だろうに、食べ物を食べてないのか???
   なんなら周りで支えている侍女や兵隊達の方が、何倍も健康的に見える。
   王女だというのに、どうして……???

   見るからに不健康そうな九人の王女達は、沢山の侍女を引き連れて、イカーブが歩いて行った方とは反対に、王宮の奥に向かって廊下を歩いて行った。

   その後、扉からは、イカーブとよく似た白いローブを身に付けた、年老いた紅竜人達が複数出てきた。
   たぶん彼等は、トエトが言っていた、識者と呼ばれる国の大臣達だろう。
   見るからに偉そうだし、揃いも揃って高慢な顔付きをしている。
   彼等は四方八方の通路へと、散り散りになって姿を消した。

   辺りがシーンとしたところで、俺は柱の陰から身を出す。
   他に目を奪われている間に、さっきまでそこにいたはずのティカは姿を消して、イカーブももはや見当たらない。

   なんだか、大変な事になってきたかも知れない……
   急がないとっ!

   俺はごくんと生唾を飲んで、イカーブが歩いて行った方向へと、駆け足で廊下を進んでいった。
   
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