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★ピタラス諸島第一、イゲンザ島編★
256:派手だな~
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朝が来た。
小窓から差し込む朝日の光で俺は目を覚ます。
むくりと体を起こして、寝ぼけ眼を擦る。
いつのまにか寝てしまっていたらしい俺は、テッチャが敷いてくれたのであろう客用の布団の上にいた。
隣の、グレコが眠っていたはずのベッドは空になっており、テッチャの姿も見当たらない。
小屋の中には俺一人である。
くあ~っと欠伸をして、よいしょと立ち上がり、お尻をポリポリしながら窓を開ける。
外には小川が流れており、太陽の光を反射して、水面がキラキラと輝いている。
そこにテッチャとグレコはいた。
二人とも裸足になって川に入り、袖をまくって、なにやら川底を漁っている。
「おはよぉ~」
二人に声をかける俺。
「あ、おはようモッモ♪」
グレコ、本日は二日酔いしていないらしい。
爽やかな笑顔で、俺の方を見た。
「おぉ、やっと起きたかモッモ。どれ、今から朝食じゃよ。獲れたてのジャリガニをパンに挟むんじゃ。おめぇも手伝え~」
今しがた捕まえたのであろう、生きのいいジャリガニを摘んで見せるテッチャ。
ジャリガニは、形こそ前世のザリガニに似ているものの、色は薄い黄色をしている。
そして……、思っていたよりかなり大きいな。
二つあるハサミが結構危険な感じ……、てか、そんな生物が川の中にいたなんて、十五年間ここに住んでた俺でも知らなかったよ。
テッチャに誘われるままに、小屋から出て、両手両足の服をまくり、川に入る俺。
グレコなら脛までしかない水位でも、俺の場合は太腿の位置である。
流れがないに等しいほど穏やかであるからして、流される心配は不要だが……
うん、こんなに深いところに入った事なかったわ、ジャリガニの事なんか知らなくて当然だわ、……と俺は思った。
ジャリガ二は、思ったよりも動きが鈍く、簡単に捕まえる事ができた。
たぶん、天敵の少ないこの穏やかな川でのうのうと生きてきたから、逃げ方なんて知らなかったんだろうな……
気を付けろよジャリガ二共! お前たちの天敵、ドワーフのテッチャが降臨したぞっ!!
何がなんでも生き延びようとする、生物の基本的本能を呼び覚ませぇっ!!!
……と、穏やかな流れに向かって、俺は心の中で叫んでいた。
一人二尾ずつ、合計六尾のジャリガニを捕まえて、小屋の前で用意していた焚き火の、沸騰したお湯がたんまり入った小鍋へそのまんまポ~イ。
ジャリガニは、抵抗する間もなく、丸茹でされてしまいましたとさ。
茹で上がったジャリガニを、一旦川の水で冷やして、冷めたところを殻を剥いていく。
すると、俺がよく知っている形の、ぷるんとした剥き海老が出来上がった。
黄色いジャリガニの剥き海老を、テッチャ特製のソースにあえて、テトーンの樹の村原産のムギュのパンに、葉野菜のスレッタと、瓜科のトーガを漬物風にした物と一緒に挟む。
「さぁ出来たぞっ! わし特製の、元気モリモリサンドウィッチじゃっ!!」
パクッと一口頂くと……
「おぉ! 美味いっ!!」
テッチャ特製の甘辛いソースと、プリッとした触感のジャリガニがすごくマッチしていて、めちゃくちゃ美味!
これはまるで……、そうだな……、海老チリパン!!
「あ、美味しいわねこれ♪」
グレコも、満足そうに頷く。
「ガハハッ! じゃろ!? もうここ最近は毎朝これじゃ!!!」
豪快に笑って、テッチャもサンドウィッチを頬張る。
毎朝って……、ここのジャリガ二が絶滅してしまわないかと、少々不安になる俺。
しかしまぁ~、美味である。
確かにこれだけ美味しいと、毎朝食べたくなるテッチャの気持ちもわからなくもないな、もしゃもしゃ……
昨晩俺は、酒の酔いも手伝ってか、故郷の国を離れて一人、こんな場所で、小さな石をひたすら磨き続ける作業はどんなに大変な仕事だろうか……、と、ガラにもなくしんみりとした気持ちで、テッチャを見ていたのだが……
どうやら心配は無用だったようだ。
目の前でジャリガ二パンを美味しそうに頬張るテッチャの笑顔と言ったらもう……
悩みなぞ皆無! 金は儲かるし食事は美味いしっ!! まさにここは天国じゃよっ!!!
……なんて、声が聞こえてきそうだ。
テッチャはたぶん、何処でだって楽しくやっていける奴なんだなきっと、うん。
「さぁ、これを食い終わったらば、ボンザ殿のとこに行くぞ! その後はジャネスコにも行かねばならんしの、今日は忙しくなるぞぉっ!!」
俺を見て、テッチャはガハハと笑う。
「え……、は? 僕も??」
「当たり前じゃて。な~に寝ぼけとるんじゃ? まさか、昨晩の話を覚えとらんわけじゃあるまいの?? ちょうど今日、オークション主催者であるジュテーム協会から、ボンザ殿の口座に落札金が入金されるで、ボンザ殿を連れて銀行へ行き、わしとおめぇの口座に金を振り込んでもらおうと、昨晩言うとったじゃろうが???」
マジか……、全然覚えてないわそれ……
「なるほど……。まぁ、そんなに時間はかかんないよね?」
「そうじゃな、おまえさんのあの空間移動術を使えばすぐじゃろ? ボンザ殿がすぐに捕まって、銀行が混んでなけりゃ、半日もかからんじゃろて」
ふむ……、それでも半日かかるのか……
「ジャネスコに行くなら、万物屋にも寄っていかない? ほら、モゴ族の里で手に入れた素材、モーンさんに買い取ってもらいましょうよ」
美味しそうな匂いのレイコ―の珈琲を淹れて、グレコが言う。
「えっ!? 今日!??」
「そうよ。あんなに沢山の物が鞄に入ったままじゃ、中身がごちゃごちゃして、モッモも嫌でしょ?」
ニコッと笑うグレコ。
朝日に照らされた髪の毛は、もうかなり薄まっていて、栗色ですね、はい。
……てか、あのゴミみたいないろんな物を全部鞄に入れるように指示したの、あなたなんですけどね、グレコさん。
「用事があるなりゃさっさと行くぞ。おめぇら、明日の夕方までには、あっちへ戻らにゃならんのじゃろ?」
「うん。明後日の朝一に船が出るからね」
「んだらば、今日中に用事は済ませた方がええの。わしはちょいと、準備をしてくる」
そう言ってテッチャは、淹れ立て熱々の珈琲をグイッと飲み干して、小屋の中へと入って行った。
……淹れ立て熱々なはずなのに、なんでグイッと飲めたんだ? 超人か??
「あ、ねぇ、ギンロの新しいマント、買って帰ってあげない? ボロボロになったんでしょ?? ……今度は安いやつにしましょうね、ギンロの事だもの、またすぐ使い物にならなくしそうだし」
お上品に珈琲を口へと運び、グレコは言った。
……自分はブランド物の服着ているくせに、ギンロのマントは安物を~なんて、とんだお嬢様だなグレコめ。
まぁしかし、ギンロの事だ、グレコの言うように、またすぐマントを破くに違いない。
「結構やる事多いね。僕……、今日は村でのんびりしようと思ってたのに……」
珈琲を口に運びながら、文句を言う俺。
……あつっ!? やっぱりこの珈琲、熱々じゃねぇかっ!??
テッチャの口はどうなってんだよぉっ!???
口の中を軽く火傷した俺は、地味な痛みにイラっとする。
「ま、仕方ないわよ。テッチャが言ったように、今日中に用事を済ませておいて、明日ゆっくりしたらいいんじゃない? お金だって、今は必要ないけれど、いつかまた必要になると思うしね。四千万なんて金額……、そうそう手に入らないわよ?? 有り難く貰っておかないとね!」
「四千万かぁ……。それさ~、なんか怪しまれたりしないかなぁ? いきなり四千万なんて大金を、銀行の口座に預けたりなんかしたら……。何か、どこかで盗みでもしたんじゃないかって、思われるんじゃ……」
「ん~……、仮に思われたとしても、盗んでないんだからいいんじゃない?」
……うん、仰る通りですな。
「ま、難しい事はテッチャに任せましょう! なんてったって、ドワーフの王族なのよ!? ……あんな見た目だけど」
クスッと笑うグレコ。
おい、そこで笑うのはテッチャに失礼だぞ?
「準備できたぞぉっ!」
そう言って、小屋から勢いよく出てきたテッチャ。
その姿格好に、俺とグレコはフリーズする。
「テ……、テッチャ……? その……、服装で行くの??」
かろうじて、グレコがそう訊ねた。
「そうじゃよ。ん? 何かおかしいか??」
首を傾げるテッチャ。
「おかしいって言うか……、いや、その……、派手だな~って思って……」
苦笑いしながら、グレコはそう言った。
派手? そんなもんじゃ済まないだろうよ。
普段から身に着けている幾何学模様の服が地味だと思えるくらいに、その服はずば抜けてド派手である。
金地の布に、光沢のある黒い糸で幾何学模様が刺繍されたその服には、大小様々な、色とりどりの宝石が縫い付けられていて、頭に被っているのはほぼほぼ王冠だ。
「これは、デタラッタ王国の王族衣裳じゃよ。銀行なんかの公的な場所に赴く際は、王族はこれを身につけなければならんのじゃ。そうしないと、わしの口座の預金額を見て、銀行の職員たちがよからぬ妄想を抱いても困るでの。さ! 準備はできたぞっ!! 二人とも、もう行けるんかっ!??」
当たり前だという風にそう言われたグレコと俺は、お互いを見つめ合って、クルリと後ろを向き……
「たぶん、何言ってもテッチャはあの服を脱がないから、大通りを行くときは、テッチャから少し離れて、知らない人のフリして歩こうか」
「そうね、そうしましょ。私……、あんなのの仲間だと思われるのはちょっと……」
「うん、僕も……。でも、それ言ったらテッチャが傷つくだろうし、絶対に内緒ね」
「わかった。じゃあ……、心して行きましょう」
と、コソコソ話した。
後ろでは、テッチャが不思議そうな顔で、俺たちを見ていた。
小窓から差し込む朝日の光で俺は目を覚ます。
むくりと体を起こして、寝ぼけ眼を擦る。
いつのまにか寝てしまっていたらしい俺は、テッチャが敷いてくれたのであろう客用の布団の上にいた。
隣の、グレコが眠っていたはずのベッドは空になっており、テッチャの姿も見当たらない。
小屋の中には俺一人である。
くあ~っと欠伸をして、よいしょと立ち上がり、お尻をポリポリしながら窓を開ける。
外には小川が流れており、太陽の光を反射して、水面がキラキラと輝いている。
そこにテッチャとグレコはいた。
二人とも裸足になって川に入り、袖をまくって、なにやら川底を漁っている。
「おはよぉ~」
二人に声をかける俺。
「あ、おはようモッモ♪」
グレコ、本日は二日酔いしていないらしい。
爽やかな笑顔で、俺の方を見た。
「おぉ、やっと起きたかモッモ。どれ、今から朝食じゃよ。獲れたてのジャリガニをパンに挟むんじゃ。おめぇも手伝え~」
今しがた捕まえたのであろう、生きのいいジャリガニを摘んで見せるテッチャ。
ジャリガニは、形こそ前世のザリガニに似ているものの、色は薄い黄色をしている。
そして……、思っていたよりかなり大きいな。
二つあるハサミが結構危険な感じ……、てか、そんな生物が川の中にいたなんて、十五年間ここに住んでた俺でも知らなかったよ。
テッチャに誘われるままに、小屋から出て、両手両足の服をまくり、川に入る俺。
グレコなら脛までしかない水位でも、俺の場合は太腿の位置である。
流れがないに等しいほど穏やかであるからして、流される心配は不要だが……
うん、こんなに深いところに入った事なかったわ、ジャリガニの事なんか知らなくて当然だわ、……と俺は思った。
ジャリガ二は、思ったよりも動きが鈍く、簡単に捕まえる事ができた。
たぶん、天敵の少ないこの穏やかな川でのうのうと生きてきたから、逃げ方なんて知らなかったんだろうな……
気を付けろよジャリガ二共! お前たちの天敵、ドワーフのテッチャが降臨したぞっ!!
何がなんでも生き延びようとする、生物の基本的本能を呼び覚ませぇっ!!!
……と、穏やかな流れに向かって、俺は心の中で叫んでいた。
一人二尾ずつ、合計六尾のジャリガニを捕まえて、小屋の前で用意していた焚き火の、沸騰したお湯がたんまり入った小鍋へそのまんまポ~イ。
ジャリガニは、抵抗する間もなく、丸茹でされてしまいましたとさ。
茹で上がったジャリガニを、一旦川の水で冷やして、冷めたところを殻を剥いていく。
すると、俺がよく知っている形の、ぷるんとした剥き海老が出来上がった。
黄色いジャリガニの剥き海老を、テッチャ特製のソースにあえて、テトーンの樹の村原産のムギュのパンに、葉野菜のスレッタと、瓜科のトーガを漬物風にした物と一緒に挟む。
「さぁ出来たぞっ! わし特製の、元気モリモリサンドウィッチじゃっ!!」
パクッと一口頂くと……
「おぉ! 美味いっ!!」
テッチャ特製の甘辛いソースと、プリッとした触感のジャリガニがすごくマッチしていて、めちゃくちゃ美味!
これはまるで……、そうだな……、海老チリパン!!
「あ、美味しいわねこれ♪」
グレコも、満足そうに頷く。
「ガハハッ! じゃろ!? もうここ最近は毎朝これじゃ!!!」
豪快に笑って、テッチャもサンドウィッチを頬張る。
毎朝って……、ここのジャリガ二が絶滅してしまわないかと、少々不安になる俺。
しかしまぁ~、美味である。
確かにこれだけ美味しいと、毎朝食べたくなるテッチャの気持ちもわからなくもないな、もしゃもしゃ……
昨晩俺は、酒の酔いも手伝ってか、故郷の国を離れて一人、こんな場所で、小さな石をひたすら磨き続ける作業はどんなに大変な仕事だろうか……、と、ガラにもなくしんみりとした気持ちで、テッチャを見ていたのだが……
どうやら心配は無用だったようだ。
目の前でジャリガ二パンを美味しそうに頬張るテッチャの笑顔と言ったらもう……
悩みなぞ皆無! 金は儲かるし食事は美味いしっ!! まさにここは天国じゃよっ!!!
……なんて、声が聞こえてきそうだ。
テッチャはたぶん、何処でだって楽しくやっていける奴なんだなきっと、うん。
「さぁ、これを食い終わったらば、ボンザ殿のとこに行くぞ! その後はジャネスコにも行かねばならんしの、今日は忙しくなるぞぉっ!!」
俺を見て、テッチャはガハハと笑う。
「え……、は? 僕も??」
「当たり前じゃて。な~に寝ぼけとるんじゃ? まさか、昨晩の話を覚えとらんわけじゃあるまいの?? ちょうど今日、オークション主催者であるジュテーム協会から、ボンザ殿の口座に落札金が入金されるで、ボンザ殿を連れて銀行へ行き、わしとおめぇの口座に金を振り込んでもらおうと、昨晩言うとったじゃろうが???」
マジか……、全然覚えてないわそれ……
「なるほど……。まぁ、そんなに時間はかかんないよね?」
「そうじゃな、おまえさんのあの空間移動術を使えばすぐじゃろ? ボンザ殿がすぐに捕まって、銀行が混んでなけりゃ、半日もかからんじゃろて」
ふむ……、それでも半日かかるのか……
「ジャネスコに行くなら、万物屋にも寄っていかない? ほら、モゴ族の里で手に入れた素材、モーンさんに買い取ってもらいましょうよ」
美味しそうな匂いのレイコ―の珈琲を淹れて、グレコが言う。
「えっ!? 今日!??」
「そうよ。あんなに沢山の物が鞄に入ったままじゃ、中身がごちゃごちゃして、モッモも嫌でしょ?」
ニコッと笑うグレコ。
朝日に照らされた髪の毛は、もうかなり薄まっていて、栗色ですね、はい。
……てか、あのゴミみたいないろんな物を全部鞄に入れるように指示したの、あなたなんですけどね、グレコさん。
「用事があるなりゃさっさと行くぞ。おめぇら、明日の夕方までには、あっちへ戻らにゃならんのじゃろ?」
「うん。明後日の朝一に船が出るからね」
「んだらば、今日中に用事は済ませた方がええの。わしはちょいと、準備をしてくる」
そう言ってテッチャは、淹れ立て熱々の珈琲をグイッと飲み干して、小屋の中へと入って行った。
……淹れ立て熱々なはずなのに、なんでグイッと飲めたんだ? 超人か??
「あ、ねぇ、ギンロの新しいマント、買って帰ってあげない? ボロボロになったんでしょ?? ……今度は安いやつにしましょうね、ギンロの事だもの、またすぐ使い物にならなくしそうだし」
お上品に珈琲を口へと運び、グレコは言った。
……自分はブランド物の服着ているくせに、ギンロのマントは安物を~なんて、とんだお嬢様だなグレコめ。
まぁしかし、ギンロの事だ、グレコの言うように、またすぐマントを破くに違いない。
「結構やる事多いね。僕……、今日は村でのんびりしようと思ってたのに……」
珈琲を口に運びながら、文句を言う俺。
……あつっ!? やっぱりこの珈琲、熱々じゃねぇかっ!??
テッチャの口はどうなってんだよぉっ!???
口の中を軽く火傷した俺は、地味な痛みにイラっとする。
「ま、仕方ないわよ。テッチャが言ったように、今日中に用事を済ませておいて、明日ゆっくりしたらいいんじゃない? お金だって、今は必要ないけれど、いつかまた必要になると思うしね。四千万なんて金額……、そうそう手に入らないわよ?? 有り難く貰っておかないとね!」
「四千万かぁ……。それさ~、なんか怪しまれたりしないかなぁ? いきなり四千万なんて大金を、銀行の口座に預けたりなんかしたら……。何か、どこかで盗みでもしたんじゃないかって、思われるんじゃ……」
「ん~……、仮に思われたとしても、盗んでないんだからいいんじゃない?」
……うん、仰る通りですな。
「ま、難しい事はテッチャに任せましょう! なんてったって、ドワーフの王族なのよ!? ……あんな見た目だけど」
クスッと笑うグレコ。
おい、そこで笑うのはテッチャに失礼だぞ?
「準備できたぞぉっ!」
そう言って、小屋から勢いよく出てきたテッチャ。
その姿格好に、俺とグレコはフリーズする。
「テ……、テッチャ……? その……、服装で行くの??」
かろうじて、グレコがそう訊ねた。
「そうじゃよ。ん? 何かおかしいか??」
首を傾げるテッチャ。
「おかしいって言うか……、いや、その……、派手だな~って思って……」
苦笑いしながら、グレコはそう言った。
派手? そんなもんじゃ済まないだろうよ。
普段から身に着けている幾何学模様の服が地味だと思えるくらいに、その服はずば抜けてド派手である。
金地の布に、光沢のある黒い糸で幾何学模様が刺繍されたその服には、大小様々な、色とりどりの宝石が縫い付けられていて、頭に被っているのはほぼほぼ王冠だ。
「これは、デタラッタ王国の王族衣裳じゃよ。銀行なんかの公的な場所に赴く際は、王族はこれを身につけなければならんのじゃ。そうしないと、わしの口座の預金額を見て、銀行の職員たちがよからぬ妄想を抱いても困るでの。さ! 準備はできたぞっ!! 二人とも、もう行けるんかっ!??」
当たり前だという風にそう言われたグレコと俺は、お互いを見つめ合って、クルリと後ろを向き……
「たぶん、何言ってもテッチャはあの服を脱がないから、大通りを行くときは、テッチャから少し離れて、知らない人のフリして歩こうか」
「そうね、そうしましょ。私……、あんなのの仲間だと思われるのはちょっと……」
「うん、僕も……。でも、それ言ったらテッチャが傷つくだろうし、絶対に内緒ね」
「わかった。じゃあ……、心して行きましょう」
と、コソコソ話した。
後ろでは、テッチャが不思議そうな顔で、俺たちを見ていた。
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