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1 8歳女児と4歳男児
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公爵令嬢に転生した8歳の女児、それが現在の僕である。
前世は日本の苦学生だった。大学の勉強とバイトに明け暮れる日々を送っていたおぼろげな記憶はあるものの、それ以外のことはあまり覚えていない。
最初に転生に気付いたのは、物心ついた3歳の終わりくらいで『前世では男だったのに女の子に転生しちゃったのか⋯』と戸惑ったけれど、さすがに8年も女の子をしていたらもう慣れた。前世だったら右も左も小学校低学年女児だらけのお茶会だってそつなくこなす日々だ。
僕のお父様は今の王様の弟なので、僕と同じ8歳の王女様は従姉妹にあたり、今日みたいに王女様主催のお茶会にちょくちょく招かれたりする。本日の会場は王城の庭園だ。
王城での茶会といってもメンバーは下は7歳から上は11歳の女児ばかりだし、会の最高権力者の王女様も次点の公爵家の僕も、親戚だからか争いを好まない温和な性格だ。だからか女だらけのギスギスとかは全然なくて、美味しいお茶とお菓子を頂きながら女児トークに花を咲かせるのはけっこう楽しい。何しろ前世が過酷だったものだから⋯⋯
今世は今のところ、前世とは比べものにならないお気楽な毎日だ。事故か過労かは知らないが、ハードな生活の末に儚くなったのだろう前世の僕を憐れんだ神様が、のんびりな令嬢ライフをプレゼントしてくれたのかなと思って楽しんでいる。
「うふふ。失礼いたしますわ。ちょっとお花を摘みに」
お茶会の途中でトイレ休憩に立った僕。おしゃべりでのどが渇いてついついお茶を飲み過ぎてしまった。勝手知ったる王城はあちこちで近衛が見回りをしていて警備はばっちりだから侍女は連れてきていない。貴族って常に侍女や護衛がそばにいるから、こんな1人時間はめずらしい。
王城の廊下を歩く道すがら、窓からは騎士団の訓練風景が見えた。女子生活も楽しいけれど、やっぱり前世男子としては、剣には並々ならぬ憧れがある。しかもこの世界は魔法が普通に使えるので、剣から魔法のエフェクトがばんばん飛び出してめちゃくちゃかっこよくて憧れてしまう。
ちょっと前にお父様に剣術を習いたいですと申し出たら即却下されてしまった。公爵家のひとりっ子女児の僕にはそんな危ない習い事をさせられないって言われてしまった。実に残念だ。でも魔法は一般教養として普通に家庭教師に教えてもらえるからそこは嬉しい。前世には魔法なんてなかったから、練習してちょっとした魔法が使えるようになるだけでも大興奮してしまう。
「⋯⋯ん?」
なんの前触れもなく、着ていたドレスの裾が急にずしっと重くなった。死期が近づいた戦士は鎧を妙に重く感じることがあるという⋯みたいなアレだったらどうしよう。
恐る恐る、重みを感じるドレスの裾あたりに視線を向けてみると、金髪の幼児が右後方のスカート部分にしがみ付いていた。髪形と服装からしてたぶん男の子。小さい子の年齢には詳しくないけど3歳くらいかな?
足音も声も聴こえなかったのに、唐突に現れた幼児に僕は心底びびっていた。でもずっとドレスの裾に張り付かれたままなのもそれはそれで怖いので、僕は彼を刺激しないように、そっと声をかけてみることにした。
「え~と⋯⋯あなたはひょっとして迷子なのかしら?」
「⋯⋯⋯」
金髪の幼児は何も言わず、ドレスに両手でしっかりとしがみついていて顔も見えない状態だ。僕は腰を曲げ、彼をドレスから引き剥がそうと試みる。
「ち、力が強い⋯全然剥がれない⋯え?ちっちゃい子ってこんなに握力強かったっけ?」
思わず前世の口調が出てしまうほど、彼のしがみつき力は強かった。謎の幼児は依然として物言わず僕のドレスにへばり付いたままである。
「え⋯?もしかして人間じゃなくて王宮に棲んでる座敷わらし的な存在⋯?」
僕がホラーの可能性に戦慄していると、廊下の向こうからドドドドドドと轟音が鳴り響いた。えっ、何事?とそっちを見ると、怒濤の勢いの水流がこっちに向かって押し寄せてくるのが視界に映った。
「ええっ!?」
逃げる間もなく僕達の眼前まで迫った大量の水に絶体絶命と思いきや、水流は僕と幼児を避けるように枝分かれしたあと、跡形もなく消え去った。
「うう⋯ゲホッ、ゲホッ」
「だ、大丈夫ですか!?」
水流に王宮の侍女が3人ほど巻き込まれていたようだ。駆け寄りたいけどドレスに幼児が引っ付いているし⋯
「ゲホッ⋯ああっ!!見つけました、第2王子殿下!!」
侍女の1人がこちらを見た瞬間にそう叫んだ。
第2王子殿下ってこの謎の幼児のことかな。妖怪とかじゃなくて安心した。そういえば王女様の弟にそのくらいの年の王子様がいたな。
僕のイトコの王女様の母親である王妃様と、この第2王子殿下の母親である側妃様は犬猿の仲だと城内では有名だ。そのせいか王女様と仲良しの僕は、第2王子殿下とは彼が赤ちゃんのころに何度か会わせてもらったきりでほとんど面識がなかった。
ずぶ濡れの侍女達によると、この第2王子殿下はついさっきまで騎士団の訓練場のそばで剣術の稽古をしていたそうなんだけど、師匠と侍女達が目を離したほんの一瞬の間に転移魔法を発動して行方不明になり、王子様付きの召使い総出で手分けして城内を捜し回っていたらしい。
「イーライ殿下は大変優秀であらせられて齢4歳にして高度な転移魔法も修得されておられるのです。ですがお稽古の最中に転移魔法を発動なさったのは初めてのことでございまして⋯先ほどの水流も、おそらく殿下の魔力が暴走して出現したものでしょう。殿下の魔力量は建国以来随一と言われております。殿下がご幼少のみぎりには泣かれるたびに城内が軽く爆発したり氷漬けになることがございました」
「まあ。それはそれは」
殿下はまだまだご幼少のみぎり真っ最中だと思うんだけどな。まあ赤ちゃんの頃の話だよね。もしかして僕が殿下に会えなかったのって魔力が暴走しがちで危なかったからかな。
それにしてもさっきの水流はかなりの水量だったけど、このちっちゃい殿下が出したのか。僕なんて水魔法はまだ習得していないし、転移魔法は王宮勤めのすごい人しか使えない高度なやつだ。本当にすごいなこの子。
僕に殿下のことを説明してくれているのは殿下の婆やさん的な侍女で、あとの若い2人は廊下にしゃがみ込んで僕のドレスにへばり付いた殿下を懸命に引き剥がそうとしている。でも剥がれる気配は全然なさそうだ。
「ぐぬぬ⋯とても4歳とは思えぬ握力の強さ⋯!」
「日頃あれほど聡明なあなた様が、いったいどうなさったのですか殿下?」
「仕方ありません⋯また殿下が魔力を暴走させてしまっては危険です。緊急措置を取らせていただきたく存じます」
婆やさんは僕のドレスが誰かの形見などの替えのきかない品でないことを確認すると、王子様が再び魔力を暴走させないように鎮静魔法をかけた。麻酔で眠らされたような状態のはずなんだけど、それでもやっぱり王子様はドレスの布をしっかり握って離さないので、婆やさんがどこからともなく取り出した裁ちばさみで王子様がひっついてる部分の布をジョキジョキと切り取って、彼を布ごとササッと回収していった。ドレスは後日、王宮御用達デザイナーの最高級品をお詫びにプレゼントしてくれるそうだ。
ドレスの裾は布やレースやパニエが重なっていて切り取られた部分から僕の生足がこんにちはすることはないけれど、この格好で王女様のお茶会に戻るわけにもいかないのでお腹の調子が⋯とお城の人に伝えてもらって早退することにした。
その日の夕方、王宮から我が家に僕宛てのお詫びの手紙が届いた。
【親愛なるアシュリー嬢へ
先ほどは私の不甲斐無さにより貴女に不快な思いをさせてしまったこと深くお詫び申し上げます。言い訳になってしまいますが王宮の廊下にたたずむ女神のごとき貴女の姿をひと目見た瞬間、心を奪われた私は無意識に貴女の元に魔法で転移し、感情が高ぶるあまり暴走した魔力で水流を発生させてしまったようなのです。私はとにかく夢見心地で、その前後の記憶が曖昧ですが、貴女のそばから片時も離れたくないと強く願ったことだけは覚えています。私のせいで損なってしまったドレスの代わりに、美しい貴女に似合うドレスを急ぎ仕立てさせています。受け取ってくれると嬉しい。
貴女のイーライより】
4歳児がこんな文面の手紙を書くわけないので婆やさんの代筆だよねと思っていたら、これは紛うことなき王子直筆のお手紙であるとお父様がおっしゃった。
そういえば婆やさんが第2王子殿下はめちゃくちゃ優秀って言ってたな。イーライ殿下(4歳)はどうやら僕(8歳)に一目惚れしてしまったようだ。
手紙では『女神』とか『美しい』とか僕の容姿をベタ褒めしてくれているけれど、客観的に見た僕はそこまでの美人じゃない。薄い茶色の髪に同系色の瞳で派手さは皆無だし、前世でいうとクラスで5~6番目に可愛いかな?くらいの顔である。僕のどこがそんなにイーライ殿下に刺さったのか正直わからない。背だけは同じ年の女子より頭ひとつ分高いから、長身なところ?
殿下のお顔を拝見することは終始できなかったけれど、赤ちゃんの時に見た彼はめちゃくちゃ整ったお顔立ちだったから、きっと今も天使のようなご容貌なんだろうな。
だけどまあ、いくら賢くても殿下はまだ4歳児。僕もお父様もお母様も、4歳の王子様からのラブレターにほっこりしつつも、誰ひとり本気には捉えていなかった。
前世は日本の苦学生だった。大学の勉強とバイトに明け暮れる日々を送っていたおぼろげな記憶はあるものの、それ以外のことはあまり覚えていない。
最初に転生に気付いたのは、物心ついた3歳の終わりくらいで『前世では男だったのに女の子に転生しちゃったのか⋯』と戸惑ったけれど、さすがに8年も女の子をしていたらもう慣れた。前世だったら右も左も小学校低学年女児だらけのお茶会だってそつなくこなす日々だ。
僕のお父様は今の王様の弟なので、僕と同じ8歳の王女様は従姉妹にあたり、今日みたいに王女様主催のお茶会にちょくちょく招かれたりする。本日の会場は王城の庭園だ。
王城での茶会といってもメンバーは下は7歳から上は11歳の女児ばかりだし、会の最高権力者の王女様も次点の公爵家の僕も、親戚だからか争いを好まない温和な性格だ。だからか女だらけのギスギスとかは全然なくて、美味しいお茶とお菓子を頂きながら女児トークに花を咲かせるのはけっこう楽しい。何しろ前世が過酷だったものだから⋯⋯
今世は今のところ、前世とは比べものにならないお気楽な毎日だ。事故か過労かは知らないが、ハードな生活の末に儚くなったのだろう前世の僕を憐れんだ神様が、のんびりな令嬢ライフをプレゼントしてくれたのかなと思って楽しんでいる。
「うふふ。失礼いたしますわ。ちょっとお花を摘みに」
お茶会の途中でトイレ休憩に立った僕。おしゃべりでのどが渇いてついついお茶を飲み過ぎてしまった。勝手知ったる王城はあちこちで近衛が見回りをしていて警備はばっちりだから侍女は連れてきていない。貴族って常に侍女や護衛がそばにいるから、こんな1人時間はめずらしい。
王城の廊下を歩く道すがら、窓からは騎士団の訓練風景が見えた。女子生活も楽しいけれど、やっぱり前世男子としては、剣には並々ならぬ憧れがある。しかもこの世界は魔法が普通に使えるので、剣から魔法のエフェクトがばんばん飛び出してめちゃくちゃかっこよくて憧れてしまう。
ちょっと前にお父様に剣術を習いたいですと申し出たら即却下されてしまった。公爵家のひとりっ子女児の僕にはそんな危ない習い事をさせられないって言われてしまった。実に残念だ。でも魔法は一般教養として普通に家庭教師に教えてもらえるからそこは嬉しい。前世には魔法なんてなかったから、練習してちょっとした魔法が使えるようになるだけでも大興奮してしまう。
「⋯⋯ん?」
なんの前触れもなく、着ていたドレスの裾が急にずしっと重くなった。死期が近づいた戦士は鎧を妙に重く感じることがあるという⋯みたいなアレだったらどうしよう。
恐る恐る、重みを感じるドレスの裾あたりに視線を向けてみると、金髪の幼児が右後方のスカート部分にしがみ付いていた。髪形と服装からしてたぶん男の子。小さい子の年齢には詳しくないけど3歳くらいかな?
足音も声も聴こえなかったのに、唐突に現れた幼児に僕は心底びびっていた。でもずっとドレスの裾に張り付かれたままなのもそれはそれで怖いので、僕は彼を刺激しないように、そっと声をかけてみることにした。
「え~と⋯⋯あなたはひょっとして迷子なのかしら?」
「⋯⋯⋯」
金髪の幼児は何も言わず、ドレスに両手でしっかりとしがみついていて顔も見えない状態だ。僕は腰を曲げ、彼をドレスから引き剥がそうと試みる。
「ち、力が強い⋯全然剥がれない⋯え?ちっちゃい子ってこんなに握力強かったっけ?」
思わず前世の口調が出てしまうほど、彼のしがみつき力は強かった。謎の幼児は依然として物言わず僕のドレスにへばり付いたままである。
「え⋯?もしかして人間じゃなくて王宮に棲んでる座敷わらし的な存在⋯?」
僕がホラーの可能性に戦慄していると、廊下の向こうからドドドドドドと轟音が鳴り響いた。えっ、何事?とそっちを見ると、怒濤の勢いの水流がこっちに向かって押し寄せてくるのが視界に映った。
「ええっ!?」
逃げる間もなく僕達の眼前まで迫った大量の水に絶体絶命と思いきや、水流は僕と幼児を避けるように枝分かれしたあと、跡形もなく消え去った。
「うう⋯ゲホッ、ゲホッ」
「だ、大丈夫ですか!?」
水流に王宮の侍女が3人ほど巻き込まれていたようだ。駆け寄りたいけどドレスに幼児が引っ付いているし⋯
「ゲホッ⋯ああっ!!見つけました、第2王子殿下!!」
侍女の1人がこちらを見た瞬間にそう叫んだ。
第2王子殿下ってこの謎の幼児のことかな。妖怪とかじゃなくて安心した。そういえば王女様の弟にそのくらいの年の王子様がいたな。
僕のイトコの王女様の母親である王妃様と、この第2王子殿下の母親である側妃様は犬猿の仲だと城内では有名だ。そのせいか王女様と仲良しの僕は、第2王子殿下とは彼が赤ちゃんのころに何度か会わせてもらったきりでほとんど面識がなかった。
ずぶ濡れの侍女達によると、この第2王子殿下はついさっきまで騎士団の訓練場のそばで剣術の稽古をしていたそうなんだけど、師匠と侍女達が目を離したほんの一瞬の間に転移魔法を発動して行方不明になり、王子様付きの召使い総出で手分けして城内を捜し回っていたらしい。
「イーライ殿下は大変優秀であらせられて齢4歳にして高度な転移魔法も修得されておられるのです。ですがお稽古の最中に転移魔法を発動なさったのは初めてのことでございまして⋯先ほどの水流も、おそらく殿下の魔力が暴走して出現したものでしょう。殿下の魔力量は建国以来随一と言われております。殿下がご幼少のみぎりには泣かれるたびに城内が軽く爆発したり氷漬けになることがございました」
「まあ。それはそれは」
殿下はまだまだご幼少のみぎり真っ最中だと思うんだけどな。まあ赤ちゃんの頃の話だよね。もしかして僕が殿下に会えなかったのって魔力が暴走しがちで危なかったからかな。
それにしてもさっきの水流はかなりの水量だったけど、このちっちゃい殿下が出したのか。僕なんて水魔法はまだ習得していないし、転移魔法は王宮勤めのすごい人しか使えない高度なやつだ。本当にすごいなこの子。
僕に殿下のことを説明してくれているのは殿下の婆やさん的な侍女で、あとの若い2人は廊下にしゃがみ込んで僕のドレスにへばり付いた殿下を懸命に引き剥がそうとしている。でも剥がれる気配は全然なさそうだ。
「ぐぬぬ⋯とても4歳とは思えぬ握力の強さ⋯!」
「日頃あれほど聡明なあなた様が、いったいどうなさったのですか殿下?」
「仕方ありません⋯また殿下が魔力を暴走させてしまっては危険です。緊急措置を取らせていただきたく存じます」
婆やさんは僕のドレスが誰かの形見などの替えのきかない品でないことを確認すると、王子様が再び魔力を暴走させないように鎮静魔法をかけた。麻酔で眠らされたような状態のはずなんだけど、それでもやっぱり王子様はドレスの布をしっかり握って離さないので、婆やさんがどこからともなく取り出した裁ちばさみで王子様がひっついてる部分の布をジョキジョキと切り取って、彼を布ごとササッと回収していった。ドレスは後日、王宮御用達デザイナーの最高級品をお詫びにプレゼントしてくれるそうだ。
ドレスの裾は布やレースやパニエが重なっていて切り取られた部分から僕の生足がこんにちはすることはないけれど、この格好で王女様のお茶会に戻るわけにもいかないのでお腹の調子が⋯とお城の人に伝えてもらって早退することにした。
その日の夕方、王宮から我が家に僕宛てのお詫びの手紙が届いた。
【親愛なるアシュリー嬢へ
先ほどは私の不甲斐無さにより貴女に不快な思いをさせてしまったこと深くお詫び申し上げます。言い訳になってしまいますが王宮の廊下にたたずむ女神のごとき貴女の姿をひと目見た瞬間、心を奪われた私は無意識に貴女の元に魔法で転移し、感情が高ぶるあまり暴走した魔力で水流を発生させてしまったようなのです。私はとにかく夢見心地で、その前後の記憶が曖昧ですが、貴女のそばから片時も離れたくないと強く願ったことだけは覚えています。私のせいで損なってしまったドレスの代わりに、美しい貴女に似合うドレスを急ぎ仕立てさせています。受け取ってくれると嬉しい。
貴女のイーライより】
4歳児がこんな文面の手紙を書くわけないので婆やさんの代筆だよねと思っていたら、これは紛うことなき王子直筆のお手紙であるとお父様がおっしゃった。
そういえば婆やさんが第2王子殿下はめちゃくちゃ優秀って言ってたな。イーライ殿下(4歳)はどうやら僕(8歳)に一目惚れしてしまったようだ。
手紙では『女神』とか『美しい』とか僕の容姿をベタ褒めしてくれているけれど、客観的に見た僕はそこまでの美人じゃない。薄い茶色の髪に同系色の瞳で派手さは皆無だし、前世でいうとクラスで5~6番目に可愛いかな?くらいの顔である。僕のどこがそんなにイーライ殿下に刺さったのか正直わからない。背だけは同じ年の女子より頭ひとつ分高いから、長身なところ?
殿下のお顔を拝見することは終始できなかったけれど、赤ちゃんの時に見た彼はめちゃくちゃ整ったお顔立ちだったから、きっと今も天使のようなご容貌なんだろうな。
だけどまあ、いくら賢くても殿下はまだ4歳児。僕もお父様もお母様も、4歳の王子様からのラブレターにほっこりしつつも、誰ひとり本気には捉えていなかった。
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