婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!

山田 バルス

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第9話 ローゼ視点 ― 引きこもりライフ満喫

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ローゼ視点 ― 引きこもりライフ満喫

 ふわぁ……。
 あくびをひとつ。
 昨日の夜はロフトでぐっすり眠ったから、朝からすっきりしている。

 あれからもうどのくらい経ったのかしら?
 地下牢に入れられて、泣きじゃくって、絶望して、でも《スキル:引きこもり》が発動して。
 気がつけば、このマイルームは私の居場所になっていた。

 ベッドから降りてカーテンを開けると――そこにはいつもの灰色の牢獄の石壁はなく、淡い光に包まれた、私の「部屋」の窓があった。
 窓の向こうに風景は見えない。ただ白い光が広がっているだけ。
 でもいいの。前世で過ごしたワンルームそのままが、ここにはある。それだけで十分幸せだった。

「さて、今日は何をしようかな」

 キッチンでお湯を沸かし、朝から紅茶を入れる。
 昨日は洋食モーニングだったけど、今日は和食にしてみようかしら。

 ウインドウを開く。

――ポロリン♪
《君に宅急便で毎日お届け:モーニングセット》
1.和食
2.洋食

 即座に和食を選ぶ。

 テーブルにふわりと白い小箱が現れ、開けてみれば、焼き魚に味噌汁、卵焼きまで付いた完璧な朝食。
 思わず「きゃーっ」と声をあげてしまった。

「まさか、牢獄でこんな朝ごはんを食べられるなんて……」

 お箸を手に取り、一口ごとに感動する。
 ご飯の甘み。味噌汁の優しい香り。
 涙が出そうになるくらい、あたたかい。

 食後、ほっと一息ついた時だった。

――ポロリン♪

「あ、またレベルアップね!」

 急いでウインドウを確認する。

《レベル6到達! 新スキル解放》
《君に宅急便で毎日お届け:エンタメ機能》
以下の中から選択可能:
1.音楽プレイヤー(前世で聴いていた曲リスト)
2.動画視聴(懐かしのバラエティ・アニメ・城内の様子)
3.ゲーム(前世で遊んだ携帯ゲームアプリ)

「えええーーー!?」

 思わず椅子から立ち上がった。

「まさか、こんなものまで!? これは反則でしょ!」

 笑いながら涙が出てくる。
 牢獄に入れられたとき、私は死にたいとまで思っていたのに。
 それが今は、前世で唯一心を支えてくれた“娯楽”をもう一度味わえるだなんて。

「どれから試そうかな……」

 まずは音楽を選んでみる。

 次の瞬間、透明な板にプレイリストが浮かび上がり、懐かしい曲名が並んでいた。
 私は迷わず「青春バラードベスト」をタップ。

 スピーカーもないのに、部屋中にやさしい旋律が流れた。
 その音色は前世の孤独な夜を支えてくれた歌。
 失ったと思っていたものが、いま再びここにある。

「……うん、やっぱり音楽ってすごい」

 胸がじんわりと温かくなる。
 私はベッドにごろんと寝転んで、音楽に身を委ねた。

 しばらくして、動画機能も試してみる。

 そこには、懐かしいアニメの続きがちゃんと並んでいた。
 刀と剣と踊りのアニメ。途中で視聴をやめざるを得なかった作品。

「うわー! 本当に続きが見られるなんて!」

 思わず拍手をしてしまう。
 画面はクリアで、音質も最高。
 夢中になって見ていたら、あっという間に1時間が過ぎてしまった。

――ポロリン♪

「あ、やっぱりそうだ! またレベルアップね!」

《レベル7到達! 新スキル解放》
《君に宅急便で毎日お届け:おやつタイム》
1.和菓子
2.洋菓子

「おやつまで!? ほんと最高すぎるわ!」

 私は即座に洋菓子を選び、現れた小箱を開けると――中にはチョコレートムースが入っていた。

「やばい……これ、絶対高級品よ!」

 紅茶を淹れ直し、動画の続きを見ながらおやつを楽しむ。
 まさに引きこもり天国。

 お腹も心も満たされた頃、ウインドウをもう一度開く。

「さて、次はゲームも気になるわね」

 選んでみると、画面に見覚えのあるパズルゲームが浮かび上がった。
 あの頃、電車の中やベッドで延々と遊んでいたシンプルなアプリ。

「わー、懐かしい……!」

 気がつけば夢中で遊び続けていた。
 時間を忘れて、何度もクリアとリトライを繰り返す。

――ポロリン♪

「え、また!?」

 もう笑うしかなかった。

《レベル8到達! 新スキル解放》
《君に宅急便で毎日お届け:選べるルームカスタム》
1.部屋の壁紙を変更
2.家具を新調

「ついに……インテリアまで自由に!?」

 私は即座に壁紙を花柄に変更してみる。
 次の瞬間、部屋全体がぱっと華やかに彩られた。

「きゃー! 可愛い! 最高!」

 感動のあまり、ベッドに飛び込んでバタバタと転がる。

 こうして私は、音楽を聴き、動画を見、おやつを食べ、ゲームを楽しみ、部屋を模様替えし……。
 気づけば一日があっという間に過ぎ去っていた。

 外で何が起きているのか、看守がどれほど大騒ぎしているのか、そんなことは一切知らない。
 私はただ、自分の「世界」の中で幸せを満喫していたのだ。

 牢獄という絶望から生まれた、夢のような引きこもり空間で。
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