婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!

山田 バルス

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第10話 ローゼ視点 贅沢引きこもりと脂肪プレゼント

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ローゼ視点 ― 贅沢引きこもりと脂肪プレゼント

 ごろん。
 私はベッドに寝転がったまま、スマホ代わりのウインドウを指でスワイプする。

 あれからどのくらい経っただろう。
 動画を見て、音楽を聴いて、おやつを食べて、ゲームで遊んで、部屋を模様替えして……。
 この牢獄の時間は、まるで夢のように甘やかで、どこまでも続いていくように思えた。

「ふぁ……。ちょっと眠いわね」

 食後のスイーツをぱくりと口に放り込み、私は満足げにため息をついた。
 今日は洋食ランチ。カルボナーラのクリームが濃厚で、チーズがとろりと溶けて最高だった。
 食後に届いたのはチーズケーキ。甘さと塩気のバランスが絶妙で、紅茶が進んでしまう。

「……やばい、幸せすぎて逆に怖い」

 と、そこへ。

――ポロリン♪

「あ、また来た! レベルアップね!」

 私はワクワクしながらウインドウを開く。

《レベル9到達! 新スキル解放》
《君に宅急便で毎日お届け:小説投稿サイト》
条件:閲覧専用ではなく、過去に読んだ作品も掲載可。
特典:ランキング閲覧可・コメントは不可。

「う、うそ……小説投稿サイトまで!?」

 前世の引きこもり時代、私はネットの小説投稿サイトを覗くのが習慣だった。
 そこで読んだ物語が、どれだけ私の心を救ってくれたことか。

 ウインドウを操作すると、まさにそのサイトが浮かび上がった。
 ランキングもあるし、懐かしいタイトルも並んでいる。
 あの頃途中で読めなくなった連載が、今も更新されているなんて――。

「きゃあああ! 最高すぎる!」

 興奮のあまりベッドをバンバン叩いてしまう。
 私は夢中で作品を読み漁り、時間を忘れた。

 次に解放されたのは、通販的サービスだった。

《レベル10到達! 新スキル解放》
《君に宅急便で毎日お届け:お取り寄せ通販》
条件:日替わりでカタログが更新。選択は一日三回まで。

「通販!? まさか……!」

 目の前にパラパラとカタログ冊子が浮かび上がり、私の部屋のテーブルに置かれた。
 開いてみると、スイーツ、おしゃれな雑貨、アロマキャンドルにぬいぐるみまで。
 しかも、無料。

「え……これ、買わなくていいの!? ほんとに?」

 恐る恐る選んでみると、小箱が出現し、中からふわふわのクッションが現れた。
 抱きしめた瞬間、「ふおおおおっ」と声が漏れる。
 柔らかい。あたたかい。
 もうこれで昼寝するしかない。

 だが、幸せには代償があった。

 何日も食べて寝て、漫画を読んで、動画を見て、通販の品に囲まれて。
 ある日、ふと鏡を見た私は衝撃を受けた。

「……ん? あれ? お腹が……」

 ぽよん、と。
 私のお腹のお肉が、見事につまめるくらいになっていたのだ。

「ぎゃあああああっ!?」

 叫び声をあげ、鏡の前でひっくり返りそうになる。
 確かに最近、食べてばかりで運動してなかった。
 階段も、牢屋の移動もない。ずっとワンルームでゴロゴロしていた。

「……これは、やばい」

 自分ひとりしかいないから誰にも見られない。
 でも、それでも。私は公爵令嬢。少なくとも誇りくらいは守りたい。

「このまま“ふくよかローゼ”になるなんて絶対にいや!」

 そんな焦りの最中。

――ポロリン♪

「きたっ! お願い、ここで救世主的スキルを!」

 祈るようにウインドウを開く。

《レベル11到達! 新スキル解放》
《君に宅急便で毎日お届け:プレゼント機能》
最近会った相手に、定期的に「理不尽に対するお返し」をプレゼント可能。
1.脂肪:条件として、理不尽をされた相手に対し、自身の増えた分をプレゼントできます(理不尽さにより上限あり)。
2.請求書:条件として、理不尽をされた相手に「それ相応の負債」をプレゼントできます(理不尽さにより上限あり)。

「……な、なにこれ!? 脂肪プレゼントって!!」

 思わず笑ってしまった。
 でも、冷静に考えてみると、これ……めちゃくちゃ便利じゃない?

「理不尽をされた相手、ってことは……そう、あの女。ミーア」

 私を陥れて牢に落とした、憎き令嬢。
 そうだ、彼女にプレゼントすればいい。

「じゃあ……選ぶのは、1・脂肪!」

 ウインドウのボタンを押した瞬間、私のお腹につまめるほどついていた脂肪が、すーっと消えていった。
 代わりに、光の粒子が飛んでいき、消える。

 私はお腹を触ってみる。
 平ら。引き締まっている。
 元通りだ。

「やったぁぁぁぁっ!!!」

 ベッドの上で飛び跳ねて歓喜する。
 まるで魔法のダイエット。これでもう安心して食べられる。

「ふふふ……あのミーアが、突然太り始めるなんて。ざまあみろ、って感じね」

 ローゼはにやりと笑い、再びベッドに寝転がる。
 そして手にしたのは、新しく届いた小説の最新巻。
 もう後は何も怖くない。

 こうして私は、誰も知らぬ牢獄の中で、
 娯楽に囲まれ、甘い物を食べ、通販で部屋を飾りつけ、
 余分なお肉は“プレゼント”してしまうという、前代未聞の引きこもり生活を満喫するのだった。

 外の騒動?
 看守たちの驚愕?
 ミーアが急に太り始めて悲鳴を上げていること?

 そんなことは、私の知るところではなかった。
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