婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!

山田 バルス

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第21話 アルベルト視点 ― 財産消失と怒りの矛先

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アルベルト視点 ― 財産消失と怒りの矛先

 ミーアとの顔合わせをやめて数日。
 冷え切った心を、政務に集中することでごまかしていた。
 ――少なくとも、そう思っていた。

 だが、その平穏は唐突に破られた。

 朝、執務室にて。

「殿下。こちらをご確認ください」

 侍従が差し出した帳簿を開いた瞬間、俺は目を疑った。

「な……なんだと?」

 王宮の金庫に保管していた俺の私財、その中から――金貨百枚が消えていた。

「記録が……残っている?」

 慌てて帳簿を追う。
 そこには《高級洋食》《スイーツ詰め合わせ》《家具・雑貨》など、信じがたい用途で支払われた明細が残っていた。
 最後にこう記されている。

《※本件はすでにお支払い済みです》

「馬鹿な……誰が許可を出した!?」

 怒声が執務室に響く。
 侍従たちは震え上がり、「我々は一切……」と口を揃えた。

 俺は歯噛みした。
 権限を持たぬ者が勝手に金庫を開けることなどできぬ。
 つまり、この支出は「制度上も正規の処理」として扱われているのだ。

 だが、俺は何も注文していない。
 ……誰かが、俺の名を使い、勝手に浪費している。

 翌日。

 財産はさらに減っていた。
 金貨五十枚。用途は《娯楽ウインドウ使用料》《お取り寄せ通販》など、耳慣れぬ言葉ばかり。

「ふざけるな……!!」

 机を叩く音が響く。
 侍従たちは青ざめ、記録を持ってきた会計係はその場で気絶しかけていた。

 俺は焦燥に駆られ、金庫を自室に移した。
 堅牢な鉄の箱に金貨を詰め込み、寝ずの番をつける。
 これで盗み出されるはずがない――そう信じた。

 だが、その夜。

「……なっ!?」

 突如、箱が光を放ち始めた。
 中にいた番兵たちが慌てて開けたが、次の瞬間、金貨はすべて消え失せた。
 残されていたのは、金色の封蝋が押された一通の封筒。

《請求書》
《受領書》

 二枚の紙。

「ば、馬鹿な……」

 箱を叩いても、鍵を壊しても、中は空だ。
 その代わりに、明細には《スイーツ詰め合わせ・二十回》《高級寝具一式》などと記され、最後にはまたしても《お支払い済み》と書かれていた。

 俺は愕然とし、崩れ落ちた。
 これは盗みではない。
 制度上「正規の取引」として処理されている。

 このままでは――破産する。

「殿下」

 数日後。
 焦燥に沈む俺の元へ、アーサーとマッスルが訪れた。

「……聞き及んでおります。財産が不可解に消え続けているとか」
「はい。しかし、その件……我ら、心当たりがございます」

「心当たり……?」

 二人は顔を見合わせ、静かに言った。

「――ローゼの仕業です」

「……ローゼ?」

 思わず立ち上がる。
 あの女は地下牢にいる。
 自由も権限もないはずだ。

 だが、アーサーは頷いた。
「彼女は、かつてより不可解な“力”を使ってきました。牢屋で贅沢三昧に暮らしているという噂も……。ならば、この怪異も彼女によるものと考えるのが自然です」

 マッスルも続ける。
「殿下の財産を食いつぶしているのは、あの女に違いありません。断じて放置してはならぬかと」

 俺は拳を震わせた。

 そうか……やはり、あの女か。
 ミーアを呪い、俺の財を奪い、王家を笑いものにするつもりなのだ。

 怒りが、胸の奥からせり上がる。

「……許さん」

 低い声が漏れた。

「すぐに牢屋へ向かう。直接問いただし、この手で決着をつける」

 アーサーとマッスルは深く頷き、俺の背後に従った。

 夕刻。

 地下牢へ向かう階段を下りながら、俺は己の決意を固めていた。

 ――財産を食いつぶす女を、これ以上野放しにはできない。
 ――この手で、必ず罪を認めさせる。

 重い鉄扉の前に立ち、深呼吸を一つ。
 扉を開いた先で、俺を待つのは――贅沢に浸り、笑みを浮かべるローゼ。

 次の瞬間、俺の怒声が牢屋に轟いた。

「――ローゼ!!」
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