婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!

山田 バルス

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第39話 アルベルト視点 アルベルト断罪される!

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 王の断罪 ― アルベルト視点

 父王グランツが帰還する――玉座の間に響いたその宣告を聞いた瞬間、俺の心は大きく揺れた。
 だが、恐れる必要はない。俺は正しい。ローゼを牢に入れ、ミーアを守り、王太子として正義を行った。父は必ず俺を称賛するはずだ。

 長い凱旋の行列ののち、王宮に凛と響く角笛。
 重厚な扉が開かれ、堂々とした姿の父が現れた。長旅を経ても背筋は伸び、深紅のマントが威厳を湛えている。
 玉座に歩み寄り、ゆるりと腰を下ろした父を前に、俺はひざまずいた。

「父上、アルベルトただいま参り――」

「黙れ」

 低く鋭い一言が、空気を切り裂いた。
 玉座の間が凍り付く。

 父の視線は俺ではなく、その背後に控えていたミーアへと向けられていた。
 豪奢なドレスに身を包んだミーアは、かつての愛らしさの面影を失い、肥え太った身体を揺らしていた。

 父はひとしきり彼女を眺めると、重々しく言葉を発した。

「……なるほど。アルベルトよ。お前がなぜローゼ嬢を捨て、ミーア嬢を選んだのかがよくわかったぞ」

 胸の奥がどきりとした。

「お前の好みは、あの気高きローゼ嬢ではなく――このようにふくよかな女性であったのだな。実によく理解できた」

「ち、ちが……!」

「黙れ」

 再びの一喝に、俺の言葉は喉奥で凍りついた。
 父の眼光は鋭く、王の威光が玉座の間を覆い尽くす。

「アルベルト。お前の婚約解消を認めよう。……だが、国王たる我が定めた婚約を一方的に破棄したのは事実。その責を免れることはできぬ」

 玉座の間にざわめきが走った。
 俺は必死に首を振る。

「お待ちください父上! あれはローゼの自業自得で――」

「問うてはおらぬ!」

 叱りつける激しい声が、俺の全身を打ち据えた。
 父は続ける。

「よって、アルベルト。お前の王位継承権をはく奪する。王家の血を継ぐ者としての資格は、もはやない」

「なっ……!」

 頭の中が真っ白になった。
 王位継承権のはく奪――それはすなわち、俺が未来の王でなくなるということ。
 ありえない、俺が……俺が……!

 だが父の言葉は止まらない。

「さらに。お前はミーア嬢の男爵家に婿入りせよ。……ただし」

 父の声が冷たく沈む。

「ミーア嬢には浮気癖があると報告を受けている。王族ではない者が、王族を名乗る危険を防ぐため――アルベルト、お前には去勢の刑を科す」

 ……時が止まった。

 去勢? 俺が?
 王子である俺が?

 信じられない言葉に、足元が崩れ落ちそうになった。

「ひ、父上……! おやめください! そんな、そんな理不尽な――」

「理不尽、だと?」

 父の瞳が燃えるように光った。

「理不尽こそ、お前がローゼ嬢に与えたものだろうが!」

 その一言に、胸を突かれた。
 ローゼの泣き顔が、脳裏に浮かぶ。

 いや、違う。あれは自業自得だ。俺は正しい。正義を行ったのだ。
 それなのに、どうして――!

「衛兵! 連れていけ!」
 父の号令とともに、鎧をまとった近衛たちが踏み込んできた。

 俺は必死に逃れようとしたが、アーサーとマッスルさえも目を逸らした。
 誰も俺を助けない。

「いやだ! 俺は王になるのだ! 去勢など、やめろ! 父上ぇぇぇ――!」

 だが、助けを求める声は無情にかき消された。



 手術室へ連行された後、俺の断罪は執り行われた。

 王位継承権を失い、男としての力を奪われた俺は、ただの婿養子として生きるしかなくなった。
 王子としての威光も、未来も、すべて消え去った。

 そして、新たな皇太子に任じられたのは――弟のエリオットであった。

 玉座の間に鳴り響く人々の歓声を、俺は遠ざかる意識の中で聞いていた。
 それは祝福の声であり、同時に俺にとっての断罪の鐘の音だった。
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