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閑話3 猫耳アーサーの恋
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新しい扉 ― 採用試験のその後
開店準備が整った頃、マーガレット店長は三人を順に見定めていった。
まず、ドレスを纏ったアルベルト王子。堂々とした立ち振る舞いと美貌は群を抜いている。だが、マーガレットはきっぱり首を振った。
「殿下の身分でここに立つわけには参りませんわ。もし万が一、噂でも立てば大事になりますもの」
「ふむ……残念だな。だが仕方あるまい」
王子は涼しい顔をして頷いた。
次にマッスル。豪快な笑みと盛り上がる筋肉。だが隣に立つアイーナと比較されると、どうしてもキャラが被ってしまう。
「悪いけど……筋肉担当はもう足りているのよ」
「なにぃ!? 我が肉体は唯一無二ではないのか!」
「似たようなのは二人もいらないの。ごめんね」
マッスルは拳を握りしめたが、最終的には客として来ることを許されて満足げにうなずいた。
そして最後にアーサー。猫耳メイド姿に身を包み、頬を真っ赤にしながら立っている。
「わ、わたしは別に……」
その小声を遮るように、マーガレットは手を打った。
「決まり! あなたは今日からうちの看板娘候補よ!」
「はぁぁぁ!? なんでわたしだけぇぇぇ!」
アルベルト王子は口元を隠して笑い、ミーアは満足げにうなずいた。
――こうしてアーサーは、否応なく「新しい扉」で働くこととなったのであった。
◆
開店と同時に、夜の街の常連客たちが次々と店に足を踏み入れる。色鮮やかな照明に照らされるホール。舞台のように華やかな空間の中、アーサーは半泣きのまま案内役を務める。
「い、いらっしゃいませ……!」
そのぎこちない笑顔に、客たちはどっと沸いた。
「なんて可愛い子だ!」
「新入りか?」
「名前は?」
と口々に声が飛ぶ。
アーサーは羞恥心に耐えながらも、王子の厳しい視線に背中を押され、必死に接客を続けた。
「お、お飲み物はいかがでしょうか……」
「お可愛い声ですこと!」
「え、えぇ……ありがとうございます……」
顔を真っ赤にするたび、客席から拍手と歓声が上がる。気づけばアーサーは、一番人気になっていた。
◆
そんな中、一人の男が目に留まった。
渋い顔立ちに落ち着いた雰囲気をまとう、三十代前半ほどの商人風の男――リチャードである。
彼は他の客のように騒ぎ立てず、静かに杯を傾けながらアーサーに視線を向けていた。
「……初めて見た顔だな。君、ここで働くのは今日からかい?」
「は、はい……」
緊張で声が裏返るアーサーを見て、リチャードは柔らかく微笑んだ。
「緊張してる? でも、すごく似合ってるよ。その猫耳も、ドレスも」
「っ……!」
胸がどくんと跳ねた。
これまで何度も「可愛い」と言われたが、不思議とこの男の声だけが心に残った。
◆
それからというもの、リチャードは頻繁に店を訪れるようになった。
毎回アーサーを指名し、落ち着いた会話を楽しむ。彼は過剰に持ち上げることはせず、ただ自然に「君は笑った方が素敵だよ」と言うのだった。
「……わたし、本当に可愛いのかな」
「もちろん。信じられないのかい?」
「だ、だって……元男なのに」
「性別なんて関係ないよ。君は君だ。美しいものは美しいんだ」
その言葉に、アーサーの頬は真っ赤に染まった。恥ずかしいはずなのに、胸の奥が温かい。
気づけばアーサーは、鏡に映る自分を以前よりも長く見つめるようになっていた。
ドレスに身を包んだ姿が、ほんの少し誇らしく思えてくる。
◆
やがて数週間が経ち、二人の距離は自然と縮まっていった。
仕事を終えたアーサーが裏口から出ると、リチャードが待っている。
「今日もよく頑張ったね」
「……なんで毎回待ってるの」
「君と話す時間が楽しみなんだよ」
そんな会話を重ねるうちに、アーサーの心は次第に彼に惹かれていった。
最初は「可愛い」「美人だ」と言われることに強烈な羞恥を覚えていたのに、今ではその言葉を待ち望んでいる自分がいる。
そして、リチャードの前でだけは、素直に笑えるようになっていた。
◆
ある夜、店の閉店後。
人通りの少ない路地裏で、リチャードは真剣な眼差しをアーサーに向けた。
「アーサー……いや、君にとっては失礼かもしれないけど、僕は本気だ。君と一緒にいたい」
「えっ……」
胸が大きく脈打つ。
自分でも気づいていた気持ち――けれど、こうして言葉にされると、全身が震えるほどの衝撃が走った。
「……わ、わたしも……リチャードといると、なんだか安心する」
その瞬間、二人の距離は自然に縮まり、互いの温もりを確かめ合うように抱きしめ合った。
◆
こうして、アーサーは「新しい扉」で看板娘(?)として働くうちに、商人リチャードと恋人同士になった。
最初は恥ずかしくて仕方がなかった酒場での日々。だが、そこで得た出会いは、アーサーにとってかけがえのない宝物となったのである。
開店準備が整った頃、マーガレット店長は三人を順に見定めていった。
まず、ドレスを纏ったアルベルト王子。堂々とした立ち振る舞いと美貌は群を抜いている。だが、マーガレットはきっぱり首を振った。
「殿下の身分でここに立つわけには参りませんわ。もし万が一、噂でも立てば大事になりますもの」
「ふむ……残念だな。だが仕方あるまい」
王子は涼しい顔をして頷いた。
次にマッスル。豪快な笑みと盛り上がる筋肉。だが隣に立つアイーナと比較されると、どうしてもキャラが被ってしまう。
「悪いけど……筋肉担当はもう足りているのよ」
「なにぃ!? 我が肉体は唯一無二ではないのか!」
「似たようなのは二人もいらないの。ごめんね」
マッスルは拳を握りしめたが、最終的には客として来ることを許されて満足げにうなずいた。
そして最後にアーサー。猫耳メイド姿に身を包み、頬を真っ赤にしながら立っている。
「わ、わたしは別に……」
その小声を遮るように、マーガレットは手を打った。
「決まり! あなたは今日からうちの看板娘候補よ!」
「はぁぁぁ!? なんでわたしだけぇぇぇ!」
アルベルト王子は口元を隠して笑い、ミーアは満足げにうなずいた。
――こうしてアーサーは、否応なく「新しい扉」で働くこととなったのであった。
◆
開店と同時に、夜の街の常連客たちが次々と店に足を踏み入れる。色鮮やかな照明に照らされるホール。舞台のように華やかな空間の中、アーサーは半泣きのまま案内役を務める。
「い、いらっしゃいませ……!」
そのぎこちない笑顔に、客たちはどっと沸いた。
「なんて可愛い子だ!」
「新入りか?」
「名前は?」
と口々に声が飛ぶ。
アーサーは羞恥心に耐えながらも、王子の厳しい視線に背中を押され、必死に接客を続けた。
「お、お飲み物はいかがでしょうか……」
「お可愛い声ですこと!」
「え、えぇ……ありがとうございます……」
顔を真っ赤にするたび、客席から拍手と歓声が上がる。気づけばアーサーは、一番人気になっていた。
◆
そんな中、一人の男が目に留まった。
渋い顔立ちに落ち着いた雰囲気をまとう、三十代前半ほどの商人風の男――リチャードである。
彼は他の客のように騒ぎ立てず、静かに杯を傾けながらアーサーに視線を向けていた。
「……初めて見た顔だな。君、ここで働くのは今日からかい?」
「は、はい……」
緊張で声が裏返るアーサーを見て、リチャードは柔らかく微笑んだ。
「緊張してる? でも、すごく似合ってるよ。その猫耳も、ドレスも」
「っ……!」
胸がどくんと跳ねた。
これまで何度も「可愛い」と言われたが、不思議とこの男の声だけが心に残った。
◆
それからというもの、リチャードは頻繁に店を訪れるようになった。
毎回アーサーを指名し、落ち着いた会話を楽しむ。彼は過剰に持ち上げることはせず、ただ自然に「君は笑った方が素敵だよ」と言うのだった。
「……わたし、本当に可愛いのかな」
「もちろん。信じられないのかい?」
「だ、だって……元男なのに」
「性別なんて関係ないよ。君は君だ。美しいものは美しいんだ」
その言葉に、アーサーの頬は真っ赤に染まった。恥ずかしいはずなのに、胸の奥が温かい。
気づけばアーサーは、鏡に映る自分を以前よりも長く見つめるようになっていた。
ドレスに身を包んだ姿が、ほんの少し誇らしく思えてくる。
◆
やがて数週間が経ち、二人の距離は自然と縮まっていった。
仕事を終えたアーサーが裏口から出ると、リチャードが待っている。
「今日もよく頑張ったね」
「……なんで毎回待ってるの」
「君と話す時間が楽しみなんだよ」
そんな会話を重ねるうちに、アーサーの心は次第に彼に惹かれていった。
最初は「可愛い」「美人だ」と言われることに強烈な羞恥を覚えていたのに、今ではその言葉を待ち望んでいる自分がいる。
そして、リチャードの前でだけは、素直に笑えるようになっていた。
◆
ある夜、店の閉店後。
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「アーサー……いや、君にとっては失礼かもしれないけど、僕は本気だ。君と一緒にいたい」
「えっ……」
胸が大きく脈打つ。
自分でも気づいていた気持ち――けれど、こうして言葉にされると、全身が震えるほどの衝撃が走った。
「……わ、わたしも……リチャードといると、なんだか安心する」
その瞬間、二人の距離は自然に縮まり、互いの温もりを確かめ合うように抱きしめ合った。
◆
こうして、アーサーは「新しい扉」で看板娘(?)として働くうちに、商人リチャードと恋人同士になった。
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