婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!

山田 バルス

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閑話4 女冒険者マッスルの爆誕

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 翌日――。

 【新しい扉】での衝撃的な職業体験を終えたマッスルは、まだ自分の胸に残るモヤモヤを抱えていた。黒いドレスを着て歌い踊る先輩キャスト、アイーナの姿に心酔してしまった自分を思い出すと、男としてどうなんだと頭を抱えたくなる。  
 だが同時に、一つの可能性も見えてきた。剣術には自信がある。けれど、騎士団には入れない。ならば別の道を――そう、冒険者だ。

「女装して酒場で働けるくらいなら……女冒険者として活動するのもアリなんじゃないか?」

 誰にも聞かせられない独り言をつぶやきながら、マッスルは決意を固めた。

 ◇

 その日、男爵領都の中心にある冒険者ギルドは、朝から活気に包まれていた。粗野な笑い声、酒の匂い、剣と鎧の金属音。そんな中、ギルドの扉が開かれる。

 ――ギィィ……。

「……ひっ!」

 場の空気が一瞬で凍り付く。入り口に立っていたのは、豪快な筋肉をレースのドレスで締め付け、派手な化粧を施した“謎の存在”だったからだ。

「ば、化け物だっ! 魔獣がギルドに侵入したぞ!」

「剣を取れ! いや、待て、人間……か? いやいやいや、違うだろ!」

 大混乱の中、マッスルは胸を張って進み出る。

「失礼。私は新しく冒険者になりたい者だ。名前は……マッスル。今日から女冒険者として活動する!」

 その宣言に、場はさらにざわめいた。

「……女? あれが?」
「いや、どう見ても男だろ……いや、いや、言われてみれば……?」

 誰もが目を疑う中、受付嬢のクラリッサが青ざめた顔でカウンターに立った。

「え、えっと……ご新規の方、ですか? あの、その……服装は……」

「問題ない。心も体も女だ!」

 きっぱり言い切るマッスル。
 クラリッサは返答に困りながらも、冒険者登録の書類を取り出した。

「……と、とりあえず登録はできます。ただし……規約上、身分証明と名前の記入をお願いします」

「うむ。名はマッスル。職業は……女冒険者だ!」

 周囲からどっと笑い声が上がる。
 だがクラリッサは真面目に書類をまとめ、正式に「冒険者マッスル」が誕生した。

 ◇

 初めての依頼は、郊外に出没するゴブリン討伐だった。 
 ギルドの仲間たちは面白半分に見送った。
「どうせ返り討ちにあって泣いて戻る」
 と思っていたのだ。しかし――。

「ふんっ!」

 マッスルの剣が一閃する。ゴブリンの首が吹き飛び、次々と敵が倒れていった。

「ば、馬鹿な……!」 
「ゴブリンどころか、小隊並みにいる群れを……一人で……?」

 数時間後、マッスルは血飛沫に濡れながらも堂々と帰還した。袋に詰めたゴブリンの耳を受付にドサリと置く。

「討伐完了だ。……ほら、証拠だ」

 ギルド内は静まり返り、やがて大歓声に包まれた。

「す、すげぇ……!」
「あの化け物女装は……本物の実力者だ!」

 こうして、マッスルは一夜にしてギルドの話題の中心となった。

 ◇

 その夜、ギルド併設の酒場は大騒ぎだった。マッスルを囲み、冒険者たちがジョッキを打ち鳴らす。

「マッスル姐さんに乾杯!」
 「ゴブリン退治、お見事でした!」

「はっはっは! 女装でも何でも構わん、強ければ冒険者だ!」

 ジョッキを傾けながら、マッスルは心の中で安堵した。
 これで職を得た。剣を振るい、仲間と笑い合う。これこそ自分の居場所ではないか、と。

 ◇

 数日後、冒険者ギルドに滞在中に、男爵家からの知らせが届いた。
 監視役のマーカスが封を切り、読み上げる。

「……『マッスルが冒険者として仕事を得たこと、並びに更生の兆しが見られるため、謹慎を解く』――だそうだ」

「おおっ……!」

 マッスルの胸に熱いものがこみ上げる。ついに、自分の力で未来を切り開いたのだ。

「よし、これからは“女冒険者マッスル”として、名を上げてやる!」

 その言葉に、ギルド中が再び笑い声に包まれた。

 こうして、筋肉と女装と勘違いに満ちた新しい冒険が始まったのであった。
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