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第74話 永遠の誓い ― ローゼ視点(結婚式)
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永遠の誓い ― ローゼ視点(結婚式)
婚約式から、もう一年が経った。
思えば、あの日からの日々は夢のように過ぎていった。牢獄の闇から光の中へ。王太子妃候補として過ごした時間は、苦しくもあり、けれど温かな学びの連続だった。
エリオット殿下――いいえ、今日からは「私の夫」と呼ぶべき人と、共に過ごした一年。
彼は私より二つ年下で、どこか頼りなさも残している。けれど、その真っすぐな心と、私を信じてくれる瞳に、何度も勇気づけられてきた。
その間、世界は静かではなかった。
◆
隣国アンドリア王国では、アルル姫をめぐる政争が激化していた。
本来ならば、アルル姫はアンドリア皇太子のもとに嫁ぐはずだった。
だが、婚約式の席で、皇太子が突然口にしたのだ。
「アルル姫は……女だ!」
あまりに不可解な言葉に、参列者全員が凍りついた。
姫が女であることなど、誰もが知っている。
なぜ今さら、そんな当たり前のことを叫ぶのか。
けれど皇太子はそのまま婚姻を辞退し、式は混乱の中で終わった。
理由はいまだに不明だ。
噂では、彼の母后派と父皇派の争いが背後にあるとかないとか。
結局、アルル姫はもう一人の結婚希望者だったマンハイム=ドレスデン公爵令息と婚約を結び直した。
私たちの結婚式が終われば、彼女も隣国へ嫁ぐことになっている。
そして――さらなる衝撃が走ったのは、その後のことだった。
かつて私を追い詰めたあのミーアが、崩壊したルーレット帝国の「女王」として即位したのだ。
しかも、彼女のそばには姉役を名乗るサーア―の姿もあった。
牢獄で見たときとは違う、華やかで威厳を纏った彼女の姿に、私はただ驚くしかなかった。
さらに信じられないことに、アンドリア皇太子は帰国途中で、あの筋肉自慢のマッスルに出会い……なんと彼女を「皇太子妃」として迎えると発表したのだ。
国中が呆然とし、私たちもニュースを聞いた時には言葉を失った。
だが、それもまた隣国の選択。歴史は思わぬ方向へと転がっていく。
◆
けれど、今日だけは他国の騒乱も忘れていい。
なぜなら――私たちの結婚式の日だから。
王宮の大聖堂は、白百合と黄金の装飾で満ちていた。
天井から吊るされた光の魔石が七色に輝き、まるで夜空に星が降り注いでいるかのよう。参列する人々の視線が一斉に私へと注がれ、心臓が高鳴った。
純白のドレスをまとった私は、父の腕をとってゆっくりと歩く。
祭壇の前には、紺と白の礼服に身を包んだエリオットが立っていた。まだ少年らしさを残す顔立ちなのに、その表情は堂々としていた。
視線が重なった瞬間、緊張がすっとほどける。
彼はいつもそうだ。どんなに不安でも、彼の瞳を見ると「大丈夫」と思える。
「ローゼ……」
小さく名前を呼ばれ、胸の奥が温かく満たされた。
◆
式は厳かに始まった。
国王陛下の前で、神官の問いかけに答える。
「王太子エリオット殿下。この方を妻とすることを望みますか」
「望みます」
「ローゼ・フォン・エルンスト嬢。あなたはこの方を夫とすることを望みますか」
「……望みます」
その瞬間、拍手が鳴り響き、聖堂の扉が大きく開いた。外の光が差し込み、まるで天が祝福しているように思えた。
私とエリオットは誓いの口づけを交わし、指に黄金の指輪をはめあった。
銀の徽章から金の指輪へ――婚約から結婚へ。未来を約束する証は、確かな重みをもって私たちを繋いだ。
◆
披露宴では、数々の賛辞と祝福の言葉が寄せられた。
アルル姫も参列しており、私に小さく囁いた。
「次はわたくしの番ね。あなたのように強く笑える花嫁になりたい」
「きっとなれますわ、アルル姫」
彼女の瞳は少し揺れていたけれど、その奥には決意が宿っていた。
そして、ルーレット帝国からの使者としてやって来たのは、女王ミーア本人だった。
かつて敵対していたはずの彼女が、堂々と王冠をいただき、凛と微笑んでいる。
私と目が合った時、ほんの一瞬だけ、かつての少女の面影が戻ったように見えた。
「おめでとう、ローゼ。……あなたは強い。だからこそ、今日を迎えられたのでしょう」
彼女の言葉はどこか悔しげで、けれど認めざるを得ない誠実さがあった。
◆
夜になり、星空の下で二人きりになった。
人々の祝福の声も遠ざかり、静寂の中でエリオットが私の手を取る。
「やっと……夫婦になれたね、ローゼ」
「ええ、本当に。あなたとなら、どんな未来でも」
彼は少し照れたように笑った。
まだ少年のあどけなさを残す笑み。それが、私には愛しくて仕方がなかった。
「僕はまだ未熟だけど、君と一緒なら必ず強くなれる。だから――これからも隣にいてほしい」
「もちろん。私はあなたの妻ですもの」
固く手を握り合い、私たちは夜空を見上げた。
どんな嵐が訪れようと、愛があれば越えていける。牢獄の日々を耐え抜いた私には、それが真実だとわかる。
◆
こうして私は、正式に王太子妃となり、やがて王妃となる道を歩み始めた。
アルル姫も、隣国で新たな運命を迎える。
ミーアもまた、女王としての道を進む。
それぞれの未来が交差し、絡まり合いながら歴史を形作っていく。
だが、私にとって一番大切なのは――隣にいる彼。
年下で、少し頼りないけれど、真っすぐで優しい夫。
「これからも、共に歩んでいきましょう、エリオット」
「うん、永遠に――ローゼ」
その誓いは夜空に溶け、永遠の星となった。
婚約式から、もう一年が経った。
思えば、あの日からの日々は夢のように過ぎていった。牢獄の闇から光の中へ。王太子妃候補として過ごした時間は、苦しくもあり、けれど温かな学びの連続だった。
エリオット殿下――いいえ、今日からは「私の夫」と呼ぶべき人と、共に過ごした一年。
彼は私より二つ年下で、どこか頼りなさも残している。けれど、その真っすぐな心と、私を信じてくれる瞳に、何度も勇気づけられてきた。
その間、世界は静かではなかった。
◆
隣国アンドリア王国では、アルル姫をめぐる政争が激化していた。
本来ならば、アルル姫はアンドリア皇太子のもとに嫁ぐはずだった。
だが、婚約式の席で、皇太子が突然口にしたのだ。
「アルル姫は……女だ!」
あまりに不可解な言葉に、参列者全員が凍りついた。
姫が女であることなど、誰もが知っている。
なぜ今さら、そんな当たり前のことを叫ぶのか。
けれど皇太子はそのまま婚姻を辞退し、式は混乱の中で終わった。
理由はいまだに不明だ。
噂では、彼の母后派と父皇派の争いが背後にあるとかないとか。
結局、アルル姫はもう一人の結婚希望者だったマンハイム=ドレスデン公爵令息と婚約を結び直した。
私たちの結婚式が終われば、彼女も隣国へ嫁ぐことになっている。
そして――さらなる衝撃が走ったのは、その後のことだった。
かつて私を追い詰めたあのミーアが、崩壊したルーレット帝国の「女王」として即位したのだ。
しかも、彼女のそばには姉役を名乗るサーア―の姿もあった。
牢獄で見たときとは違う、華やかで威厳を纏った彼女の姿に、私はただ驚くしかなかった。
さらに信じられないことに、アンドリア皇太子は帰国途中で、あの筋肉自慢のマッスルに出会い……なんと彼女を「皇太子妃」として迎えると発表したのだ。
国中が呆然とし、私たちもニュースを聞いた時には言葉を失った。
だが、それもまた隣国の選択。歴史は思わぬ方向へと転がっていく。
◆
けれど、今日だけは他国の騒乱も忘れていい。
なぜなら――私たちの結婚式の日だから。
王宮の大聖堂は、白百合と黄金の装飾で満ちていた。
天井から吊るされた光の魔石が七色に輝き、まるで夜空に星が降り注いでいるかのよう。参列する人々の視線が一斉に私へと注がれ、心臓が高鳴った。
純白のドレスをまとった私は、父の腕をとってゆっくりと歩く。
祭壇の前には、紺と白の礼服に身を包んだエリオットが立っていた。まだ少年らしさを残す顔立ちなのに、その表情は堂々としていた。
視線が重なった瞬間、緊張がすっとほどける。
彼はいつもそうだ。どんなに不安でも、彼の瞳を見ると「大丈夫」と思える。
「ローゼ……」
小さく名前を呼ばれ、胸の奥が温かく満たされた。
◆
式は厳かに始まった。
国王陛下の前で、神官の問いかけに答える。
「王太子エリオット殿下。この方を妻とすることを望みますか」
「望みます」
「ローゼ・フォン・エルンスト嬢。あなたはこの方を夫とすることを望みますか」
「……望みます」
その瞬間、拍手が鳴り響き、聖堂の扉が大きく開いた。外の光が差し込み、まるで天が祝福しているように思えた。
私とエリオットは誓いの口づけを交わし、指に黄金の指輪をはめあった。
銀の徽章から金の指輪へ――婚約から結婚へ。未来を約束する証は、確かな重みをもって私たちを繋いだ。
◆
披露宴では、数々の賛辞と祝福の言葉が寄せられた。
アルル姫も参列しており、私に小さく囁いた。
「次はわたくしの番ね。あなたのように強く笑える花嫁になりたい」
「きっとなれますわ、アルル姫」
彼女の瞳は少し揺れていたけれど、その奥には決意が宿っていた。
そして、ルーレット帝国からの使者としてやって来たのは、女王ミーア本人だった。
かつて敵対していたはずの彼女が、堂々と王冠をいただき、凛と微笑んでいる。
私と目が合った時、ほんの一瞬だけ、かつての少女の面影が戻ったように見えた。
「おめでとう、ローゼ。……あなたは強い。だからこそ、今日を迎えられたのでしょう」
彼女の言葉はどこか悔しげで、けれど認めざるを得ない誠実さがあった。
◆
夜になり、星空の下で二人きりになった。
人々の祝福の声も遠ざかり、静寂の中でエリオットが私の手を取る。
「やっと……夫婦になれたね、ローゼ」
「ええ、本当に。あなたとなら、どんな未来でも」
彼は少し照れたように笑った。
まだ少年のあどけなさを残す笑み。それが、私には愛しくて仕方がなかった。
「僕はまだ未熟だけど、君と一緒なら必ず強くなれる。だから――これからも隣にいてほしい」
「もちろん。私はあなたの妻ですもの」
固く手を握り合い、私たちは夜空を見上げた。
どんな嵐が訪れようと、愛があれば越えていける。牢獄の日々を耐え抜いた私には、それが真実だとわかる。
◆
こうして私は、正式に王太子妃となり、やがて王妃となる道を歩み始めた。
アルル姫も、隣国で新たな運命を迎える。
ミーアもまた、女王としての道を進む。
それぞれの未来が交差し、絡まり合いながら歴史を形作っていく。
だが、私にとって一番大切なのは――隣にいる彼。
年下で、少し頼りないけれど、真っすぐで優しい夫。
「これからも、共に歩んでいきましょう、エリオット」
「うん、永遠に――ローゼ」
その誓いは夜空に溶け、永遠の星となった。
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