婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!

山田 バルス

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第66話 ルーレット帝国の終焉 ― 請求書がもたらした革命

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 ルーレット帝国の終焉 ― 請求書がもたらした革命

 ラシアン皇帝の怒声が、豪奢な玉座の間に響き渡った。
「アーケンを呼べ! すぐにだ!」

 だが、宰相バーンズは深刻な顔で答える。
「陛下……ご存じの通り、アーケン殿はフリューゲル王国の奥深くに潜伏しております。
 呼び戻すにも一月は……」
「一月!? そんな悠長なことを言っている場合か!」

 皇帝の拳が玉座の肘掛けを叩いた瞬間だった。

 ――ドサッ。

 新たな請求書が、まるで嘲笑うかのように宰相の机の上に現れたのだ。
 バーンズは震える指でそれを取り上げ、恐る恐る読み上げる。

「……《高級別荘建設費用:金貨五万枚》。……りょ、領収済み、でございます……」

「なにぃ!?」
 ラシアン皇帝は顔を真っ赤にし、玉座から立ち上がった。
「五万枚だと!? 誰がそんなものを許可した!」

「ど、どうやらアーケン殿が……」
「アーケンッッ!」

 皇帝の叫びがまだ収まらぬうちに、再び光が走り――

 ――ドサッ。

「ま、また請求書が……!」
 バーンズは蒼白な顔で封を切った。

「《ダイヤモンド鉱山買収費:金貨十万枚》……」

 玉座の間に、絶望的な沈黙が落ちた。
 ラシアン皇帝は頭を抱え、バーンズは床に崩れ落ちそうになりながら声を絞り出す。

「こ、このままでは……わ、我が帝国の財政が破綻します……!」
「なにを言っている! 財政が破綻など……」

 しかし、皇帝の言葉をかき消すように、さらに次の請求書が雨のように舞い降りる。

「温泉施設の開発……? 金貨二万枚……」
「豪華馬車の特注……? 金貨一万枚……」
「絹のドレス百着……? 金貨三千枚……」

「ぎゃあああああ!!!」

 バーンズは頭を抱え、玉座の間を転げ回った。
 ラシアン皇帝の顔からも血の気が引いていく。

「フリューゲル王国侵攻どころではない……! 軍の給与も払えぬではないか!」
「は、はい……遠征資金どころか、国内の民衆への食料供給すら……」

 やがて噂は民衆に広まり、帝都の大通りは「贅沢三昧の皇帝が国庫を浪費している」という怒りで満ちていった。



 三か月後。
 ラシアン皇帝の夢見た王国侵攻は、影も形もなくなっていた。

 帝都の広場には群衆が集まり、「打倒皇帝!」「王朝を倒せ!」と叫ぶ声が渦巻いていた。
 飢えた民衆は、もはや抑えきれなかったのだ。

「ば、馬鹿な……我が帝国が……請求書ごときで……!」
 ラシアン皇帝は震える手で最後の文書を掴む。

 ――《請求合計:金貨三十七万五千枚》。

 その瞬間、玉座の扉が打ち破られ、革命軍がなだれ込んだ。

「ラシアン! 貴様の時代は終わりだ!」
「わ、私は悪くない! 全部アーケンの……アーケンのせいだあああ!!」

 だが、皇帝の叫びは虚しく広間に消えた。
 ラシアン皇帝は捕らえられ、帝国はついに崩壊したのである。



 一方そのころ、遠征の帰路にあったアーケンは――。
「はぁ……やっと帰れる……。これで皇帝にご褒美をもらえるだろう……」

 のんきに馬車に揺られていた。
 しかし、次の街に入った瞬間、革命軍に取り囲まれる。

「そこの男、アーケンだな!」
「ひっ!? な、なぜ私を知って……」
「お前が請求書で帝国を潰した張本人だ!」

「えぇぇぇぇぇっ!?」

 抵抗も虚しく、アーケンは捕らえられ、広場で民衆の怒りを一身に浴びた。

「贅沢三昧を許すな!」
「国を滅ぼした裏切り者め!」

 ついに処刑台の刃が振り下ろされ、アーケンの命は終わった。

 こうして、ルーレット帝国は歴史の舞台から姿を消した。
 その崩壊の理由が「請求書による財政破綻」だったことは、後世の歴史家たちに長らく信じてもらえなかったという――。
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