婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!

山田 バルス

文字の大きさ
88 / 97

第69話 ローゼ視点 ひきこもり終了。

しおりを挟む
 引きこもりVER2― 再会と誤解の清算

 ローゼの夢のような日々は、あまりに突然終わりを告げた。
 朝目を覚ました瞬間、部屋の隅に浮かんでいたウィンドウが警告を示していたのだ。

【重要通知】
《請求書支払い先、ルーレット帝国が財政破綻により消滅しました》
《スキル《マイルーム》維持不能》
《自動解除まで残り:10分》

「え……? ちょ、ちょっと待って……!」

 ローゼは慌てて窓を連打した。
 しかし何度押しても、表示は無情に点滅を続けるばかり。

「そんな……! 私のケーキ三昧とアニメ天国が……っ!」

 叫びは空しく、光が部屋全体に満ちていった。
 次の瞬間、ローゼの体はふわりと宙に浮き――現実の世界へと引き戻されてしまった。



 気づけば、そこは王城の一室。
 長らく閉ざされていた扉が開かれ、眩しい日差しが差し込んでくる。

「……終わっちゃったのね」

 鏡に映る自分の姿を見て、ローゼは少しだけ苦笑した。
 確かに若返っている。十六歳に固定されたその姿は、あの頃の自分そのもの。
 肌も髪もつややかで、目元にはあどけなさすら残っていた。

「ふふ……まあ、これはこれで悪くないかも」

 軽くスカートの裾をつまんで回ったとき――。

「ローゼ!」

 慌ただしい足音とともに、懐かしい声が響いた。
 振り返ると、そこには蒼い瞳の王子――エリオットが立っていた。

「……え?」

 一瞬、彼は驚愕の表情を浮かべた。
 目の前にいるのは、かつての恋人よりも若くなった少女だったのだから。

「ろ、ローゼ……なのか?」

「そうよ。久しぶりね、エリオット」

 ローゼが微笑むと、彼は次の瞬間、勢いよく床に頭をこすりつけた。

「も、申し訳なかった! 本当に俺は何もしていないんだ! エリシアとも!」

「えっ、ちょ……頭上げてよ!」

 戸惑うローゼの隣で、もう一人の青年も同じように土下座していた。
 金髪に端正な顔立ち、エリオットの従弟――公爵令息シリウスだ。

「わ、私も……あの夜のこと、誤解を招くような状況を作ってしまいました! 本当にすみません!」

「シリウスまで……?」

 ローゼは目を瞬かせる。

「エリシアと二人でいたとき、ほんの一瞬だけ奥の部屋に彼女を通しました。でも、決してやましいことはありません! あの時、私も同じ部屋におりました!」

「そ、そうなんです! 誓って本当に何もありませんでした!」

 二人が同時に頭を下げる姿は、滑稽でありながら必死さが伝わってきた。

 ローゼは腕を組み、わざと少しだけ不機嫌そうに言った。

「……理不尽リストにエリオットの名前がなかったから、無罪だってことは分かってたわ。でもね――」

 瞳にうっすら涙を浮かべ、唇を噛む。

「あの時は本当に悲しかったの。ずっと泣いてたんだからね!」

「ローゼ……!」

「紛らわしいことするの、やめてよね!」

 きっぱりと言い切ると、二人はさらに深く頭を下げた。

「はいっ! 以後気をつけます!」
「二度と誤解を与えるようなことはしません!」

 その必死さに、ローゼも思わず笑ってしまった。

「ふふ……まあ、いいわ。ちょうど私も、そろそろエリオットに会いたいと思ってたところだし」

 そう告げた瞬間、エリオットが顔を上げる。
 その視線がじっと彼女を捉え――再び、不思議そうに首をかしげた。

「でも……なんか若くなってないか?」

「あっ、やっぱり気づいた?」

 ローゼはにっこり笑った。

「これはね、スキル《引きこもり》のおかげよ。いろいろあって、ちょっと年齢を調整できちゃったの」

「ね、年齢を……?」

 エリオットとシリウスは同時にぽかんと口を開けた。
 しかしローゼは軽やかに肩をすくめ、スカートを翻してみせる。

「どう? これで私、永遠の十六歳。エリオットより二つ下になったわ」

 彼女の笑顔は、かつての悲しみを吹き飛ばすように眩しかった。
 エリオットは呆然としながらも、その若々しい姿に見惚れてしまう。

「……ローゼ、本当に……可愛いな」

 ぽつりと零れた言葉に、ローゼの頬が真っ赤に染まった。

「な、なに急に言ってるのよ!」

 けれどその心臓は、高鳴りを抑えられなかった。

 こうして――。
 長きにわたる誤解とすれ違いは解かれ、再び二人の青春が動き出すのだった。
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

無自覚人たらしマシュマロ令嬢、王宮で崇拝される ――見た目はぽっちゃり、中身は只者じゃない !

恋せよ恋
ファンタジー
 富豪にして美食家、オラニエ侯爵家の長女ステファニー。  もっちり体型から「マシュマロ令嬢」と陰口を叩かれる彼女だが、  本人は今日もご機嫌に美味しいものを食べている。  ――ただし、この令嬢、人のオーラが色で見える。  その力をひけらかすこともなく、ただ「気になるから」と忠告した結果、  不正商会が摘発され、運気が上がり、気づけば周囲には信奉者が増えていく。  十五歳で王妃に乞われ、王宮へ『なんでも顧問』として迎えられたステファニー。  美食を愛し、人を疑わず、誰にでも礼を尽くすその姿勢は、  いつの間にか貴族たちの心を掴み、王子たちまで惹きつけていく。  これは、  見た目はぽっちゃり、されど中身は只者ではないマシュマロ令嬢が、  無自覚のまま王宮を掌握していく、もっちり系・人たらし王宮譚。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 エール📣いいね❤️励みになります! 🔶表紙はAI生成画像です🤖

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

騎士団長を追放した平和ボケ王国は、七日で滅びました

藤原遊
ファンタジー
長らく戦のなかった王国で、 騎士団長の父を病で失った令嬢は、その座を引き継いだ。 だが王城に呼び出された彼女に告げられたのは、 騎士団の解体と婚約破棄。 理由はただ一つ―― 「武力を持つ者は危険だから」。 平和ボケした王子は、 非力で可愛い令嬢を侍らせ、 彼女を“国の火種”として国外追放する。 しかし王国が攻められなかった本当の理由は、 騎士団長家が持つ“戦況を覆す力”への恐れだった。 追放された令嬢は、即座に隣国帝国へ迎えられ、 軍人として正当に評価され、安泰な地位を得る。 ――そして一週間後。 守りを捨てた王国は、あっけなく陥落した。 これは、 「守る力」を理解しなかった国の末路と、 追放された騎士団長令嬢のその後の物語。

時が巻き戻った悪役令嬢は、追放先で今度こそ幸せに暮らしたい

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【その断罪、待っていました!】 私は侯爵令嬢オフィーリア・ドヌーブ。王太子アシル・バスチエの婚約者だった。良い国母になる為、日々努力を怠らなかった。そんなある日、聖女を名乗る女性ソネットが現れ、あっという間にアシルは彼女に夢中になってしまう。妃の座を奪われることに危機感を抱いた私は、ありとあらゆる手段でソネットを陥れようとして失敗。逆に罰として侯爵家から除籍され、辺境の地へ幾人かの使用人達と共に追放されてしまう。追放先の村での暮らしは不便だったが、人々は皆親切だった。けれど元侯爵令嬢というプライドから最後まで私は素直になれなかった。そんな自分に後悔しながら長い時を孤独に過ごしていたある日。不思議な懐中時計の力によって、何故か断罪の真っ最中に時が巻き戻っていた。聖女への嫌がらせは無かったことに出来ない。それなら今世はおとなしく追放されて和やかに過ごそう。今度こそ幸せに暮らす為に—— ※他サイトでも投稿中

転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【だって、私はただのモブですから】 10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした―― ※他サイトでも投稿中

処理中です...