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第83話 リアナ=クラウゼの手記 ――王都にて、見つめる想い
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「リアナ=クラウゼの手記 ――王都にて、見つめる想い」
春風が王都ルメリアを包む季節。
石畳を踏む音が、いつもより少しだけ硬く響いて聞こえたのは、わたしの心がざわついていたからだろう。
王都は今日、ひとつの大きな転機を迎えようとしていた。
ノルド王国の王子、ユリウス6世=ノルドが正式な使節として訪れ、フリューゲンとの外交対話の場が開かれる。
その席には、もちろんカール=キリト。そして――彼を支える者たち、セリア=ルゼリアに、わたし、リアナ=クラウゼ、さらに、エミリーゼ王女様と共に王国魔術師団に所属する者たちもいた。
けれど本心では、もっとずっと個人的な感情を抱えていた。
そう。わたしにとって、カールとセリアは“戦友”であると同時に、将来を誓った仲なのである。
ルメリアの城門を通ってきたユリウス6世王子を初めて目にしたとき、思わず息を飲んだ。
精悍な顔立ち。王族の気品。そして、冷ややかでありながら深い誇りを感じさせる蒼い瞳。
彼の纏う空気は、どこかカールに似ていた。
けれど違う。
彼は「失うこと」を知ってなお、王として“道を曲げなかった”。大切な兄や叔父、従姉、多くの者を失ってなお前に進み、王太子の道を選んだ。
カールは「すべてを失ったからこそ」、自分の生き方を選び取った。
まるで、光と影のように――似て非なる存在。
そしてその間で揺れているのが、セリアだった。
「試問の間」でのやり取りは、わたしにとって忘れられない時間になった。
ユリウス王子の問いは厳しく、論理的で、まるで審判のようだった。
一国の王子として、彼の言葉には正義がある。
叔父を処刑され、従姉を連れ戻すために自らの矛を振るうこと。それが彼の「王族への忠誠」だったのだろう。
でも、カールは怯まなかった。
胸を張り、真っ直ぐに、感情をぶつけた。
誓いとは血の鎖ではなく、心の絆で結ばれるべきだと。
……愚直なほどに、真っ直ぐで。だからこそ、誰もが惹かれるのだ。
あのとき、セリアが立ち上がって叫んだ言葉は、わたしの胸にも深く突き刺さった。
「私は、“ノルドの王族”としてではなく、一人の女として彼を選んだの」
ああ、やっぱり……そうだったのね、セリア。
あなたはずっと、心を決めていた。
ただ、それを言葉にする勇気を探していただけなのだ。
そして――カールも、ようやくその思いに応えた。
目の前で、愛を誓う彼の姿を見て、わたしは……笑った。
泣きながら、笑った。
どうしようもなく、悔しかった。
そして、同じくらい、嬉しかった。
わたしの中には、セリアに勝てるはずもないと分かっていた部分と、
それでもいつか、カールが振り向いてくれるかもしれないという淡い期待があった。
でもその日、それは終わったのか?
カールの目に映るのは、もうセリアだけなのか?
その光は、誰にも届かないのか?
たとえ、この手が彼を助けても、彼の隣に立って剣を振るっても――
彼の心には、もう「選ばれた者だけが」がいるのか?
それを痛いほど理解した日かと感じた。しかし、それでもわたしは思う。わたしも負けていられない。カールにとっては、セリアは必要な存在だ。そして、同時にエミリーゼ様も彼には不可欠な存在である。 だからこそ、わたしもなってみせようではないか!二人のように、カールにとって欠かせない重要な存在に。カールを支える大切な人物に。なってみせようではないか!
王都の春は、美しい。
ルメリア城の庭に咲く白桃の花が、風に舞う。
この国の未来が、ようやく安定し始めていることを、空も祝福しているかのようだ。
ユリウス王子は、静かに帰国の途についた。
その背中は、敗者のものではなかった。
むしろ、誇り高く、未来へと進む覚悟を帯びた「一国の王子」の姿だった。
彼の視線が一瞬、わたしと交差した。
その目に宿る、何かを諦めたような光と、わたしが抱える“強い想い”は、どこかで共鳴していたような気がする。
「……いつか、彼も、彼自身の“選ぶ人”と巡り会えますように」
わたしは小さく呟いた。
カールとセリアが選び合ったように。
誰かを選び、選ばれる――それが、本当の幸せだから。
夕暮れ。
書類仕事を終えて一人、魔術師団の塔から城下を眺めた。
空は赤く、ルメリアの街が金色に染まっていく。
ここが、カールの帰る場所。
セリアの願いが叶った場所。
そして――わたしが、歩き続けるべき場所。
……わたしはきっと、もうもっとこの想いを胸に抱きながら、隣にいる!カールを支えられる人物になるために。彼ほどの大きな運命を背負った人を支えられるために!
わたしたちは、カールのために、そして、この国の未来のために――前に進もう。
そう決めた日だった。
「……独り占めできないのが、ちょっと悔しいかな。そこだけが泣けてしまうかな」
頬を伝う涙を、風に紛らわせながら、
わたしはそっと微笑んだ。
リアナ=クラウゼ
王国魔術師団所属
王都ルメリアにて
【海に咆哮するもの──フェンリルと三人の少女】
「肉もいいけどさ……たまには魚が食べたいんだよな」
カール=キリトの何気ない一言から始まった、今回の旅。
王都ルメリアから遠く離れた港町エスパーダへ、彼は三人の少女と一匹を連れて旅に出た。
セリア=ルゼリア=ノルド 氷の魔法剣士。
リアナ=クラウゼ。魔法学士の令嬢にして天才魔術師。
エミリーゼ=ルゼリア。王女にして炎の魔導剣士。
そして、もう一人——いや一匹。
「海ってでっかい! わぁああ! しょっぱい風っ!」
金色の毛並みをなびかせ、港町の桟橋を駆け回る小さなフェンリルの子狼、ルゥ。
かつて魔獣の森でカールに救われて以来、忠実な仲間として彼の傍にいる。
「ルゥ、こっちに来なさい。落ちるわよ」
「だいじょーぶ! お魚とるのだー!」
セリアが苦笑し、エミリーゼが興味深そうにルゥの頭を撫でる。
リアナもどこか楽しげに、カールに言った。
「魚を食べに来たはずが、まるで遠足ですね」
しかし、港の空気は思いのほか重かった。
漁師たちは口を揃えて言う。
「……出られねぇんだ、海にな」
「シードラゴンが漁場を荒らしててな。奴が来てからというもの、船が戻らねぇ」
海に潜む巨大な魔物、雷と海流を操る災厄の竜。
それが、この港を沈黙させていたのだった。
「それじゃ魚は……」
「食べられないのだ!?」
「うむ、これは……絶対に倒さなきゃだな」
カールが立ち上がる。セリアが剣を構え、リアナは魔導書を手に取る。
そして、ルゥも胸を張って吠えた。
「ルゥも、がんばるのだっ!」
翌朝。彼らは小型の船で沖に出た。
波は穏やかだが、海の底から何かが脈打つような不気味な魔力が漂っていた。
「感じる……これはただの魔獣じゃない」
リアナの眉がひそめられる。
突如、黒雲が渦巻くように現れた。
稲妻が轟き、海面が大きくうねる。
「来た!」
水柱が天に昇り、その中から現れたのは、全長数十メートルに及ぶ蒼き竜。
海流を巻き込み、雷を纏って咆哮する海の覇者——シードラゴン。
「全員、展開するぞ!」
「了解ッ!」
カールの号令とともに四人と一匹が海上へと飛び出す。
セリアは剣を握りしめ、波上を駆ける。
「斬り伏せる!」
剣技《風牙斬》。
渦巻く海風を刃に変え、シードラゴンの首筋を薙ぎ払う。
エミリーゼは空中を跳び、剣に炎をまとわせた。
「《紅蓮焔舞》——!」
炎の爆発が雷鱗を焦がすが、すぐに雷のバリアが展開される。
シードラゴンの尾が船を叩き潰し、飛沫が天を覆った。
「——行かせない!」
リアナの詠唱が完了し、五重結界の陣が海上に展開される。
ルゥが前へ跳び出した。
「がううっ!」
小さな体に似合わぬ速度で、雷光の渦を駆け抜ける。
目にも止まらぬ速さで竜の右目を引っかき、怒りを買う。
「よくやった、ルゥ!」
カールが剣を掲げ、全身の気を集中させる。
雷の奔流が彼に降り注ぐ。
だがその中心、黒衣の剣聖はなお立ち続けていた。
「——これが、“剣聖”だ」
一閃。
波が割れ、雷が斬れる。
シードラゴンの片翼が海中に崩れ落ちる。
「あと一撃……!」
だが、そのとき。
シードラゴンが海に潜った。
……そして海全体が、“動いた”。
「来る……海底から、全魔力を放出してくる!」
リアナが叫ぶ。
「それなら、私たちの力を一つに——!」
エミリーゼが、セリアが、リアナが。
そしてルゥが、全ての力を一つに集束させる。
空に魔法陣が浮かび上がる。
「《四連・焔雷氷剣撃陣》——展開!」
エミリーゼの炎、リアナの雷、セリアの剣風、ルゥの咆哮、そしてカールの剣。
全てが一点に集まり、海を裂く光と化した。
——その瞬間、海は静かになった。
漁師たちは再び海に出られるようになり、町には魚と笑顔が戻った。
「うまい……これだ。やっぱり炭火で焼いた魚は最高だな」
焚き火のそばで、カールが魚を頬張る。
セリアとリアナ、エミリーゼがそれぞれ隣に座る。
そして、膝の上でルゥが満足げに魚の骨をしゃぶっていた。
「ルゥ、がんばったのだっ」
「うん、お前も立派な戦士だ」
カールが撫でると、ルゥはしっぽをぶんぶん振る。
その様子を見つめながら、セリアが優しく微笑み、エミリーゼは頬杖をついて呟いた。
「で、今度はどこ行く? 山? 砂漠? それとも……もっと遠く?」
リアナもそっと目を伏せて、小さく笑った。
「……次の旅も、一緒に」
潮騒の音が静かに響く夜。
剣と魔法と絆の物語は、また一つ、海に刻まれた。
春風が王都ルメリアを包む季節。
石畳を踏む音が、いつもより少しだけ硬く響いて聞こえたのは、わたしの心がざわついていたからだろう。
王都は今日、ひとつの大きな転機を迎えようとしていた。
ノルド王国の王子、ユリウス6世=ノルドが正式な使節として訪れ、フリューゲンとの外交対話の場が開かれる。
その席には、もちろんカール=キリト。そして――彼を支える者たち、セリア=ルゼリアに、わたし、リアナ=クラウゼ、さらに、エミリーゼ王女様と共に王国魔術師団に所属する者たちもいた。
けれど本心では、もっとずっと個人的な感情を抱えていた。
そう。わたしにとって、カールとセリアは“戦友”であると同時に、将来を誓った仲なのである。
ルメリアの城門を通ってきたユリウス6世王子を初めて目にしたとき、思わず息を飲んだ。
精悍な顔立ち。王族の気品。そして、冷ややかでありながら深い誇りを感じさせる蒼い瞳。
彼の纏う空気は、どこかカールに似ていた。
けれど違う。
彼は「失うこと」を知ってなお、王として“道を曲げなかった”。大切な兄や叔父、従姉、多くの者を失ってなお前に進み、王太子の道を選んだ。
カールは「すべてを失ったからこそ」、自分の生き方を選び取った。
まるで、光と影のように――似て非なる存在。
そしてその間で揺れているのが、セリアだった。
「試問の間」でのやり取りは、わたしにとって忘れられない時間になった。
ユリウス王子の問いは厳しく、論理的で、まるで審判のようだった。
一国の王子として、彼の言葉には正義がある。
叔父を処刑され、従姉を連れ戻すために自らの矛を振るうこと。それが彼の「王族への忠誠」だったのだろう。
でも、カールは怯まなかった。
胸を張り、真っ直ぐに、感情をぶつけた。
誓いとは血の鎖ではなく、心の絆で結ばれるべきだと。
……愚直なほどに、真っ直ぐで。だからこそ、誰もが惹かれるのだ。
あのとき、セリアが立ち上がって叫んだ言葉は、わたしの胸にも深く突き刺さった。
「私は、“ノルドの王族”としてではなく、一人の女として彼を選んだの」
ああ、やっぱり……そうだったのね、セリア。
あなたはずっと、心を決めていた。
ただ、それを言葉にする勇気を探していただけなのだ。
そして――カールも、ようやくその思いに応えた。
目の前で、愛を誓う彼の姿を見て、わたしは……笑った。
泣きながら、笑った。
どうしようもなく、悔しかった。
そして、同じくらい、嬉しかった。
わたしの中には、セリアに勝てるはずもないと分かっていた部分と、
それでもいつか、カールが振り向いてくれるかもしれないという淡い期待があった。
でもその日、それは終わったのか?
カールの目に映るのは、もうセリアだけなのか?
その光は、誰にも届かないのか?
たとえ、この手が彼を助けても、彼の隣に立って剣を振るっても――
彼の心には、もう「選ばれた者だけが」がいるのか?
それを痛いほど理解した日かと感じた。しかし、それでもわたしは思う。わたしも負けていられない。カールにとっては、セリアは必要な存在だ。そして、同時にエミリーゼ様も彼には不可欠な存在である。 だからこそ、わたしもなってみせようではないか!二人のように、カールにとって欠かせない重要な存在に。カールを支える大切な人物に。なってみせようではないか!
王都の春は、美しい。
ルメリア城の庭に咲く白桃の花が、風に舞う。
この国の未来が、ようやく安定し始めていることを、空も祝福しているかのようだ。
ユリウス王子は、静かに帰国の途についた。
その背中は、敗者のものではなかった。
むしろ、誇り高く、未来へと進む覚悟を帯びた「一国の王子」の姿だった。
彼の視線が一瞬、わたしと交差した。
その目に宿る、何かを諦めたような光と、わたしが抱える“強い想い”は、どこかで共鳴していたような気がする。
「……いつか、彼も、彼自身の“選ぶ人”と巡り会えますように」
わたしは小さく呟いた。
カールとセリアが選び合ったように。
誰かを選び、選ばれる――それが、本当の幸せだから。
夕暮れ。
書類仕事を終えて一人、魔術師団の塔から城下を眺めた。
空は赤く、ルメリアの街が金色に染まっていく。
ここが、カールの帰る場所。
セリアの願いが叶った場所。
そして――わたしが、歩き続けるべき場所。
……わたしはきっと、もうもっとこの想いを胸に抱きながら、隣にいる!カールを支えられる人物になるために。彼ほどの大きな運命を背負った人を支えられるために!
わたしたちは、カールのために、そして、この国の未来のために――前に進もう。
そう決めた日だった。
「……独り占めできないのが、ちょっと悔しいかな。そこだけが泣けてしまうかな」
頬を伝う涙を、風に紛らわせながら、
わたしはそっと微笑んだ。
リアナ=クラウゼ
王国魔術師団所属
王都ルメリアにて
【海に咆哮するもの──フェンリルと三人の少女】
「肉もいいけどさ……たまには魚が食べたいんだよな」
カール=キリトの何気ない一言から始まった、今回の旅。
王都ルメリアから遠く離れた港町エスパーダへ、彼は三人の少女と一匹を連れて旅に出た。
セリア=ルゼリア=ノルド 氷の魔法剣士。
リアナ=クラウゼ。魔法学士の令嬢にして天才魔術師。
エミリーゼ=ルゼリア。王女にして炎の魔導剣士。
そして、もう一人——いや一匹。
「海ってでっかい! わぁああ! しょっぱい風っ!」
金色の毛並みをなびかせ、港町の桟橋を駆け回る小さなフェンリルの子狼、ルゥ。
かつて魔獣の森でカールに救われて以来、忠実な仲間として彼の傍にいる。
「ルゥ、こっちに来なさい。落ちるわよ」
「だいじょーぶ! お魚とるのだー!」
セリアが苦笑し、エミリーゼが興味深そうにルゥの頭を撫でる。
リアナもどこか楽しげに、カールに言った。
「魚を食べに来たはずが、まるで遠足ですね」
しかし、港の空気は思いのほか重かった。
漁師たちは口を揃えて言う。
「……出られねぇんだ、海にな」
「シードラゴンが漁場を荒らしててな。奴が来てからというもの、船が戻らねぇ」
海に潜む巨大な魔物、雷と海流を操る災厄の竜。
それが、この港を沈黙させていたのだった。
「それじゃ魚は……」
「食べられないのだ!?」
「うむ、これは……絶対に倒さなきゃだな」
カールが立ち上がる。セリアが剣を構え、リアナは魔導書を手に取る。
そして、ルゥも胸を張って吠えた。
「ルゥも、がんばるのだっ!」
翌朝。彼らは小型の船で沖に出た。
波は穏やかだが、海の底から何かが脈打つような不気味な魔力が漂っていた。
「感じる……これはただの魔獣じゃない」
リアナの眉がひそめられる。
突如、黒雲が渦巻くように現れた。
稲妻が轟き、海面が大きくうねる。
「来た!」
水柱が天に昇り、その中から現れたのは、全長数十メートルに及ぶ蒼き竜。
海流を巻き込み、雷を纏って咆哮する海の覇者——シードラゴン。
「全員、展開するぞ!」
「了解ッ!」
カールの号令とともに四人と一匹が海上へと飛び出す。
セリアは剣を握りしめ、波上を駆ける。
「斬り伏せる!」
剣技《風牙斬》。
渦巻く海風を刃に変え、シードラゴンの首筋を薙ぎ払う。
エミリーゼは空中を跳び、剣に炎をまとわせた。
「《紅蓮焔舞》——!」
炎の爆発が雷鱗を焦がすが、すぐに雷のバリアが展開される。
シードラゴンの尾が船を叩き潰し、飛沫が天を覆った。
「——行かせない!」
リアナの詠唱が完了し、五重結界の陣が海上に展開される。
ルゥが前へ跳び出した。
「がううっ!」
小さな体に似合わぬ速度で、雷光の渦を駆け抜ける。
目にも止まらぬ速さで竜の右目を引っかき、怒りを買う。
「よくやった、ルゥ!」
カールが剣を掲げ、全身の気を集中させる。
雷の奔流が彼に降り注ぐ。
だがその中心、黒衣の剣聖はなお立ち続けていた。
「——これが、“剣聖”だ」
一閃。
波が割れ、雷が斬れる。
シードラゴンの片翼が海中に崩れ落ちる。
「あと一撃……!」
だが、そのとき。
シードラゴンが海に潜った。
……そして海全体が、“動いた”。
「来る……海底から、全魔力を放出してくる!」
リアナが叫ぶ。
「それなら、私たちの力を一つに——!」
エミリーゼが、セリアが、リアナが。
そしてルゥが、全ての力を一つに集束させる。
空に魔法陣が浮かび上がる。
「《四連・焔雷氷剣撃陣》——展開!」
エミリーゼの炎、リアナの雷、セリアの剣風、ルゥの咆哮、そしてカールの剣。
全てが一点に集まり、海を裂く光と化した。
——その瞬間、海は静かになった。
漁師たちは再び海に出られるようになり、町には魚と笑顔が戻った。
「うまい……これだ。やっぱり炭火で焼いた魚は最高だな」
焚き火のそばで、カールが魚を頬張る。
セリアとリアナ、エミリーゼがそれぞれ隣に座る。
そして、膝の上でルゥが満足げに魚の骨をしゃぶっていた。
「ルゥ、がんばったのだっ」
「うん、お前も立派な戦士だ」
カールが撫でると、ルゥはしっぽをぶんぶん振る。
その様子を見つめながら、セリアが優しく微笑み、エミリーゼは頬杖をついて呟いた。
「で、今度はどこ行く? 山? 砂漠? それとも……もっと遠く?」
リアナもそっと目を伏せて、小さく笑った。
「……次の旅も、一緒に」
潮騒の音が静かに響く夜。
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