婚約破棄された上に、追放された伯爵家三男カールは、実は剣聖だった!これからしっかり復讐します!婚約破棄から始まる追放生活!!

山田 バルス

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第84話 ちっちゃな牙と大きな波──フェンリルの子ルゥ、海に行く

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【ちっちゃな牙と大きな波──フェンリルの子ルゥ、海に行く】


 ボクはルゥ! フェンリル族の末っ子! カールおじちゃんに命を救ってもらってから、ずっと一緒にいるんだ!
 今日は特別な日。だって、おじちゃんがこう言ったから!

「魚、食べたいな。炙って、塩ふって……ああ、いいなぁ」

 魚? それ、うまいのか!? ボク、食べたことないぞ!?
 だからボクはこう言った!

「いく! ルゥもいくのだっ!!」

 そうして、カールおじちゃん、セリアお姉ちゃん、リアナお姉ちゃん、エミリーゼお姉ちゃん、そしてボクの五人(四人と一匹)は、港町エスパーダへやって来た!

 港ってところ、すごい!
 潮の匂い、しょっぱい風、でっかい波!

「海……でかっ!? でっかすぎるのだー!!」

 走り出す足が止まらない! 波と遊ぶ、鳥と追いかけっこする!
 セリアお姉ちゃんが苦笑いして追いかけてくる。

「ルゥ、こら! 海は危ないのよ!」
「でも、楽しいのだー!」

 町の人たちはちょっと元気がなかった。
 理由はすぐわかった。「シードラゴン」っていう、でっかい魔物が海で暴れてるんだって。

 だからボクたちは決めた。
 そいつを、やっつけるのだ!

 次の日の朝。小さな船で、海の真ん中に出た。

 風が止まった。波が静かになった。
 おじちゃんの手が剣に伸びた。

「来るぞ」

 ボクも鼻をくんくんして、わかった。変な匂い。重たい魔力。空気がピリピリする。

 海の底から、それは現れた。

 でっっっっっかい!

 まるで山が海の中から出てきたみたい! 青くて、ヌルヌルしてて、ビリビリしてる!

「うわっ! あれ……お魚なの!?」 「いいえ、魔物です!」リアナお姉ちゃんが叫んだ!

「カール、行くわよ!」
「やってやろうぜ!」

 おじちゃんが剣を抜いた。セリアお姉ちゃんが風の中を跳び、リアナお姉ちゃんが魔法を詠唱して、エミリーゼお姉ちゃんが炎をまとう。

 ……でも、ボクは悔しかった。だって、何もできない気がしたから。

 みんなすごい。強くて、かっこよくて。
 ボクなんか、ただの小さな狼だ。

 でも。

「ルゥも……戦うのだ!」

 ボクは跳んだ。おじちゃんの肩を踏み台にして、竜の顔めがけて!

「がうううっ!!」

 ボクの小さな牙が、シードラゴンの目をかすった。
 ちょっとだけ、だけど痛そうにしてた! よしっ!

「ナイスだ、ルゥ!」

 おじちゃんがそう言ってくれた。
 それだけで、胸の奥がぽっと温かくなった。

 でも、戦いはまだ続いた。

 雷が空を裂いた。
 エミリーゼお姉ちゃんの炎とリアナお姉ちゃんの雷がぶつかって、空が赤と青に染まる。

 セリアお姉ちゃんは風と共に舞い、剣が竜の鱗を削っていく。

 そして、海が怒った。
 全てを飲み込もうと、シードラゴンがうねりを起こした。

「いけない、あれは……っ!」リアナお姉ちゃんの声が震える。

「ルゥ! 下がれ!」おじちゃんが叫んだ。

 でも、ボクは走った。怖くても、足が動く。
 だって——みんなが、ボクを信じてくれたから!

「がうううううっっっ!!!」

 ボクは吠えた。全身の力をこめて。
 その声が、魔法陣を呼んだ。雷と炎と風と魔力、そしてボクの咆哮が、空に響いた。

 その中心で、おじちゃんが剣を振り下ろした。

 ——ドンッ!

 空が割れた。海が光った。
 ボクの目の前で、シードラゴンが、ゆっくりと倒れた。

 港の人たちは喜んでくれた!
 魚が戻ってきて、ごはんが山盛り!

 カールおじちゃんが炭火で焼いてくれた魚は、すっごく美味しかった!

「ルゥ、よくがんばったな」
「えっへん! ルゥ、かっこよかったのだ!」

 セリアお姉ちゃんが頭をくしゃくしゃにしてくれて、リアナお姉ちゃんがちいさく笑った。

「あなたも、もう立派な“冒険者”ね」
「ほんと。私も見直したわ。……少しだけね」エミリーゼお姉ちゃんはちょっと照れくさそう。

 みんなで輪になって、焚き火を囲んだ夜。
 潮の香りと笑い声が、空いっぱいに広がっていた。

 ボク、わかったんだ。

 ボクはまだ小さいけど、
 この仲間の中で、生きていける。

 そして——いつか、もっと強くなって、
 カールおじちゃんの“右腕”になるんだ!

「その時まで、ルゥ、がんばるのだっ!」

 夜空に向かって、ちっちゃな牙で、そう誓った。
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