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第55話 アレクシス王子、断罪される!
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夜空が裂けた。
リノが水堀へと飛び込んだその瞬間、天から一条の光が降り注いだ。暗い夜を切り裂くその輝きは、まるで天の眼が地上に注がれているようだった。
城の者たちは驚き、夜空を見上げた。
すると、水堀が淡く光を帯び始め、ひときわ眩い光の中から――リノが、浮かび上がった。
だが、彼女の姿は生きた人のものではなかった。リノの身体は美しい氷の棺に覆われ、その表情は穏やかに、静かに眠っているようだった。凍てついた水面に浮かぶその姿は、まるで神聖な眠りについている女神そのものだった。
その瞬間だった。
「――リノ」
空間を震わせるような声が、城全体に響き渡った。
それは風でも雷でもない。神の声――そう、すべての者が即座に理解した。
「リノ……あなたの歌声が楽しみでした。いつも素敵な歌をありがとう」
その声は優しく、深く、温かかった。
それは、この国の誰もが聞いたことのない響きだった。言葉というより、魂に直接語りかける――崇高なる存在、女神の声だった。
「あなたを転生させ、あなたの歌声にわたしは癒されました」
誰もが息を呑む。その声は、涙さえ流させるほどに美しかった。
「……それを……それを!」
一瞬、空気が震えた。
「愚か者たちが!!!!!!」
その叫びが天地を裂いた瞬間、光が突如として消えた。
代わりに、空を黒雲が覆い、雷が轟き、激しい土砂降りの雨が降り注いだ。
その雨は、ただの雨ではなかった。空気に混じる冷気、土を腐らせるかのような重苦しい湿気、そして何より――人の心を蝕む“絶望”をもたらした。
それは、神の怒りそのものだった。
雨はやまなかった。1日目、民はただ雨宿りをし、災いを避けようとした。2日目には、城の壁画が崩れ、家屋が倒壊し、農地が泥に沈んだ。3日目になる頃には、王家に対する不満が爆発し、民衆は広場で膝をついて祈りを捧げた。
神殿の神官たちは、女神の怒りを鎮めようと儀式を執り行った。だが――神殿に最も仕えていた大神官は、祈祷の最中に苦悶し、体を捩らせ、血を吐いて息絶えた。
それを見た瞬間、誰もが理解した。
「――これは、ただの雨ではない。神罰だ」
国中が混乱に陥る中、女神の怒りの矛先が、ついに明確にされた。
アレクシス――前世においてリノ=真嶋さつきを裏切り、殺し、今生でもまた彼女を踏みにじったその者が、「裁きの中心」であることが知らされた。
彼は衛兵により拘束され、地下の牢獄に引きずられた。
「俺は……俺は悪くない!さつきが……俺を捨てたから……!」
毒杯が差し出された。
「俺は悪くないんだ!全部、女のせいだ!俺はっ……!」
その言葉を最後に、アレクシスは崩れ落ちた。
だが――雨は止まなかった。
それが何を意味するか、誰もが理解した。
神の怒りは、アレクシス一人にとどまらない。
その後、王家の人間が一人、また一人と拘束され、毒杯を飲まされた。王妃、側近、王弟まで……。
その光景を見ていた民衆の中には、涙を流す者もいた。だが、同時に誰もが心の底でこう思っていた。
「当然だ……この王家は、神の声を踏みにじったのだから」
それでも、雨は止まらなかった。
太陽は顔を見せなかった。
農作物は腐り、飢えと病が広まり、旅人はこの国を「呪われた地」と呼び、足を踏み入れなくなった。
人々は絶望し、祈り、そしてまた絶望した。
――そして、ある日。
希望がすべて失われたかのように思われたその時。
城門が軋むような音を立てて、ゆっくりと開いた。
ぬかるんだ土を踏みしめ、一人の男がそこに立っていた。
フードを深く被り、旅の疲れをその身にまといながらも、その瞳だけは強く、まっすぐだった。
――レオニス。
彼の足が、泥にまみれた地に再び刻まれたその瞬間、冷たい風が止まり、ほんの一瞬だけ、雨脚が弱まった。
まだ、世界は終わっていなかった。
物語は、ここから再び動き出すのだった――。
リノが水堀へと飛び込んだその瞬間、天から一条の光が降り注いだ。暗い夜を切り裂くその輝きは、まるで天の眼が地上に注がれているようだった。
城の者たちは驚き、夜空を見上げた。
すると、水堀が淡く光を帯び始め、ひときわ眩い光の中から――リノが、浮かび上がった。
だが、彼女の姿は生きた人のものではなかった。リノの身体は美しい氷の棺に覆われ、その表情は穏やかに、静かに眠っているようだった。凍てついた水面に浮かぶその姿は、まるで神聖な眠りについている女神そのものだった。
その瞬間だった。
「――リノ」
空間を震わせるような声が、城全体に響き渡った。
それは風でも雷でもない。神の声――そう、すべての者が即座に理解した。
「リノ……あなたの歌声が楽しみでした。いつも素敵な歌をありがとう」
その声は優しく、深く、温かかった。
それは、この国の誰もが聞いたことのない響きだった。言葉というより、魂に直接語りかける――崇高なる存在、女神の声だった。
「あなたを転生させ、あなたの歌声にわたしは癒されました」
誰もが息を呑む。その声は、涙さえ流させるほどに美しかった。
「……それを……それを!」
一瞬、空気が震えた。
「愚か者たちが!!!!!!」
その叫びが天地を裂いた瞬間、光が突如として消えた。
代わりに、空を黒雲が覆い、雷が轟き、激しい土砂降りの雨が降り注いだ。
その雨は、ただの雨ではなかった。空気に混じる冷気、土を腐らせるかのような重苦しい湿気、そして何より――人の心を蝕む“絶望”をもたらした。
それは、神の怒りそのものだった。
雨はやまなかった。1日目、民はただ雨宿りをし、災いを避けようとした。2日目には、城の壁画が崩れ、家屋が倒壊し、農地が泥に沈んだ。3日目になる頃には、王家に対する不満が爆発し、民衆は広場で膝をついて祈りを捧げた。
神殿の神官たちは、女神の怒りを鎮めようと儀式を執り行った。だが――神殿に最も仕えていた大神官は、祈祷の最中に苦悶し、体を捩らせ、血を吐いて息絶えた。
それを見た瞬間、誰もが理解した。
「――これは、ただの雨ではない。神罰だ」
国中が混乱に陥る中、女神の怒りの矛先が、ついに明確にされた。
アレクシス――前世においてリノ=真嶋さつきを裏切り、殺し、今生でもまた彼女を踏みにじったその者が、「裁きの中心」であることが知らされた。
彼は衛兵により拘束され、地下の牢獄に引きずられた。
「俺は……俺は悪くない!さつきが……俺を捨てたから……!」
毒杯が差し出された。
「俺は悪くないんだ!全部、女のせいだ!俺はっ……!」
その言葉を最後に、アレクシスは崩れ落ちた。
だが――雨は止まなかった。
それが何を意味するか、誰もが理解した。
神の怒りは、アレクシス一人にとどまらない。
その後、王家の人間が一人、また一人と拘束され、毒杯を飲まされた。王妃、側近、王弟まで……。
その光景を見ていた民衆の中には、涙を流す者もいた。だが、同時に誰もが心の底でこう思っていた。
「当然だ……この王家は、神の声を踏みにじったのだから」
それでも、雨は止まらなかった。
太陽は顔を見せなかった。
農作物は腐り、飢えと病が広まり、旅人はこの国を「呪われた地」と呼び、足を踏み入れなくなった。
人々は絶望し、祈り、そしてまた絶望した。
――そして、ある日。
希望がすべて失われたかのように思われたその時。
城門が軋むような音を立てて、ゆっくりと開いた。
ぬかるんだ土を踏みしめ、一人の男がそこに立っていた。
フードを深く被り、旅の疲れをその身にまといながらも、その瞳だけは強く、まっすぐだった。
――レオニス。
彼の足が、泥にまみれた地に再び刻まれたその瞬間、冷たい風が止まり、ほんの一瞬だけ、雨脚が弱まった。
まだ、世界は終わっていなかった。
物語は、ここから再び動き出すのだった――。
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