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閑話1 カフェでのひととき
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――閑話 カフェでのひととき――
戦火に荒れた街並みも、ようやく落ち着きを取り戻しつつあった。倒壊した建物には新しい梁が組まれ、子どもたちの笑い声が路地裏に戻ってきている。女王リノと王レオニスは、日々山のような政務に追われながらも、人々の笑顔を見れば心の奥が温かくなるのを感じていた。
「……ねえ、たまには休んでもいいんじゃない?」
執務室で書類の束に埋もれるレオニスを、リノが覗き込む。王妃用の簡素なドレスを纏ったその姿は、宮殿の煌びやかさよりもずっと彼に似合っていた。
「休む? 君がそんなことを言うなんて珍しいな」
レオニスは顔を上げ、思わず笑みを浮かべる。リノは少し頬を膨らませて、視線を逸らした。
「だって、街の復興も目処がついたでしょ? 神殿の神官長も『しばらくは心配ない』って言ってたし。……だから、その、ご褒美に。スイーツでも食べに行かない?」
前世で「さつき」だった彼女の、ほんのり甘党な一面を思い出し、レオニスは堪えきれず吹き出した。
「ぷっ……ははっ。やっぱり君は、そういうところが変わらないな」
「な、何がおかしいのよ!」
むっとするリノの手を取り、レオニスは立ち上がった。
「わかった。行こう、リノ。王と女王じゃなく、一人の男と女として」
***
城下の目抜き通りにある小さなカフェ。石畳に面したテラス席には白いパラソルが並び、甘い香りが風に乗って漂っていた。人々は二人を一目で王と女王だと気づいたが、護衛のさりげない気配りもあり、誰も騒ぎ立てずに温かく見守っていた。
「わあ……ケーキの種類がこんなに!」
リノはメニューを開いた瞬間、目を輝かせる。苺のタルト、蜂蜜のシフォン、濃厚なチョコレートケーキ――そのひとつひとつに視線を移すたび、表情がころころと変わった。
「どれにする?」とレオニス。
「ぜ、全部!」と即答するリノ。
「……そんな答えだと思ったよ」
笑いながら、彼は結局三種類のケーキを注文した。やがて銀の皿に盛られて運ばれてきた色とりどりのスイーツは、光を浴びて宝石のように輝いている。
リノは苺のタルトを一口頬張り、幸福そうに目を細めた。
「んんっ……! 美味しい……!」
その様子を見ているだけで、レオニスの胸も満たされていく。彼はそっとフォークを伸ばし、自分の分のケーキを切り分けてリノに差し出した。
「……あーん」
「ちょ、ちょっと! こんなところで……!」
顔を真っ赤にしながらも、リノは観念したように口を開ける。口に入れた瞬間、思わず笑みが零れた。
「……ずるい。レオニスの方が、もっと甘いのに」
囁くように呟かれ、彼も赤面して言葉を失った。
周囲の人々はくすくす笑いながらも、誰も冷やかさない。街の人々にとって、この二人の幸福そうな姿こそが、新しい時代の希望だったからだ。
***
夕暮れが近づく頃、二人はカフェを出て石畳の道を並んで歩いた。リノは小さな包みを大事そうに抱えている。焼き菓子をお土産に買ったのだ。
「ねえ、また行こうね」
「もちろん。今度は、君が食べきれるだけにしような」
「む……努力します!」
顔を見合わせて笑う。手をつなぎながら歩く二人の姿に、通りすがりの人々が自然と微笑みを向けた。
王も女王も関係ない。大切なのは、共に笑い、共に生きること。二人のささやかな時間が、国にとって何よりの光であることを、誰もが感じていた。
そして――夕焼けに染まる街角で、レオニスはそっとリノの耳元に囁いた。
「……幸せだよ、リノ」
リノは頬を赤らめ、静かに彼の肩に寄り添った。
「私も。だから、これからもずっと一緒にね」
小さな誓いの言葉が、夕暮れの風に溶けていった。
戦火に荒れた街並みも、ようやく落ち着きを取り戻しつつあった。倒壊した建物には新しい梁が組まれ、子どもたちの笑い声が路地裏に戻ってきている。女王リノと王レオニスは、日々山のような政務に追われながらも、人々の笑顔を見れば心の奥が温かくなるのを感じていた。
「……ねえ、たまには休んでもいいんじゃない?」
執務室で書類の束に埋もれるレオニスを、リノが覗き込む。王妃用の簡素なドレスを纏ったその姿は、宮殿の煌びやかさよりもずっと彼に似合っていた。
「休む? 君がそんなことを言うなんて珍しいな」
レオニスは顔を上げ、思わず笑みを浮かべる。リノは少し頬を膨らませて、視線を逸らした。
「だって、街の復興も目処がついたでしょ? 神殿の神官長も『しばらくは心配ない』って言ってたし。……だから、その、ご褒美に。スイーツでも食べに行かない?」
前世で「さつき」だった彼女の、ほんのり甘党な一面を思い出し、レオニスは堪えきれず吹き出した。
「ぷっ……ははっ。やっぱり君は、そういうところが変わらないな」
「な、何がおかしいのよ!」
むっとするリノの手を取り、レオニスは立ち上がった。
「わかった。行こう、リノ。王と女王じゃなく、一人の男と女として」
***
城下の目抜き通りにある小さなカフェ。石畳に面したテラス席には白いパラソルが並び、甘い香りが風に乗って漂っていた。人々は二人を一目で王と女王だと気づいたが、護衛のさりげない気配りもあり、誰も騒ぎ立てずに温かく見守っていた。
「わあ……ケーキの種類がこんなに!」
リノはメニューを開いた瞬間、目を輝かせる。苺のタルト、蜂蜜のシフォン、濃厚なチョコレートケーキ――そのひとつひとつに視線を移すたび、表情がころころと変わった。
「どれにする?」とレオニス。
「ぜ、全部!」と即答するリノ。
「……そんな答えだと思ったよ」
笑いながら、彼は結局三種類のケーキを注文した。やがて銀の皿に盛られて運ばれてきた色とりどりのスイーツは、光を浴びて宝石のように輝いている。
リノは苺のタルトを一口頬張り、幸福そうに目を細めた。
「んんっ……! 美味しい……!」
その様子を見ているだけで、レオニスの胸も満たされていく。彼はそっとフォークを伸ばし、自分の分のケーキを切り分けてリノに差し出した。
「……あーん」
「ちょ、ちょっと! こんなところで……!」
顔を真っ赤にしながらも、リノは観念したように口を開ける。口に入れた瞬間、思わず笑みが零れた。
「……ずるい。レオニスの方が、もっと甘いのに」
囁くように呟かれ、彼も赤面して言葉を失った。
周囲の人々はくすくす笑いながらも、誰も冷やかさない。街の人々にとって、この二人の幸福そうな姿こそが、新しい時代の希望だったからだ。
***
夕暮れが近づく頃、二人はカフェを出て石畳の道を並んで歩いた。リノは小さな包みを大事そうに抱えている。焼き菓子をお土産に買ったのだ。
「ねえ、また行こうね」
「もちろん。今度は、君が食べきれるだけにしような」
「む……努力します!」
顔を見合わせて笑う。手をつなぎながら歩く二人の姿に、通りすがりの人々が自然と微笑みを向けた。
王も女王も関係ない。大切なのは、共に笑い、共に生きること。二人のささやかな時間が、国にとって何よりの光であることを、誰もが感じていた。
そして――夕焼けに染まる街角で、レオニスはそっとリノの耳元に囁いた。
「……幸せだよ、リノ」
リノは頬を赤らめ、静かに彼の肩に寄り添った。
「私も。だから、これからもずっと一緒にね」
小さな誓いの言葉が、夕暮れの風に溶けていった。
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