婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの

山田 バルス

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第15話 北のマケドニア聖教国を目指す。

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 北のマケドニア聖教国に向けて
 
 荒れた街道の外れで、アリスターに呼び止められたエリーゼは、しぶしぶ足を止めた。
 彼の話を聞く気などなかったが、どうにも彼の表情が、過去の自分と重なって見えてしまった。

「――追放されたんだ。王家からも、仲間たちからも、何もかも」

 声を震わせずにはいられないアリスターを前に、エリーゼは深い溜息をついた。
 自分だって、かつて居場所を失い、たった一人でさまよったことがある。まー今も現在進行形で一人ではあるのだが……
 そんな過去がなければ、こんな甘い感情など生まれなかっただろう。

「……まあ、事情はわかったけど。わたし、今、剣がないの」

 エリーゼは指を立てて告げる。

「だから、その手に持ってる剣、貸してくれるなら仲間にしてあげる」

「それはありがたい。でも……君、剣は扱えるのか?」

 アリスターが不安そうに尋ねると、エリーゼは胸を張った。

「剣道三段、県大会優勝者よ。それに、【剣聖】スキル持ち!」

 どや顔で宣言する彼女に、アリスターは一瞬呆けた後、苦笑混じりに剣を差し出してきた。

「剣聖のスキルとはすごいな……剣道三段とかはよくわからないけど、ま、ボクの美しさには適わないだろう。あははは」

 なんとも調子のいい男だ、とエリーゼは内心でため息をつきながら、無事に剣を受け取った。
 これで、武器なしで旅を続ける心配は一つ減ったことになる。

 ただし、問題は別にあった。

「ねえ、アリスター」

「ん?」

「あなた、国外追放されたんでしょ? だったら東には行けないじゃない」

 エリーゼが指摘すると、アリスターはきょとんとした顔をした後、頭をかいた。

「確かに……ボク、そっちに戻ると、すぐ捕まっちゃうかも」

「まったく……」

 エリーゼは呆れを通り越して、無性に笑いがこみあげてきた。
 このお坊ちゃんは、自分がどれほど深刻な立場なのか、ちゃんと理解しているのだろうか?

「いいわ。南と東がダメなら、北に行きましょう」

「北? 北って、どこ?」

「マケドニア聖教国。信仰に厚いけど、まあ、行き倒れには寛容よ」

 そこしかないでしょう、とエリーゼは笑った。王妃教育の賜物で、周辺の地図は頭に入っている。

 こうして、二人の奇妙な旅が始まった。
 目的地も、明確な未来もない、ただ生き延びるための旅だった。

 街道を外れて、森の中を進む。
 草木の生い茂る道なき道。時折、魔物が牙をむき出しにして現れた。

「来た!」

 鋭く叫んだエリーゼが、すかさずアリスターから借りた剣を振るう。
 黒い毛並みのウルフが、低く唸りながら飛びかかってくるが、彼女の剣閃けんせんは鋭かった。

 シュッ、と音を立てて、ウルフの首筋が裂けた。

「ふう……なんとかなるものね」

 エリーゼは汗を拭いながら、地面に崩れ落ちたウルフを見下ろした。

「すごいな、君」

 アリスターが目を丸くして拍手を送ってきた。

「剣聖って、冗談じゃなかったんだ」

「もちろんよ。剣道で鍛えたからね」

 胸を張るエリーゼだったが、内心では(剣道と本物の戦闘は全然違う……)と冷や汗をかいていた。
 だが、ここで怖がってなどいられない。生き延びるためには、やるしかないのだ。

 ウルフの肉を捌き、串に刺して焚き火で焼く。
 飲み水は、アリスターが得意の魔法で確保してくれた。

「ボク、水魔法も得意なんだよね。――《清流創出》!」

 アリスターが詠唱すると、足元から小さな泉が湧き出した。

「へえ、便利じゃない」

「だろ? 美しくて、魔法も使える。ボクって完璧だよね」

 無邪気に笑う彼に、エリーゼは呆れ半分、感心半分だった。

 焼き上がったウルフ肉は、思った以上に香ばしく、悪くない味だった。
 二人は焚き火を囲みながら、無言で肉を頬張った。

 月明かりの下、森の静寂だけが二人を包んでいた。

(変な旅になりそう……でも、一人よりマシか)

 エリーゼはそんなことを思いながら、もう一口、肉をかじった。

 どこへ行くかもわからない。
 明日、どんな困難が待っているかもわからない。

 それでも、たった一つ確かなのは――

 二人の旅は、まだ始まったばかりだということだった。

【エリーゼ=アルセリア】
レベル:16
HP:262
MP:121
攻撃:352【127+剣225】
防御:121
早さ:217
幸運:100
スキル:──剣聖──フェンリルの加護 金龍の加護
装備:テオドリック帝国 王家の剣
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