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第16話 アリスターから見たエリーゼの感想
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アリスター、エリーゼについて語る
ああ、なんて厄介で、なんて魅力的な女性なんだろう。
エリーゼ。名乗ったのは最初だけで、それ以降は特に自己紹介も話もしてくれない。けれど、その鋭い目と迷いのない剣筋、そしてどこか投げやりに見えて、実はどこまでも真っ直ぐな背中が、僕の目を離させてくれなかった。
最初に会ったのは、街道の外れの池のほとり。土埃にまみれた僕の声に、彼女は露骨に嫌そうな顔をした。
無理もない。僕だって、あのときの僕を見たら声などかけなかっただろう。髪は乱れ、服は破れ、表情には哀れみしかなかった。あんな僕が「一緒に旅をしよう」なんて口にしたら、そりゃあ胡散臭くて仕方ない。
けれど彼女は、立ち止まってくれた。
嫌々ながらも、僕の話を最後まで聞いてくれた。
その目の奥に、ほんの少しだけ、昔の僕と似たものを見た気がする。
彼女もまた、失った人なのだ。居場所を、信じていた何かを。たぶん、それが僕たちの最初の共通点だった。
でもそれ以上に驚いたのは、彼女の“条件”だった。
「その剣、貸してくれるなら仲間にしてあげる」
あまりに強引で、あまりに理不尽。それでも、その真っ直ぐな言葉に、僕はなぜか笑ってしまった。
普通なら、僕のようなナルシストはそんな命令に従うはずもないのに。不思議と、彼女の頼みに抗えなかった。
……それにしても、【剣聖】だなんて。嘘だと思った。だって彼女、どう見ても魔法職に近いのでは? 金色の腕に銀色の足。人間なのか疑わしい? まさに神秘的な姿だ。またそれでいてボロボロの装備というかドレスの残骸、魔力の気配は高いが、不思議な何かを秘めている感じがする。
けれど彼女は、最初の魔物――黒いウルフが現れた瞬間、躊躇なく剣を振るった。
その剣筋は、美しかった。
洗練されていて、余計な力が入っていなくて、ただ生き残るために最適化された、実用の剣。
僕のように、見た目ばかりを気にする人間には到底真似できない。あれは、訓練の積み重ねと、命のやり取りの中で得た本物の技術だった。
……そう、彼女は“本物”なのだ。
誇りも、悲しみも、怒りも、きっと誰よりも真っ直ぐに抱えて生きてきた人。
だから僕は惹かれる。美しいものが好きな僕が、彼女に目を奪われるのは当然のことだった。
最初は、単なる気まぐれだった。
どうせ一人で旅をしても、行くあてもない。ならば、少し気になるこの女と一緒に歩いてみるのも悪くない、と。
だが今は違う。
彼女が剣を振るう姿を見て、魔物の肉を焼く姿を見て、黙って焚き火の前に座るその横顔を見るたびに、僕の中の「美」という感覚がざわめく。
彼女はボクとはまるで違う。
自信家でもなければ、他人の評価を気にもしない。鏡なんて見ていない。けれど彼女には、内側から溢れるような“光”がある。
泥にまみれ、戦いに疲れ、時には涙をこらえて、それでも歩くことをやめない。
そんな彼女の姿に、僕はどうしようもなく惹かれている。
あのとき僕が剣を差し出したのは、きっと運命だったのだ。
美しさは、形じゃない。外見だけではない。――そう気づかせてくれたのが、彼女だった。
もちろん、僕はナルシストだ。自分が一番好きだし、自分が世界で一番美しいと思っている。それは変わらない。
でも、それでも。
エリーゼという存在だけは、その価値観を揺るがす。
彼女が隣にいると、僕の世界が少しだけ変わる。
空が広くなって、風が柔らかくなって、火の温度が優しく感じられる。
不思議だ。まるで僕まで“誰かのために生きていい”と思えるような、そんな錯覚に陥ってしまう。
――ただ一つ、気がかりがあるとすれば。
彼女の目だ。時折、焚き火を見つめるその視線が、まるで過去を悔やんでいるようで、胸が痛くなる。
その痛みがなんなのか、僕にはまだうまく言葉にできない。
だけど、いつか彼女がその影を振り払って、心から笑ったとき。
そのとき僕は、きっとこう思うだろう。
「この旅に出て、よかった」と。
美しい人はたくさんいる。けれど、魂まで美しい人には、なかなか出会えない。
エリーゼは、間違いなくその一人だ。
……そして願わくば。
そんな彼女の隣に、少しでも長くいられることを、僕は望まずにはいられない。
ああ、なんて厄介で、なんて魅力的な女性なんだろう。
エリーゼ。名乗ったのは最初だけで、それ以降は特に自己紹介も話もしてくれない。けれど、その鋭い目と迷いのない剣筋、そしてどこか投げやりに見えて、実はどこまでも真っ直ぐな背中が、僕の目を離させてくれなかった。
最初に会ったのは、街道の外れの池のほとり。土埃にまみれた僕の声に、彼女は露骨に嫌そうな顔をした。
無理もない。僕だって、あのときの僕を見たら声などかけなかっただろう。髪は乱れ、服は破れ、表情には哀れみしかなかった。あんな僕が「一緒に旅をしよう」なんて口にしたら、そりゃあ胡散臭くて仕方ない。
けれど彼女は、立ち止まってくれた。
嫌々ながらも、僕の話を最後まで聞いてくれた。
その目の奥に、ほんの少しだけ、昔の僕と似たものを見た気がする。
彼女もまた、失った人なのだ。居場所を、信じていた何かを。たぶん、それが僕たちの最初の共通点だった。
でもそれ以上に驚いたのは、彼女の“条件”だった。
「その剣、貸してくれるなら仲間にしてあげる」
あまりに強引で、あまりに理不尽。それでも、その真っ直ぐな言葉に、僕はなぜか笑ってしまった。
普通なら、僕のようなナルシストはそんな命令に従うはずもないのに。不思議と、彼女の頼みに抗えなかった。
……それにしても、【剣聖】だなんて。嘘だと思った。だって彼女、どう見ても魔法職に近いのでは? 金色の腕に銀色の足。人間なのか疑わしい? まさに神秘的な姿だ。またそれでいてボロボロの装備というかドレスの残骸、魔力の気配は高いが、不思議な何かを秘めている感じがする。
けれど彼女は、最初の魔物――黒いウルフが現れた瞬間、躊躇なく剣を振るった。
その剣筋は、美しかった。
洗練されていて、余計な力が入っていなくて、ただ生き残るために最適化された、実用の剣。
僕のように、見た目ばかりを気にする人間には到底真似できない。あれは、訓練の積み重ねと、命のやり取りの中で得た本物の技術だった。
……そう、彼女は“本物”なのだ。
誇りも、悲しみも、怒りも、きっと誰よりも真っ直ぐに抱えて生きてきた人。
だから僕は惹かれる。美しいものが好きな僕が、彼女に目を奪われるのは当然のことだった。
最初は、単なる気まぐれだった。
どうせ一人で旅をしても、行くあてもない。ならば、少し気になるこの女と一緒に歩いてみるのも悪くない、と。
だが今は違う。
彼女が剣を振るう姿を見て、魔物の肉を焼く姿を見て、黙って焚き火の前に座るその横顔を見るたびに、僕の中の「美」という感覚がざわめく。
彼女はボクとはまるで違う。
自信家でもなければ、他人の評価を気にもしない。鏡なんて見ていない。けれど彼女には、内側から溢れるような“光”がある。
泥にまみれ、戦いに疲れ、時には涙をこらえて、それでも歩くことをやめない。
そんな彼女の姿に、僕はどうしようもなく惹かれている。
あのとき僕が剣を差し出したのは、きっと運命だったのだ。
美しさは、形じゃない。外見だけではない。――そう気づかせてくれたのが、彼女だった。
もちろん、僕はナルシストだ。自分が一番好きだし、自分が世界で一番美しいと思っている。それは変わらない。
でも、それでも。
エリーゼという存在だけは、その価値観を揺るがす。
彼女が隣にいると、僕の世界が少しだけ変わる。
空が広くなって、風が柔らかくなって、火の温度が優しく感じられる。
不思議だ。まるで僕まで“誰かのために生きていい”と思えるような、そんな錯覚に陥ってしまう。
――ただ一つ、気がかりがあるとすれば。
彼女の目だ。時折、焚き火を見つめるその視線が、まるで過去を悔やんでいるようで、胸が痛くなる。
その痛みがなんなのか、僕にはまだうまく言葉にできない。
だけど、いつか彼女がその影を振り払って、心から笑ったとき。
そのとき僕は、きっとこう思うだろう。
「この旅に出て、よかった」と。
美しい人はたくさんいる。けれど、魂まで美しい人には、なかなか出会えない。
エリーゼは、間違いなくその一人だ。
……そして願わくば。
そんな彼女の隣に、少しでも長くいられることを、僕は望まずにはいられない。
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