1 / 8
1
しおりを挟む「うげっ?!」
振り返った彼女の顔を見た瞬間、僕はそんなうめき声をあげてしまいました。
王子としてあるまじき態度です。
パーティー会場の皆が僕を振り返っています。
王子たる僕にそんな声を上げられた彼女――ミーヤ=ダーネスト公爵令嬢はその黒い瞳を見開いて驚いています。
「ルペストリス王子……」
周囲の貴族達も唖然としてみています。
女の子を見てうめき声をあげるなんてひどいですよね。
でも僕はまだ10歳です。
許されるはずです。
……許されますよね?
許してください。
だって僕、思い出しちゃったんです。
彼女の顔を見た瞬間、彼女は、ヤンデレ悪役令嬢だと!
◇◇◇◇◇◇
あれは、なんていう名前の乙女ゲームだったでしょうか。
前世の僕は、入退院ばかり繰り返していて、まともに学校にも通えなくて。
病室で本を読んで過ごすだけの僕に、お姉ちゃん達がゲームをいつも持ってきてくれてたんです。
スマホ系アプリなんかもあって、その時に遊んだ乙女ゲームの一つだと思うんです。
彼女……ミーヤ公爵令嬢は、乙女ゲームの最後で婚約者を刺し殺しちゃうタイプの悪役令嬢でした。
黒い瞳と濃い灰色の髪で、顔立ちは綺麗なのに暗い印象の子で。
常に婚約者たるルペストリス王子を見ていて、ヒロインが近づくと闇の底から響きそうな声で責めるんです……。
『……わたくしには……ルペストリス王子だけなのに……すべてに愛される貴方が……彼に近づかないで……』
とか。
ものすっごく怖かったから、顔を見た瞬間に思い出しちゃったんだろうな、と思います。
今まで、僕は前世の事なんか一つも覚えていなくて。
第6王子として、のんびり生きてて。
こういう時って、思い出すのは普通、悪役令嬢のほうなんじゃないのかなって思うんだけど。
前世の僕、本当に時間がいっぱいあったから、人気のweb小説もいっぱい読んでたんです。
だからいわゆる異世界転生で、悪役令嬢が記憶を取り戻して破滅を回避するお話もたくさん知ってるんです。
なんで僕のほうが思い出しちゃったんでしょう。
でも思い出せて幸いだったのかもしれません。
僕、刺されたくないです。
前世の僕は、たぶん今の僕よりちょっと上の歳で亡くなってるんじゃないかな。
全部を思い出せたわけじゃないと思うから、何となくだけれど。
ゲームでは僕の何歳かの誕生日にヒロインと仲良くしてるのを嫉妬して、ミーヤ公爵令嬢に刺されるんです。
たぶん、17歳かそこらじゃないでしょうか。
前世よりはちょっぴり長生きですけれど、できれば、ちゃんと、大人になって、おじさんになって、お爺ちゃんになって、家族を泣かせることなく長生きしたいんです。
ミーヤ公爵令嬢だって、王子を刺しちゃったら待っているのは極刑です。
近づくと、お互いにとっていいことがありません。
出来るだけ、彼女には近づかないでおきましょう。
24
あなたにおすすめの小説
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
◆◆◆浪費家呼ばわりされた宮廷調香師ですが、私の香りを理解してくれる方と歩みます◆◆◆
ささい
恋愛
婚約者のジュリアンは、私の仕事を一度も認めてくれなかった。
「高価な香料ばかり使う浪費家」「誰にでも代わりが務まる仕事」――四年間、蔑まれ続けた。
でも、私の作る香りは王妃陛下や兵士たち、貧しい人々の心を癒してきた。
夜会で「香料の匂いが染みついた女」と罵られた時、私は決めた。
この場で婚約を解消しようと。
すると彼は修道院送り。一方、私は首席調香師に任命された。
そして、私の仕事を心から尊敬してくれる優しい薬師と出会う。
「俺、これからもあなたの仕事、一番近くで応援したいです」
私は今、自分の価値を理解してくれる人と、新しい道を歩み始める。
ざまあしっかり目に書きました。修道院行きです( ^^) _旦~~
※小説家になろうにも投稿しております
遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした
おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。
真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。
ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。
「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」
「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」
「…今度は、ちゃんと言葉にするから」
断罪が行われないってどういうこと!?~一分前に前世を思い出した悪役令嬢は原作のトンデモ展開についていけない
リオン(未完系。)
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生している、そう気が付いたのは断罪が行われる一分前。
もうだめだと諦めるエリザベスだが、事態は予想もしていない展開へと転がっていく…?
悪役令嬢はざまぁされるその役を放棄したい
みゅー
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生していたルビーは、このままだとずっと好きだった王太子殿下に自分が捨てられ、乙女ゲームの主人公に“ざまぁ”されることに気づき、深い悲しみに襲われながらもなんとかそれを乗り越えようとするお話。
切ない話が書きたくて書きました。
転生したら推しに捨てられる婚約者でした、それでも推しの幸せを祈りますのスピンオフです。
悪役令嬢VSヒロイン∞なんて世の中に需要はない
藤森フクロウ
恋愛
悪役令嬢ローズマリーに転生したら、俺Tueeeeeもできない、婚約阻止も失敗した。
婚約者は無関心ではないけどちょっと意地悪だし、兄は陰険だし、やたら周囲はキラキラしまくったイケメンでローズマリーの心は荒んでいく。
入学した学園ではなんとヒロインが増殖中!?
どーなってんのこれー!?
『小説家なろう』にもアップしています。
悪役令嬢に相応しいエンディング
無色
恋愛
月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。
ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。
さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。
ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。
だが彼らは愚かにも知らなかった。
ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。
そして、待ち受けるエンディングを。
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる