ヤンデレ悪役令嬢は僕の婚約者です。少しも病んでないけれど。

霜月零

文字の大きさ
2 / 8

2

しおりを挟む

「ルペストリス王子……本日は……お招きいただき、ありがとうございます……」

 ミーヤ公爵令嬢には決して近づかない。
 そう僕は心に誓ったのに、どうしてこんなことになっているのでしょうか。

 僕の前で緊張した面持ちでカーテシーをするミーヤ公爵令嬢を見て、僕はため息を押しこらえます。
 前回の王宮主催のパーティーではうめき声を漏らすという失態を犯した僕ですが、僕は王子。
 未来で僕を殺す彼女を前にしても、冷静です。
 えぇ、冷静ですよ?
 ちょっと、指先が震えてる気がするけれど。

「先日の非礼をお詫びしたくご招待させていただきました。今日は、ミーヤ嬢が好きだというマカロンを用意させて頂きましたが、お口に合うとよいのですが」
「そんな……滅相もございません。わたくしなどの為に……」

 ミーヤ公爵令嬢は僕に促されるまま椅子に腰かけ、深々とお辞儀をします。
 そんな姿に僕の胸はちょっと、痛んだり。
 まるで僕がすべてを用意したかのように言っているけれど、本当は、父上や周囲の人々がお膳立てしてくれたことです。
 相手は、公爵令嬢ですから。

 王子であっても先日の非礼は詫びないといけません。
 立場上僕のほうが上ですが、だからといってそのままにしては、公爵令嬢を、ひいてはダーネスト公爵家を侮辱した事になってしまいますから。
 できれば僕としては、ミーヤ公爵令嬢にこのまま嫌われて、婚約の話が流れてくれたらいいな、って思っていたんですけれど。

 白いティーテーブルの上には、色とりどりのマカロンがお皿に乗せて並べられています。
 なんだかとってもパステル空間です。

 そしてそんな愛らしいマカロンを食べるミーヤ公爵令嬢は、とてもうれしそうです。
 きっと、事前情報通り、彼女はマカロンが大好きだったんですね。
 上品に、けれど結構な量のマカロンが彼女のお腹の中に消えていきます。
 ダーネスト公爵家では、あまりマカロンは出さないのでしょうか。
 彼女の家なら、王家とさほど変わらない腕前の料理人がいるはずですし、同じように美味しいマカロンが沢山出されそうなのですが。
 
 僕の目線に気づいたミーヤ嬢が、はっとして、マカロンを食べる手を止めました。
 色白の頬っぺたが真っ赤に染まっていきます。
 僕の存在を忘れるぐらい、マカロンが好きだったんですね。
 
 ……真っ赤になって照れてるの、ちょっと、いえ、すごく可愛いんですが。

 ほんとに、ミーヤ公爵令嬢は綺麗なお顔なんですよね。
 前世の僕だったら、話しかけてももらえないような美少女さん。
 こんなに綺麗な子で、しかも公爵令嬢が婚約者になってくれるなら、僕は喜ばなくちゃいけないのですけれど。
  
 彼女なら、僕以外の王子でもいいのではないでしょうか?

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

◆◆◆浪費家呼ばわりされた宮廷調香師ですが、私の香りを理解してくれる方と歩みます◆◆◆

ささい
恋愛
婚約者のジュリアンは、私の仕事を一度も認めてくれなかった。 「高価な香料ばかり使う浪費家」「誰にでも代わりが務まる仕事」――四年間、蔑まれ続けた。 でも、私の作る香りは王妃陛下や兵士たち、貧しい人々の心を癒してきた。 夜会で「香料の匂いが染みついた女」と罵られた時、私は決めた。 この場で婚約を解消しようと。    すると彼は修道院送り。一方、私は首席調香師に任命された。 そして、私の仕事を心から尊敬してくれる優しい薬師と出会う。 「俺、これからもあなたの仕事、一番近くで応援したいです」 私は今、自分の価値を理解してくれる人と、新しい道を歩み始める。   ざまあしっかり目に書きました。修道院行きです( ^^) _旦~~ ※小説家になろうにも投稿しております

遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした

おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。 真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。 ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。 「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」 「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」 「…今度は、ちゃんと言葉にするから」

断罪が行われないってどういうこと!?~一分前に前世を思い出した悪役令嬢は原作のトンデモ展開についていけない

リオン(未完系。)
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生している、そう気が付いたのは断罪が行われる一分前。 もうだめだと諦めるエリザベスだが、事態は予想もしていない展開へと転がっていく…?

悪役令嬢はざまぁされるその役を放棄したい

みゅー
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生していたルビーは、このままだとずっと好きだった王太子殿下に自分が捨てられ、乙女ゲームの主人公に“ざまぁ”されることに気づき、深い悲しみに襲われながらもなんとかそれを乗り越えようとするお話。 切ない話が書きたくて書きました。 転生したら推しに捨てられる婚約者でした、それでも推しの幸せを祈りますのスピンオフです。

悪役令嬢VSヒロイン∞なんて世の中に需要はない

藤森フクロウ
恋愛
 悪役令嬢ローズマリーに転生したら、俺Tueeeeeもできない、婚約阻止も失敗した。  婚約者は無関心ではないけどちょっと意地悪だし、兄は陰険だし、やたら周囲はキラキラしまくったイケメンでローズマリーの心は荒んでいく。  入学した学園ではなんとヒロインが増殖中!?  どーなってんのこれー!?  『小説家なろう』にもアップしています。

悪役令嬢に相応しいエンディング

無色
恋愛
 月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。  ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。  さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。  ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。  だが彼らは愚かにも知らなかった。  ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。  そして、待ち受けるエンディングを。

『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』

放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」 王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。 しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!? 「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!) 怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。

処理中です...