魔法の姫と世紀末世界のストレンジャー

ウィル・テネブリス

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ショットガンパーティー

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「ヒャッハァー! 撃ってきた! 撃ってきたぞォ!」
「ボルターの怪がいるぞ! 援軍を呼べ! 数で押しつぶせ!」

 周囲が騒がしくなってきた。
 窓に打ち付けられた板がぶん殴られる音がした。

「たった二人で何ができるってんだぁ!? くたばれや!」

 そして教会の入り口にぞろぞろと男たちが割り込んでくる。
 侵入してきたカルトたちの銃口が一斉にこっちに――やばい。

「……やべっ……!」

 講壇の裏に身体をひっこめる、すると雑多な銃声が次々と響いた。
 遮蔽物の裏側でびしっという音が聞こえた。
 すぐそばをかすめて後ろの壁にも着弾、よく見ると矢も刺さってる。

「相変わらず容赦ないなおい……!」

 散弾銃のフォアエンドをじゃきっと前後させた。
 熱のこもった薬莢が勢いよく真下に落ちた。
 すぐに身を乗り出す、入り口には第二射に入ろうとしてるやつらがいたが。

「汚れた足でのこのこと入ってきおって! 悪魔どもめ!」

 ぴったり壁に張り付いていたアルゴ神父がそいつらの目の前に飛び出す。
 同時に手あたりしだいに射撃、一発二発四発と流れるように散弾を浴びせていく。

 それも適当に乱射しているわけじゃない。
 次々と狙いを変えながら近い奴から一人ずつ、頭や腹をぶち抜いていた。
 まるで機械だ、ためらいもないし的確に人を殺している。
 それに変わった構え方だ、銃を斜めに傾けているというか。

「お前さん! 窓にも気をつけろ!」

 見とれてる場合じゃなかった。 
 すぐ近くの窓から、ずごんと何か重いものが叩きつけられる音がした。
 打ち付けられた板が砕けて飛び散って、

「開通だぜっ! お邪魔しまぁぁぁす!」

 バイク用のヘルメットをかぶった男が隙間からぬるっと入ってきた。
 手には消火斧が握られている、だが……。

「……おい。次からちゃんと入り口から入った方がいいぞ」
「――はへっ?」

 どうやら自分が散弾銃の銃口で迎えられていることに気づいてないようだ。
 窓から身を乗り出してきたそいつに構える。

「お、おい待てよそんなのありおごがぁぁッ!?」

 至近距離で射撃、腹に命中、散弾を受けて窓から退場してもらった。
 これでひとまず安心――なわけない、今度は別の窓が破壊された。

「ボルターの怪は俺のもんだ! おめーらなんかに報酬はやらねーぞ!」

 バンダナをかぶった半裸の男が飛び込んできた。
 そいつは見事に着地すると、物陰に隠れていた俺にすぐ気づいたようだ。
 目が合った、銃口が二本ある拳銃をまっすぐ向けてきた。

 まずい、避けられない――
 ぱんぱんと軽い銃声が続けざまに二発分。
 何かが頭上と耳の横を過ぎていくのを感じた。
 耳と頬の間がぴりっと痛くて熱い、なんとなく分かった、削れた。

「いっ……くっっそ!!」

 だからなんだ、じゃきっとフォアエンドを動かしてそいつに構えた。
 侵入してきた男が弾込めをあきらめてこっちに飛び掛かってくる。
 トリガを引いた。反動で体が震える。相手の頭がはじけた。

『いちサン……! だいじょうぶ!?』
「うるせえ! 黙ってろ!」

 腰からのやかましい声を黙らせてポケットに手を突っ込んだ。
 何発撃ったかもう忘れた、くそ、四発でいい。
 手が震える、一発落とした、残った弾を銃にちゃこちゃこ押し込んだ。

「お前ら何びびってやがる! 相手はたった二人だぞ! 俺に続けェ!」
「この際生け捕りは考えなくていい! ぶっ殺すことだけ考えろ!」

 まずい、入口からさらに数名突っ込んで来た。

「ハッハァーーーッ! 汝らに鉛の救済を!」

 ところがアルゴ神父が真横から発砲、先陣を切っていたやつの膝をぶち抜き転ばせた。

「ぎゃっ……!?」
「うおっ!?」
「な、なんだ――」

 後ろに続いた何人かが足を止めた、中にはつまづいて転んだ奴もいる。
 そんな相手にためらうことなく散弾を浴びせていく。
 転んだやつの顔に一発、起き上がろうとしたところに一発、倒れたままの背中に一発。
 最後の一人にお見舞いしようとするが、弾切れ――カチカチと音がした。

「やりやがったなクソじじぃぃぃぃぃッ!」

 起き上がったやつが錆びだらけのリボルバーを構えた……まずい!
 撃たせるものか、散弾銃をそいつの上半身に向ける。
 いやだめだ、これじゃアルゴ神父にもあたって――

「――お前さんも救済をご希望かね? よかろう!」
「むごっっっ!?」

 ……と思ったら散弾銃の銃口をそいつの口に思いきりねじ込みやがった。
 そのまま地面に叩きつけると、アルゴ神父はベルトから散弾を一発抜いて。

「汝に散弾の祝福があらんことを!」
「むっっ……おおおおおおおおおっ!?」

 銃の側面から装弾、ボルトを動かしてトリガを引いた。
 ぼぉん、と独特な音がした。
 何かが内側から爆ぜた音といえばわかるだろうか。
 こっちに何かがべちゃっと飛び散ってきたのは言うまでもない。 

『……ぃっ……いやぁ……』

 腰からミセリコルデの押し殺すような悲鳴が聞こえる。黙れ、構ってる暇はない。

「くたばりやがれぇぇぇぇぇぇ!!!」

 別の窓がまたぶち壊される、次は短機関銃を握った手が生えてきた。

「……おいおいマジかよクソッ!」

 遮蔽物に――いや、窓の真下に向かって滑り込んだ。壁に激突した、クソ痛ぇ。
 その直後、すぐ頭上で短機関銃が暴れだした。

*Papapapapapapapapapapam!*

 狙いなんか定めていない全弾発射だ。
 幸い当たらなかったが、反対側の壁や椅子に拳銃弾がばらまかれた。
 するとアルゴ神父が「ぐぉっ」と体を軽く跳ねさせた、まさか――

「……ぉっ……! イチ、伏せろっ!」

 散弾銃を持った神父はこっちに鋭い視線を向けてきた。険しい表情だ。
 そしてこっちに銃を向けて――じゃなくて、俺の頭上にある窓へと構えた。
 散弾がぶっ放された、真上で残ったバリケードごと窓が砕けた。
 すぐ後ろの壁の向こうから「畜生いでぇ!」とかいう声がした。

「アルゴ神父! 撃たれなかったか!?」
「気にするなお前さん! まだまだくるぞ!」

 やられたのかと心配したけど気にしすぎだったみたいだ。
 むしろさっきより勢いがついていて、手あたり次第窓に向かってぶっ放している。

「くそ! 一体どんだけいるんだよあの変態ども!」

 窓からまた誰かがやってきた、大雑把に狙いを定めて発射。
 当たったかどうかは分からないが引っ込んでいった。
 バリケードはなくなった。入口からも銃が撃ち込まれてくる、それだっていうのに向こうは弾が豊富にありそうだ。

『とっておきだ! 持っていきなァァァ!!』

 次は無防備になった窓から声がする。
 慌てて散弾銃を向ける……が、

『全員一旦引け! ぶっ飛ばされちまうぞ!』
『おいおい投げるなら一声かけろ! 引けェ!』

 ……ものすごく嫌な予感がした。
 攻撃の手が止まった? いやぶっ飛ばすってなんだ?

『……』

 アルゴ神父と目が合ってしまった。
 そんな視線の間に、がらんと何かが落ちてきた。

 死んだ目でニンジンを食み続ける牛の姿があった。
 見慣れた缶詰だ、しかしなんだろう、ジリジリ音を立ててるような。
 よく見ると缶の上から火のついた導火線が伸びている。そうだこれは――

「……!!」

 頭の中が真っ白になった。どう見たってこれは爆発物だ、クソッ!

『いっ……いちサン! これってもしかして爆……!』
「お前さん……っ!」

 アルゴ神父が両腕を広げて、缶に飛びつきそうになっていた。
 何をする気だ? まさかこいつに覆いかぶさって……嘘だろ?
 ああ、おいどうすればいいんだ、それなら、それなら――

「うっ……うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 ふとあることを思いついて、俺は爆弾へと飛び込んでしまった。

『なっ、なにしてるのいちサン!?』
「聖なる者よ! 離れろ! わしが――」

 それだけならただの馬鹿だろうが、今の自分は変に冷静だった。
 導火線が今にも焼け消えてしまいそうな缶へとタッチして。

【分解しますか?】

 目の前にウィンドウが浮かんだ、そうだ、それでいい。
 YESかNOか尋ねられた、そうだYESだはやく消えろくそったれ!

 すると【分解完了!」と、缶からぴたりと音が消えた。
 思った通りだ、分解システムを食らった爆発物は崩れて消え去った。

「……どうだ、これが奇跡だ」

 心臓の底からこみ上げる変な笑いと一緒に誇った。
 背筋がぶるぶる震えて嫌な汗がでまくってるが俺の勝ちだ。

「……ハハ……ハッハッハ! 流石だな、聖なる者よ!」

 アルゴ神父はかなり困惑していたが、すぐにいつものノリに戻った。
 異様なまでに静まり返る中、俺たちは変な笑いをお互いに向けた。

「あ……あれっ? 爆発してねーじゃん?」
「おい、お前が投げたグレネードどうしたんだ?」
「静かだな、まさかあいつら死んだんじゃないのか? ちょっと見てくる」

 そこへアルテリーの信者たちがのこのこやってきた。
 窓からのぞいたり、入り口からやってきたりと無防備な様子だ。

「……そうか、やはり神の御加護があるのだな!」

 俺たちは散弾銃をそれぞれの標的に構える。
 固まってきたやつらに向けてトリガを引いた、群れた狂人たちの間を散弾がえぐった。

「……わるい、実は無神論者なんだ!」

 続けざまにフォアエンドを動かしながら撃って、なぎ倒した。

「畜生がぁぁッ! なんなんだこいつら強ぇぞ!?」

 窓から敵が出現、こっちに向けてクロスボウが――発射された。
 慌ててかがんだが首横を掠っていく。ざらざらした痛みが走る。

 そこへリロードが終わった神父が壁を背に、窓を次々と撃ち抜いていく。
 モグラ叩きみたいに次々やってくる狂人たちをぶち抜いてることだろう。
 だいぶ攻撃の手が緩んできたが。
 
「おいおいおい良くもやってくれたなァ!? ええ!?」

 そこに、ごてごてとしたやつが正面から入ってきた。
 大型ハンマーを引きずるように持っていて、全身が防具に覆われている。
 口元と目だけが見えるようなヘルメットをつけていて、体にはいたるところに鉄板などが張り付けてあった。

「……悪いけどここは神聖な教会だ、出てきな」

 だからなんだ、そいつの腹に散弾銃をぶっ放した。
 当然、散弾を食らってそいつの身体がよろめいた、が。

「いっっってぇぇぇぇぇ……ッ! いてぇ、じゃねえかぁぁ……!?」

 どうなってやがる。
 倒れることもなくこっちに向かってきた。
 撃たれても平然と……というか、目が充血してる上に瞳孔が開いてる。
 
「イチ! こいつらハイになっておるぞ!」
「どういうこった!」
「麻薬のことだ! とうとうあんなものまで使いおったか!」

 ……それならこうだ!
 顔面? いいや、それほど防御されてない膝を狙ってトリガを引いた。
 片方の膝に命中、さすがにこれは効いたのかがくっとひざまずくが。

「おっ――――い、いてえ……けど……」

 そいつはポケットから紙包みを取り出して広げた。緑色の粉が盛ってある。
 広げた紙を顔に当てて、深呼吸をするように吸い込んで。

「……うひゃっひゃひゃひゃひゃひゃっ! 治ったァ!」

 ……おいうそだろ、立ち上がりやがった。
 くそっ! こいつらイカれてやがる!

「ウェイストランドを統一? アルテリーがなんだ! 知るかよォォォッ!」

 薬をキメた重装カルト信者が大型ハンマーを叩きつけてきた。
 問題ない、横にステップ。これなら簡単によけられる。
 振り下ろされたハンマーが長椅子をハーフサイズに砕いた。
 無防備になったそいつに横から散弾をお見舞いしようとしたが、

「このっ……とっととくたばれ――」

 トリガを引くとかちっと音がした。 
 ああ、まずい、これはいわゆる弾切れってやつだ。

「……ざんねえええええええええええええええんっ! 弾切れぇぇぇ!」

 相手がさっきよりも早い動きでハンマーを持ち上げて、振り下ろしてきた。
 避けられない、それならこうだ。

「ぅぁっ……!」

 とっさに散弾銃を掴んでガードした。
 突き出した機関部に腕ごともってくようなきつい重みがずっしり来た。
 べきべきと何かがはじけ飛ぶような音がして、散弾銃が割れた。

「……っのぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 壊れた散弾銃を捨てて全力でそいつの腹に蹴りをぶち込む。
 ハイになった男は「おぉっ?」と後ろに大きく仰け反って。

「――これで終わりだ、悪魔め。地獄に落ちるがよい」

 その後ろからアルゴ神父が散弾銃をうなじに突き付けていた。
 狂った男は訳も分からず笑ったままだが、構わずトリガが引かれる。

 次の瞬間、そいつの頭の上半分は天へと昇った。
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