魔法の姫と世紀末世界のストレンジャー

ウィル・テネブリス

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未だ羊を追う

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「……最近、ヴェガスの連中との関係が悪くなってきたわけで……」
「俺たち、割と後がなくなってきたっていうか……」
「同盟先との信頼を得るためにも総攻撃の準備をしてて……」

 地面にひざまずく信者たちは銃口の前にそう答えた。
 こいつらは不幸にも生き残ったやつらだ。ニクが見つけてくれた。

「じゃあこの大量の武器はどうしたんだい?」
「……み、ミリティアから貸与されたんだ……」
「それから、ヴェガスの連中から拝借したり……」
「……だそうだ。どう思うお前たち」

 今すぐ誰かの頭をぶち抜ける状態のまま、ボスは意見を求めてきた。
 俺たちは戦闘のをしながら、生き残りを集めて尋問していた。
 その結果教えてもらった情報というのが、またなんとも笑える話だった。

「つまり……同盟とやらがぐだぐだになってきて、示しをつけるためにもうちらに総攻撃を仕掛けてくるってことか?」
「それだけじゃないさ、イチ。こいつらミリティアの連中にせかされてるのさ。『早く名誉ある死をもって敵を潰してこい』ってな」

 ツーショットが言うように、どうやらこいつらは複雑な状況らしい。
 生き残った信者いわく、あのカルトどもは奇跡の力を使って北西にあるレイダーたちのテリトリーで好き放題やってたようだ。

 最初は生傷の絶えないならず者たちを治癒魔法で治すだけだった。
 手足がちぎれかけようがそれだけで治るのだから、それはさぞ感動しただろう。
 そして歯向かうものには死を、だ。次第に従わない者は魔法の力で萎縮させた。

 続いて道中、ミリティアという傭兵集団と同調して力をつけたところで北上した。
 リム様の言った通り、あいつらはを集めながら進軍していたそうだ。
 奇跡の業とやらを使える人間を増やしつつ、ミリティアに促されてヴェガスまで来た。
 そのころには道中の略奪やもあって、僅かだった人数は何十倍にも膨れ上がってたわけだ。

 で、あいつらは調子に乗りすぎた。
 後先考えずに信者を増やし続けてきたアルテリーはヴェガスに居座りだした。
 そこで小競り合いを続けていた連中をまとめて新たな派閥を作るまではよかった。

 まず、カルト集団はすっかり高慢になって従わない者を排除した。
 ところがそのころニルソンの攻撃に大失敗、停滞して反感を買う。
 さらにそこへアルテリーは裏切者だという情報がヴェガスに流れてさあ大変。
 その結果、北西の地ではカルトVSレイダーといった内紛だ。
 内にも外にも敵が増え、西側の連中からニルソンを潰せと急かされ、私怨もあって総攻撃をしかけることになりましたとさ。

「もしかして、あいつが伝えてくれたのか?」

 不意に解毒剤をくれたあの男の姿が思い浮かぶ。きっとあいつだろう。

「……そうか、あの男がやってくれたのか」
「……殺さなくて、良かったね」

 どうやらアレクとサンディも同じ考えか。義理堅い奴だ。
 見逃したあの男はお礼をしてくれたらしい。
 いい気味だ。どうせならあの変態デブを毒殺ぐらいしてほしかったが。

「……要するに調子に乗ってたら痛い目見て勝手に死にかけてるってことだろ? もったいないやつらだ、俺だったらもっと上手にやってるのに」

 ツーショットのいう通り、あいつらは世渡り上手じゃなかったみたいだ。
 なるほどな、謙虚さが大事だったわけだ。いい勉強になったよクソ野郎ども。

「なるほどなあ。じゃ、この武器の大半はレイダーから奪ったんだろうな。せっかくこんなにあるのに扱いきれてねーのが良く分かるぜ」
「誰かさんが焼き払って台無しにしかけてたじゃねーか」
「黙ってろアーバクル、きれいに焼いてやったんだから感謝しやがれ」

 ヒドラが少し焦げた戦車の中身を物色していた。
 アルテリーが瓦解がかいし始めてなかったら、こいつがニルソンに突っ込んで来たかもしれない。
 まあ、でも、屈強な方々が揃うあの土地なら一両二両ぐらい余裕でやりそうだが。

「そうかい。つまりあんたらは典型的な駄目な組織だったってわけだね」

 一通りの情報を聞き終えると、ボスは生き残りたちに向けて、

「さて最後の質問だ。あんたらのボスはまだこいつを狙ってんのかい?」
 
 俺を突き出しながらそう尋ねる。そいつらは困ったように顔を見合わせると。

「……まだあきらめてないみたいだ。なんていうか」
「――そいつのこと恨んでやがるぜ、ずっとな。ずっと執着してやがる」
「滅茶苦茶だぜ。あの時食えばよかったとか言ってたし、そいつにすべて台無しにされたとかいつも癇癪かんしゃく起こしてやがった」

 この死んでも生き返る人間にまだこだわってることが分かった。
 どうやらひどく恨まれてるらしい。ざまーみろ。

『……なに、それ。ふざけてるの……!?』

 その場に腰のあたりからそんな声が挟まって、周囲が黙った。
 今まで聞いたことのない怒りがこもってる。

「良く分かったよ、ありがとう。全部俺が悪いって思ってんだなお前らのボスは」
「意地でも自分の失敗を認めたくないみたいだね。呆れる話さ」

 とにかくまあ尋問はこれで終わった。
 近くで石炭みたいな焼死体が青い粘液へと姿を変えていくのが見えた。

「これで質問は終わりだ。アレク、サンディ、片付けろ」
「……へっ?」
「お、おいまてっ! 話せば殺さないって」
「いっいやだ死にたく」

 話すだけ話した生き残りたちにサンディが矢をぶっ放す。
 続けてアレクが一人の頭を掴んで首を掻っ切り、

「あんたらがアルゴ神父にやったことは忘れないよ、クソ野郎」

 ボスは最後の一人の耳元に強く言って、銃剣を首にぶっ刺した。
 すると視界に【LevelUp!】と表示される、これで生存者はいなくなった。
 そしてくたばったやつらの死体は次第にどろっと溶け始めて、

「ふぃー、終わりましたわー。おかげでしばらく困りませんわー」
「Honk!」

 ガチョウを抱きかかえたリム様の影響で青く融解していった。
 これもうあたり一帯には死体はおろか血の跡すら残っちゃいない。

「ボス……一体これからどうするんですか?」

 片付いたところで俺は尋ねた。
 ここは制圧したが問題はそのあとだ、あいつらは総攻撃を仕掛けてくる。
 けれども崩壊しかけてる連中なのだからどうとでもなりそうな気はするが。

「どうするって? イチ、あんたはうちらがこれからどう動くと思う?」

 しかし逆に聞き返されてしまった。
 迎撃するか、それとも俺たちの方からあいつらを直接叩くとかだろうか。

「……迎え撃つってところでしょうか」
「まあ半分正解だ」

 プレッパータウンであいつらを歓迎するイメージをしたが、違ったみたいだ。

「じゃあこっちから攻めるんですか?」
「いいや、ニルソンを決戦の場にする気はない。かといってやつらの場所に攻め込むつもりもない」
「……どういうことですか、ボス?」
「あいつらには荒野でくたばってもらうのがお似合いさ」

 俺の疑問にボスは「あれさ」とほったらかしにされた兵器を指した。
 多連装ロケット砲と弾薬がいっぱい置いてある、まさかあれで……。

「もしかしてですけど、あれであいつらのいる場所を爆撃するんですか?」
「あれじゃできねーよ。十両ぐらいあるなら話は別だが、二両じゃよっぽどうまく運用しねぇとダメだ。1本10kgぐらいのロケット弾じゃ特にな」

 そう考えていたけどヒドラショックが説明してくれた。そんなもんなのか。

「単純さ。待ち伏せして二度と立ち上がらないぐらい徹底的にやる」
「なあボス、一体何考えてるんすか? はっきりってくださいよ」
「ヒドラ、あんたロケット弾や迫撃砲の弾をいじったことあるかい?」
「そりゃもうガキのころからずっと」
「そうかい。じゃあここにある予備の弾は全部頂いてくよ、装填してある分はわざと残しておいてやりな」
「このロケット弾を……? どういうことっすか」
「少し料理して返してやるのさ、あいつらにね」
「……ああそうか。そういうことか!」

 少し焦げた木箱を見ていると、ボスと放火魔がなにやら企んでいた。

「今のうちにあんたに聞いておこうか。できるか?」
「もちろんっすよボス。俺の大好きな仕事だ」
「よし、持ち帰るよ。あんたはほかに使えそうなものをかき集めてきな」

 ヒドラショックは耐火服を脱ぎ捨ててロケット砲の方へ向かってしまった。
 いったい何を始めるつもりなんだろうか。

「お前たち、ここにある砲弾を持てるだけ回収だ! アレク、向こうからあいつらのトラックを拝借してこい!」
「分かりました、ヴァージニア様」
「サンディは北西の方を監視だ! さあ早く動け野郎ども!」
「……うい」

 そしてボスの指示が飛んできた、どうやら略奪タイムだ。
 俺たちは箱に入ったロケット弾を運ぶこととなった。

「まったく、あいつがやるといつもこうだ。引火させなかったのは褒めてやるがね」
「曲がりなりにも放火のエキスパートだからな、まあ今回はやりすぎな気がするが」
「こんなんだから食堂のラシェルに嫌われてんじゃないのかい」
「ボス、それは本人に言わないでやってくれよ。あれでも17歳だ」
「あんなむさくるしい17歳がいるもんかい。それよりツーショット、戦車に細工しておいてくれないかい? 砲塔が動けないようにとかね」
「細工? 鹵獲しないのか?」
「下手に全部持ってくとあいつらが釣れないじゃないか」
「……ああ、そういうことか。だったら任せてくれよ」

 ツーショットも戦車の方へ向かってしまった。
 一体何が始まるのか気になるけども、いまはとにかく略奪に集中しよう

『……いやなもの見ちゃった……』

 ロケット弾入りの箱を抱えるとミコが不愉快そうにこぼした。
 まだ微妙に火炎放射器の熱が残るこの場所は、妙にじめっとしている。

「そうだな。まあその嫌なものは焼かれて溶かされて綺麗さっぱりだ」

 今回ばかりはボスもリム様がいてよかったと思ってるはずだ。
 とはいえ口のあたりがべとべとして気持ち悪い、ヒドラのやつめ。

「皆様のお口にあったようでなによりですわ。うふふふ」

 肝心の魔女様は恐ろしいことを言っている始末である。
 すぐ近くではロケット弾を運ぶ小銃手二人が愚痴っていて。

「あいつと一緒に行動するといつもこう。顔がべたつくから嫌」
「焼かれるところだったんだけど謝罪もなしとかふざけてんのあいつ?」

 そう不満そうに辛辣な言葉を残していった。
 ヒドラショックのやつは女性陣には不評のようだ。

「持ってきたぞ! 早く詰め込め!」

 そうこうしているうちにアレクがトラックを持ってきた。
 俺たちは急いで荷台に砲弾を載せた。一体こいつで何をするんだろうか。

「イチ、少しいいかい?」

 荷台が爆発物であふれてくるとボスに呼び止められた。
 とはいえタイミング的にも、その真剣な表情からも、嫌な予感がする。
 いや、いまさらそれがなんだ。足を止めて硬い表情に向き合った。

「なんでしょうか」
「率直に言おう。お前さん、あいつらをおびき寄せるエサになってくれ」

 ……だと思ったよ。

『……お、おびき寄せるって……? どういうことですか?』
「いいかいミコ、あいつらの親玉を引きずりだして皆殺しにするってことさ。」

 なんとなくそんな感じはした。
 それがどうした、伊達に生半可な気持ちであんたに返事をしたわけじゃないんだぞ。

「……ボス、いつも思うんですけど、本当にいきなりですね」
「私はイエスかノーかの返事が聞きたいんだが」
「返事は変わりませんよ。覚悟はできてます、とっくの昔に」

 むしろ好都合だ。
 ボスはわざわざ俺のために、あいつらをぶちのめすチャンスをくれた。
 シェルターの件やアルゴ神父の借りをようやく返せるってわけだ。

「急に聞かれてつい勢いで返事してるんじゃないだろうね」
「何か算段があって言ってるんでしょう? やらせてください」
「……そうかい。なら話は早い、とりあえずさっさと撤収するよ。よくやった」
「分かりました、ボス」

 決めた、あの連中をこのウェイストランドから消し去ってやる。
 自分を縛り付ける奴らを手放して、前に進むために。

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