魔法の姫と世紀末世界のストレンジャー

ウィル・テネブリス

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世紀末世界のストレンジャー

羊から、ストレンジャーへ

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 犬やら短剣やらリム様やらに圧迫されながら話を聞いて一言。

「――作り話とかしておられる?」

 ものすごく失礼なのを覚悟でそう尋ねた。

「本当ですわ。だってこの目で見てきたものですもの」

 失礼だったのかリム様がぐりぐりほおずりしてきた。

「だそうだ。ミコ、どう思う?」
『……たしかにそういう感じの設定はあったけど……なんか違うよ』
「どう違うんだ?」
『あのゲームの設定がベースになってる感じがするよ。でもアバタールって誰だろう』

 俺と物いう短剣、追加でニクも含めてみんなでうーん、と悩んだ。

「つまり……アバタールってのは魔法が効かない能力を持ってて、子供が作れない体質で、俺がそれと当てはまってると?」
「そういうことになりますわ」
「さらに言えば見た目も似てるってわけか」
「ええ、目はもうちょっと穏やかでしたけれど……」

 本当に偶然なんだろうか。
 いや、タカアキのメッセージを思い出せ。
 あいつは『二人目のアバタール』といっていた。
 俺は絶対にご本人じゃないと思うが、きわめて密接な関係なのは間違いない。

「で、そのアバタールってやつをあんたらが拾ったのか?」
「そうですわ。盗んだ船と一緒にぼろぼろの姿で流れ着いたところを見かねて、リーゼルお姉さまが拾って育てることにしましたの」
「船盗んで脱走するガキとかアグレッシブすぎるだろ」
「ええ、本当に見た目からは想像できない力を秘めていましたわ。でも人には言えない秘密を一杯抱えてたみたいで、いつも苦し気に悩んでいました」

 この話が本当として、アバタールとやらは相当すごいやつだったらしい。
 死ぬするたびに世界を壊して脳に弾丸撃ち込まれるような奴とはえらい違いだ。

「それで、あんたらはそいつの親代わりになったってのか?」
「その通りです、気づけば私たちはアバタールちゃんのお母さん代わりになってましたの。特にリーゼルお姉さまがかわいがってましたわ」
「13人も母親いるとか悪夢かよ」
「ふふ、あの子は本当の息子のように接してくれましたわ、毎日大騒ぎで最高でしたの。ところでイっちゃんにご両親は――」
「父親も母親もとっくの昔にくたばってる。もう顔も忘れた」
「……それは失礼しましたわ、ごめんなさい」

 これで両親がいない点も一致してしまった。クソ、いやなものを思い出した。
 そしてリム様は懐かしそうに語り続ける。
 
「あの子はほかの魔女たちからもとっても愛されていましたわ。あの子の影響で、魔女というものはみんな捨て子を拾ってくるようになりましたから」
「魔女って感化されやすいのか?」
「それはもう、実にですわ! いつも腹ペコだった私に料理の楽しみを教えてくれたのも、あの子でしたから……」

 ここでおいしい料理にありつけたのもアバタールのおかげだっていうのか。
 まあこれで大体わかった、あっちの世界にかなり重要な人物だったみたいだ。
 そしてそいつはくたばって、そこへそっくりさんがきたわけだ。

「……そのアバタールはいつ亡くなった?」
「……五十年以上前ですわ」
「かなり経ってるな……。で、俺が生まれ変わりか何かだと思うか?」
「正直に申し上げますけれども、生まれ変わりだと信じたいですわ」
「もし喜んでくれるなら嘘でもアバタールだと言ってやりたい気分だ。でもご本人じゃないのは間違いない」

 アバタールもどき、もとい俺はため息をついた。

「……リム様、どうしてそいつは自分が子供を作れない体質だってわかったんだ?」

 少し考えて『感覚』が働いた、そいつの特徴から調べよう。
 まあ物理的手段で片っ端から試しまくったっていうなら話は別だが。 
 ところがこの質問はあたりだったのかリム様は「そうですわ」と付けて、

「……あの子はそのことについて変わったことを言ってましたわ。やっぱりか、とか、『いでんし』の情報があの時のままだとか」
「……遺伝子だって?」
『遺伝子……? ファンタジー世界なのに……?』

 ……ちょっと待て、なんでそんな近代的な言葉を知ってるんだ?
 まさかそいつ自身が自分の体質についてすでに何か知っていた?
 おいおい、話がやばくなってきてないか。

「どうかしましたの? 悩ましい顔をされてますけれども」
「もう一ついいか? そいつは別の世界の人間か?」
「分かりませんわ。なにせ自分の出自に関しては硬く口を閉ざしていましたから」

 これで分かった、もしかしたら俺たちと似たような人間かもしれない。
 有り体な言い方をすればアバタールは『転移者』ってところだ。
 もしそうなら問題はいつの時代からきたのか、俺とどういうかかわりがあるのか、現状とどうつながってるのか――だめだ謎が増えた。

「分かった、もういい。この話はいったんこれで切り上げさせてくれ」

 俺は隣でうとうとしているニクの頭を撫でた。
 こいつは三人で考えるのはあまりにもデカすぎる話題だ。
 このことは一度置いておくとして、別の質問をしよう。

「で、俺って何割ぐらいアバタール要素ある?」

 そんなにアバタールに見えるかどうか問うと、リム様はふにゃっとすり寄ってきた。

「八割ほどアバタールちゃんですわ」
「残りは?」
「性欲発散乗馬マシンですわ♡」

 最低だ。

『せいよっ……!?』
「リム様、あんたの見た目でそんなこと言われると割とシャレにならない。言っちゃ悪いけど誰が見ても尻尾と角と羽、それから目のせいで八割悪魔だ」
「悪魔じゃなくてサキュバスだもん! あ、残った二割は魔女ですわ」
「そうか。とりあえず下品なのはやめろ、もっとお上品な言葉を使ってくれ」
「に、肉バイ……」
「やめよっかこの話!」

 とてつもなく業の深い魔女に頭を抱えていると、次の質問が浮かんできた。
 アレ――そう『マナ・クラッシャー』のことだ。

「よし次。この力が自分を消すって言ってたな? そいつについて聞きたい」

 太腿の上でごろごろしながら、例の力についての説明を求めた。

「……あなたの持っているその力のこと、ですわね?」

 瞬きをするまでの間、リム様の顔が硬くなったのが見えた。

「うん。まず、自分のマナも壊されるって言うのはどういうことだ?」

 言い辛そうな口を開こうと、おおきな魔女の頬にぷにっと触れた。
 視線が合った。感覚でその目が「教えたくない」と逸らされたのを感じたが。

「ではマナというものについてお二人にお話します。生きるものすべての内側では、赤い血液だけではなく青い魔力も巡りまわってますの。生物はマナ無しでは生きられない、というのがこの世の道理です」

 いきなりぶっ飛んだ話が返ってきてしまった。

「どんな世界だろうが誰にだって魔力って言うのが必ずあるってことか?」
「ええ、そうなのです。生きるものは魔力なくして生きてはいけない、魔力とは現実を動かすものであり、それなくして動くことはできない、と言われていますの。私たちのいた『テセウス』でも、更にかけ離れた別の次元ですらこの法則は絶対です」
『それってこの世界の人々も、こうなる前から魔力があったってことですよね?』
「もちろんですわ。もっとも、自由に使うにはいろいろと条件がありますけれど」

 魔力はどんな世界でも絶対に存在する、か。

『……じゃあ、おじいちゃんにもあったのかな……』

 ミコにいち早く気づいたあの人は、本当に不思議な力を持っていたんだろうか。

「では質問です。そのマナが一体どんな働きをするか分かりますか?」

 物言う短剣を手に話を聞いていると、急にクイズが始まった。

「……魔法を使うための足掛かりにする?」
『……普通だったらできない非常識なことを可能にする?』

 そんな問いかけに俺はニクと一緒に首をかしげたが、ミコがそう答える。
 二人分の答えのうち、リム様は手にした短剣の方を見て、

「……イっちゃん残念! ミコちゃん大正解、ですわ! さすミコ!」

 鞘ごと旅の相棒を撫でた。『わ、わーい……』と控えな歓声が上がった。

「……非常識なのかよ」
「そりゃそうですわー。火種もないのに火を起こしたり、無から水を生み出すなんて論理的に考えればでたらめなのですから」
「そのでたらめを実現するのが魔力ってことか」
「何も魔法を使うだけではありません。魔力を理解すれば理解するほど物理的、質量的に不可能なこと……例えば、高所から無傷で着地する、子供が巨大な武器を軽々と振り回す、素手で人体を貫き切断する。そういった人間でいう不可能なことをさせるためにある媒体なわけですの」
『じゃあ、わたしたちヒロインの身体能力が高いのもマナのおかげなのかな?』
「魔法を使う材料にもなるし、非現実的なことをする道のりにもなるってことか」

 そうか、魔力があればアニメや漫画みたいにありえない動きが可能になるのか。
 ……今頃あっちの世界はどうなってるんだ、バトル漫画みたいになってそうだ。

「次の質問をしますわ。例えば剣の一振りで森を丸裸にし、あらゆる攻撃を人智を越えた反射神経で避け、走れば馬より速い、そんな常識の通用しない人間とあなたが剣を交えたらどうなると思いますか?」

 そう思っていると、クイズが物騒な内容になって続いた。
 ミコは「えっと……」と困っているが、俺だってものすごく困った。
 そんな化け物と戦うことになったら余裕で俺が負けるだろう、勝つ要素なんて――

「……もし、そいつの魔力を壊したら・・・・・・・?」

 しかし閃いてしまう、マナ・クラッシャーを絡めた思考を。
 するとリム様が少し感心したように笑んで、

「ふふっ、じゃあこれを見てください」

 机の上に鉛筆と置かれた紙を拾った。
 白紙にさらさらと何かを書くと『水槽』みたいなものが可愛らしく書かれた。

「これは見ての通りお水の入った水槽ですわ。そしてここにコルクを入れます」

 次に鉛筆が書き足す。
 すると水面とおぼしき場所にコルク栓らしきものが浮かぶ、ぷかぷかと。

「次にコインを放り込みます。コルクは浮いて、コインは沈みますわよね?」

 その水面ではコインが何枚も沈んでいる――浮くコルク、沈むコインという図だ。

「確かにそうだな。で?」
「このコルクが「非常識な人」で沈むコインが「普通の人間」です」

 そうして二人の関係性を生み出すと、リム様の鉛筆は更に創造を続け。

「そしてこれがイっちゃん、あなたです」

 水槽に沈んでいく『いかり』を描いた、船につくやつだ。

『いちクンが錨? どういうことなのかな……』
「船のパーツかよ俺」
「あなたは沈む錨ですわ。さて――このコルクが先ほどの人間だとすると」

 コインのもとへと沈むそれを見てどういうことかと頭をひねっていると、

『……あっ。もしかして、沈める……のかな?』

 ミコが何かアイデアを浮かべたようだ。
 俺も遅れて思いついた、この錨は何を引きずり込む・・・・・・・・のかと。

「正解ですわ。コルクは底に沈んだアンカーに引きずり込まれて――」

 沈める――その言葉を耳にして、リム様は錨に何かを書き足す。
 鎖だ。コルクに鎖が絡みつき、引っ張られていく……あーあ、沈没だ。

「溺れる、と。つまり俺はそいつに勝ったってことか?」

 水底に案内されたコルクを見て、俺は思わず言った。

「いいえ、勝負にすらなりません」

 しかし首を横に振られた。

「……どういうことだ?」
「そんな相手がもしもイっちゃんに接触したら、急に『非常識じゃなくなった』人間はただでは済みませんわ。生身に"非常識"の負荷がかかればそれだけで危険ですもの」

 なるほど、今の俺は魔法が絡んでいるもの全てを否定するわけか。
 剣と魔法の世界の後半部分を否定してひどい目に会わせる能力だったようだ。
 嬉しくない知らせだが、大人姿のリム様はもっと深刻な話に備えて顔を硬くし、

「その上でお伝えします。あの子は日に日にその力が強まっていき、やがて自らの根幹にある魔力すらも拒みました。その結果が髪の毛一本も残さない『消滅』でした」

 アバタールの死をようやく教えてくれた。
 自分の魔力をも否定して、肉体すら残さず消えたっていうのか?
 死ぬ、とかじゃない、消滅だ。俺にとっての本当の『死』のことだ。

「……俺が死んだら生き返ることは知ってるよな。アバタールは――」
「残念ですが、違います。あの力さえなければ、ただの人間でしたもの」
「じゃあ、俺にも魔力はあるのか?」
「そうですわ。その力があるということは、魔力のある証拠にもなりますから」

 よく分かった、俺には明確な『死』が存在していた。最悪の死に方だが。
 こんな身になってただじゃ死ねないのは覚悟していたが、ひどい知らせだ。

「次だ。ハノートスってやつは見たか?」

 次はあのド変態のことだ、正直話したくはないが気になって仕方ない。

「ええ、この目で確かに見ましたわ」
「そうか、なら答えてほしい。あいつは――いや、あいつらが魔法を使えたのは、あっちの世界のものを使ったからか?」

 あの変態はどうして魔法が使えるのか、という疑問をぶつけた。
 俺が『アーツ』を習得した事情を考えると、向こうも同じような手段で覚えたのは間違いないだろう。

「ええ、間違いなく。『スペルピース』を手に入れたのは確実ですわ」
「じゃあ、あいつらは魔力マナをどうやって確保したんだ?」

 ミコを見た。こいつはマナポーションから魔力を補給している。
 でもこの世界じゃドクターソーダみたいにぽんぽん手に入るはずがない。
 あんな派手に魔法を乱発するような連中は、つまりそれだけマナポーションをかき集めでもしたんだろうか。

「……食べたのでしょうね、人を」

 質問に返されたのはなんてことない、あいつらの性癖のことだった。
 それくらい知ってるさ。まさか人間食えば魔法が使えるとか言わないよな。

「そりゃ過激な肉食派だったからな、あいつら」
『ひ、人を……? あの、それってどういう……?』
「この世界にもっと力が満ちていれば自ずと肉体がため込むのでしょうが、今の状態ではどこかから補わないといけませんわよね?」
「それと人肉健康法がどう関わってくるんだ? まさか人間食えば回復するとかしょうもないオチまでつながらないよな?」
「ええ。ここでそれを得るにはマナをたっぷりと含んだ草花や菌類から抽出するか、あるいは純粋で力強いマナが行き渡ったものから直接取り込むか、ですわね。何が言いたいか分かるかしら?」
「さっきの話と絡ませるなら、あいつらのクソみたいな食人嗜好とがちょうどかみ合ったってことだな? ほんとにしょうもねえ」
『うわあ……』

 なるほど、人食ってりゃ腹も満たせるしマナも摂取できるわけか。

「マナは二つありますの。自然に生まれるもの、生物が生み出すもの。この世界にはその概念すらなかったのでしょうけれど、きっと世界が混じったせいでこちらにも同じルールがあてはめられたのでしょうね。次第に荒野はマナを創り始め、人もマナを紡ぎ出すようになる、この世界は変わりつつあるので」
「『青き力が満ち始めてる』ってか」
『……やっぱりおじいちゃん、この世界の変化にちゃんと気づいてたんだね』

 世界を変えた男ってわけか、俺は。それも不名誉な形で。
 アバタール、お前が何者か知らないけど、あっちじゃさぞ善行を積んだんだろうな。
 そのそっくりさん・・・・・・はこのざまだぞ?
 俺はたくさんの命を奪ったぞ。そして、これからもっとだ。

「……話してくれてありがとう、ちょっと外の空気吸ってくる」



「イチ。ちょっといいかい」

 聞きたいことも聞いてひとりで外をぶらぶらしてると、ボスに見つかった。
 なんというか待ち構えていた、あるいは来てほしかったのか――どっちだっていい。

「なんでしょう」

 俺はシェルター入口近くでタバコを吸っている老人に近づいた。
 一仕事終えたように佇んでる。愚痴でも聞いてほしそうな感じだ。

「ここ最近はずっと残党狩りをしててね。散り散りになったやつらを追い詰めて殺す簡単なお仕事さ、もはや的当てかなんかだよ」
「なるほど、つまり俺にも手伝えと? 喜んでやりますよ」
「馬鹿言うんじゃないよ、病み上がりのくせに。別にそういうのじゃないんだが」

 「やるか?」とタバコを突き出された。やんわり断った。

「まあついてきな、歩きながら話そう」

 つまらなさそうな顔をされたが、ボスの隣に並んで歩きだした。

「あれからずっとそんな感じなんですか?」
「まあね。あんたがぐっすり眠ってる間に一体何人殺したもんかね? 捕まえたやつに仲間の居場所をぼろぼろ吐く馬鹿がいるもんだからはかどってるよ」
「馬鹿ですね、そいつ。まだ生かしてるんですか?」

 話しながら歩いていると、やがて小さなガレージに連れてこられた。
 確か尋問に使う場所だ、懐かしい。扉の前ではサンディが眠そうに突っ立っている。

「どうもあんたとアルゴ神父のことを覚えてるお知り合い・・・・・のようでね。前に教会で見逃してもらったそうなんだが」

 ……どうしてボスが俺を待っていたのか分かった気がする。
 扉の前に立つとサンディが何かを手渡してきた。

「……これ、借りてた」

 キャラバンから買った銃剣だ。重たいそれを、俺は無意識に握っていた。
 脳にぴりりと思い出がよみがえる。焼ける教会、倒れる人影、そしてあの言葉。

「……そいつはまだ生きてますか?」
「ああ、生きてるよ。そろそろぶっ殺そうかと思ってたんだが――」
「じゃあ話は早い。尋問させてください」
「何を聞くつもりだい」
「返答次第でアルゴ神父の仇になるだけです」
「……中にいるよ。いってきな」

 ドアを開けてもらった。
 ボスとサンディに見送られながら中に入った。

「あ? 残念だがもうネタ切れだ、これ以上お願いされてもなんにも出てきや――」

 ガレージの中には一人の男が椅子に腰かけていた。
 聞き覚えのある声だ、その軽薄そうな口元にマスクを着けてやればあの時そっくりの姿になるだろう。

「……お、おい、お前」

 リラックスしていたそいつは目が合うと明らかに動揺した。
 感動の再開だ。怯えてすくんでいて立ち上がろうとしている。
 間違いない、あの時アルゴ神父が逃がしたやつだ。

「あ、あの時の……ボルターの怪か?」

 運よく生き延びたそいつは上目遣いでこっちを見てきた。

「お前の名前は知らないけど……まあなんだ、俺のこと覚えてるよな?」

 俺はちょうどよくいてくれた男に質問することにした。

「おっ、覚えてるとも! あの時逃がしてくれたよな? 元気だったか?」
「脳が欠けたけど元気だ。おかげでだいぶイカれた」
「……そりゃ気の毒だ。でも良かったな、お前が憎んでる連中は全員死んだぜ」
「お前が最後の生き残りじゃないのか?」
「俺はその、仕方がなくやってたんだよ。だからこうしてあんたらにあいつらの居場所を教えてたわけだろ? もうおたくらの敵じゃねえよ、お前の良い友人さ」
「なるほど、ずいぶん詳しいんだな。おかげでうちらも助かってるわけだ」
「一応これでもシェルター侵攻作戦の時から生き残ってる最古参だしな? ははっ」

 このご都合主義の塊みたいなやつはどうやら裏切り者みたいだ。
 さてどう聞くかと思ってると、向こうは上目遣いのまま助けを求めてきた。

「……なあ、助けてくれ。なんとなく分かるんだ、吐くだけ吐いたのにこのざまだ。てことはこのままだと殺されちまうよな? でもお前が連れてこられたってことはその」

 どうもこいつはまた生き延びるチャンスがあると思ってるみたいだ。
 準備万端の相手にさっそく、最後の質問をすることにした。

「これからお前に質問する、返答次第でお前を見逃す。いいな?」
「わ……分かったから、そんな怖い顔すんなよ? お前のためになんでも答えるさ。なっ?」
「ああ、返答次第・・・・でな」

 あの時から変わっていない相手を、俺はのぞき込む。

「じゃあ良く考えて答えろ。あの神父が最後に言っていたセリフはなんだ?」

 今の自分の顔はきっと殺意むき出しだろう。
 そんな俺を見て焦っているのか、相手は顔をぎゅっとひきつらせた。
 男は何かを言おうとしてぱくぱく口が動いて空回りさせながら、

「おっ……お前さんの旅路の果てに、勝利があらんことを……?」

 あの時見逃されたこの男は、間違いなく最期の言葉を口にした。
 正解だ、確かにその通りだ。

「な、なんだ? 違ったか――」

 相手の肩を掴んで銃剣を抜く、同時に脇腹に重い刃先をねじ込んだ。
 ずぶりと皮膚の張りと肉の固さと、柔らかいものを貫く感触がした。
 「おぉ……!」とうめく相手を椅子ごと押し倒して、ざっくりねじった。

「て、め、おっ……!?」
「戦う気がなければ去れ、と、二度と我々に手を出すな、だ。二度と間違えるなよ」

 銃剣を抜いて立ち上がった。
 びくびく痙攣して苦しむ姿が見えた、ほっといてもあの世にいけるはずだ。
 まあこいつは天国じゃなく地獄に落ちるだろうが。

「すみません、ボス。くたばりました」

 一仕事終えた俺は外で待ってくれていたボスに声をかけた。
 彼女はかすれた断末魔の聞こえるガレージを見て、ふんと鼻を鳴らした。

「答えは聞けたかい?」
「納得のゆく答えが出ました。アルゴ神父の仇も」
「そうかい」

 これで残党はいなくなったようだ。

「……明日、教会へ行く。墓を作ってくる」
「だったら俺もお供させてください」
「当たり前さ、ストレンジャー。頭の方はもう大丈夫だね?」
「風通しが良くなったのでよく冴えてます」

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