魔法の姫と世紀末世界のストレンジャー

ウィル・テネブリス

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世紀末世界のストレンジャー

首無しメイドのマッサージ

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 おいしい肉で元気になって、とんでもない一日を経て、それなのに『まだやれる』と口から出かけたのは認める。
 だが、それは部屋に帰ってベッドに横たわるまでの話だ。
 荷物を置いて着替えて、うつ伏せに倒れてようやく疲労が追いついてきたようで。 

『大丈夫? いつにもなくぐったりしてるけど……?』
「具合悪い……」
『……クリューサさん、呼ぼっか?』
「いや、大丈夫……なんか、ものすごく疲れた……」

 枕に顔を埋めた途端に指先から内臓に至るまで、疲れがまとわりついてきた。
 こんな状態は自分でも初めてだと思う。
 脳が「もういい休め」とお願いしたら、「まだいけます」と待ち構えていた身体がじわじわと力を失うような感じだ。
 外の暗さが長い一日の終わりを教えてくれてはいるが、腹の中が強張ったような重い疲労感のせいで食欲も出ない。

『どうしたんだろう……? も、もしかして傷が開いたとか……かな?』
「そんな感じじゃない。うまく説明できないけど、こんな疲れ方は初めてだ」

 枕元の心配そうな短剣を指で突いた。まだ手が動かせるなら死にはしないだろう。
 「ワゥン」と心配そうな犬の鳴き声が耳に触れてくる、横を向くとニクが心配そうに見上げてた。

『えっと……、今どんな状態なのか、教えてくれる?』

 黒いジャーマンシェパードの耳をぺこぺこ弄ってると、ミコに尋ねられた。
 どんなと言われても。手足が棒のよう、身体がっちがちとしか言いようがない。

「状態? すごく疲れた、以上終わり」
『そうじゃなくて……どこか痛いとか、動かないとか、おかしいところはないかな?』

 なるほど、『疲れた』以外の言葉を求めるなら、幾つかあるな。
 ミコの言う通りに感覚を働かせてみると――まず変な痛みはない、傷が痛むとかはなしだ。頭に違和感もなければ、どこか不自由なわけでもない。
 何か当てはまるようなものが経験上ないかと必死に探るが、出てきたのは。

「特に痛まないし身体は動きそうだ。そうだな、言葉で言い表せって言われたら」
『……言われたら?』
「エナジードリンクいっぱい飲んではしゃいだあとに効果切れてどっと疲れた感じ……」
『……それって疲れてるだけだよね?』

 これこそ適切な表現だは言わないが、一番近いのはまさにこれだと思う。
 前にカフェイン量がとんでもないエナジードリンクを飲んで、タカアキの奴と連休をゲームに費やした時があった。
 効果はてきめんだったんだろうな、元気を前借りした代償を体調不良で寝込むことで支払ったわけだし。

「まさか【PERK】のせいか……?」

 そんな考えを経て、やがて嫌な答えを見つけてしまったかもしれない。
 【ヨトゥン・パワー!】というPERKの効果だ。確かにあれで傷も治ったし元気になったが、飯食っただけで何のデメリットもなく恩恵を得られると思うか?
 エナジードリンクと同じで『前借り』してたら? 良い効果の分、その分の疲労が圧し掛かってくるとしたら――

『いちクンが覚えたパッシブスキルのこと?』
「ああ、もしかしたら回復が早くなる分、何か支払わないといけないのかもしれない。そうじゃなきゃこんな不自然な疲れに説明がつかないぞ」
『……わたしも、デメリットなしで回復するなんておかしいって思ってたよ』
「反動がこの疲れだけだといいんだけどな」

 ミコと考えが一致したってことは間違いないかもしれない。
 ともかくこの異様な疲労の原因がそれだと結び付けられたら、できることは一つだ。
 寝る。人間眠れば大体のことはすっきりする。しかし最悪なことに、それすらできそうにない。

「……それともう一つ。疲れてるのに眠れない、身体がまだ変に緊張してる」
『眠れないの? どんな風に眠れないのか教えてくれる?』
「どう説明すれば……そうだな、眠ろうと思って目を閉じると、なんかこう……ざわざわするんだ」
『ざわざわ?』
「ああ、頭がすごく疲れてるのに、まだ身体が動こうとしてるっていえばいいんだろうか。気持ちが落ち着かない」
『不眠症みたいな症状だね……。何か気になることとかはある?』
「分からない。でも今は……なんだか眠れないのが一番心配なんだ。このまま朝になるまでこうなんじゃないかとか」

 ようやく自分でも状態が把握できるようになった、変な興奮があった。
 明日はどう動くか、どう戦うか、さっきまではそんな考えがいっぱいだったはずなのに、今は「そのために早く寝ないと」と焦ってるようだ。
 休まなきゃいけないのは分かってるのに、脳みそは外から銃声が聞こえてこないか、敵は来ないかと頑張ってる。
 ……そこまで分かったところでどうしようもない、というのがオチだが

『……とりあえず、目を閉じて?』

 うつ伏せのまま部屋の外のことを考えてると、ミコにそう言われた。
 言われるがままに目を瞑った。不思議なことにさっきよりは少しマシになった。

「ああ」
『大丈夫、心が疲れてるだけだよ。ここなら安全だから、みんなに任せて今は休もう?』

 本当に不思議な奴だ、思ってた事でも見透かされてるんだろうか。
 そうだったな、俺のことをよく見てくれる相棒だった。誰よりも分かってくれてるんだろうか。

「……そうだな。一人でどうにかするんじゃなかった」
『ふふっ、物分かりがよろしいっ。ずっと頑張ってたもんね?』
「……みんな頑張ってるからな、はしゃぎすぎたよ」
『……無理しちゃだめだよ? おばあちゃんも心配してたんだから』
「ボスもすごいよな、いつも的を得てて……ほんと、敵わない」

 少し考えが変わっただけで、だいぶ気が楽になってきた。
 体の力が抜けていく、手にふさふさとした犬の感触が伝わる、ようやく眠れそうだ――

*がちゃっ*

 そう思ってた矢先に一体どうしてドアが開く音が挟まってくるんだ。

「イチ様~、ミコ様~、暇っす~」

 ちくしょう、またお前かロアベア! 台無しにしやがって!
 せっかく寝落ちしかけたところに、ニヤけ顔が思い浮かぶ声が挟まって台無しになった。
 実際そのまんまだ、緑髪のメイドがいつもの微笑んだような顔で覗き込んできた。

「んもー……ほんと空気読まないこのメイド……」
『……ロアベアさん? タイミング考えようね?』
「パジャマパーティーしにきたっす!」
「せめてパジャマ着てから来いよ……」

 あらん限りの力で蔑む顔を作ってやったが、肝心のロアベアは平常運転だ。
 そのまま「クゥン」と困り顔で見上げるニクの顔をわしゃわしゃし始めて。

「なんか聞き耳立ててたら疲れたとか聞こえたんで癒しにきたっす」
「よし、さっそく仕事だロアベア。さっさとアイルランドに帰れ」
「そんな~」 

 このままだととどめを刺されそうなので帰宅命令を出した。
 言葉を聞き入れてくれたメイド姿は渋々自分の首を取り外して。

「じゃあ帰るっす。今までお世話になったっす」

 ……喋る生首を枕のそばに置いて出ていこうとした。
 本体? 手を振って帰ろうとしてるところだ。

「置き土産しなくていいから! お前……人の枕元になんてモン置いてるんだ!?」
『待って!? 頭だけ残そうとしないで!?』
「寂しいと思うんでここに置いてくっす」
「……分かった、分かったから安静にさせてくれ。それならいいから」
「よっしゃ~」

 人が疲労で動けないのをいいことに何やらかすのか心配なので、けっきょく側にいさせることにした。
 そして出来上がった構図がこうだ。

「いや~、今日は大変だったっすねえ。アヒヒヒ……♡」

 ベッドの上につやつやな緑髪を広げる生首が立っていて。

『……あの、ロアベアさん? 首、戻してもらっていいかな……!?』

 ミコの言う先では、椅子に座った胴体がこっちを向いているというありさまだ。
 確かにこの馬鹿メイドはかわいいさ、愛嬌があるのも認める。
 でも考えてみてくれ、ベッドのそばで首無しボディが行儀よく座ってこっちを見ていて、しかも生首が自分の側でこっちを見てるんだぞ。
 休まるかって? 休めねえよバカ野郎。ホラー映画だこんなん。

「首付けてると肩こるんすよねえ、いひひひ……」
「お前が来てくれたおかげで助かったよ、寝なずに頑張れそうだ本当ありがとう」
「お疲れなんすか~?」
「見て分からないのか? お前が肩凝ってようが知ったことか、こっちは全身凝り固まってんだよこの馬鹿メイドが」

 誰か俺の部屋に向かうこいつを止めようとしてくれなかったんだろうか。
 いや、あんな面子なんだ。面白がって行かせた奴が混じっててもおかしくない。なんだったら大多数が見逃した可能性もある。
 ……他人をアテにするのはもうよそう、これも人生の一つと思って受け入れるしかない。

「……なるほどっす~、じゃあうちがマッサージしてあげるっす」

 大人しくしろと釘をさすべきだったと思う。
 ロアベアのメイド姿がすっと立ち上がった、肝心の生首は純真無垢な笑顔を浮かべたままに。
 その様子を好ましくないと思ったのは、首のない身体が靴を脱いでせっせとベッドに乗り上げてるからだ。
 ……いや、靴どころか服も脱いでる。また全裸だ。

『って何しようとしてるの本当に!? いちクンほんとに疲れてるからね!? 変なことしちゃだめだよ!?』
「疲れを癒すのもメイドの仕事だって先輩がなんかこう言ってたっす!」
「お前の先輩はもうちょっと中身も充実させた説明もするべきだったな……」
『っていうか服も脱がなくていいよね、それ!?』
「いやあ脱いだ方がやりやすいんで~」
「もう好きにしてくれ……」

 怨み募らせたライヒランドの連中だとかじゃなくて、こいつにとどめを刺されるのか。
 人がうつぶせ寝の形でぐったりしてるところを、一体どうしてかロアベアがまたいでいく。
 本当に文字通り『マッサージ』でもするのかと思って、観念して受け入れた。
 それなのに――

「では失礼するっす~……えいっ」

 下半身、それも尻の下あたりにぐぐっ……!と重みがやってきた。
 手で押すようなものじゃない、もっと広くて重みのあるもので踏まれたような。
 それでも不思議と痛かったりだとか、不快だったりすることはない。
 むしろちょうど良いぐらいだった。筋肉に効くような重みが圧し掛かってきて。

『踏んでる……』

 ……なんつったこいつ。
 ミコの言葉につられて頭を動かすと、そこには……なんてこった。
 首のないロアベアの身体が、人の身体を足踏みしていた。
 前に出した足でぐりぐりと下半身を踏みつけている、第三者から見れば踏みにじってるように見えるかもしれない。

「……マッサージと人の尊厳を傷つける行為の区別もできないのか、あっちの世界のメイドは」
「お~……凝ってるっすね~♡ まあまあうちに任せてくださいっす」

 もう好きにしろ、と投げかけてやろうと思ったものの――

 ぐりっ。
 いろいろな重さを探るようにかけてきた足裏が、太もも裏の筋肉をいい感じに潰してきた。
 本当にいい感じだ。信じられないと思うが、鈍い気持ちよさがあった。

「ん゛っ……」

 ずっと歩き続けて引き締まった足がほぐれるような、じんわりとした痺れが走る。
 思わず変な声が喉から洩れるぐらいには。

「アヒヒー。ガチガチっすねえ。大丈夫っす、うちがなんとかしてあげるっすよ」

 そばでの生首がニヤニヤすると、また足裏が踏みつけてくる。
 太ももの表面がぐぐぐっと踏まれ――いや、押し揉まれていく。
 意外と柔らかい足が沈み込んでいって、変な緊張を覚えたままの筋に痛気持ちいい感覚がずっしり走った。
 不思議なもので、張ったままの筋肉が解けていく気持ちよさがある。

『……だ、大丈夫? 痛かったりする……?』

 一体どう見えてるのかは分からないが、枕元の短剣は心配そうだ。
 だけどまあ……悪くはない、むしろ今の身体に当てはまってる気がする。
 そう、つまり……普通に気持ちがいい。
 どう口で伝えればいいか迷ってると、

 ぐりっ。

 もう片方の太ももに同じような重さが乗っかって、下半身に貫くような気持ちよさが走る。
 たまらず「んぉっ……」と変な声が漏れた。
 横目で見る限りは、首無しメイドが人の身体の上でうまくバランスを取っていて。

「あひひ……♪ 気持ちよかったっすか? いち様どんだけ凝ってるんすかこれ……♡」

 いつもの身軽さで尻の下あたりの筋肉をゆっくりと踏んできた。
 長時間椅子に座っていると凝っていくようなところだ。
 そこに、重いようにも感じる加減で凝ってる部分をなぞってくる。
 ほんのりとした痛さこそあれど、じわじわと広がる気持ちのいい痛みが広がっていく……。

「……気持ちいいかも」

 強がろうと思ったが、嘘はつけなかった。
 その返答は満足のゆくものだったに違いない、目の前の生首はにっこりして。

「でしょ~? うちこういうの得意なんすよ、あひひひっ♡」

 ぐぐぐっ。
 太ももの裏側からふくらはぎのあたりまで、ゆっくり歩きだす。
 足場になった身体は当然歩くたびにその重みが加わるわけで、しかも意外と柔らかくて暖かいロアベアの足はまさにちょうど良かった。
 歩くたびに気持ちがいい、そうともいえる絶妙なもので。

「……もっと解してあげるっす、楽にしてほしいっす。あひひ♡」

 ふくらはぎの裏側、一番筋肉が乗ったあたりにかかとが沈み込む。
 休むことなく歩き続けてぱんぱんだったそこに一際強く体重が乗せられて、刺さるような痛みが走る。

「いっ……!?」

 いきなり重みが苦痛に変わるような感覚に驚くも、すぐに加減が効いた。
 足の裏が均等に重みを乗せてきて、足裏全体に最初の痛みとは違う、あのじんわりとした痺れが広がった。
 これが筋肉がほぐれるっていうやつなんだろうか? 張り詰めた繊維が一つ一つ震えてほぐれていくような、変な脱力感がする。
 あれだけ全身にあった硬い疲れが抜けてきて、ふう、とため息をついてしまうほどには。

「あひひひ♡ 気持ちよさそうっすねえ♡ ついでに足の裏もやっとくっす♡」

 うつ伏せのままマッサージを受け入れていると、ロアベアの足が下がっていく。
 ふくらはぎを揉み踏みながら進んだ先はちょうど両足の裏だ。
 度重なる移動で石みたいに硬くなった土踏まずのあたりに、あの柔らかい足が重なるのを感じて。

「……足の裏って……っ!?」

 ぐぐぐっ、と踏まれた。
 それもいきなり力を加える感じじゃない、足の重みをじわじわ伝えるように、じっくりとだ。
 あの身軽さを生かして、まるで踏み慣らすようにちょうどいい具合を探り。

「足もこんなに凝ってるっすね~。足の疲れは全身の疲れっすよ、たっぷり解しておくっす、あひひひ♡」

 程よく体重と力を乗せられて、足踏みを始めた。
 自分の足が踏みにじられるとはまさにこのことだが、かなり気持ちがいい。
 疲れたら思わず指で解したくなるような場所にロアベアの足が食い込み、持ち上げられ、また食い込み――くすぐったいような、痛いような、あの刺激が染みわたる。

「んおおおおっ……」
『……き、気持ちよさそうだね……?』

 変な声が出てしまったが、気を使ってる余裕がない。
 何回かそうやって足踏みが繰り返されると、下半身のあちこちで行き場を失っていた血が流れていくような、そんな感覚がした。
 あれだけ苦しんでた変な疲れもどこかに押し流されてしまったのかもしれない。
 血の巡りが良くなるというのはこのことなんだろうな。ようやく身体から力が抜けていく、といえばいいのか。

「まだまだっすよイチ様ー♡ 今度はこっちも……っと」

 これだけでも十分に満足できたが、鼻先にあるメイドの顔は楽しそうに笑っていた。
 うつ伏せの身体の上でまた身体が動く。今までたどった筋肉を一つ一つ丁重に踏み潰しつつ、今度は――

 ごりっ。

 一番違和感を感じていた背中、それもそのど真ん中に両足の重みがやってくる。
 背骨の左右にこびりついた凝りを踏みつぶすような一撃に、「んお゛っ」とか変な声が漏れてしまった。

「お~? やっぱここが一番効くっすか? 任せてくださいっす♡」

 ……そんなにやにや顔に頷くことしかできないのが悔しい。
 承諾してくれたメイドの身体がまた動く。少し心配になって振り返れば、背中を踏んづけたままうまくバランスを取ろうとしているところで。

「確かここがなんかのツボなんすよね、えいっ♡」

 だいぶふわふわなことを言いながらも、人の背でステップをしていた両足が背中のどこかを踏んづけた。
 ごり゛っと鈍い感触が肩甲骨のあたり、それも背骨に沿うようにねじり込まれて……とてつもない気持ちよさが走った。
 どうしようもないほどに硬く凝り固まっていたところが叩き潰されて、痛くて気持ちいいを煮詰めたようなものが全身に広がる。

「……ふうっ……」

 どうにか変な声は出さまいと我慢していたが、相変わらずロアベアはにやにやしている。
 枕横の短剣も黙ってるというか、見入ってる。
 気まずくて目をそらすとまた重みがやってきて、背骨を道しるべに腰の方へと降りて行って……。

「イチ様~、深呼吸してくださいっす」
「……深呼吸?」
「そうっす。はい力抜いて~」

 そこにいきなりお願いをされて、まあいいや、とその通りにするわけだが。

*ぼきぼきっ*

「ふがっ」

 ……息を整えた直後、背中にえらく不吉な音が鳴った。
 骨がごりごりとすり動かされるような変な感触もした。しかしどうしてか痛くはないし、むしろ気持ちよさすらある。
 背骨に沿って全身に向かっていくような振動と衝撃、そしてなぜかは分からないが変に爽快感のある――ダメだ、癖になる。

『……今の音、大丈夫なの……!? ぼきぼきって言ったよ!? ねえ!?』
「お~、本当に鳴るんすねえ。一度やってみたかったんすよね、あひひひ♡」
「……おい待て、お前一体なに」

 いきなりされたことに放心しかけながらも、振り向いたものの。
 やっぱり自分はタイミングが悪いと思った、ちょうどロアベアの足が持ち上がるところで――

*ゴキゴキッ*

「ぐはっ!?」

 また肩甲骨の方へと戻ってきた足先で、骨と筋肉の中間を踏み抜かれてまた鳴った。
 しかもさっきより気持ちがいい、強張った筋肉が解けて、痛みが消えていくのを感じる。

「……これ楽しいっす!」
『ほんとに何したの!? すごくぼきぼきいったよね!? 大丈夫なの!?』
「……目覚めそう……」

 そんなエグいことしてるのに、この駄目なメイドは楽しそうに目を輝かせているわけだが。
 そしてまた背中がふみふみされていく、しかも凝り固まった部分だけを的確に踏んでいくのだから文句のつけようがない。
 もう認めてしまった方がいいかもしれない、こいつはマッサージが上手だ――

*Knock Knock*

 そう割り切って足圧マッサージを受けていると、急にドアが叩かれた。
 ごつごつとした指でするような低い音だ、ノルベルトじゃなさそうだが。

「……どーぞ」

 まあいいか、ロアベアに「続けてくれ」と目線を送りながら招き入れると。

「……イチ、己れだ。失礼するぞ」
「……こんばんは、お邪魔、します……」

 ドアが開いて、そんな声が入ってきた。
 世紀末の忍者とばかりにあしらわれた黒一色の衣装を着た男と、相変わらず肌の露出が激しくて胸のデカいお姉ちゃんだ。
 もちろんそれはニクも覚えてるようだ。尻尾を振りながら近づくものの。

「あ、どうもっす~」

 静かに入ってきた二人の目の前には、ちょうど首を失ったメイドが野郎一人を踏みにじってる構図があると思うんだ。
 神妙な様子で入ってきた暫定アレクとサンディには、果たしてそれは正常に見えるだろうか。
 ……一つ忘れてた、こいつ全裸だった!

「……すまん、出直す」

 どうであれ退散させるには十分だったみたいだ。
 おそらくアレクはマスク越しに気まずいものを浮かべながら戻ってしまった。

「ごめんアレク! いやまってくれ違うんだ!」
「……そういう、プレイ?」
「ちゃんとブリムもニーソもつけてるっすよ」
『……なんでいちクンっていつもタイミング悪いんだろう……』

 サンディも「ごめんね」とてくてく出て行ってしまった。
 こうして残されたのは背中を踏まれるド変態とメイドだけだ、畜生!

「……どうしてくれるんだお前……」
「イチ様が女性の裸に反応しないのが悪いんすよ、あひひひ……♡」
『ロアベアさんが脱がなかったら大丈夫だったと思うよ……』

 成ってしまったものはしょうがない。後日誤解を解くとして、今はとりあえず休もう。
 けっきょく眠りこけてしまうまで、じっくりと踏まれるのだった…。

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