私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍

文字の大きさ
257 / 378

254話 炎蜥蜴を捕獲したのでございます!

しおりを挟む
 あの棍はやはり魔王軍幹部特有のアーティファクトね。炎天如と言われたそれは名前を叫ばれた瞬間から真っ赤に燃え盛っているのに、イフリートサラマンドラから半魔半人のジンになった彼の腕は全く燃えていない。


「ははははははは! 我が炎天如は全てを破壊し燃やし尽くす!」
「そうか。どれ、その効果を見てみようかの。クロ」
【リスドゴドラム!】


 クロさんは水晶の槍をジンに向かって飛ばし始めた。しかしジンはそれらを振り回すだけで全てのかし、また、棍に触れた水晶は岩であるにもかかわらず接触箇所が溶けていた。


「ほぉ、なかなかの熱量じゃの」
「ははははは! そうだ。これは我が最大火力の魔法を何発も保存しておいたもの! 我のことをよく知っていたな老人。これがどう意味か……はははははは! わかるだろう!」


 未だ飛んでくる水晶を弾き溶かしながらおじいさんとクロさんに向かって突撃してきた。でも二人は悠長に構えている。


「はははは! 焼き切れて死ねぇい! ……ぐふぉ!?」


 おじいさんまであと1mあるかないかまでジンが近づいてきたその時、地面からジンの鳩尾にめがけて水晶でできたげんこつが飛んできた。見事なクリーンヒット。


「うぐ………」
「そんな物騒なものは手放すんじゃ」
「あっ」


 さらに地面から別の水晶でできた手が生えてきて、一瞬悶えて隙ができたジンから棍をもぎ取った。


「くそ……ぬ!」
「これで一件落着じゃな」


 気がつけば次から次へと地面から水晶でできた手が生えてきて、ジンの身体をおさえつけてゆく。あっという間に拘束が完成してしまった。


「は、ははは! くそが!」
「さて、これから色々訊くとしようかの」
「………」


 すごいわおじいさん。こんなにアッサリと魔王軍幹部を無力化させた人を初めて見た。お父さんもお母さんもある程度は手を焼いたり私たちのサポートが必要だったりしたのに。
 これでもう警戒する必要はないだろうし、私とロモンちゃんは魔人融体を解くことにした。


「不愉快だ! 実に不愉快だ! はははは、この我がこんな簡単になんども……!」
「いくら魔王軍の幹部で半魔半人化してると言っても、基本の基本はトカゲの魔物じゃ。ワシは全ての魔物の基本形を熟知しておる。なんならもう一戦やってみるか? 結果は同じじゃぞ」
「っ……!」


 ジンの歯ぎしりが聞こえてくる。おじいさんを睨んでいるけれど、すごんだってなんの意味もないことくらい本人はわかっていると思う。


「しかたな……ぬぐ!」
「無駄じゃよ」
「あれ、今あいつ何しようとしたの? 一瞬光ったように見えたけど……」
【多分、おじいちゃんが魔物化するのを無理やり止めたんだよ】
「なるほど」


 よく見たらおじいさんの水晶の手による拘束は鳩尾部分だけがガラ空きで、そこに狙いを済ませたように地面からもう一本水晶が待ち構えていた。今のはこれで殴ったのね。


「ちなみに、いつ衝撃を与えれば行動をやめさせられるかも完璧にわかっておるつもりじゃよ。魔物化して一旦拘束を解こうなぞ無理だと思うことじゃな」
「くそが! ならば殺せ! 殺すがいい!」
「違うんじゃよ。コッチはお前さんから話を聞きたいんじゃ」
「死んでも話すものか!」
「はぁ……仕方ない」


 ま、まさかあの優しいおじいさんが尋問、拷問をするのかしら……!? ちょっとイメージできないし、あまり見たくない。


「はははは! 絶対に口は割らないからな」
「別に何も、お前さんが話さなくても良いわい」
「ははは? それはどういう……」
「クロ、あれをやる。ありったけの魔力を貸してくれ」
【あれか。すごく久しぶりだなー】


 あれってなんだろう。とてつもなく嫌な予感というか、とんでもないことを披露してくれそうな予感がする。とりあえず痛いことをするわけではなさそう。


「おじいちゃん何を見せてくれるのかな?」
「わくわくだね!」
【野生の勘が言ってるゾ。すごいけどあまり良いものじゃない気がするんだゾ】
「えっ、やっぱりそうなのかなぁ」
【クロから言わせてもらうと、そこそこヤバイ技だぞ】


 ケルくんもクロさんもそう言ってる。やっぱり痛いことなのかしら?
 おじいさんはジンの目の前まで来ると、立ち膝をして、ある程度押さえつけられてる彼に目線を合わせた。ジンの額に手を置く。
 しばらくそうしていると、なにかを思い出したように私の方を振り向いた。


「そういえばアイリスちゃんも魔力が膨大だったな?」
【え、ええ、まあ】
「ならばワシに魔力を送ってくれんか。クロの手を握ってるだけでいい」
「わかりました」


 言われた通りにクロさんに近づき、彼の手を握る。今の私に感覚はないけど皮膚が硬そうなのはわかる。
 

【基本的な魔力吸収特技だからたくさん吸い取れるわけじゃない。安心して】
【わかりました】
【ところでアイリスといったな? 君はかなり特殊な存在みたいだ】
【それはよく言われます】
【そっか。あ、吸い取り始めるよ】


 クロさんの手から私のMPが吸い取られて行く。事前に宣告された通り大した量ではない。お役に立てるのかしら。それよりおじさんが何をするかの方が気になるんだけど……。


「じゃあ、始めるかの」
「なにをする気だ!」
「なに、お前さんの記憶を覗くだけじゃよ」
「は……? はっははは、どうやってそんなことを……」


 なんと魔人融体と同じ反応をおじいさんはジンに向けて行い始めた。ジンは愕然とした表情で体をうねらせ、叫び始める。


「やめ、やめろぉぉおぉ!? なぜだ、なぜ入ってこれる!? 貴様と我は契約などしていない! それどころか、今の我は人間だぞ!? や、な……やめ……うがあああああああああああ!」


◆◆◆


【お、安定してきた】


 クロさんがそう呟いた。おじいさんは普通に魔人融体してる魔物使いと同じように身体を眠らせており、ジンは中に入られただとかなんとかで目を白くさせ、ピクピクと体を震わせながら半ば気絶したようになっている。


【あ、あの……】
【ジーゼフの愛孫。なんだい?】
【おじいちゃんは何をしたの?】
【色々複雑なんだけど、簡単に言えば魔人融体の応用の応用だな。最初にあいつのステータスを見たのも応用だ】


 ロモンちゃんの問いに、クロさんは優しく答えてくれていた。魔人融体の応用の応用……ねぇ。たしかに魔人融体をしてるのにその場で立って話せてたり、色々とできそうだものね、おじいさんは。


【ありがとう。おじいちゃん、すごいなぁ……】
【そうだな。ジーゼフは伝説的な存在と言っても過言じゃないとクロも思ってる。常人じゃ真似できないような代物だ。あ、本人には言わないで、照れ恥ずかしい】
【うん、わかった】
【でも孫だし、君ならできるかもな】


 そうか、色々できそうなのはいいけど、どう考えても記憶やステータスを覗けるのは強すぎる。だから国から力を使うのを全面禁止されてたのかしらね。
 ロモンちゃんには期待したいな。おじいさんみたいなこと、できるようになるかしら?


「ぬ、ぬぐうおおおおおおお……」
「な、なに!?」
【お、終わったみたいだ。ちょっと長かった……知りたいこと以外のことも色々覗いてきたのかも】 
「お……おお……うっ……」


 ジンは完全に気絶した。その瞬間、おじいさんが真顔のまま背筋を伸ばしてシャンと立ち上がる。膝や埃を払ってから私たちに近づいてきた。


「少し長くかかったわい」
【なにか別のことも見てたんじゃないの?】
「まあ、その通りなんじゃが」
「記憶覗いたんでしょ? どうだった?」
「ほっほっほっ……といったかんじじゃな」
「「そ、そんなのじゃわかんないよー!」」


 おじいさんはただ笑っている。
 笑ってるけど……なにか、重大なことがわかったため、それをごまかすために笑ってる気がするな。


#####

次の投稿は9/17です!
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

神様 なかなか転生が成功しないのですが大丈夫ですか

佐藤醤油
ファンタジー
 主人公を神様が転生させたが上手くいかない。  最初は生まれる前に死亡。次は生まれた直後に親に捨てられ死亡。ネズミにかじられ死亡。毒キノコを食べて死亡。何度も何度も転生を繰り返すのだが成功しない。 「神様、もう少し暮らしぶりの良いところに転生できないのですか」  そうして転生を続け、ようやく王家に生まれる事ができた。  さあ、この転生は成功するのか?  注:ギャグ小説ではありません。 最後まで投稿して公開設定もしたので、完結にしたら公開前に完結になった。 なんで?  坊、投稿サイトは公開まで完結にならないのに。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

処理中です...