私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍

文字の大きさ
31 / 378

31話 前世の記憶でしょうか…?

しおりを挟む


〈婆や! 婆や! 見てみて! こんな綺麗な小石を拾ったの!〉

〈婆や、すご~い! あんな大きい男の人倒しちゃった! なんでそんなに強いの?〉

〈婆や! 私、勉強したくない。えー? しなきゃダメ……私のため? むぅ…わかったぁ…〉

〈婆や、生まれ変わったらなにになりたいの? え? イケメンか美少女になって玉の輿?〉

〈キャーッ! 婆や、お風呂に入ってこないでよぉ… え? なんで鼻血出してるの? のぼせた?〉

〈婆や……婆や……〉

……………
………
……



 私は自分の頬を伝う、水の流れを感じて目が覚めた。
 どうやら私の緑色の、機械のような眼から涙が流れてきたようだ。
 なんで涙なんて出たんだろう。

 今のは夢だよね?

 さっき、夢の中では私は"婆や"って、ツインテールの女の子から呼ばれてた。
 でも、その子の顔は思い出せない。
 勿論、私の顔も思い出せない。

 おそらく、今のは前世の記憶というやつだろうね。
 夢に出てきた少女のことを思うと、なんだか無性に懐かしくなるから。

 今の夢、私の記憶、それがたしかならば……私の前世の職業は……誰かの使用人や世話人、メイドといった類の仕事だったみたいだね。

 通りで、他人と喋る時にどうしても敬語が抜けないわけだわ。
 

 今は朝の5時。
 少し早く起きちゃったかもしれない。

 今日はロモンちゃんとリンネちゃんの誕生日だ。
 前世はツインテールの少女に仕えていたみたいだけど、今、仕えるべき私の相手はその二人。
 たくさん、たくさん祝ってあげよう。
 
 でも、やっぱり早く起きすぎた。
 暇だ。

 ……そうだ、どうせ私の前世は使用人やらメイドやらっぽいんだし、それらしく掃除でもしてみるかな?
 
 私は掃除用具を取り出し、自分でも驚くほどのスピードど丁寧さでリビングと廊下をピッカピカにした。その間たったの30分。

 ……この手際、やはり私は前世、そういう職業だったことは本当に間違いなさそうだね。
 それに楽しかったし。


【行動ボーナス! 器用と素早が上がりやすくなった!】


 こんなことでも上がるんだ…。
 掃除用具を片付けている最中、廊下の方から誰かがこちらに向かってくるのがわかった。


「おぉ、アイリスちゃん。もう起きていたのかね」
【あ! おはようございます。ウォルクさん】


 ウォルクおじいさんだったね。
 どうして老人ってば、こうも早起きなんだろうか?


「ありゃあ? リビングが……驚くほど綺麗になっとるのぉ…。これ、全部アイリスちゃんが?」


 おじいさんはリビングをトコトコと、背筋を伸ばして歩きながら、部屋の隅々をみている。


【はい、そうなんです】
「ほう…またなんで?」


 そうだ、今朝に見た記憶の話をしよう。
 そうすれば、今後からご飯を作らせてもらったり、掃除・洗濯をさせてもらったりできるかもしれない。


【私が、人間の前世の記憶がある話は…昨日聞いてましたっけ? ウォルクさん】
「ん……あぁ、言っておったの、そういえば」

 
 そうなんだ、てっきりその場にいなかったから聞いてないのかと思った。
 まぁ、それならば話は早いよね。


【実は今日見た夢で____】


 私は、前世の職業が誰かの使用人だったかもしれないことをおじいさんに話した。
 ついでに、今後、家事をやらせて貰えないか訊いてみる。


【というわけで、今後、家事を任せてもらえないでしょうか?】
「ふむ……まぁお願いされなくとも、家事はやって欲しいからの。そういうことなら頼むわい」
【ありがとうございます】


 やった!
 やっぱり、お掃除していて思ったんだけど、私は家事をしていると物凄く楽しいから、すんなりOKしてもらえて助かった。

 まさか前世の私も、来世でも掃除をしているなんて思わなかっただろうね。


「どれ、紅茶でも一杯」


 そう言って、おじいさんはさっきまで腰掛けてた椅子を立とうとした時である。
 紅茶の美味しい淹れ方の感覚が、かってにスルスルと私の頭の中に入り込んできた。
 否、入り込んできたというより、浮かんできたと言うべきかな?

 
【あ、紅茶、私が淹れますよ!】
「おや、そうかい? あぁ、確かにメイド等の職業の人間は、紅茶や料理もうまいと聞く。現にアイリスちゃんの料理は美味しかったしな…。どれ、紅茶も淹れてみてくれるのか?」
【ハイ!】


 ほぼ、意識せずに口走ってしまったけど、結果オーライだね。
 私は台所に立ち、湯を沸かし、私の知る限り、朝に飲むには最善の方法で紅茶を淹れ、おじいさんに渡す。


【どうぞ】
「ん、ありがとう。どれ……」


 おじいさんは紅茶を一口、喉に通した。


「ほぉ……流石プロと言うべきか……美味い」
【そうですか! ありがとうございます】


 私も、ティーカップに紅茶を淹れ、自分の口に流してみたが、確かに美味しかった。
 自分で言うのはなんだけどね。


 そんなこんなしていたら、気づけば6時10分。
 あと50分もすれば、今日の主役達は起きてくるだろう。
 そうだ、せっかく誕生日なんだし、朝から凝ったスープでも作ろうかしら?


【ウォルクさん、あと50分ほどでロモンちゃんとリンネちゃんは起きてきますよね?】
「まぁ、そうじゃの」
【なら、私はいまから少し凝った朝食を作ろうかと思いますが、いかがでしょうか?】
「ふむ、任せようかの」


 再度、私は台所に立ち、グッツリコトコトと野菜や魔物のダシを煮込む。
 この世界では、少々、胡椒が高値なのが気になるから、胡椒は使わずに、味見をしつつスープを作る。


 6時50分、スープが粗方出来上がったと同時に、ロモンちゃん、リンネちゃん、お母さんお父さんが起きてきた。
 そういえば、今日は4人で一緒の部屋で寝たんだっけかな?


「んー! いい匂いだ……」
「それに、廊下もリビングもピッカピカ…これ、お父さんが?」
「いんや、アイリスちゃんじゃよ」


 私は両手に料理を任せて、みんなの前に顔を出した。


【皆様、おはようございます! リンネちゃんとロモンちゃん、お誕生日おめでとうございます!】
「えへへー! ありがとー!」
「アイリスちゃん、ありがとね! ところでこんなにお部屋がピッカピカなの、アイリスちゃんがやったんだよね? どして?」
【それはですね】


 私はおじいさんにした説明と同じ説明をした。
 お母さんはまた、その話を興味深そうに聞いている。


【と、いうわけなんです】
「なるほどねー! 通りでアイリスちゃん、ずっと敬語なんだねー」
「そうだね、メイドさんって敬語のイメージあったけど、本当に敬語なんだね!」
「はぁ……前世の記憶って、やっぱりあるもんなんだな」


 ここで、お母さんは私に質問をしてきた。


「ねぇ、ところでアイリスちゃんは、元は人間なわけだけど……魔物扱いして欲しくないとか、あるんじゃない?」
「あっ! そういえば……」
「確かにね」


 おっと、それは考えたことなかったよ。
 正直、私は仕える身だったわけだし、今ぐらいの扱いに慣れてるというか、心地いいというか。
 つまりは、このままでいいんだよね。


【いえ、そんなことはございません。私は今はロモンちゃんの仲魔ですし、それに皆様は人と同じ対応をしてくれるではないですか。このままでお願いします】
「ん、わかった。アイリスちゃんがそう言うなら、私は今まで通りにするね」
「ぼくも!」


 台所の方から、私の手が飛んできて、私の肩を叩いた。
 どうやら朝ごはんができたみたいだ。
 

【どうやら、朝食ができたようです。皆様、お席におつきくださいませ】
「「うん!」」
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...