私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍

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51話 感謝されるのは悪くないのでございます。

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「……あなたが……あなたが、私を助けてくれたの?」
【ええ、そうですね】


 特にこういうことではぐらかす必要はない。
 私はきっぱりと、自分が助けたと言った。


「本当に? あなた…魔物よね?」
【ええ、そうですね。見ての通りゴーレムです】
「そうね…」


 彼女はしばらく黙って、充血して赤い目で私を見つめていた。
 周りの人達はみんな、こちらに顔を向けて私たちの話に集中してるみたいだった。
 ネフラ君は私の隣で妙な空気にオドオドしてる。

 しかし、数秒経ってから彼女は急に態度を変えた。
 というよりは、何か落ち着いた感じ。


「その…なんというか…とにかく、ありがとう……いえ、本当にありがとうございました。ここ数日間、ネフラに仕事をくれて…私を助けてくれて」


 ジエダ…ちゃんは深く頭を下げた。それも涙を流しながら。本当、さっきとは違うね。
 その涙が少し、きつそうな感じがするけども。
 

【いえ、礼には及びませんよ。できることをできる限り、できる範囲内でしただけです。困った時はお互い様という言葉もありますし。それにネフラ君に仕事をしてもらって私も助かりましたし】


 私はそう言った。
 正直、これ以外にかける言葉が思いつかないよ。
 でも…さっきの雰囲気はなんだったんだろ? よくわからない。ま、いいか。

 場の雰囲気がガラッと変わり、その場にいる冒険者達は喜んで騒ぎ始める。
 ジエダちゃんは、皆んなから大分愛されてるみたいだね。美人さんだからかな? いや、違うね、それは。
 それだけが、こんなにこの娘が愛されてる理由になるとは思えない。
 だって、ここに居る若い女の冒険者さんは皆んな美人だし…。

 よし、困った時のギルドマスターだね。

 私はジョッキの中身をグビグビと口に流し込んでいたギルドマスターに、念話を送った。


【ギルドマスター様。ジエダさん、皆様から愛されているのですね? 何故ですか、美人さんだからですか?】
【まぁな】
【ですが、顔の良さなら私の主人らだって相当なものです。また、ここにいる若い女性の冒険者さんはほとんど美人ではないですか】
【まあ、一番の理由は親だな、あの娘達の】
【親……ですか?】


 親のお陰で子供達が周りの大人から愛される…確かに相当良い親なのだろう。
 だったら、あの子達のご両親がどういう方々だったのか気になるね。
 ……娘が病気だというのに、家には居なかったから、多分、亡くなってるのだろうけど。


【どういった方々なのですか? ネフラ君とジエダさんの親御様は】


 ギルドマスターは念話で話し続けてくれる。


【すごい人達だったよ。二人組のAランクのパーティの冒険者でさ、性格も良くて周りからの信頼も人気も厚かったんだ。それが理由さ】
【では…その二人は今?】
【死んだよ、ジエダちゃんがかかった毒と同じ毒で。3年前に】


 そっか、だからさっきは変な雰囲気だったんだ。
 このゴーレムがもっと早く来ていればとか、考えていたのかもしれないね。
 あれ…でも、ジエダちゃんが毒になったのは、どう考えても今年の話だよね? じゃないともう、死んでるもん。

 それにしても、3年前……か。それって、最後にサナトスフィビドが確認された年じゃん。


【……ギルドマスター様、3年前は例のサナトスフィビドが最後に発見された年ですよ】
【…そうか、ならそいつが、あの子達の両親を殺したんだな。ったく、なんつー魔物だ】


 本当だ本当、討伐隊や冒険者を募ってサナトスファビドをとっとと倒しちゃった方が良いよね。
 ちょっと、ギルドマスターに提案してみよう。


【同属が魔王に仕えていたというのもありますし、すでにこれで被害者が3人出ているということになります。なるべく早く討伐要請を出した方が良いかと】
【ああ、そうしようと思う。一応、俺自身や王国のお偉いさん達が調べてからだが…近いうちに、SSランクのクエストとして貼られるだろうな】


 本当なら、毒が効かない私が行きたいところだけど…まだDランクだし…。
 もし仮に、そのサナトスファビドが亜種とかだったら最悪だよ。ベスさんと戦った時と同じように、私が木っ端微塵に倒されちゃう可能性が高いよね。
 まぁ…私がそいつと戦うことは、遭遇しちゃうか、ロモンちゃんとリンネちゃんが被害にあうぐらいしかないと思うけど。


【ところで…だ】


 ギルドマスターが、心配そうにそう送ってきた。


【なんでしょうか?】
【今日は仕事に来なかったのな】


 ああ、そうだった。来なかったんだ。
 今、その理由を話しちゃおう。


【あの…昨日ので私、疲れちゃったみたいで】
【あー、ありゃ凄かったもんな】
【私の主人達が私の体調が悪いのに気づいてくれたんです。それで本日は一日、宿で篭ってましたよ】
【へー、そうかい。それにしても今日はやけにご機嫌じゃないか?】


 え、この人、私の感情がわかるのかな!?
 どうして機嫌が良いってこと分かったんだろ…表情もほとんど無いから読み取れないと思うし…。


【何故、私の機嫌が良いとわかりました?】
【歩き方がいつもより少し跳ねてるな感じだったからな】
【それでわかるんですか! へへ、今日は主人達にたっくさん撫でてもらったりしたんですよ】
【へぇ、お前さん、案外冷静だと思ってたんだがな、そういうので喜ぶのか】


 ここから少し離れているギルドマスターが、肩をすくめるのを見た。


【お二人が可愛いので尚更です!】
【はは、そうかい。ところでゴーレムさんよ、今日から売りに行くのはお使い頼まなくて大丈夫だからな? 向こうの店主に話しをつけといた】
【ありがとうございます!】


 私はギルドマスターのそばまで、行って頭を下げる。
 そうか、少し緊張するけれど今日から隣の店には自分で行って自分で売ってみよう。
 
 そう考えて、私がこの場を去ろうと歩き出し、そして入り口の戸に手をかけた、その時にまた、ネフラ君がこちらに駆けてきた。お姉ちゃんと一緒に。


「ゴーレムさん、どこ行くの?」
【何時ものを売りに行くんですよ】
「あ…あの……」


 ジエダちゃんは何やらモジモジしている。
 なんだ、私に言いたいことでもあるのかしらん?


「お…お礼の…その…治療費というのは……その…一生かかっても払うので…」


 あー、そのことを気にしてるのか。
 確かに薬とか、医者(回復魔法使い)ってすごくすごく高価だもんね。とてもじゃないけどこの子達が払える値段じゃないもの。
 あの毒だったら尚更ね。……多分、私の今までの稼ぎの1.5倍はするんじゃないかな? あくまで推測だけど。
 でも、代金を取るつもりはないんだよ。


【いりませんよ。専門職ではありませんし、私。ただただ、通りすがりの魔物が気まぐれに貴女を助けた、ただそれだけの事なんです】
「ほ……本当ですか?」
【ええ】


 するとまた、ジエダちゃんは泣き出した。
 今度は少し泣くのではなく、大きく大きく、わんわんと泣き出した。たどたどしく私に御礼を言いながら。
 あー、そうか。

 怖かったんだろうね、死ぬのが。
 嫌だったんだろうね、弟一人残すのが。
 不安だっただろうね、大きな借金を抱えるんじゃないかって。

 まわりの冒険者達も、また、ただ、泣いているジエダちゃんと私とネフラ君を見つめていた。

 私はジエダちゃんに近づいていって、私の大きな手を少し小さくする。
 そして、彼女の手を優しく握った。


【大丈夫。もう怖いことなんてありませんよ。貴女の毒の元凶ももう少しで討伐の依頼が降ります】
「ふぁ…ばぁい……でも…私っ…ここまでしてもらって、ゴーレムさんに何もできませんっ…」

 
 うむむ、そうか、そういうの気になるか…。
 だったら。


【でしたら、貸し1ということにしておきましょう。私が何か、協力してほしいことがあったら、頼んでもよろしいですか?】
「はぁいっ…!」


 私は彼女から手を離し、今度はネフラ君の頭を撫でながら、彼に話した。


【お姉さんを、大切にするのですよ?】
「ゴーレムさんは…その、売るのどうするんですか?」
【ギルドマスターが隣の店の店主と話しをつけてくれましたから、自分で売りに行きますよ。……今までありがとうございました】
「はいっ……その、また会えますよね?」
【ええ、大抵今くらいの時間にはココにいると思いますしね……それでは】


 私はネフラ君の頭から手を離し、今度こそギルドを去った。そして、隣の店に行って素材を売り、帰り、そしてこの日はもう寝た。



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