13 / 31
墜落
しおりを挟むどれくらい飛んだんだろう。
体感では数時間。
気がつけば、太陽はもう完全に昇りきっていた。
どこまでも続く森、森、森。
起伏がなく、視界を遮るものも無い、見渡す限りの平坦な緑が広がっていた。
眼下の深い森には蠢く嫌な気配がする。苛立つ獣の気配、生えてる木々が一帯に魔力を発してる場所もある。
そんな景色の中を、ずっと一定の速度で飛び続けていた。
さっきまでは、とにかく無我夢中だった。
生まれたてのハイみたいな状態で、ただこの場からアシェルを連れて逃げ出すことだけを考えていたけど……。
ようやく頭の霧が晴れてきて、少しずつ冷静になってきた。
(さてと……これから、どうしよう)
そうぼんやり考えていると……。
(……なんか、寒い?)
急に風が冷たくなったように感じた。
いや、たぶん違う。
今まで風を遮っていた何かが薄くなってきているような感じだ。
体に直接空気の抵抗を感じる。
羽が重い。
バサッ、バサッ、と羽ばたきの音が鈍くなる。
咄嗟に脚の中で丸くなっているアシェルの様子を確かめる。
体を丸めていて、眠っているのか、意識を失っているのか……。少しのぬくもりと、小さな鼓動は感じられるという程度だ。
風が当たらないように持ち直そうとするけど、
その動作さえもぎこちなく、遅い気がする。
(……まずい。いい加減どっかに降りないと)
焦ったように地平線へと目を凝らすと、森の向こうに何かが見えた。
今まで見ていた深緑とは違う、石造りのような色合いの、明らかに人工物と思われる建物だ。
人間だった頃より遥かに視力が良くなっている自覚がある。そんな俺が目を凝らして、やっと確認できるほど遠い。
(あっちへ向かってみるか)
そう思って進路を調整しようとした次の瞬間だった。
ゴォッ―――!!
突然の突風。
たったそれだけで、身体がふらついた。
さっきまでならどうという事もなく、簡単に姿勢を立て直せていたのに今は体が言うことを聞かない。
また冷たい風が体に刺さった。
バサ……バサッ……と
羽ばたくたびに力が抜けていく。
(あれ……?)
踏ん張ろうとしても、体に力が入らない。
そしてようやく気づく。
(俺の魔力、もうガス欠状態なんじゃね?)
元々腹が減った状態で、根性で殻を破って生まれたようなもんだったし、生まれてすぐの長距離飛行……。
意識してしまうと、ドッと疲労と空腹感を自覚してしまった。
羽ばたく力がもう残ってない。
(やばい……落ちる……!)
視界が揺れ、地面が近づいてくる。
アシェルだけは守らなきゃ。
それだけを考えて、
俺はアシェルを胸に抱き込むように脚でしっかり掴み直し、身を丸めた。
ザザザザッ——!!
大きな木の枝をいくつも砕き、皮膚や羽が擦れて痛みが走る。
そして――――
俺たちは森の中へ墜ちた。
267
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために
ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話
※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。
僕、天使に転生したようです!
神代天音
BL
トラックに轢かれそうだった猫……ではなく鳥を助けたら、転生をしていたアンジュ。新しい家族は最低で、世話は最低限。そんなある日、自分が売られることを知って……。
天使のような羽を持って生まれてしまったアンジュが、周りのみんなに愛されるお話です。
拗らせ問題児は癒しの君を独占したい
結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。
一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。
補習課題のペアとして出会った二人。
セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。
身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。
期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。
これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。
異世界転移をした俺は文通相手の家にお世話になることになりました
陽花紫
BL
異世界転移をしたハルトには、週に一度の楽しみがあった。
それは、文通であった。ハルトの身を受け入れてくれた老人ハンスが、文字の練習のためにと勧めたのだ。
文通相手は、年上のセラ。
手紙の上では”ハル”と名乗り、多くのやりとりを重ねていた。
ある日、ハンスが亡くなってしまう。見知らぬ世界で一人となったハルトの唯一の心の支えは、セラだけであった。
シリアスほのぼの、最終的にはハッピーエンドになる予定です。
ハルトとセラ、視点が交互に変わって話が進んでいきます。
小説家になろうにも掲載中です。
異世界転生してBL漫画描いてたら幼馴染に迫られた
はちも
BL
異世界転生した元腐男子の伯爵家三男。
病弱設定をうまく使って、半引きこもり生活を満喫中。
趣味と実益を兼ねて、こっそりBL漫画を描いていたら──
なぜか誠実一直線な爽やか騎士の幼馴染にバレた!?
「……おまえ、俺にこうされたいのか?」
そんなわけあるかーーーっ!!
描く側だったはずの自分が、
誤解と好意と立場の違いにじわじわ追い詰められていく。
引きこもり腐男子貴族のオタ活ライフは、
王子と騎士に目をつけられ、
いつの間にか“逃げ場のない現実”へ発展中!?
誠実一直線騎士 × 流され系オタク
異世界・身分差・勘違いから始まる
リアル発展型BLコメディ。
*基本的に水・土の20時更新予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる