異世界で孵化したので全力で推しを守ります

のぶしげ

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サバイバル

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 日が少し傾き始める中、俺たちは森の中を歩いていた。


 周囲はどこまでも続く木々。
 その間を、弱い風がくぐり抜ける。
 アシェルの足取りはまだ頼りなく、俺もすぐ横で歩き、周囲の気配を探りながら少しずつ移動していく。
 とにかく、どこかで一晩しのげる場所を探さなければいけない。


 目を凝らしてよく見てみれば、卵の中に居た時のように魔力の形を見ることが出来た。
 その辺に生えてる草木にも、少しだけど魔力が息づいているみたいだ。色、形から、明らかに毒々しいオーラみたいなものを放つ植物を避けるように誘導しながら歩いていく。
 だんだん目がショボショボしてくるから、ずっと見続けていられないみたいだけど。
 

 飛んで移動できるか試してみたけれど、 上手く飛べない。
 今の俺はアシェルと同じくらいの背丈で、翼もずっと小さい。背中や脇にかけて痛みも残っていて上手く羽が動かないみたいだ。
 飛び上がるくらいは出来たけど、滞空し続けることが出来なかった。
 

 しばらく歩いていると、高い枝に赤い果実がいくつも実っているのを見つけた。
 背の高い木の、そのさらに上の方にだけ実が成っていて、地面からでは届かない。
 アシェルがまじまじと見上げる横で、これくらいなら、と膝を曲げて近場の枝まで跳躍した。


 よし、飛び上がる位ならなんとかなりそうだ。
 いざ意識して飛ぼうと思うとバランス調整が難しい。逃げるときは本当に無我夢中で、野生の本能だったのか、自然と飛べていたんだけどなぁ。
 翼を広げて空気を押し出す様に試しながら、足の力も使いつつ、身体を押し上げいく。
 枝と枝の間を跳び移っていき、果実に手を伸ばす。


 実からは、危険な気配は感じない。慎重にひとつ齧ってみる。
 ほんのり甘いけど、少し粉っぽい?酸味もあるし、例えるなら味が薄いリンゴが近いのかもしれない。
 飲み込んでみたけど、身体は拒否しなかった。
 うん、空腹の身には、十分に美味しい。


 俺はくつかの実を採って下に落とし、慎重に自分も降りて行った。
 赤い実を拾い上げたアシェルに向かって、安心させるように自分ももう一つ果実を拾って齧る。


 それを見たアシェルも、恐る恐る果実を口に運び、次の瞬間、焦ったように次の一口を急いだ。
 飢えが一気に流れ込んだように、小さな肩を上下させながら食べていく。
 急いで食べててむせそうだ。落ち着くように背中を軽くさすってやりながら、その様子をしばらく見守った。


 木の実が成っていた場所からすぐ、幸運にも切り立った崖にある浅い洞穴を見つけた。
 暗くなってからの移動は避けたかったし、一時的に身を寄せるには十分だった。
 柔らかい草を集めて寝床をつくり、岩の隙間を選んで風を避けるようにしてアシェルと身を寄せ合った。
 体温を分け合うように、俺は翼でアシェルを包み、アシェルも自然と小さな腕を伸ばして抱き返した。

 森の夜は静かで、そよ風に葉がこすれるサラサラという音だけがかすかに響く。

 眠りに落ちるまで、そう時間はかからなかった。





 ――――――
 




 翌日、肌寒さで目を覚ました。アシェルも丸くなっていて寒そうにしている。
 俺の貧相な羽毛だけじゃ布団とも言えないし、互いの体温だけじゃ限界があるか……。


 充分に日が昇った頃、昨日の実の残りを食べながら、アシェルが小さく呟いた。
「……火、起こせないかな」
 やっぱそう思うよな。俺もすぐ頷いた。


 食事のあと、アシェルは周囲で枯れ草や枝を拾い集め始めた。


 俺はまた昨日の果実を探すため、木の上へ。他にも何かないかと周囲を見て回る。
 相変わらず飛ぶことはできす、翼は跳躍の補助にしかならないみたいだ。

(やっぱり、魔力が足りていないのかな)

 生まれてすぐは、体中に力が満ちている感覚があった。
 翼もキラキラと輝いて、羽の付け根から先まで魔力が行きわたっているような感じだった。
 単純な羽の飛翔能力だけじゃなくて、明らかに魔力を使って風に乗っていたんじゃないかと思う。
 
 あちこちで感じられる、微かに光る魔力。
 昨日から食べてるこの実にも魔力は少しだけど、確かに宿っている。

(食事で魔力って回復するのか?……こういうのを食べ続けてたら、いつか飛べるようになる、かもしれないな)




 ――――――――



 
 果実を集め終えると、アシェルが枝を集めて先に洞穴に戻って来ていた。
 枝と草を盛り上げて、焚火を起こそうとしているみたいだったので、俺も手伝うことにした。
 前世の知識でなんとなく枝をこすり合わせてみるけれど、なかなか火がつかない。
 子供の体力じゃ日が暮れる前に火が起こせるか怪しい。二人でしばらく枝をこすっていたけど、体力ばかりが減っていく気がする。
 どうしようかと思っていると、唐突に横でアシェルが「わっ」と声を上げた。


 一瞬だけど、目の端で光が弾けたのが見えた気がする。
 びっくりして、まじまじとアシェルの手元を見てみると、真っ黒な枝を持っていた。
 アシェルが慎重に、もう一度手に持っている黒い枝をこすってみると、驚くほど簡単に火花が散った。

 
 「木が湿ってるのかと思って、この枝に持ち替えたんだ。ちょっと力を入れて擦ると……」


 パチパチッとまた火花が出る。 
 何度もそうしていると、寄せた枯れ葉にパチッ……と小さな炎が生まれた。
 慌てて枝をくべ、2人がかりで息を吹きかける。煙が上がって、上手く火を大きくすることが出来た。
 感動と達成感で俺たちは顔を見合わせて笑いあった。
  


 また夜がやってきたが、今日は洞穴の中に温かい光が広がっている。
 火を絶やさないように、あれから枝をさらに集めたり、少しずつ寝床の近くに焚火を移動させたり……。
 やってることは正にサバイバルだけど、なんだか楽しい。


 俺たちは今日も寄り添うようにして過ごした。小さな焚火でも、火があるだけですごく安心する。
 アシェルは先に寝てしまったらしい。たまに、きゅぅ……とお腹が鳴る音が聞こえる。
 今日もあの赤い実は食べたけど、やっぱり育ち盛りの男の子には物足りない食事だよなぁ。
 果実の水分だけじゃ、水分補給にも心配があるし、明日には探索場所を広げてみようか……。
 食料を確保したら、場所を移動したほうが良いのか……。
 明日、日が昇ったら何をしようか、色々考えているうちに、俺は眠りに落ちて行った。


 
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