19 / 31
団長
しおりを挟む
俺は目の前に立つ大柄な男をじっと睨みつけていた。
筋肉質な体と、隙のない視線。剣の切っ先はブレることなくピタリとこちらを捉えている。
(……絶対に、勝てない)
アシェルを掴んで飛んで逃げることはもう出来ない。
周りの男たちも各々が弓と剣を構えて完全包囲。後ろは洞穴と無機質な岩肌が退路を塞いでいる。
緊張で喉が鳴る。
そのときだった。
「武器を下げろ!!」
大柄な男が鋭く声を放った。
部下たちが一斉に動きを止める。
「怖がらなくていい」
そう言って男は剣を鞘に収めて、両手をあげた。
「俺はマスラーク領私兵団長、ラーシュ・ギデンズと言う。怖がらせて悪かった。危害を加えるつもりはない。俺達はこの森の調査に来ただけなんだ。」
ラーシュと名乗った男。大きな声は聞けば迫力があるのに、どこか不思議と温かさが感じられる。
ふわりと崩したその表情は、気の良いおっちゃんといった感じだ。
いやでも、信用は出来ない。油断させて捕まえようって事かもしれない。
俺はなおもアシェルを背に隠すように威嚇を続ける。
「羽の生えたお前」
「……」
今度は俺に目線を合わせて話しかけてきた。
「向こうに落ちてる魚、お前が獲ったのか?」
くい、首を傾けたラーシュ。
その方向に目を向けると、湖で獲ってきた魚が地面に落ちていた。
アシェルを助けようと思って体当たりした時に、その場に落としてしまったようだ。
「2匹ってことは……お前の分と、もう1匹はその子の分、か?」
その通りなので、俺は黙って頷いた。
「……そうか」
その様子を見て、何か決心したように小さな息を吐く。
おもむろにベルトに手をかけたかと思えば、俺たちの目の前で腰の装備を外し、提げていた剣を地面に落とした。
それどころか、続けて胸当ての留め具まで外し始めた。
ガチャッ、と留め金が外れる音が森に響く。
おいおい、何してんだおっちゃん!?
驚いていたのは俺だけじゃないようだ。
「だ、団長!?」
「ちょっと!何してんすか!!」
さっきまで殺気立っていた周りの人たちも突然のことにざわついている。
そんな声を無視して、ラーシュはどんどん装備を外していった。胸当てを地面に置き、手甲、脚甲、肩の革当て……。
使い込まれ、よく鞣した硬い革が地面に落ちるたびに、どうしたら良いか戸惑ってしまう。
俺もアシェルもただ固まって見ているしかなかった。
そして――そのままシャツまで脱ぎだした。
「わぁー!!団長!!!」
周りの阿鼻叫喚もどこ吹く風といった様子で、ズボンにも手をかけ、一切ためらうことなく脱ぎ捨て、鍛え上げられた肉体があらわになっていく。
あっという間にパンツ一丁だ。
(おっちゃん……まじかよ……)
背後から飛んでくる制止の声など聞こえないような顔で、どっかりとその場にあぐらをかいて座った。
完全な無防備である。
「これで、信じてくれるか?」
な、なんなんだこの人。気持ちが良いほど潔い。
子供相手に、仲間の前で裸になってまで安心させようとするその姿に、すっかり呆気にとられてしまった。
緊張と毒気が、全部ふっとんだ気がする。
ポカンとしてると、アシェルが俺の羽にそっと触れてきた。
「……フィル」
俺の逆立つ羽を軽く撫でつけて、落ち着くように促してくる。 表情を伺えば、まだ不安そうにしているものの、目はさっきほど怯えてはいないように見えた。
その一言で、俺はようやく息を吐き、肩の力を抜いた。
俺たちの反応を見て、ラーシュは静かに頷いた。
「事情があるなら聞かせてほしい。困っているようなら、助けたい」
俺はゆっくりと翼を畳み、アシェルは小さく頷いた。
こうして俺たちは、彼らに保護されることとなったのだった。
筋肉質な体と、隙のない視線。剣の切っ先はブレることなくピタリとこちらを捉えている。
(……絶対に、勝てない)
アシェルを掴んで飛んで逃げることはもう出来ない。
周りの男たちも各々が弓と剣を構えて完全包囲。後ろは洞穴と無機質な岩肌が退路を塞いでいる。
緊張で喉が鳴る。
そのときだった。
「武器を下げろ!!」
大柄な男が鋭く声を放った。
部下たちが一斉に動きを止める。
「怖がらなくていい」
そう言って男は剣を鞘に収めて、両手をあげた。
「俺はマスラーク領私兵団長、ラーシュ・ギデンズと言う。怖がらせて悪かった。危害を加えるつもりはない。俺達はこの森の調査に来ただけなんだ。」
ラーシュと名乗った男。大きな声は聞けば迫力があるのに、どこか不思議と温かさが感じられる。
ふわりと崩したその表情は、気の良いおっちゃんといった感じだ。
いやでも、信用は出来ない。油断させて捕まえようって事かもしれない。
俺はなおもアシェルを背に隠すように威嚇を続ける。
「羽の生えたお前」
「……」
今度は俺に目線を合わせて話しかけてきた。
「向こうに落ちてる魚、お前が獲ったのか?」
くい、首を傾けたラーシュ。
その方向に目を向けると、湖で獲ってきた魚が地面に落ちていた。
アシェルを助けようと思って体当たりした時に、その場に落としてしまったようだ。
「2匹ってことは……お前の分と、もう1匹はその子の分、か?」
その通りなので、俺は黙って頷いた。
「……そうか」
その様子を見て、何か決心したように小さな息を吐く。
おもむろにベルトに手をかけたかと思えば、俺たちの目の前で腰の装備を外し、提げていた剣を地面に落とした。
それどころか、続けて胸当ての留め具まで外し始めた。
ガチャッ、と留め金が外れる音が森に響く。
おいおい、何してんだおっちゃん!?
驚いていたのは俺だけじゃないようだ。
「だ、団長!?」
「ちょっと!何してんすか!!」
さっきまで殺気立っていた周りの人たちも突然のことにざわついている。
そんな声を無視して、ラーシュはどんどん装備を外していった。胸当てを地面に置き、手甲、脚甲、肩の革当て……。
使い込まれ、よく鞣した硬い革が地面に落ちるたびに、どうしたら良いか戸惑ってしまう。
俺もアシェルもただ固まって見ているしかなかった。
そして――そのままシャツまで脱ぎだした。
「わぁー!!団長!!!」
周りの阿鼻叫喚もどこ吹く風といった様子で、ズボンにも手をかけ、一切ためらうことなく脱ぎ捨て、鍛え上げられた肉体があらわになっていく。
あっという間にパンツ一丁だ。
(おっちゃん……まじかよ……)
背後から飛んでくる制止の声など聞こえないような顔で、どっかりとその場にあぐらをかいて座った。
完全な無防備である。
「これで、信じてくれるか?」
な、なんなんだこの人。気持ちが良いほど潔い。
子供相手に、仲間の前で裸になってまで安心させようとするその姿に、すっかり呆気にとられてしまった。
緊張と毒気が、全部ふっとんだ気がする。
ポカンとしてると、アシェルが俺の羽にそっと触れてきた。
「……フィル」
俺の逆立つ羽を軽く撫でつけて、落ち着くように促してくる。 表情を伺えば、まだ不安そうにしているものの、目はさっきほど怯えてはいないように見えた。
その一言で、俺はようやく息を吐き、肩の力を抜いた。
俺たちの反応を見て、ラーシュは静かに頷いた。
「事情があるなら聞かせてほしい。困っているようなら、助けたい」
俺はゆっくりと翼を畳み、アシェルは小さく頷いた。
こうして俺たちは、彼らに保護されることとなったのだった。
313
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために
ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話
※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。
僕、天使に転生したようです!
神代天音
BL
トラックに轢かれそうだった猫……ではなく鳥を助けたら、転生をしていたアンジュ。新しい家族は最低で、世話は最低限。そんなある日、自分が売られることを知って……。
天使のような羽を持って生まれてしまったアンジュが、周りのみんなに愛されるお話です。
拗らせ問題児は癒しの君を独占したい
結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。
一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。
補習課題のペアとして出会った二人。
セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。
身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。
期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。
これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。
異世界転移をした俺は文通相手の家にお世話になることになりました
陽花紫
BL
異世界転移をしたハルトには、週に一度の楽しみがあった。
それは、文通であった。ハルトの身を受け入れてくれた老人ハンスが、文字の練習のためにと勧めたのだ。
文通相手は、年上のセラ。
手紙の上では”ハル”と名乗り、多くのやりとりを重ねていた。
ある日、ハンスが亡くなってしまう。見知らぬ世界で一人となったハルトの唯一の心の支えは、セラだけであった。
シリアスほのぼの、最終的にはハッピーエンドになる予定です。
ハルトとセラ、視点が交互に変わって話が進んでいきます。
小説家になろうにも掲載中です。
異世界転生してBL漫画描いてたら幼馴染に迫られた
はちも
BL
異世界転生した元腐男子の伯爵家三男。
病弱設定をうまく使って、半引きこもり生活を満喫中。
趣味と実益を兼ねて、こっそりBL漫画を描いていたら──
なぜか誠実一直線な爽やか騎士の幼馴染にバレた!?
「……おまえ、俺にこうされたいのか?」
そんなわけあるかーーーっ!!
描く側だったはずの自分が、
誤解と好意と立場の違いにじわじわ追い詰められていく。
引きこもり腐男子貴族のオタ活ライフは、
王子と騎士に目をつけられ、
いつの間にか“逃げ場のない現実”へ発展中!?
誠実一直線騎士 × 流され系オタク
異世界・身分差・勘違いから始まる
リアル発展型BLコメディ。
*基本的に水・土の20時更新予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる