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成長の日々
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結果として、俺の体は変わらずハーピーのまま、だったらしい。
完全に人間になったわけじゃなくて、魔力を消費して姿を変えているだけだったみたいで、意識すれば翼がある姿に戻る事もできた。
俺もアシェルほどじゃないが、魔力の総量はかなり多い方らしく、日常生活の中で魔力が枯渇することはまずなかった。
人間の姿を維持するのも、全然苦じゃない。たぶん、俺がもともと人間だったからじゃないかと思ってる。
今まで当たり前だったものをイメージできているから、自然とこの姿でいられる。
最初は少し練習が必要だったけど、今では息を吸うみたいに簡単にハーピーの体へと変身することが出来るようになった。
俺の秘密はどこにも漏れることなく留まり、
あの日、俺とアシェルを見つけた他の団員達も、誰一人として俺が魔獣であると口外しなかった。
アシェルはあれからすぐ、多すぎる魔力の制御訓練を始めた。
魔術の使える団員に教わりながら、最初は暴れる魔力に振り回されて倒れていたけど、今ではすっかりその力をモノにしている。
領主である伯爵様も魔術の心得があるみたいで、暇があれば手伝ってもらいながら、アシェルはその腕を上げて行った。
ラーシュとは幼馴染だというカール伯爵は、お屋敷の書斎を貸してくれたり、すごく良くしてもらった。
ぐんぐん知識も身についたアシェル。今では若くして領地一の魔術の使い手だとまで言われるまでになっていた。
一方の俺は、魔術が一切使えない。
魔力は豊富だけど、たぶん魔術というのが体質に合ってないんだと思う。
代わりに、体を鍛えることにした。
魔力に満ちたこの体は人よりずっと身体能力が高い。体は頑丈だし、動体視力も常人より優れている。
最初はアシェルと一緒に剣を教わっていたんだが……色々試した結果、俺は剣や武器の才が無いという事が判明した。
張り切って指導してくれたラーシュはしょげていたけど、こればっかりはしょうがない。
ハーピーになった時に両腕に翼があるせいなのか、俺は手で殴るよりも蹴る方が得意で、いつの間にか足技ばっかり習うようになった。
帝国には建国時代の多くの王族や民族の習慣や名残が残ってるらしく、足技を得意とする武人を師として紹介してもらって、しこたま蹴り技を叩き込まれた。
身体が大きくなるにつれて、私兵団のみんなに揉まれながら、毎日訓練に参加するようになっていった。
領地に危険をもたらす魔獣の討伐を手伝うこともあって、時には怒られながら、実践の経験も積んでいった。
俺たちがさ迷っていた辺りの森は、あれから少し開拓された。
マスラーク領は王国との国境。辺境の片田舎で、領地の収入は魔の森で取れる貴重な素材が主らしい。
アシェルが見つけた火花の散る黒い木は新種で、話を聞いたカール伯爵からの要請で、採取を生業にするハンターを交えての探索隊が編成された。
案内を任された俺達は、なつかしの洞穴周辺へとみんなを連れて行ったんだよなあ。
魔力を込めて擦ると熱を発する樹脂を含んだ木は、今では領地の新しい収入源になって、アシェルはお手柄だとみんなに褒められて照れていた。
俺が見つけた湖も、地図に記録され、ハンター達が立ち寄るセーフゾーンになったらしい。
よく食って、良く寝て。
時には馬鹿やって怪我をして、こっぴどく怒られて。
体調を崩した日は、屋敷の明かりは長く灯り、看病する影が映った。
たまに誰にも見られないように気を付けながら、内緒でハーピーに戻って、アシェルを屋根の上に連れ出して月見をしたりもした。
かけがえのない毎日。
いつしか自然と、ラーシュを父と呼び、アリアンナさんを母と呼ぶようになっていた。
食卓はいつも明るくて、扉を叩けば応じてくれる部屋がある。
なにげない毎日が積み重なり、俺たちはゆっくりと家族になっていた。
俺たちは拾われた身だけど、その事実を誰も問題にしなくなるほど、血縁は関係のないものになっている。
アシェルと俺は、仲の良い名物兄弟としてみんなに認知されていて、領地でも評判になっていた。
仲が良いのはその通りで、実をいうと、最近までずっと同じベッドで寝ていたんだよな……。
夜になると昔を思いだして寂しくなるのか、「……いい?」と控えめに聞いてくるアシェルにあらがえず、一緒に床についていた。
アシェルに悪いと思って誰にも言ってないけど、正直俺も少し恥ずかしくて、このことは屋敷の人間しか知らない。
成長して、同じベッドで寝るには、さすがに狭くなってきたのもあって、最近になって、ようやく部屋には二つの寝台が並ぶようになった。
…………寝室は一緒なんだよなぁ。
俺たちがここに来て、いつの間にか10年経った。
このまま領地で生活して、いつか私兵団に正式に就職したいな。なんて、アシェルと二人でたわいない話をする日々。
そんな日常に、変化が訪れる。
ある日届いた一通の封書。
装飾された繊細な作り、深みのある色の封蝋には、帝都を象徴する紋章が施されていた。
完全に人間になったわけじゃなくて、魔力を消費して姿を変えているだけだったみたいで、意識すれば翼がある姿に戻る事もできた。
俺もアシェルほどじゃないが、魔力の総量はかなり多い方らしく、日常生活の中で魔力が枯渇することはまずなかった。
人間の姿を維持するのも、全然苦じゃない。たぶん、俺がもともと人間だったからじゃないかと思ってる。
今まで当たり前だったものをイメージできているから、自然とこの姿でいられる。
最初は少し練習が必要だったけど、今では息を吸うみたいに簡単にハーピーの体へと変身することが出来るようになった。
俺の秘密はどこにも漏れることなく留まり、
あの日、俺とアシェルを見つけた他の団員達も、誰一人として俺が魔獣であると口外しなかった。
アシェルはあれからすぐ、多すぎる魔力の制御訓練を始めた。
魔術の使える団員に教わりながら、最初は暴れる魔力に振り回されて倒れていたけど、今ではすっかりその力をモノにしている。
領主である伯爵様も魔術の心得があるみたいで、暇があれば手伝ってもらいながら、アシェルはその腕を上げて行った。
ラーシュとは幼馴染だというカール伯爵は、お屋敷の書斎を貸してくれたり、すごく良くしてもらった。
ぐんぐん知識も身についたアシェル。今では若くして領地一の魔術の使い手だとまで言われるまでになっていた。
一方の俺は、魔術が一切使えない。
魔力は豊富だけど、たぶん魔術というのが体質に合ってないんだと思う。
代わりに、体を鍛えることにした。
魔力に満ちたこの体は人よりずっと身体能力が高い。体は頑丈だし、動体視力も常人より優れている。
最初はアシェルと一緒に剣を教わっていたんだが……色々試した結果、俺は剣や武器の才が無いという事が判明した。
張り切って指導してくれたラーシュはしょげていたけど、こればっかりはしょうがない。
ハーピーになった時に両腕に翼があるせいなのか、俺は手で殴るよりも蹴る方が得意で、いつの間にか足技ばっかり習うようになった。
帝国には建国時代の多くの王族や民族の習慣や名残が残ってるらしく、足技を得意とする武人を師として紹介してもらって、しこたま蹴り技を叩き込まれた。
身体が大きくなるにつれて、私兵団のみんなに揉まれながら、毎日訓練に参加するようになっていった。
領地に危険をもたらす魔獣の討伐を手伝うこともあって、時には怒られながら、実践の経験も積んでいった。
俺たちがさ迷っていた辺りの森は、あれから少し開拓された。
マスラーク領は王国との国境。辺境の片田舎で、領地の収入は魔の森で取れる貴重な素材が主らしい。
アシェルが見つけた火花の散る黒い木は新種で、話を聞いたカール伯爵からの要請で、採取を生業にするハンターを交えての探索隊が編成された。
案内を任された俺達は、なつかしの洞穴周辺へとみんなを連れて行ったんだよなあ。
魔力を込めて擦ると熱を発する樹脂を含んだ木は、今では領地の新しい収入源になって、アシェルはお手柄だとみんなに褒められて照れていた。
俺が見つけた湖も、地図に記録され、ハンター達が立ち寄るセーフゾーンになったらしい。
よく食って、良く寝て。
時には馬鹿やって怪我をして、こっぴどく怒られて。
体調を崩した日は、屋敷の明かりは長く灯り、看病する影が映った。
たまに誰にも見られないように気を付けながら、内緒でハーピーに戻って、アシェルを屋根の上に連れ出して月見をしたりもした。
かけがえのない毎日。
いつしか自然と、ラーシュを父と呼び、アリアンナさんを母と呼ぶようになっていた。
食卓はいつも明るくて、扉を叩けば応じてくれる部屋がある。
なにげない毎日が積み重なり、俺たちはゆっくりと家族になっていた。
俺たちは拾われた身だけど、その事実を誰も問題にしなくなるほど、血縁は関係のないものになっている。
アシェルと俺は、仲の良い名物兄弟としてみんなに認知されていて、領地でも評判になっていた。
仲が良いのはその通りで、実をいうと、最近までずっと同じベッドで寝ていたんだよな……。
夜になると昔を思いだして寂しくなるのか、「……いい?」と控えめに聞いてくるアシェルにあらがえず、一緒に床についていた。
アシェルに悪いと思って誰にも言ってないけど、正直俺も少し恥ずかしくて、このことは屋敷の人間しか知らない。
成長して、同じベッドで寝るには、さすがに狭くなってきたのもあって、最近になって、ようやく部屋には二つの寝台が並ぶようになった。
…………寝室は一緒なんだよなぁ。
俺たちがここに来て、いつの間にか10年経った。
このまま領地で生活して、いつか私兵団に正式に就職したいな。なんて、アシェルと二人でたわいない話をする日々。
そんな日常に、変化が訪れる。
ある日届いた一通の封書。
装飾された繊細な作り、深みのある色の封蝋には、帝都を象徴する紋章が施されていた。
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