異世界で孵化したので全力で推しを守ります

のぶしげ

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登校初日

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 目を覚ますと、すでに部屋の中は陽の光で満ちていた。

 昨夜は背中に感じる温かさのせいで、あっという間に眠ってしまった。
 隣を見ると、アシェルはもう起きているらしく、姿はない。

 部屋の奥から物音がしている。
 俺もモゾモゾとベッドから降りて、そっちへ向かった。

 リビングに居たアシェルは既に身支度を終えていて、真新しい制服に身を包んでいた。
 装飾の施された儀礼服とは違う、少しシンプルなデザインの学生服だ。

 
「おはよう」
「う、お、おはよう……」

 
 起きてきた俺に気づいて、ぱっと微笑みを向けてくるアシェル。
 窓から差し込む光が、笑顔と相まってとても眩しい。相変わらず顔が良いなこいつ……。

 久々の添い寝を何とも思ってないような爽やかな挨拶に、むしろこっちが照れてしまう。
 赤くなりそうな顔がバレないよう、洗面所の方にさっさと向かった。
 水で顔を洗って冷やしつつ、俺も登校の準備をしよう。

 



 今日は午後からの授業……というか、前世で言うホームルームのみの出校、のような感じらしい。
 本格的な授業は、また後日から始まるようだ。

 特別棟を出て、学院へ向かう専用通路を歩いていく。
 整えられた広い道に、綺麗に整えられた植木が並んでいて、歩いていて気分が良い。


 
 ほかの生徒と合流する正門のあたりまで来たところで、見覚えのある二人の姿が目に入った。


 
「……おはよう」


 
 先に声をかけてきたのはルカだった。
 眼鏡の奥の目が、わずかに充血している気がする。

 
 「おう…………どうした、寝不足か?」 

 「……うん。いや、その……」

 
 歯切れの悪い返事の直後、横から元気な声が割り込む。
 

「やぁやぁお二人さん!昨日ぶりやね!」
 

 満面の笑みで手をヒラヒラ振っているのは、もちろんジェリコだ。
 横でぐったりしているルカとは対照的に元気いっぱい。とてもテンションが高い。

 
(……ああ、原因はこいつか)

 
 俺とアシェルで視線を交わすと、ルカが小さくため息をついた。

 
「昨日の夜からずっと話しかけられてて……朝になってからやっと少し仮眠出来たんだけど、ふあぁあ……」 

 「おかげですっかり仲良しやんな~ルカちゃ~ん」
 

 ジェリコは悪びれもせず、ルカの肩に肘を置いてニコニコしている。
仲良くなれたのが純粋に嬉しい、楽しい、といった屈託のない顔だ。

 毒気のない笑顔のジェリコと、肘置きにされるがままのルカ。
 まあなんというか……何はともあれ無事友達になれたみたいで良かった。
 心の中で、そっとルカに敬礼だけ送っとこう。
 4人でそうやって話していると、周りの空気がざわついてきた気がする。
 


「ねえ見て!あちらの!」 
「あれが噂の……」 
「ご、ごきげんよう……」
「よい天気…ですわね?」


 ポツリ、ポツリと、あちこちから挨拶の声が掛けられていく。


 「ああ」 


 とアシェルが一言。
誰にというでもなく、軽く返事をすると、途端に周囲がわっと色めき立った。
 

「きゃー!今の聞いた!?お声も素敵!」 
「儀礼服もいいけれど、制服姿もお似合いね!」
 「お隣の方もなんて麗しい!まるで女神像のような清廉さですわ!」
  「あぁ!入学祭の時の……!」

 
 甲高い悲鳴みたいな歓声に混じって、男子生徒の声も聞こえてくる。
 騒ぐ人を見て「なんだなんだ」と、さらに人が集まっていく。


 
 「カシアン殿下に啖呵を切ったってのは本当なのか?」
 「2人とも特別棟の方から歩いてきたな」 
 「同学年のよしみですし!学友として是非仲良くしたいです!」
 

 ざわざわと音を立てるように、人が団子状に集まっていく。
 寄り付いてきた生徒が一斉に喋るから、だんだん何を話しかけてきているのか聞き取れなくなってきた……。
 なんか、勝手に自己紹介始めてるやついないか?
 

 ちらりと隣を見ると、アシェルの顔は澄ましているものの、少し眉が下がっていて、困っているのがよく分かった。
 ルカとジェリコも人ごみに潰されかけてる。
 ルカに至っては寝不足のせいもあってか、目を回しながら人ごみに流されて行ってる。


 とにかくなんとかして教室に向かわないと、このままじゃ初日から遅刻をかます勢いだ。

 俺はアシェルの手を取り、玄関の方に向かって人の波をかき分けながら、無理やり進んでいった。

 
 
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みんなの感想(6件)

れめ
2026.01.09 れめ

続き楽しみにしています!!こういう人外主人公貴重なので応援してます!

解除
ぺたる
2025.12.24 ぺたる

ルカ、ほんとよく頑張ったよね!
怖かっただろうに!えらい!
悩める父親像と親しげな空気感に、伯爵と陛下のイケおじポイントも上がっております。よき!


一点、寮について気になることがあります〜。

> 特別棟は貴族、あるいは各種試験で特に優秀な成績を収めた(←修めた)者だけが入ることを許される区画

とあるので、伯爵家のルカは特別棟になるのでは。
フィルは護衛のことを考えて
「ルカは俺が同室でいいし、お前だけでも」
と言っていますが、むしろアシェルとルカが特別棟に行くのが自然に思えます。
護衛が2人とも特別棟に入った最新話ではどうしてルカが一般棟に残るのかわかりません。
もともとは「フィルを1人にしないため」など理由があるのかもですが、一応フィルが納得してる表向きの「ルカが一般棟」の理由がチョロリと書かれていれば、と思います。

うるさいこと言ってすみません、、
物語の進行上、敢えて理由を伏せていらっしゃるようでしたらこのまま捨て置いてください><。

承認不要です!
流行病に罹患されたとのこと、どうぞお大事になさってください.。゚+.゚

2025.12.25 のぶしげ

感想ありがとうございます!
承認不要とのことでしたが、楽しい内容でしたのでお話させていただければと思い、承認とさせていただきました。


特別棟についてのご指摘ありがとうございます。
確かに、ごもっともでございます。

作中では分かりづらかったのですが、
マスラークは辺境ではあるものの要衝を担う領地であるため、一定の地位として伯爵位を得ている、という認識で書いています。

特別棟の中でも、いわゆる「貴族部屋」については

・護衛の必要性
・使用人を伴うかどうか
・家格
・一定額以上の寄付や、三年分の部屋代を納められると判断されるか

など、複数の要因が絡む想定です。

多額の寄付が可能であれば、厳正な審査のもとで貴族部屋に入る一般豪族もいるかもしれませんね。
(*^^*)

その他にも
家が近い生徒は自宅から通う場合もあります。
逆に「寮に入って集団生活を送りなさい」と放り込むタイプの親もいたり……本当に様々ですね。

ルカについては、立場的には特別棟も選択肢に入るものの、一般棟を選んでいる、という設定でございました。

一方のフィルは、
「噂の的になるほど目立つ容姿」「短期間の保護措置」「入試の成績にて特別棟へ入寮するための一部要項をクリアしていた」
といった理由から、あくまで例外的・一時的な対応、という形で表現したかったのです。

ご指摘いただいた通り、そのあたりの理由が作中でさらっとでも触れられていればよかったなと思いました。

とはいえ、
いろんな人たちが集まるマンモス校という気持ちでおりますので、
こうして設定を妄想する、また想像していただけるのは楽しいものです。

ご丁寧に読んでくださって、ありがとうございました!

解除
サカキ
2025.12.18 サカキ

王子、無理
イラつく。それなりに理由ありそうだけど、態度が気に食わないわー

解除

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