どうしてこんな拍手喝采

ソラ

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華やぐ青春の香り

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「政宗さん?」

「……ああ、すまん。どうした?」

俺の呼びかけに政宗さんは顔をこちらに向けた。先ほどまで何か真剣に考え込んでいた。この頃よく見かける横顔だ。

「着きましたよ?」

「……そうか。悪い。」

政宗さんはやっぱりどこかぼうっとしている。

……疲れさせちゃったのかな?

あまり人が多いところは行かないってこの前聞いたことがある。西乃芽山は、大規模だったから人が多い。
なんだか悪いことをしてしまった気がしてならない。

「…組長、しっかりしてくださいね。」

マンションの部屋に入る間際、珍しく北谷さんが顔をしかめてそう言ったのが聞こえた。
政宗さんは、一瞬目を細めたあと俺の背を押し部屋に入った。

「政宗さん、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ」

「……あの無理に来てもらってたならすみません。」

声が自然と小さくなった。俺の横を通り過ぎて前にいた政宗さんは驚いた顔をしてこちらを振り返った。

つい、癖で服をぎゅっと握りしめた。

この頃政宗さんがよく悩んでいる姿を目にした。息抜きになればいいなと思って北谷さんに頼んで誘ってもらったけど、空回りだったかもしれない。

「…違う、俺の問題だ。どうしても解けない。」

まただ。政宗さんは考え込むように眉間に皺を寄せた。

「その、問題って、俺が手助けできないことですか…?」

勇気を出して発した声はあまりにも小さすぎた。それでも政宗さんは拾い上げてくれた。
険しかった表情が政宗さんから消えていく、次第に細められた目は俺だけを見た。

「どうやったらお前を永遠に俺のそばにおけるか考えてた。でも解けない。俺からお前を奪おうとする奴もいる。逃げられるのは別にいい、追いかければいいだけだ。だけど奪われるのだけは怖い。奪われてばかりの人生だからな。

奪われることは怖い。」

"怖い"と政宗さんが、静かにこぼした。俺の前では一度も言わなかったであろう言葉を今、感情に任せて吐き出した。
奪われてばかりの人生だから奪われることが怖いと、この人は自分で気付けている。どこまですごい人だ。

だけど"怖い"と口にした政宗さんを見て気付けたことがある。政宗さんは、完璧な人じゃない。俺を支えて歩いてくれるけど、彼もきっと今まで誰かに支えられてここにきた。
支えるか支えられるか。それが変わっただけで、一人で生きていくにはまだ完璧じゃない。

静かに、俺の反応を少し怖がりながらさみしそうに微笑んだ政宗さんにゆっくりと近づいて、優しい指先に触れた。

「大丈夫ですよ。奪われてばかりじゃないはずです、奪い返したものもきっとありますよ。」

暖かい手をゆっくりと握れば握り返してくれた。

「政宗さん、大丈夫ですよ。俺、重いかもしれないけど政宗さんのこと大好きです。」

言ってなかった言葉。誰にも言ってこなかった。言わせるばかりで、返してあげてなかったから、次第に減っていった言葉。

「奪われたら奪い返しに来てください。俺は連れてかれちゃったら、弱っちいから、自分では帰ってこれないんです。でも政宗さんが奪い返しに来てくれたら、帰れるんです。一人では、…弱いから。

あ、でも、俺はたぶん政宗さんのことずっと思ってるから中身が奪われることはないと思います」

そう、誰にもあげない。これは俺と政宗さんだけが見聞きしていい感情だ。誰にもあげないし奪わせたりしない。

絡みついた手が不意に離れる。俺を抱きしめた政宗さんは小さく声をこぼして笑った。

「かなわねぇーな。相変わらずお前の背筋は真っ直ぐだ。」

心地よい低音の声音。
めまぐるしく駆け抜けていく、"一時"の"幸福"が、今だけは、俺のすぐそばにある。
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