どうしてこんな拍手喝采

ソラ

文字の大きさ
33 / 47
After a long time spiral

5

しおりを挟む
(政宗 視点)


「行かなくて、いいんですか?」

その問いは北谷の中で驚くほど響きわ渡ったのか、揺れる瞳は定まり俺を見るためにこちらを向いた。

「さっさと行ってこい。」

「……失礼します」

早足に動いて部屋を出た北谷に俺は小さく息をこぼした。

「俺の周りは、女々しい奴が多いな。」

「女々しいと言うよりは自己責任が強い人たちじゃないですか?」

「どちらにせよ言われるまで気づかない奴らだ。お前が言わなかったら俺もそろそろ言おうかと思ってたが……予想外にお前の言葉が響いたらしい。」

「そうですかね?」

小さく笑う冰澄は、首をかしげた。
高梨の視線が痛いくらい伝わる。何かを見ようと、探ろうと、それはたぶん俺と一緒だろう。
誰だって気になる、まだ高校二年の少年が言う言葉ではない。その裏にある物。

「……冰澄、お前はあるのか。
生きるか死ぬかの境界を、躊躇なく越そうとすることが」

「ありますよ。飛び降りはしませんけど」

「それでも越えることはできるんだろう」

「俺は、水に流されて死にたい。」

かすかに香ったのは、冰澄独特に空気だ。
時間が流れを遅くする。冰澄のいる場所は、どこかで止まっている。かなり、昔で止まっている。

「川でも海でも池でもどこでもいい。ただ、誰にも見つからない場所で死にたい。もう誰にも俺を見つけさせないことができるし、俺の中に誰も入ってこない。」

「そうなれば、独りだ。」

「それでいい、もう何も思いたくない。俺の中にもともとあった音と水の音でいい。心拍数はいらない、もちろん俺の心拍数も。あっていいのは、優しい歌声と鳴り響くギターの音、リズムを刻む足音、それだけでいい」

俺はゆっくりと冰澄に近づきその頬に触れた。

「お前に話さないことがたぶん俺にはたくさんある。話しても話しきれない。話さないのは、まだお前に普通の"高校生活"を送らせたいからかもしれない。」

「俺もう"高校生活"送ってますよ?」

「ああ、それでいい。今はまだ死にたくなってもいい、もうそれでいい、俺が引っ張る。絶対に越えさせない。冰澄、いろんな奴と会って話をしろ、俺が許可するやつ全員に会え、片桐の弟にも、楓の息子にも、俺の部下にも、いろんな奴にあって話をしろ、きっと全員お前が境界を越そうとしたとき引き止めて引きずり戻してくれる。」

呆気にとられる冰澄を見て笑みをこぼした。冰澄の頬を摘んで引っ張る。

「うわぁ、やめてください!」

「お前も大概馬鹿だったな」

ゆっくりと唇を重ねる。

少し照れくさそうに笑った冰澄を見て俺は、決めた。海に行こう、川にも行こう、池にだって湖にだって、連れて行って、そこで死にたいと思うのが嫌になる程幸福な時間を与えてやろう。


--だから邪魔をするな、鷹峰克己
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

発情期のタイムリミット

なの
BL
期末試験を目前に控えた高校2年のΩ・陸。 抑制剤の効きが弱い体質のせいで、発情期が試験と重なりそうになり大パニック! 「絶対に赤点は取れない!」 「発情期なんて気合で乗り越える!」 そう強がる陸を、幼なじみでクラスメイトのα・大輝が心配する。 だが、勉強に必死な陸の周りには、ほんのり漂う甘いフェロモン……。 「俺に頼れって言ってんのに」 「頼ったら……勉強どころじゃなくなるから!」 試験か、発情期か。 ギリギリのタイムリミットの中で、二人の関係は一気に動き出していく――! ドタバタと胸きゅんが交錯する、青春オメガバース・ラブコメディ。 *一般的なオメガバースは、発情期中はアルファとオメガを隔離したり、抑制剤や隔離部屋が管理されていたりしていますが、この物語は、日常ラブコメにオメガバース要素を混ぜた世界観になってます。

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

【完結】期限付きの恋人契約〜あと一年で終わるはずだったのに〜

なの
BL
「俺と恋人になってくれ。期限は一年」 男子校に通う高校二年の白石悠真は、地味で真面目なクラスメイト。 ある日、学年一の人気者・神谷蓮に、いきなりそんな宣言をされる。 冗談だと思っていたのに、毎日放課後を一緒に過ごし、弁当を交換し、祭りにも行くうちに――蓮は悠真の中で、ただのクラスメイトじゃなくなっていた。 しかし、期限の日が近づく頃、蓮の笑顔の裏に隠された秘密が明らかになる。 「俺、後悔しないようにしてんだ」 その言葉の意味を知ったとき、悠真は――。 笑い合った日々も、すれ違った夜も、全部まとめて好きだ。 一年だけのはずだった契約は、運命を変える恋になる。 青春BL小説カップにエントリーしてます。応援よろしくお願いします。 本文は完結済みですが、番外編も投稿しますので、よければお読みください。

仲良くなったと思った相手は、どうやら友達なんて作りたくないらしい

たけむら
BL
仲良くなった相手は、どうやら友達なんて要らないっぽい 石見陽葵には、大学に入ってから知り合った友人・壬生奏明がいる。少し冷たそうな第一印象から周りの学生に遠巻きにされている奏明に、とある提案をしてみると、衝撃的な一言が返ってきて…?

サラリーマン二人、酔いどれ同伴

BL
久しぶりの飲み会! 楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。 「……え、やった?」 「やりましたね」 「あれ、俺は受け?攻め?」 「受けでしたね」 絶望する佐万里! しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ! こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。

不器用に惹かれる

タッター
BL
月影暖季は人見知りだ。そのせいで高校に入って二年続けて友達作りに失敗した。 といってもまだ二年生になって一ヶ月しか経っていないが、悲観が止まらない。 それは一年まともに誰とも喋らなかったせいで人見知りが悪化したから。また、一年の時に起こったある出来事がダメ押しとなって見事にこじらせたから。 怖い。それでも友達が欲しい……。 どうするどうすると焦っていれば、なぜか苦手な男が声をかけてくるようになった。 文武両道にいつも微笑みを浮かべていて、物腰も声色も優しい見た目も爽やかイケメンな王子様みたいな男、夜宮。クラスは別だ。 一年生の頃、同じクラスだった時にはほとんど喋らず、あの日以降は一言も喋ったことがなかったのにどうして急に二年になってお昼を誘ってくるようになったのか。 それだけじゃない。月影君月影君と月影攻撃が止まない。 にこにことした笑顔になんとか愛想笑いを返し続けるも、どこか夜宮の様子がおかしいことに気づいていく。 そうして夜宮を知れば知るほどーー

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

処理中です...